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ニコニコ生放送「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」(2015年7月31日放送)全文書き起こし(5)

ニコニコニュース / 2015年8月23日 12時0分

ニコニコニュース

 「ニコニコドキュメンタリー」の第1弾、第三者の視点から日韓問題を描いた「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」をテーマにした1回目の討論番組、「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」が2015年7月31日(金)22時から、ニコニコ生放送で配信されました。

 本ニュースでは、同番組の内容を以下の通り全文書き起こして紹介します。

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※出演者=話者表記
角谷浩一氏(MC/ジャーナリスト)=角谷
松嶋初音氏(コネクター)=松嶋
青木理氏(ジャーナリスト)=青木
潮匡人氏(評論家・軍事ジャーナリスト)=潮
木村幹氏(神戸大学大学院国際協力研究科教授)=木村
津田大介氏(ジャーナリスト)=津田
辺真一氏(コリア・レポート編集長)=辺
平沢勝栄氏(衆議院議員・日韓議員連盟幹事)=平沢
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辺:日本の対応は非常に賢明だと思いますよ。やっぱり韓国があまりにもこの問題に対して非常にエキセントリックですね。日本の立場からすると、これは国際法的にも、歴史的にも日本の領土であると。当然それは教科書にも、あるいは外交白書にも、防衛白書にも書いてしかるべきですし。またこれは島根県に帰属していますから島根県が2月22日を竹島の日と制定する、それも当然だと思うんですね。

 それに対して韓国がいちいち反発するっていうのは、私からしますと、もう少し韓国はクールに自制したほうがいいんではないかって思っているんですね。特に一応安倍政権に対しては、いろいろなことをやっておりますけども、こと竹島問題に関しては、おっしゃったように非常に抑制的な対応をしていると思いますよ。特に自民党が野党の時代に、仮に政権をとったときには、一つは竹島の日を政府の行事として格上げすると、さらには、国際司法裁判所にも提訴すると、いくつか民主党と違った政策を打ち出しましたね。ところが、現実には今もって政府の行事に格上げしていませんね。島根県のほうからは「それが無理ならば、閣僚の派遣」、それにも応じないで政務官クラスを送っているという。そして、司法裁判所に提訴すると言いながら今もやっておりませんでしょう。非常に抑制した対応をしていると思うんですね。

角谷:それは我慢しているんですか?平沢さん。

平沢:今までおっしゃるとおり、抑制的、理性的だったと間違いないんだけど、これは私は自民党の大きな失敗だったと思います。

角谷:失敗ですか?

平沢:失敗だと思う。領土っていうのは絶対譲っちゃいけないんです。これはイェーリングが『権利のための闘争』っていう本の中で、「領土を1日でも譲っちゃいけない」と、「これを譲ったら全部取られちゃう」と。まさに領土は譲っちゃいけないんです。だから、イギリスだってアルゼンチンの脇にフォークランドって島がありますけど、あの島をとりにわざわざイギリスまで、サッチャーが部隊を派遣して、戦争をして取り戻したわけです。あんなの昔自分が力で奪ったに決まっているのに、それをまた取り戻すわけです。ですから、領土っていうのはそのくらいみんな力を入れるものなんですよ。ところが、日本の場合は、竹島はとられた、李承晩のときにとられてしまった。それで、それからどんどん実効支配というか既成事実が積み重なっていく。それに対して、おっしゃるように、よく言えば理性的ってことでしょうけど、逆に言えば国家としての体をなしていなかったということなので、これは自民党の大きな反省点だと私は思いますよ。

角谷:ちょっと失敗しましたか。

平沢:失敗だと思う。私は一度国会で質問したことがあるの。なんで質問したかっていうと、韓国が竹島の切手を発行したんですよ。ですから、日本でも私たちはデザインを選んで切手を発行することができるわけですよ。ですから、我々議員で竹島の切手を出そうということでやったら、それにストップがかかったわけです。郵便局のほうが「これは発行できない」って言うわけですよ。いろいろ調べたら、結局、外務省、政府のほうから圧力がかかっているわけですよ。

(一同笑)

平沢:だから「なんで出しちゃダメなんだ。自分の国の領土の切手を出すのになんでダメなんだ」と言ったら、後はもう、そのときの議事録って残っていますけど何を言っているかさっぱりわかんないような答弁なんですよ。

津田:ちなみに、平沢さんが譲るべきでなかったっていうのは、切手を出すぐらいのレベルでよかったのか、どこまで、どのレベルまでですか?

平沢:いやいや、そうじゃなくて。そういうことが、一事が万事っていうことなんです。

津田:どうなったときに、譲るべきではなかったっていうのを。戦後竹島の問題についてはどこまで自民党は対応すべきだったってお考えですか?

平沢:ですから、いろんな訴え方にしろ、既成事実がどんどん出てきたんです。最初は部隊があそこにいたわけじゃなくて、それから部隊はいる、それで観光客が行くようになる、そして最後は大統領まで行くというようなことになってくるわけだから、それぞれのときにもっと、あるいは国内で切手を発行するとかいろんなことをやったわけだから、いろいろ対応の仕方はあったわけですよ。日本政府としていろんな、こちらもカードを持っていたわけですから。そのカードを、ともかく日韓関係が最優先で、この領土問題についてはどんなに既成事実が積み重なってもひたすら我慢するっていうか、なるようにまかせたということだったんで。その弱腰で。だから、ひと言で言えば、日本に対しては何をやっても日本は何も言わないだろうと。これは別に竹島に限らず、ほかの問題もすべてそうだと思いますよ。だから、無理でもどんどん言っていきゃ道理が引っ込むというような形で今日まで来てしまったんじゃないかなという感じがしますけどね。

角谷:それをなめられたとするのか、それとも日本側の政策的なミスだったと見るのかというと、これはミスですか?

平沢:私はミスだと思いますね。自民党のミス、もうちょっとやり方はあったと思います。

潮:例えば、野党時代の自民党が何度も民主党政権下の外務大臣に不法占拠の言質を取ろうとしたんですよ、国会で。私の記憶のしている限り1度も、民主党政権下ではそれすら言わなかったんですよ。そして、外務省のホームページに不法占拠と書いてあるのに、どうして外務大臣が今ここでそう言えないんだというふうに鋭く、野党時代の自民党が粘ったわけですが(笑)。

(一同笑)

潮:ときの政府はそれすらしなかったということは、私は別に自衛隊を送って奪還しろと言っているわけじゃないんですが。

角谷:それはやり過ぎですか?

潮:それはやっぱり弱腰だということになるって話。

角谷:自衛隊の奪還論はあっちゃいけないですか?

潮:論としてはあっていいと思いますが、現実に政府がその行動を自衛隊に命令を下すというのは別次元の話ですし、軍事的なリアリティ及び作戦が成功するのか否か、そして周辺諸国に与える影響を考えれば、結論は自明ではないんでしょうか。

辺:角谷さん、もう日本はできないですよ。それはなぜかというと、日本は対外的に、国際社会に領土問題に関して、特に尖閣諸島の問題で、いわば「力で、武力で現状変更をすべきでない」というふうに言っている手前、竹島にそういう行動はとてもできないです。できなくなりました。

木村:いや、竹島の日本政府のスタンスっていうのは確かにいろんな影響を与えていて、竹島の日あたりから韓国ではこのBBCの話も出てきたとおり、日本が竹島に対するスタンスを強化しているっていう形で出てきましたよね。韓国の人たちの発言でも「今になって主張し始めている」っていう言い方をするんですけど、それっていうのは変な話、声が小さかったので、韓国政府の中にはもちろん届いていたわけですけど、韓国のメディアであったり、韓国の一般の人たちにとっては、もう日本がずっと主張しているっていう声が届いていなかったんですね。そうすると、日本側の声が大きくなった、特に竹島の日が制定されて大きくなった後、韓国側は逆にびっくりしちゃったわけですね。日本のスタンスがあたかも突然変わったかのように見えた。政策が変わって、日本はもう諦めていたんだっていうようにみんな思っていたわけですね。そういう意味でも、トーンをずっと下げてきたものが変わりつつあることによって、むしろ日本の意図っていうのが誤解されてしまうというような効果をもって、その辺のコントロールっていうのはやっぱちょっと考えていかないといけないのかなっていう。

角谷:李明博大統領がわざわざヘリコプターでおりるっていうのは、韓国側から見ればやるべきだったんですか?

青木:大失敗でしょう。

辺:大失敗。

青木:竹島の問題と、その他の戦後、先ほど言った慰安婦の問題とかっていうのは、やっぱり僕は切り分けるべきだと思うわけですね。

角谷:そうですね。

青木:領土の問題っていうのは確かに大切ではあるんだけど、僕も韓国に特派員でいるときに、竹島の問題については韓国のメディアの報道ぶり、あるいは政府の対応っていうのに僕は辟易することが何度もありましたよ。例えばKBSなんかは、韓国の公共放送ですけれども、独島、竹島ですね、向こうは独島と言いますけれども、独島の上空にヘリを飛ばして、どんなリポートをするのかなと思うと、絶叫調のリポートで「これを見てください。独島に太極旗、韓国の国旗が翻っているじゃないですか。これが何よりも私たちの土地であることの証拠です」みたいなことを延々とやるわけですよ。僕はほんとに民族主義というか、ナショナリスティックな報道で嫌だなと思った。ただ、一つ考えなくちゃいけないのは、これはドキュメンタリーの中であんまり触れられていなかったけれども、竹島、韓国語でいう独島っていうのは、韓国の人にとってはある種日本の植民地支配の第一歩になった島だという。だから、僕はこれも辟易したんだけれど、韓国の外交通商大臣、日本でいう外務大臣の記者会見で、僕は記者としてその会見に出席していて質問をしたんですね。「独島っていうのは、はたして領土問題なんでしょうか?それとも歴史問題なんでしょうか?」っていうふうに質問したら、外務大臣が答える前に韓国の記者がぱっと立って延々とそれに対する反論を僕にするわけですよ(笑)。

(一同笑)

青木:僕は「いや、あなたの意見を聞きたいんじゃなくて外務大臣の答えを聞きたい」と、恐らく外務大臣は答えなかったと思いますよ。そういうことはたぶんしゃべれないと思う。だから、韓国の記者が気を利かしたのか、そういう演説をした。そういう辟易することがたくさんあったんだけれども。だから僕は韓国の独島、竹島に関する立ち位置に関しては、李明博大統領の上陸も含めてかなり疑問です。ただし、最近の話であって、かつての日韓関係っていうのは、日本側も韓国側もこれについては実効支配は韓国側がしているけれども抑制しましょうと。もっと言えば、1965年の日韓国交正常化交渉の中では、韓国の金鍾泌さんっていう当時の首相は右腕として本当に日本通で、国交正常化交渉の実務を担った人が「こんな島は無価値だから爆破しよう」って言っているんですよ。これを受けて、2005年ぐらいに公開された韓国側の外交文書の中でも、日本の伊関さんっていうアジア局長ですよね、交渉の最善に立っている責任者ですけれども、この人も「竹島なんて事実上無価値な島だから爆破でもしてしまえ」と。つまり、どういうことかっていうと、先ほど申し上げたように、日韓が何とか冷戦体制っていう国際情勢も含めて、日韓は何としても国交正常化しなくちゃいけないと。いろんな問題があるんだけれど、竹島の問題っていうのは突き詰めてやっていくと交渉できないよねと、最終的には戦争するしかないじゃないかっていう、先ほど出たような話になっちゃう。そうなると困るから、こんなもの爆破すれば、なくなればいいのになっていうことで交渉がずっと進んでいって最終的にはこれも完全にふたをしたんですよね。この問題については、本来日本側も、抑制的っておっしゃっていましたけど、まさに抑制的。それから、金大中大統領ぐらいまでは抑制的だったんですよ。金大中さんはその経緯も日本の状況もよくわかっているし、韓国側の立場に立って言えば、「おれたちが実効支配しているんだから、こんなの騒いでも何の得にもならない」と、「日韓関係が悪くなるだけだ」と思ったから抑制していたんです。ところが、日本側でさっき木村さんがおっしゃったように島根で竹島の日っていうのをつくるってことになって、韓国は「えっ」っていうふうに反発が高まる。一方で、韓国の大統領は領土問題っていうのは1回燃え広がっちゃうと国民感情を非常に盛り上げちゃうので対応するっていうことで、竹島の問題、独島の問題っていうのは行ったり来たりしているうちに大きくなって、最終的に李明博さんがああいう愚かなことをしたので、はっきり言って収拾がつかなくなっちゃったんです。だから、僕の結論は、やっぱり65年の国交正常化のときにある意味戻す、日韓両政府が戻すように努力をするっていうのが、僕は竹島の問題のちょんちょんがっこづきの解決方法、これしかないと僕は思いますよ。

平沢:この領土問題は何年か前ですかね、私は行けなかったんですけれども、今の稲田政調会長と新藤前総務大臣と、それから佐藤正久さんで竹島の近くにある鬱陵島に行こうということで韓国に入ろうとしたんです。ところが、韓国まで行ったら、もう韓国は絶対に入れないわけですよ、もう入管のところで中に入れない。そのときの向こう側の言い分は何かというと、「警備に責任が持てないから」とこういうことなんですよ。ですから、当時は全然幹部でもないこの3人が行っても警備に責任が持てないくらい韓国の警察が無能だとは私は全然思っていませんから、これはもう口実だなと。要するに、なぜ彼らは見られるのが嫌かというと、結局3人が行ったのは鬱陵島にある竹島博物館というやつで、その竹島博物館の入り口のところに「対馬は我々の領土」って書いてあるんです。ですから、結局向こうは竹島って言っていますけども、対馬も自分たちの領土っていうことを言っているわけですよ。ですから。

青木:そんな人は一部ですよ(笑)。

平沢:いやいや、それが書いてあるんですよ。

青木:でも、一部ですよ。そんなふうに思っている人はほんの一部です。

平沢:そうなっちゃうから、結局、竹島ももちろんあれですよ。ですけども、そんなことまで言う人もあるわけだから、領土っていうのは私たちが毅然としていないとダメなんです。

辺:平沢先生、ですから、当時の自民党の先生たちが韓国に入国しようとして、韓国の外務省が許可しませんでしたね。これは明らかに韓国の対応の過ちです。李明博大統領の竹島上陸も私は断固反対しました。韓国の中にも、この領土問題についてダメなものはダメって反対する声も多いんですね。先ほど潮先生が、日本の場合は自民党から共産党までオールジャパンが「竹島は日本の領土である」と一貫していると。私は韓国人ですけども、よく聞かれるんですよね。「どっちの領土ですか?」、私の答えは「わかりません」って答えるんですね。正直なところ、私は私の友人の国境カメラマンの山本皓一さんを含めて、いろいろな書物、文献を読ませていただいています。日本のほうでいろいろな海図、巻物。私は同時に韓国語もできますから、韓国の古文書などいろいろな書物を見ると、どっちもどっちで正直なところわからないというのが私の答えなんですね。韓国人だから、これは申し上げません。国際法的に、歴史的に韓国の領土をとったと言うつもりはさらさらないんですね。ですけども、私がこういうような話をしますと、韓国からものすごくバッシングを浴びるんですね。どういうバッシングを浴びたかというと、例えば「お前のようなやつがいるから、日本は竹島を教科書に自国領と載せるんだ」とか、「まだお前生きていたのか」と、「今回の震災で死んだと思っていたら、放射能を浴びて死んでしまえ」とか、めちゃくちゃ浴びるんですね。こういうような日韓双方にいると思うんですけども、もう私たちはここをはるかに越えて、もう少し領土問題、先ほどおっしゃったように知恵を絞って、慰安婦の問題と同じような落としどころを見出して、本当の意味での未来志向に向かっていくべきじゃないかなとそう思っているんですね。ですから、ナショナリズムっていうんでしょうか、どうしても「日本人だから、韓国人だから、この領土はおれのものだから渡すわけにはいかない」とか、こういうような発想を持っていれば、日韓パートナーシップだとかなんだかんだ言われておりますけども、絵に描いた餅であると。よく言われるところの本当の隣人同士、向こう三軒両隣に暮らしているわけですから、双方にとって面子の、あるいは体面が保てるような解決策を政治家の皆さん方に知恵を絞っていただくことが一番じゃないかなと思うんですよ。

青木:僕がいるときに韓国で、誤解なきように言っておくと、普通にお酒を飲んだりとか、普通に韓国で僕が旅行をしたりとか取材をしたりとかしていて、歴史問題で議論になるとか、あるいはけんか腰で何か言われるなんてことは全くないんですよ。でも、たまに、例えば酒場でこうやって飲んでいて、隣の韓国人のおじちゃんからとか、あるいはタクシーに乗っていてとか、言われるときがある。例えば、「独島はどっちのものなんだ?」と言われるわけですよ。そのときになんて答えたらいいかっていうのでいろいろ考えて、一番いい答えは「独島は韓国のものだ。だけど、竹島は日本のものだ」と(笑)。

(一同笑)

青木:と言うと、向こうは笑って「そうか、そうか」って言って終わるっていう。繰り返しますけど、領土問題っていうのは突き詰めると戦争するしかないんですよ。でも、それはできないんですよ。としたら、どうするか。もちろん毅然とするっていう平沢さんの言葉もよくわかるんだけれども、でも1965年のときに当時の自民党政権と当時の朴正煕政権が「こんなものは爆破してしまえばいいんだ」になっていながら、何とかそこを折り合ったっていうのは一つの知恵であったし、僕はそれは決して間違っていなかったと思う。むしろ、この李明博さんとか盧武鉉さん以降ですけれども、盧武鉉さん以降、あるいは日本の小泉さん以降の竹島、独島を巡る今の状況、慰安婦とかの問題とは別だけど、独島、竹島に関する問題っていうのは、ちょっとその前の65年のときの知恵っていうのは学ぶべきだし、むしろそのときに戻したほうがいい。あるいは、木村さんはたぶんこういうことは違うと言うと思うんだけれど、あるいはこうなっちゃった以上どうすればいいのかっていうことになってくれば、その先の知恵、ある意味では65年のときっていうのは、未来の世代に送ったっていうことも言えるわけですよね。だから、未来の世代の我々が絶対戦争ではもちろんない、どうやって知恵を出すか。一つの方法としては、僕は65年に1回戻す。それでお互いに抑制的になるっていうのが一つの方法だというふうに僕は思いますけど、いかがですか(笑)。

角谷:尖閣も同じような未来に託すことで結局。

潮:いや、65年の時点で1910年の日韓併合条約をもはや無効という、はっきり言えば玉虫色の決着がすべてその後の問題を生んできたと私は思います。だから、そこまで戻すということで言うんであれば、もっと100年戻して、本当にあれは、例えば無効だったって言うんだったら、日本国じゃないんですよ。だって、植民地じゃないじゃないですか(笑)。植民地だって言っておきながら、「あれは無効だ」っていう韓国側の、一部かも知れませんがそういう主張は私は論理一貫してないんじゃないかと思いますが。いずれにせよそういうことも含めて、戦後の日本もやっぱりその場しのぎの対応をしてきたと、今後ともそういうことを私は続けるべきじゃないと思いますし、本来歴史認識や領土の問題に足して2で割るようなことは絶対やってはいけないんですよ。決して挑発的に言っているわけじゃありませんが、1ミリたりとも譲ってはいけないんです。ただ、私は日韓の対立を煽っているんじゃないんですよ。要は、日韓関係がこれ以上悪くなっても日韓双方に何の得もないんです。お互いの名誉やプライドやそういうところはあるかもしれませんが、具体的な、例えばいわゆる国益は双方ともロスするわけなんですね。他方、誰が得をするのかというふうに考えるべきなんですよ。幸か不幸か、北朝鮮という共通の敵が日韓にはいるんです。したがって、安全保障という分野であれば、日韓が協力関係を構築できるという要請、力学は十分働いているんですが。

角谷:そうですよね。

潮:この分野でも、最近の韓国政府は誰のためにこの政策を打っているのかという私の疑問もある。今回イギリスの視点でしたが、はっきり言えば自由主義陣営の我が国と同盟関係を結んでもおかしくないようなその視点で、例えばなぜ私が今言ったような建設的なメッセージを盛り込めなかったのかという疑問も私は持ちました。

角谷:だから、そういう意味では、もう幾重にも、どっちも失敗している歴史があるし、それからどっちも相手の弱点を突いたことによって自分のところに返り血を浴びているものもいっぱいある歴史を抱えながら、次に行かれないっていうところのジレンマを抱えていて。きょう実はもっといろいろ多岐にわたる話をしようと思ったんですよ、アンケートも死ぬほど採ろうと思ったんですよ(笑)。

松嶋:そうですね(笑)。

角谷:だけど、2つのテーマだけでたっぷり時間になっちゃいました。でも、だからって何か前向きな結論になったかというと、そういうわけじゃない。どうしてかというと、まだまだ議論が必要だし、今ここだけで、きのうの番組を見ての議論だけでここまで広がるわけですから、これはまだまだ。だから、ちょっとユーザーの皆さんもこの議論も含めていろいろテーマがあるんだっていうことは考えてもらいたいというふうに思います。さあ、ちょっと初音ちゃんに渡しますから。

松嶋:もうお時間のほうがかなり迫ってきてしまいましたので、ユーザーの皆様からもたくさんのコメントをいただきました。

角谷:ありがとうございます。

松嶋:きょうのこの時間だけでは語りきれなかった部分も多かったと思いますし、いろいろな思いを皆様も抱かれたかと思います。ですが、最後に一つアンケートを採らせていただきたいと思います。「あなたは日本と韓国の問題や歴史的事実についてもっと知りたいですか?」というものです。きょうは本当に時間が足りなくて、もっとたくさんのことを、そしてアンケートを採りたかったのですが。

青木:この番組を見ておいて知りたくないっていう人は本当は知りたいんだろうがって(笑)。

松嶋:知りたくないってなっちゃうのかどうなのかってところは、私たちとしても知りたいところかなと思います。1番は「積極的に知りたい」、2番「できるだけ知りたい」、3番「あまり知りたくない」、4番「知りたくない」。結構コメントはたくさんいろいろといただいておりますが(笑)。いかがでしょうか。結果が出ました。1番の「積極的に知りたい」と回答された方は51.8%、「できるだけ知りたい」が19.6%。

津田:コメントしていないサイレント・マジョリティもいるってこと。

(一同笑)

松嶋:「あまり知りたくない」が3.8%、「知りたくない」が24.7%。

角谷:意外といい子がいるってことなんですかね。

木村:どうなんでしょう。

松嶋:そうですね。こういった結果をいただきました。今後もこういった語る機会というのはすごく大事なのかなと思いました。またこういったドキュメンタリーを制作したことによって、こういった議論の場が設けられたというのはとても大事な一歩なのかなというふうにも感じます。

角谷:津田さんから、ひと言ずついただきましょう。

津田:コメントでいくつか印象に残ったのがあって、「国交を断交しろ」とか、「韓国との貿易をやめろ」みたいなのがある。それは論外じゃないですか、ほんとに。だって、隣国は移せないわけだから。

角谷:引っ越しできないんだから。

津田:そこはやっぱり現実を考えたほうがいいって。コメントの中で僕は「棚上げしてうまくやれよ」ってコメントがあったのは、それはそうだなと思った部分もあるんですよね。でも、確かに今、日韓関係を考えてきて、政治的には相当やっぱり難しい部分もあるし、だからこそ進まない部分もあるけれども、ただ現実問題として経済的にはものすごく依存関係にあるわけじゃないですか。例えば、サムソンのスマホだって部品は日本製のものが多くて、ギャラクシーが最近不調になっているので、それによって日本のメーカーが影響を受けるみたいなことだって起きているわけだし。そうなってくると、非常に経済的なところはもっと切れない。もっと言えば、文化交流に関してはやっぱどんどん進んでいるんですね、日韓に関して言うと。例えば音楽なんかだったら、90年代まで韓国はJ-POPっていうのは地上波で流すのが禁止されていました。でも、やっぱり少しずつゆるくなってきて2000年代になったらCSとかBSなんかでも日本の音楽が流れるようになって、やっぱそうすると日本の音楽のファンが出てきて文化交流も進んでいって、随分今は本当に、日本のミュージシャンが福岡に行ったついでに「じゃあ、釜山に行くか」みたいな感じでどんどん韓国にツアーで行って、それで本当に人気も出たりもしてきているっていう中で、文化レベルではつながるってことも出てきているわけですから。たぶんこの問題が大事なのは、ものすごくまだいっぱい論点はあるけれども、政治はある程度棚上げをした上で、ただやはり経済とか文化とか、いろんなレイヤーがあるので、温度差をつけた上で交流できるところっていうのは交流を増やしていくしかないと思うんですね。ドキュメンタリーの話で言うと、アンタッチャブルな話題がたくさんあったと。竹島みたいに近年より複雑化して、もう本当にしゃべれなくなったような話題もたくさんあるんだけれども、ただやっぱり時間がたったことによってここは話せるんじゃないかとか。今回のドキュメンタリーで、あるいは日本への謝罪要求をずっとし過ぎている部分も、韓国の側にも問題があるんじゃないかっていうような言説が韓国側からも出てきたっていう意味では、実はこれは一つ先に、ここはすごろくのこまを進めるんじゃないかってポイントも出てきたと思うので、そこを進めていくってことが大事だったし、そこのための投げかけとしてはやっぱりすごく意味のあるドキュメンタリーになったんじゃないかなと思います。以上です。

角谷:ありがとうございます。潮さん、お願いします。

潮:先ほど申し上げたとおり、例えば日韓の間でさまざまな安全保障の分野で滞っている課題がいくつもありますので、そうしたことを一つ一つ解決していくということがこういう関係の改善につながっていくと私は思いますし、正直、もう歴史の、きょう明らかになったとおり、そこは日韓双方とも歩み寄れないわけですよ。ですので、例えば日本は日米同盟を今強化しています。この道を進んでいく。韓国もアメリカとの関係を強化していくということで、私は「バーチャルな関係」と呼んでいますが、例えば安全保障の分野でも日韓双方がアメリカ製の主要な装備を持てば、自動的にそこの互換性なり協調性が高まっていくというバーチャルな効果があるわけですよね。ぜひ韓国には中国のほうを向かずに、少なくても安全保障の面ではきちんとアメリカとの同盟関係という枠からはみ出ないようにお願いしたいというふうに思います。

角谷:潮さん、韓国の国防軍は、大統領が今こういう感じだからやりにくいのかもしれませんけど、本当は日本ともっと仲良くしたいんですかね。

潮:現場の人間は、基本的にそうだと思います。私もさまざまな関係で、実際に現役の人間を、さまざまなランク、階級で交流もありますし、正直日韓関係がこうなっていることについて、ひと言で言えば皆さん残念がっているというのが正直なとこだと思います。

角谷:ありがとうございます。平沢さん、お願いします。

平沢:もうこれは皆さんが言われているのと同じことなんですけど、日本と韓国はどちらも世界の大国なんです。この2国がいろんな分野でさらに協力を深めていけば、もっともっと大きな力になって、1対1が2じゃなくて3にも4にもなる。ですから、今のようにいがみ合っているっていうのは双方にとって大きなマイナスですし、日本にとってもマイナスですけど、韓国にとっても大きなマイナスになっているわけで、ここはやっぱり知恵を働かせて何としても協力関係をつくっていかなきゃならないし、その意味では政治の責任は大きいと思います。

角谷:日韓議連の役割は大きいですね。

平沢:大きいと思いますね。

角谷:ありがとうございます。辺さん、いかがですか。

辺:よく相互理解っていう言葉が使われるんですけども、相互理解っていうのはお互いの違いと立場を認め、尊重することだと思うんですね。例えば、先ほどの領土の問題、当然日本は「竹島は我が領土」、韓国は「独島は我が領土」って言っていますね。でも、竹島、島は1つですね。犬の鳴き声は恐らく犬は同じ泣き声をしているんですけども、日本人からすると何度聞いても「ワンワン」にしか聞こえないと思うんです。韓国人からすると、何度聞いても「モンモン」なんですね。「あんた、ちょっと耳がおかしいんじゃないか」って言われても、日本人は「ワンワン」、韓国人は「モンモン」なんですね。「ワンワンだ」「モンモンだ」と言っても、いつまでも対立は解消できませんね。大事なのは、そう言われてみてじっくり聞いてみたら、確かに「ワンワン」と聞こえなくもないなと。「いや、改めて聞いてみたけど、確かにモンモンとも聞こえるな」っていう。こういう寛大な気持ちを持つっていうことが日韓双方の国民にとって大事じゃないかと私は思うんですね。

角谷:「バウワウ」のほうが聞きにくいね。

(一同笑)

角谷:ありがとうございます。木村さん、お願いします。

木村:こんなことを言っていいんかな。皆さん、すごく前向きですよね。でも、僕はやっぱり歴史認識問題、領土問題に関しては、日韓両国の認識っていうのはもう大きく変わってしまっていて、両国の裁判所の判決まで変わってしまっているので、やっぱそこを認めてからしか進めない状態になってきているんだと思うんですね。そうすると、たぶん2つのことが重要で、一つは関係を両方とも被害が出ないように、壊さないでいかにして進むか。変な話、上手にどうやってけんかをしていくかってことをやっぱり真剣に考えないといけないですし、あともう一つは結局慰安婦の問題にしても、さまざまな問題にしても、最後は例えば日韓基本条約であれば仲裁委員会をつくるという条項があるわけですし、領土問題だって本当に解決しようと思ったら、やっぱり国際社会の意見を入れるしかない。その判断によってしか実は状況は変わらないわけですね。そうすると、きょうのBBCのドキュメンタリーに出てきたような、国際社会の一部かもしれないですけども認識があって、その中でもう少し韓国側、日本側がきっちりと自分の議論を立てて、わかる形で。要するに、皆さんいろいろ不満をお持ちなんですけど、結局それは伝わっていないってことなんですね。そうすると、それをちゃんと伝えっていって、正しくけんかして、正しく裁判ができるようにして、そうしてその結果として、もう少し建設的な将来があるってことまで考えないといけない時期にきているのかなと。そういう意味では「仲良くしましょう」って言っても仲良くできないからこそ問題で、そこからしか議論は始まらないのかなって気がします。

角谷:声の大きさやアピール、プレゼン能力の弱点は日本側にありますか?

木村:両方にあると思います。

角谷:両方にありますか。

木村:要するに、国内でしか通用しない議論をやっているということ、あるいは、公式見解すら実ははっきりとしていない。もっと言えば、竹島の問題をとっても、何を一番強いカードにするのかってことは実は決まっていないんですね。いろんな議論を全部並行的にやってしまっているので、そういったことの整理すら、実は日本側も韓国側もできていない。だから、このBBCのドキュメンタリーみたいに、どっちもどっちって最後はなっちゃうんですよ。

角谷:なるほど。

木村:だけど、確かにイギリス人にとってこのけんかは重要じゃないかもしれないけど、我々にとってはやっぱりとても重要なんですね。そういう意味であれば、国際社会にわかる形できっちりと議論していかないと、永遠に我々は他国がつくったドキュメンタリーを見て「我々の意見が反映されていない」って怒り続けないといけないという、非常に悲しい状態が続くかなっていうふうに思います。

角谷:ありがとうございます(笑)。青木さん、お願いします。

青木:最後なんで、明るい話と暗い話と手短に2つしますけど。一つは木村先生もおっしゃったとおり、やっぱり65年のときとは変わってしまったんですね。つまり、どういうことかというと、あのときは冷戦体制だった。日本の保守と韓国の保守がお互い植民地支配時代に知っていたってこともあったんだけれども、反共っていうことでかなり無理をして正常化し、その後も仲良くしようと。「とにかくいろいろ問題はあるけど、おれたちが仲良くしなくてどうするんだ」っていうモチベーションが働いた。ところが、冷戦体制が終わってみると、そのモチベーションがもはや働かなくなった。ましてや植民地時代に日本も韓国も知っている人たちがいなくなってしまった。新しい時代に入っているんですよね。だから、やっぱり新しい時代に合わせた日韓関係っていうのをつくらなくちゃいけない、それはそんなに簡単なことではないっていう意味で言うと、ちょっと暗い。だけど、もう一つは、僕は韓国に長く住んでいて、韓国なんかにいる日本人とか韓国人で有名な話をすると、なぜか日本人も韓国人もそうなんだけれど、お互いの国に行くと、例えば外国へ行くでしょう、ヨーロッパとかアメリカへ行ったりすると、自分たちと似ているところを見つけて喜ぶんですよ。「なんだイタリアってタコを食うのか。日本と一緒じゃないか」って喜ぶ。ところが、なぜか日本人と韓国人はお互いの国に行くと、違うところを見つけて腹を立てるって言うんですよ(笑)。

(一同笑)

青木:「ここが違うじゃないか」と(笑)。違うんですよ、当たり前なんですよ。辺さんがおっしゃったように、犬の鳴き声は、日本は「ワンワン」、向こうは「モンモン」なんですよ。違うんですよ。ところが、不思議なことに、僕らは新聞記者ですけれども、例えばワシントンの特派員になったり、パリの特派員になって一番仲よくなるのは韓国の記者なんですよ。なぜかっていうと、やっぱ感性が似ているんですよ。言葉の順序も一緒だし、やっぱり感性がよく似ているんですよ。アジア人なんですよ、それもかなり独特なアジア人なんですよね。つまり、違うことを認めつつ、しかし隣同士であって結構似ているよねっていうことをもう少し認め合えれば、先ほど新しい時代に日韓関係をつくれるのか、木村さんのおっしゃるとおり、決して簡単じゃないと思いますよ。竹島の問題だって、かつてのように棚上げで済むのかっていう問題も恐らくあると思うけれども、でもそれほど難しくもないというか、やらなくちゃいけないような気がしますよね。でも、そういう意味では、このドキュメンタリーっていうのは、僕は一つの材料として、ニコニコさんは本当に僕らに与えてくれたなという気はして、こういう機会ができたのは僕はうれしかったですけれども。

角谷:ありがとうございます。さて、初音ちゃん、全体のお話、それからきのうの番組を見た全体の感想をいただきましょうか。

松嶋:そうですね、やっぱりどうしてもすごく根深い話になっていて、やっぱり個人個人の考え方ですとか、情報の見方っていうのもすごく大事なことであって、自分が信じている情報っていうのが本当に正しいことなのかどうかっていうところも、やっぱりちゃんとそこも向き合っていかなきゃいけないのかなっていうふうに私自身はすごく感じました。先ほどのアンケートでも半分の方が「もう少しこの問題について詳しく知りたい」というふうにお答えいただきました。日韓問題をもっと知りたいというユーザーの皆様のために、あしたから個別の問題について解説番組が3夜連続で放送されます。あしたは本日もちょっとお話ししましたが、「領土問題を考えよう」をお送りいたします。

角谷:あしたは山本皓一さんと、それから東海大学の山田先生が出てこの問題を話します。

松嶋:そして、あした以降もまたありますので、よろしくお願いいたします。ということで、本日はスタジオにお集まりいただきました皆様、ありがとうございました。そして、ご覧になってくださいました皆様も遅い時間までありがとうございました。それでは、またあした。

角谷:そうですね。この番組はともかくあと6回続きますから。

松嶋:そうなんです(笑)。

角谷:これでもう僕はあした、あさって、しあさってと、あと3日続くんですけど、本当に大変だってことがわかりました。

松嶋:そうですね、一つ一つの問題がね(笑)。

角谷:ただ、いろんな見方があって、それをぜひユーザーの皆さんも吸収してもらって、「なるほど、自分の知っていること以外にもいろんな見方があるんだ」ってことは知ってもらいたい。その中でまた自分の考えをかためていってもらいたい。専門家の皆さんの声も十分加味して、たぶんユーザーの皆さんが新しい日韓関係をつくっていく主人公になるはずですから、そんなふうに思います。きょうは遅くまでありがとうございました。

松嶋:ありがとうございました。おやすみなさい。

角谷:では、失礼します。

(終了)

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・[ニコニコニュース]「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード1―」全文書き起こし(1)~(5)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150731_「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1―?sort=created_asc
・[ニコニコ生放送]「世界から見た日韓問題」―タイズ・ザット・バインド エピソード1― - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv227558581?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/

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