老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌の育て方【最新研究】
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月31日 9時20分
内藤裕二(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)
<健康長寿の秘訣は「腸内細菌」にあった...。アッカーマンシア菌とは? 食事性炎症指数(DII)の低い「炎症抑制食品」とは?>
脳、がん、肥満、メタボ、長寿、免疫、老化、便秘...。すべては腸内細菌に関係があった。
腸内研究の第一人者である内藤裕二・京都府立医科大学教授による話題書『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP)より第4章「長寿と老化に関係する腸内細菌」を一部抜粋。
◇ ◇ ◇
ピロリ菌の種類も違う? 沖縄エリアの腸内細菌はほかとは違う「欧米型」
残念なことに、この欧米で話題になっているアッカーマンシア菌は現代の日本人の腸にはほとんどいません。もともとはいたのに、食生活などの変化でいなくなったのか、もともといなかったのかはわかりません。
ですが、沖縄県大宜味村(おおぎみそん)で行われた調査から、沖縄の人の腸にはアッカーマンシア菌がいることが確認されています。
近年、沖縄では肥満やメタボリックシンドローム、生活習慣病が増加していますが、もともとは長寿者の多い地域として有名で、今でも、大宜味村は「ブルーゾーン」と呼ばれる世界の6つの長寿地域のひとつです。
沖縄の人の腸内細菌は、アッカーマンシア以外にも国内のほかの地域とは異なる特徴が見られます。たとえば、沖縄の人の胃にいるピロリ菌は、本州の人のピロリ菌とは遺伝子が異なります。
『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP) 101頁より
日本人の場合、胃がんの患者さんの99%にピロリ菌が関与しているとされていますが、実はピロリ菌にも種類があり、ある特定のたんぱく質CagA(カグエー)を作るタイプだと、胃がんの発生リスクは10倍にも跳ね上がることが報告されています。
CagAはピロリ菌以外の菌では見つかっていない特殊なタンパク質で、胃粘膜表面に接着したピロリ菌がこのタンパク質を粘膜上皮細胞に注入することで、炎症や細胞のがん化が生じます。
日本の中でも沖縄以外の人が感染しているのはほとんどがこのタンパク質をつくる菌株ですが、沖縄の人の胃の中にいるのは、欧米でよく見られるCagAを持たない毒性が低い菌株です。実際、沖縄では胃がんの発生率は低いのです。
腸内細菌が出産時に母親から子どもへと代々引き継がれていくことを考えると、ピロリ菌のタイプが欧米型で、かつアッカーマンシア菌を持っているということは、沖縄の人の腸内細菌のルーツはどこかで欧米の腸内細菌タイプのルーツと重なっているのかもしれません。
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