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論争を経て再評価へ? ハリー・ポッターの作者 J・K・ローリングと『文化戦争』の行方

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月16日 18時57分

トランスジェンダーの権利擁護を訴えるデモではローリング批判のプラカードも(「シスジェンダー」は心と体の性が一致する人、23年7月、ロンドン) WIKTOR SZYMANOWICZーFUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

ライアン・スミス(本誌エンターテインメント担当)
<トランスジェンダーをめぐる議論で何度も炎上したものの、米メディア大手ワーナーが問題視せず、ハリポタ新ドラマ制作にも参加する理由>

まさに魔法のような復活劇だ。イギリスの作家で「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親であるJ・K・ローリング(J.K. Rowling)は近年、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人々に対する見解をめぐって激しい批判を浴び、一部の関係者から距離を置かれてきた。

だが、ついにこの「文化戦争」で勝利を収めたらしい。

問題視されていたのは、ローリングがトランス女性の性自認に疑問を抱く女性たちを支持し、トランス女性について語る際に男性代名詞をかたくなに使い続けていたことだ。

X(旧ツイッター)で持論を展開するローリングに、セレブたちは非難の声を上げ、SNSのユーザーたちは嫌悪感をあらわにした。トランスジェンダーの権利擁護を訴える活動家たちからは「TERF」とのレッテルを貼られた。

TERFとは「トランス排除的ラディカルフェミニスト(trans-exclusionary radical feminist)」の略で、トランスジェンダーを認めない人に対して否定的なニュアンスで使われることが多い(一方で、ローリングの意見を支持する人が少なからずいたのも確かだ)。

風向きが変わってきたのは最近のこと。

米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)と傘下のケーブルテレビ局HBOは昨年11月、「ハリー・ポッター」シリーズをドラマ化するプロジェクトにローリングが関わっていることを明らかにするとともに、ローリングのトランスジェンダー関連発言をめぐる議論には口を挟まないとの立場を示したのだ。

ローリングには社会状況の変化も味方? MIKE MARSLANDーWIREIMAGE/GETTY IMAGES

HBOの広報は、ドラマに対するローリングの貢献は「計り知れず」、「彼女の関与は作品に利益しかもたらさないはずだ」と発言。トランスジェンダー問題についても「J・K・ローリングには個人的な意見を表明する権利がある」と述べた。

これまでファンの反発を恐れてローリングに関する発言を避けてきたWBDにしては、ずいぶんはっきりとしたお墨付きを与えたものだ。実はトランスジェンダーの人々の権利に関する文化的議論は最近、新たな局面を迎えている。

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