今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望している理由
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月30日 6時45分
中国は今や世界最大のグリーン製品製造国だ。中国一国で全世界の必要量をすべてまかなうほどの生産力がある。しかし、先進国は自国産業を守るためにも、すべてを中国からの輸入でまかなうわけにはいかない。強く反発するだろう。米国や欧州が中国のEVを排除する動きを強めていることはその一例だ。
ならば、途上国・新興国に輸出すればいいという発想も当然だ。北京大学教授の黄益平は、発展途上国に融資し、その資金で中国のグリーン製品を輸出させるという中国版「グリーン・マーシャル・プラン」を提案している。
第二次世界大戦後、米国は欧州諸国の復興援助計画「マーシャル・プラン」を実施した。これは、共産主義陣営の拡大を防ぐという地政学的目的に加え、欧州との貿易活発化による米国経済振興策という経済的側面もあわせ持っていた。援助資金の多くは米国から物資を買うための代金として使われたのだ。
ただ、現実には中国版グリーン・マーシャル・プランの実現は困難だろう。前回記事で述べたとおり、中国の政府系金融機関による対新興国融資はすでに頭打ちだ。EVや太陽光パネルを購入してもらうための巨額の資金を新たに貸し付けることは難しい。
また、途上国・新興国側としても、脱炭素を進める必要性があるとはいえ、中国のグリーン製品を大々的に輸入することにメリットを感じないだろう。
途上国・新興国の論理
タイの事例は典型だ。中国からタイに輸入されるEV購入にタイ政府から補助金が支給されることとなり、中国EVメーカーは大挙して進出した。ただし、この補助金支給には条件があった。最終的にはタイでの現地生産が義務付けられているのだ。
2026年までにタイでの現地生産を始めた場合には輸入台数の2倍以上、2027年に生産を始める場合は3倍以上の国内生産が義務付けられる。補助金を武器に中国EVメーカーの工場誘致を目指したわけだ。野心あふれる中国企業は果敢に挑戦したが、タイ自動車市場の冷え込みもあり達成が困難な企業が多く、義務化の期限は延長された。
また、中国政府もEV工場の海外展開に対してジレンマに陥っている。中国メーカーの販売台数が増加すること自体は望ましいが、それが生み出す雇用、そしてEVの技術は中国外に流出してしまう。外国政府は現地生産を求めてくるが、中国政府はそれを抑制しようとする。企業は板挟みの立場に置かれるだろう。
また、「質の高い発展」が途上国・新興国にとって魅力的なフレーズかどうかは疑問がある。一帯一路1.0では融資が獲得できるという強烈なメリットがあったが、2.0ではお金がついてこない点が弱い。お付き合い程度には参加しても、たいしてやる気にはならないというのが実情だろう。
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