フジテレビ「最大の経営危機」、本番はむしろこれからか...市場は「今後」をどう見ている?
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月5日 17時2分
加谷珪一
<株主や広告主、視聴者の信頼を回復してCM出稿見合わせが続く現在の状況を打破できなければ、フジHDの業績への悪影響は来期以降さらに深刻化することになる>
タレントの中居正広氏の女性トラブルをきっかけに、キー局であるフジテレビジョン(フジテレビ)がガバナンスの問題を厳しく指摘されるという前代未聞の事態となっている。このままでは、スポンサー企業によるCM出稿見合わせが継続する可能性が高く、同社経営陣はできるだけ早い決断が求められる。
この問題は、中居氏と被害女性との間に発生した個人的なトラブルに端を発しているが、資本市場から見た場合、中居氏と女性の間に発生したトラブルはあくまでプライベートなものであり、フジテレビがこの問題に組織的に関与していたのかが最大の関心事となっている。仮に組織的な関与が認められた場合、市場は同社がガバナンス上深刻な問題を抱えていると判断せざるを得ないだろう。
現在、同社はスポンサー企業のCM出稿見合わせによって、来期の業績見通しが立てにくい状況にある。同社の親会社で上場企業でもあるフジ・メディア・ホールディングスにおける2024年3月期の売上高は約5660億円となっている。
グループの中核子会社であるフジテレビの売上高は約2400億円と半分近くの割合を占める。フジテレビの売上高の約6割はテレビ放送を中心とした広告収入であり、CM出稿見合わせが相次ぐとグループ全体の業績に深刻な影響を与える可能性が高い。
広告が2割を超えて減少すれば赤字の危機
25年3月期までの広告については契約済みだが、新年度以降については現在、営業活動を行っている最中である。番組を買い切るタイム広告については通常、2クール(2四半期)ごとに契約されることが多いので、このまま見合わせが続くと26年3月期の業績は悪化せざるを得ない。
仮に広告が2割を超えて減少したとすると、グループ全体で獲得している経常利益が吹き飛ぶ計算となり赤字転落の可能性も取り沙汰されるだろう。
これまで、テレビ番組や芸能人の不祥事によって広告の見合わせが実施されることはあったが、テレビ局全体に対して多くのスポンサー企業が次々と広告を見合わせるのは前代未聞の事態であり、同社にとっては開局以来最大の危機と言ってよい。
フジテレビは当初、テレビを入れないクローズの形での会見を行い、設置を表明した調査委員会はグローバル基準を満たさないものだったことから多くの批判を浴びた。これを受けて第三者委員会の設置を表明したものの、3月末とされている期間までに十分な調査が実施できるのか現時点では不透明である。
社長辞任でフジテレビ問題は収まらない
同社は3月決算であり、5月には決算発表を行い、来期の業績見通しを公表する必要がある。6月には定時株主総会の開催が予定されており、物言う株主として知られ、同社株式を約7%保有するダルトン・インベストメンツは、経営陣の交代なども含めた株主総会での議決権行使の可能性を示唆している状況だ。
同社が問われているのは深刻なガバナンスの欠如であり、現在、執行を担っている経営陣は問題の当事者かもしれない。とりあえずフジテレビの港浩一社長は辞任したが、こうした場合には、社外取締役らが中心となり事態を打開するのがグローバル市場の常識である。
社外取締役主導で確実に第三者委員会による調査を行い、経営責任をはっきりさせることが同社を復活させる最短距離といえるだろう。
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