「トランプ2.0」で、アジアの未来はこう変わる
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月7日 15時7分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
<対中強硬派として知られるルビオ新国務長官。トランプの「孤立主義」「ディール外交」は日本を含むアジアの同盟国にとって必ずしも悪いことではない>
第2次トランプ米政権発足後、アジアにとって重大な意味を持つ最初の任務として、ルビオ米国務長官が1月24日、中国の王毅(ワン・イー)外相と電話会談を行った。ルビオは3つの点を明確に告げた。トランプ政権は米中関係で自国の国益を最優先し、アジアの同盟国との関係を重視し、台湾や南シナ海での中国の威圧的行動を深刻に受け止める、と。
対中政策のトーンを再調整した今回の電話会談は、トランプ米大統領が「孤立主義」で「ディール外交」重視だという根強い見方をほぼ打ち消すものだった。
孤立主義というレッテルの根源は、米外交に長らく付きまとう欧州(と、その隣接地域の中東)重視の姿勢だ。アメリカは、中国の台頭が始まった2000年代に「アジアへの旋回(ピボット)」の必要性が明らかになったにもかかわらず、本気で転換に乗り出すことはなかった。
このピボットを可能にするため、1期目のトランプは欧州に対ロシア・イラン防衛負担の増加を迫り、アメリカのNATO脱退という脅しもかけた。不満を抱いた多くの欧米の政治家がトランプを自己中心的な孤立主義者と呼び、元実業家トランプの近視眼的なディール外交を嘲った。
「冷笑的な見方」が見落とすこと
こうした冷笑的な見方が見落としているのは、トランプのMAGA(アメリカを再び偉大な国に)主義は本質的に、自国の世界的優位性を脅かしかねない競合相手を嫌悪するという事実だ。アメリカの優先事項や懸念を率直に再表明したルビオの発言は、アジアの同盟国の不安緩和のために必要だった。これらの国々は、自分たちを交渉材料にして、アメリカが利己的な取引を中国と結ぶことを不安視していたからだ。
ただし「トランプ2.0」は、アジアの同盟国にとっていいことずくめではない。少なくとも、対米貿易黒字が大きい国の場合は。MAGA哲学の一角を占めるのは重商主義であり、輸入関税を武器にして、押しの強さが目立つ貿易相手国にしっぺ返しをすることをいとわない。
トランプの関税措置の直近の目標は、輸入相手国から間接的な形で純歳入を得ることと、外国企業に米国内生産を促すことだ。輸入品に税金を課せば、価格圧力の上昇を招くとの批判は的外れではない。だが、外国企業が関税を回避するため米国内に生産拠点を構えれば、アメリカの供給力が拡大することになり価格上昇圧力は弱まる。現に、TSMCやサムスン電子は米国内に半導体工場を建設中で、ソフトバンクグループやサウジアラビアなどは1000億ドル単位の対米投資を約束している。
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