「平和で公正な社会はつくれる」----キング牧師の娘が語る「父とジミー・カーター」
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月29日 15時29分
州知事に就任した瞬間から、カーターはそれまで避けがちだった公民権運動の推進に残りの人生を費やすことになった。
州知事1期目には、州議会議事堂の壁を飾る南北戦争の英雄や人種差別主義者らの肖像に黒人であるキングの肖像を加えるという歴史的決断を下した。
キングの遺族は、カーターが政界で頭角を現していく姿を見守っていた。キングの父親マーチン・ルーサー・キングと妻のコレッタ・キングは、76年の民主党全国大会をカーターへの祝福の言葉で締めくくった。
アメリカを本来の場所に戻すべく主が彼を遣わされたに違いない──キングの父親の声が会場に響き渡った。
「公正かつ人道的」な社会に
あの出来事は「カーターの大統領選出に非常に大きな役割を果たした」と、バーニスは言う。
「当時アメリカでは、公民権運動が下火になる一方、人種差別撤廃やその類いの動きはまだ始まったばかり。カーターといえども黒人の支持を確実に獲得できるかどうか分からなかった」
ジョージア州以外では知名度の低い穴馬的な大統領候補だったカーターは、黒人有権者の圧倒的支持を得て、ルイジアナ、テキサス、オハイオ、ウィスコンシン、ミシシッピ、ミズーリ、ペンシルベニアといった州で現職のジェラルド・フォードに僅差で勝利。
第39代大統領として1期を務めた後、80年の選挙でロナルド・レーガンに大敗した。再選を果たせなかったことでカーターは政治的失敗の烙印を押されたが、多くの人々にとって彼の最大の遺産といえば公民権運動推進に対する功績だ。
在任中は黒人経営者の企業にも国との契約の門戸を開き、黒人の教育水準向上のために設立された「歴史的黒人大学」に対する支援を強化し、記録的な数の黒人を行政や司法の要職に任命した。
キング家のことも常に心にかけていた。
77年、カーターと妻のロサリンはキングの遺族をホワイトハウスに招き、キングに追贈する自由勲章をコレッタ夫人に贈呈。キングと彼の指導力を連邦政府が認めた初めてのケースだった。
さらに夫人が亡夫の功績をたたえて設立したキング・センターの建築費約350万ドルの調達に協力し、マーチン・ルーサー・キング国立歴史公園を建設する法案にも署名。コレッタを女性初の米国連代表団に、キングの親友・側近だったアンドリュー・ヤングを黒人初の米国連大使に指名した。
結局、カーターの指導力は州知事時代も大統領在任中も、政界引退後でさえ「彼の遺産の負の部分を上回っている」とバーニスは言う。
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