ロシアは民間航空機を狙った「空のテロ行為」を企てている──ポーランド首相
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月16日 16時12分
マイケル・D・キャロル
<過激化するお家芸のハイブリッド攻撃。狙いは西側のウクライナ支援を妨害することだ>
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は1月15日、ロシアが民間航空機を標的とした「空でのテロ行為」など世界規模の破壊工作を企てていると主張した。ワルシャワを訪れたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談後に行った共同会見の中で、脅威の深刻さを強調した。
【動画】墜落するアゼルバイジャン航空機
EU加盟国であるポーランドは、ロシアがポーランドやその他の西側諸国に対してハイブリッド戦争を仕掛けていると非難し、西側諸国がロシアと戦争しているウクライナを支援していることへの「報復」だとその動機だと説明している。
またポーランドの当局者たちは、ロシアが同盟国ベラルーシ経由でEUの東の国境から大量の移民を流入させ、EU内で混乱や分断を引き起こそうとしているとも主張している。
2024年12月25日にアゼルバイジャン航空の旅客機がカザフスタンに墜落して38人が死亡した事故では、アゼルバイジャンはロシアの防空システムが誤って同旅客機を撃墜したのではないかと主張した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの「悲劇的な事件」について謝罪したが、墜落の責任がロシアにあるとは認めなかった。
この一件はアゼルバイジャンとロシアの複雑な関係を浮き彫りにし、地域の緊張をいっそう高めることになった。
11月には西側の情報機関が、ロシアが北米に向かう航空機の貨物に発火装置を仕掛ける計画を立てているらしいと報告した。ドイツの宅配施設やイギリスの倉庫で起きた火災もこの計画に関係しているとみられている。主な標的は貨物機を標的にしている可能性があるとして、世界の空の安全に対する懸念が高まっている。
10月にはポーランド当局が、破壊活動を行う外国の諜報ネットワークに関与した疑いで4人を逮捕したと発表した。
これら一連の破壊工作について西側の当局者は、ロシアがウクライナを支援する国々を狙ってエスカレートさせているハイブリッド戦争だとみている。2024年にヨーロッパ各地で相次いだ選挙に関する誤情報拡散や放火事件なども、その作戦の一環だとされている。
当局者らはこれらの作戦の多くについて、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が企てたものと考えているが、ロシア政府は否定している。
ポーランド国内安全庁(ABW)は、ポーランド国内およびEUやNATO加盟諸国でロシアによるハイブリッド攻撃が急増していると報告、主導しているのはロシアの情報機関だと指摘している。ABWと検察、警察はこれに関連する捜査でこれまで20人を起訴しており、脅威の規模がうかがえる。
ロシアの仕業とみられる破壊工作や放火の脅威が高まっていることを受けて、ポーランドは2024年10月、ロシア国内にある3つのロシア領事館のうち1つの閉鎖を命じた。ロシアの挑発行為に対してポーランドが一段と態度を硬化させていることを示唆している。
トゥスクは15日の会見の中で、「具体的なことは言えないが、ロシアがポーランドだけでなく世界中の航空会社を狙った空でのテロ行為を計画している恐れが正当なものであることは確かだ」と述べた。
【動画】墜落するアゼルバイジャン航空機
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