トランプ「買収は望まないが、投資は大好きだ」USスチール問題の裏側
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月10日 18時17分
モニカ・セイガー、ゲイブ・ウィズナント
<絶体絶命の危機にあった日本製鉄のUSスチール買収計画は、息を吹き返したのか?>
トランプ米大統領は2月7日、日本の石破茂首相との日米首脳会談後の共同記者会見で、日鉄はUSスチール(US steel)の買収ではなく、同社への多額の投資を検討していると述べた。
「彼らはUSスチールを所有するのではなく、多額の投資を行うことで合意した」と、トランプは語った。さらに近く日鉄のCEOと会談し、「調停と仲裁」を行う意向も示した。
日本最大の鉄鋼メーカーである日鉄が、USスチールの設備の更新と追加投資を柱とする買収計画を発表したのは2023年12月。USスチールはアメリカの主要鉄鋼メーカーで、製鉄という戦略産業で約2万人を雇用している。
トランプはもともと日鉄の買収計画に反対だった。1期目のトランプ政権では、ほとんどの国に対して鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課していた。
「日鉄はアメリカの鉄鋼に対し、とてもエキサイティングなことをしようとしている」と、トランプは言った。
「USスチールは私たちにとってとても重要な会社だった。何年も前......8年前には、15年間にわたり世界で最も偉大な企業だった。私たちは(同社がアメリカから)出ていくのを見たくなかった。実際、心理的な抵抗感がある」
日鉄による149億ドルの買収案は1月3日、バイデン前大統領によって阻止された。
外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は数カ月にわたり審査を続けたが、合意に達することができず、この問題を大統領の決定に委ねた。
バイデンの買収中止命令は、30日以内に買収計画の放棄を義務付けている。日鉄とUSスチールは1月6日、この決定に異議を唱えて連邦控訴裁判所に訴訟を起こした。
伏兵も現れた。アクティビスト(別名「物言う株主」)の米投資会社アンコラ・ホールディングスは1月27日、日鉄のUSスチール買収案の撤回を要求。USスチールの株式を少数取得した上で、経営陣の刷新を求めた。
アンコラによれば、USスチールの経営陣は日鉄の買収が成功すれば1億ドル以上の利益を得る。USスチールは23年、同業のクリーブランド・クリフスの買収案を拒否し、日鉄の提案を支持している。
一方、日鉄のアドバイザーを務めるマイク・ポンペオ元国務長官は、「この取引はUSスチールの事業と生産能力を強化し、労働者と地域社会に利益をもたらし、米鉄鋼産業の競争力を強化するものだ」とウォール・ストリート・ジャーナル紙で主張した。
ポンペオの言うことは日本から見れば正論だ。しかし、トランプと関係が悪化したポンペオを、日鉄が昨年アドバイザーとして起用した判断は疑問視されてもいる。
トランプは日米首脳会談の前日、USスチールのデービッド・ブリットCEOとホワイトハウスで面会した。USスチール側は、長年の懸案だった日鉄の買収について大統領の決断を求めていた。
トランプは「調停と仲裁」に自ら乗り出す意向を示した上で、「私は買収を望まないが、投資は大好きだ」と言った。石破が首脳会談で対米投資を1兆ドル規模に引き上げる考えを表明したことも、新たな追い風になりそうだ。
「買収でなく投資」が具体的に何を意味するのか、日鉄の橋本英二CEOとトランプの会談で明らかになるのだろう。
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