トランプ、南部国境で「非常事態宣言」 移民流入と対テロ戦争の交錯
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月27日 11時12分
和田 大樹
<4年ぶりにトランプがホワイトハウスに戻ってきた。トランプ政権におけるテロ対策は外交・安全保障というより、治安・国土安全保障を強く意識したものとなるだろう>
昨年秋の大統領選では、トランプ大統領が激戦7州を全て制してハリスに勝利し、同時に行われた連邦議会選挙でも上院と下院で共和党が多数派となったことで、トランプ圧勝という文字が先行している。
しかし、両氏の獲得票数で言えば決して圧勝という言葉は適切ではなく、来年秋の中間選挙を見据え、トランプ大統領にとってまずはこの1年半の政権運営が重要となる。
対テロの優先順位は高くない
トランプ大統領は米国を再び偉大な国家にするため、関税などを武器に諸外国から譲歩や利益を最大限引き出し、外国が持つ負担による米国への影響を最小限に抑え、米国の政治的安定や経済的繁栄を確保、強化しようとする。
また、諸外国の中で米国が特別な国家であることを維持するため、諸外国に対する米国の優位性を確保しようとし、特に中国に対する優位性確保を意識している。
これに照らせば、トランプ大統領は内政を基本としつつ、外交では対中国を最重要課題とし、自らのレガシー作りの一環としてウクライナや中東などの紛争に対応していくことになり、対テロの優先順位は高くないと捉えられる。
依然として残るテロの脅威
無論、以前と比べ、世界で1年間に発生するテロ事件数や死傷者数は減少傾向にあり、今日、米国にとって差し迫ったテロの脅威は存在しないと言えよう。
しかし、2010年代半ばにイラク・シリアで猛威を振るったイスラム国中枢が弱体化する中、近年はそれに忠誠を誓い、アフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州(ISKP)による対外的なテロ活動が目立つ。
昨年1月には、イラン南東部ケルマンで革命防衛隊のソレイマニ元司令官の追悼行事を狙った大規模な自爆テロ事件が発生し、100人あまりが死亡し、同年3月にはロシア・モスクワ郊外にあるコンサートホールを狙った襲撃テロ事件が発生し、140人以上が死亡し、ISKPが両事件を実行したとされる。
また、昨年夏のパリ五輪やドイツで開催されたサッカー欧州選手権などでは、ISKP関連のテロ未遂や容疑者の逮捕が相次いで報告され、テロ対策専門家の間ではISKPの対外的攻撃性への懸念は今日でも根強い。
また、昨年12月には中東のシリアで反政府勢力による攻勢により、50年以上にわたって同国を支配してきたアサド政権が呆気なく崩壊した。
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