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トランプの「ディール外交」──ゼロサム的世界観を紐解く

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月23日 16時28分

就任前から強気の「アメリカ・ファースト」宣言を続けている SCOTT OLSON/GETTY IMAGES

ラビ・アグラワル(フォーリン・ポリシー誌編集長)
<いよいよ始まるドナルド・トランプ第2次政権で、あからさまな「アメリカ・ファースト」時代が到来。ディールが軸の新国際秩序を同盟国として生き残るには?>

ドナルド・トランプには「ディール(取引)」のイメージが付いて回る。しかしリーダーは誰でも多かれ少なかれ取引をする。アメリカの新大統領を際立たせるのはむしろ理念も同盟関係も条約さえも時に無視する、露骨な日和見主義だ。

トランプにとってはあらゆる取引が、勝者と敗者が明確なゼロサム・ゲーム。何より彼はたとえ事実に反していても、勝者と見なされたい。

そのあからさまなディール志向は世界の利害関係者を震撼させると識者は考えるが、現実はもっと複雑だ。アメリカが支える同盟関係に依存する国は方針の見直しを迫られ、市場は混乱するだろう。だがチャンスを嗅ぎつける国や企業もある。

国の指導者も企業の幹部も、トランプが初めて大統領に就任したときよりは心構えができている。第1次トランプ政権下で学んだ教訓を胸に、その常識破りなリーダーシップや利益にならないことは全て切り捨てる思考回路を研究してきたのだ。

世間に衝撃を与えるトランプ節は変わらずとも、世界はもはやアメリカの日和見主義に驚かない。2017年に第1次トランプ政権が発足するずっと前から、第2次大戦後の国際秩序にはほころびが生じていた。

ルールに基づく平等な国際システムに従おうとする国々は、国連や世界銀行などの国際機関で他国と権力を共有しようとしないアメリカの姿を見てきた。

中国が前例のない成長を遂げ、自由貿易とグローバリゼーションに対する幻滅が世界に広がるなかでアメリカは保護主義に傾き、利益と衝突する場合は規範や国家理念を犠牲にする傾向を強めた。

選挙戦終盤の集会で息子たちと(24年11月) CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

この流れが目に見えて顕著になったのは、おそらく2003年のイラク戦争開戦以降のこと。トランプの復活で、国際社会のディール志向はさらにエスカレートするだろう。

トランプのゼロサム思考に、世界はあの手この手で対処することになる。アメリカとの友好関係に頼ってきた国々は、混乱に見舞われ痛い思いをするだろう。

昨年2月の選挙集会で、トランプはこんな話をした。相応の防衛費を負担しないならば他国に侵略されても守るどころか「好きにしろ」と侵略者をたきつけてやると、あるNATO加盟国を脅した上、「金を出せ」と要求したのだという。

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