ニコニコ生放送「『従軍慰安婦問題』を考えよう」(2015年8月2日放送)全文書き起こし(2)
ニコニコニュース / 2015年8月23日 14時0分
「ニコニコドキュメンタリー」の第1弾、第三者の視点から日韓問題を描いた「タイズ・ザット・バインド~ジャパン・アンド・コリア~」の2回目の解説番組、「『従軍慰安婦問題』を考えよう」が2015年8月2日(日)22時から、ニコニコ生放送で配信されました。
本ニュースでは、同番組の内容を以下の通り全文書き起こして紹介します。
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※出演者=話者表記
・朴裕河氏(韓国・世宗大学校日本文学科教授)=朴
・下村満子氏(ジャーナリスト)=下村
・青木理氏(ジャーナリスト)=青木
・角谷浩一氏(MC/ジャーナリスト)=角谷
・松嶋初音氏(コネクター)=松嶋
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角谷:なるほど。下村さんにちょっと伺いたいと思いますけれども、今は90年代の日本の対応という話が出ましたけれども、下村さんはアジア女性基金にかかわられました。アジア女性基金のことから、少し簡単に解説していただけますか。
下村:そうですね。アジア女性基金というのは、正直私が考えたアイデアではなく、非常に多くの学者の先生とか、日韓の専門の方とか、政府の方とか、外務省とか、つまり先ほどから出ている例の河野談話というのが、これは説明しなくていいですね。
角谷:大丈夫です。
下村:その河野談話というのがきっかけとなりまして、それまでは「政府は関係ない、軍も関係ない、業者が勝手にやっていたんだ」みたいなことを政府委員が答弁したことに対して、韓国側から反発があって、いろいろその調査をしたところ、現実に外務省だとか、防衛庁の資料の中から120点かの資料がまず出てきて、それを調べたところ、確かに日本政府、軍が関与していたということが公式に証明されたということから始まった。さらに、それでは足りないというので、またさらに調べてというふうに、かなりの調査をし、米国の公文書館から16人の韓国の女性、被害者の聞き取りとか、いろんなことをやった結果、河野談話で認めたというのが。これは大変大きなことだったと思うんです。それをもとに償いの気持ちを表す日本側の何かを考えないといけないと。先ほどから出ているように、しかしながら、国家賠償という声が非常にかたや大きかったんですけども、日韓条約で国家賠償というのはすべてそこで一応解決済みという国際法上のそういうものがあるので、もう1回国家賠償というわけにはいかないと。少なくとも私は散々それを聞かされて、従ってということで、いろいろ知恵を働かせた結果が、これは実は私が聞いた話では、韓国の当時の駐日大使を通して韓国政府ともいろいろとやり取りをしながら「こういう形ならばいいのではないか」というふうに、日本が勝手につくった制度ではなかったというふうに政府のほうからも聞いておりますが。それはどういうことかと言うと、一般の国民に民間から償いの基金を募ると。しかし一方において政府はまた関与しないのではなくて、アジア女性基金という半官半民の財団法人みたいなものをつくりまして、その運営だとか、財団で働く方たちの給与とかは全部政府の側から出て、そして国民の償い、皆様から集まった基金を償い金としてお渡しすると同時に、政府は国家賠償という形はとれないけれども、医療福祉事業といいまして、お薬とか、その方たちの健康に関するものとか、そういうものに関する事業は政府が出すということで、合計500万相当のものを被害者にお渡しするという。それから、お金はあくまでも二義的なもので、何よりも総理大臣のお詫びのお手紙、そして理事長のお詫びのお手紙、それが何よりも最初で、それから今の償い金と医療福祉。そして、それだけではなく、やはり二度とこのようなことを繰り返さないための歴史的な資料の収集と、今日的な女性問題。まさに今日も似たようなことが行われているわけです。途上国から女性を連れてきて、今でもよく新聞に載るようなトラッキングみたいなことが。そういう問題にも取り組むという、この3つの柱を目指してつくられたものです。私はその呼びかけ人兼理事ということで。ただ私は、実は当時の外政審議室長のタニノさんから言われたんですが、実は当時の朝日新聞の考え方は国家賠償であるべきだという論説、その他のそういう論調だったんです。私は朝日新聞をもう辞めていました。ですから、別にどうでも自由ではあったんですが、やはり私はかなり悩んだわけです。そして、私はあくまでもこの日韓関係の専門家でもないし、学者でもないし、歴史学者でもないし、どちらかと言うとニューヨーク特派員とか、日米とか、中近東とか、そちらのほうの取材が圧倒的に多かったので、全く私は、これはあくまでも1人の女性として、こういう女性たちに1人の日本の女性として何ができるかと、そういう視点からいろいろ悩んで、それこそ専門のワダ先生だとかいろんな方、それから国会議員の方とか、「一体、今現状の日本の政治の中で2000万円の国家賠償をとるべきだとか、いろんな日本の弁護士さんの中にもそういうことを主張する方たちがいましたけど、そんなことが政治的に可能か」って、私もジャーナリストですから、自民党政権は「そんなことは不可能だ」と。もちろん20年、30年経って、先は知りません。そのときはそのおばあさんたちは、みんなこの世にいないと。そんなときに、でもどんどんひどくなっているわけですから、20年後、結果的には(笑)。だから、私はなぜこれに参加したかと言うと、少なくとも高齢になってどんどん亡くなっていっているこの被害者の、元慰安婦の方たちが生きている間に、不完全であろうが、中途半端であろうが、ご本人に少なくとも総理のお詫びの手紙と、わずかかもしれないけど国民の気持ちと、政府が一部出した300万円相当の医療福祉費を、少なくとも、better than nothingね、お届けしてお詫びをすることによって、こんなものじゃ足りないのは分かっています。しかし、少なくとも少しでも安らかな気持ちになっていただきたい。生きている間にこれをしないと意味がないじゃないかという、その1点なんです。ですから、私のスタンスはあくまでもそのことに尽きるので、その後にいろんな運動が、どんな展開をされて、今この時点20何年経って、もう50人しか生きていないというときに、それは運動体としていろんなことをなさるのはご自由ですが、あの時点には300何十人の方が生きていて、仮にその時点で、ちょっと朴さんの前では大変申し訳ないんですが、当時私は一切言いませんでしたけれども、韓国の運動体の方々が、この慰安婦の方たちのお金の受け取りを「受け取るな」ということを非常に強く言って、受け取った最初の方たちも大変な迫害を受けたりしたんです。それが非常に私たちにとっては残念なことで。私は実は「このお金を受け取っても、その後、国家賠償法が20年後なり、30年後に成立しても、その権利を失わないということをはっきり言ってほしい」と言われて、私は当時の梶山官房長官のところに、今は亡くなった李香蘭さんが親しいというので、李香蘭も理事だったんです。出かけていって「一文を書いてください」とお願いしたんです。「それは書けない」とおっしゃたんですが、私はそこで、今思えば周りに偉い方たちがみんないるのに、梶山さんの前でものすごく怒鳴ったんです。「一体、私は政府の使用人じゃありません。一銭のお金ももらわずに、雇われているわけじゃありません。ボランティアでやっているんです。戦前の日本の男どもがやったことの尻拭いを今、私たちはやっているんです。一銭のお金をもらわず、私は明日にでもこんなものは辞めたって別にいいんですよ。なんの名誉にもならない、バッシングだけ。たったこの一文、これがどうして出せないんですか」と言って、思わず私本当に悔しくてギャーと泣いちゃったんですけども。そうしたら梶山さんがしんみりと「私は終戦を迎えたときは20歳でした」と。そのときに日記を書いたんですって、どういう日記だか。「それを毎年、この年に至るまで終戦記念日に読み返している。この問題はやっぱり戦争を知る世代が生きている間に解決しなきゃ」。私も実は満州からの引き上げ者なんですが。「いかんな」とおっしゃって、我々はそのまま帰ってきたんですが、その後しばらくしたら李香蘭を通してその一文を出してくださったんです。そういういろんなことがあって、やっぱりそれをもらったからといって、仮にその後国家賠償が成立しても、その権利を失わないという。それさえも妨害をしなきゃならないというのは、私から見ると、おばあさんたちの人権とか、その方たちの苦労とか、その方たちを本当に考えているのかなというのが、実は非常に心の底にわだかまっている。だけど、そのときにそういうことを言うことは一切しませんでした。ただ、残念ながら、今日までこの問題が解決しないでどんどん亡くなっていってしまって。受け取った方は60何人いらっしゃいますが、皆さんすごく、やっぱり切実に必要としていたんですね。
青木:僕は伺いたいんですけど、つまり、アジア女性基金ってなんだったかと言うと、まさに名前の通り、別に朝鮮半島だけじゃないんですよね。
下村:そうです。
青木:韓国だけじゃなくて、例えば台湾であったりとか、フィリピンであったりとか、各国の慰安婦の方々のこともフォロー、ケアしようということで始まったんだけれども、これを見ていると、慰安婦自体がねつ造だったといまだに出てくるんだけど、そんなことはなく、慰安婦自体はいらっしゃったわけですよね。
下村:そう。中国にもいた。
青木:そう。ところが、韓国以外とは、ほぼこのアジア女性基金というのは成果を収めて、問題は終わってはいないんだけれども、被害者の方々がそれなりに納得をして外交問題ではなくなったと。韓国でも下村さんがおっしゃっていたように一部の人は受け取ったんです。ところが、やっぱり嫌だという人もいる。もちろんそれはさっき朴裕河さんがおっしゃった通り、いろんな方がいらっしゃいますから。
下村:そうそう、いろんな方がいらっしゃる。
青木:ところが、その中で韓国との関係においては、これがいまだにイシューとして残ってしまったというのは、もっと考えなくちゃいけないんだろうな。だから、それは日本側にももちろん責任はある。
下村:もちろん日本側にも責任があります。
青木:だけど、韓国側にも「どうなのか?」と思うところは僕もやっぱりいくつかあります。
下村:韓国側が「本当にいらない」、「こんなお金はもらえない」と言って拒否してくる方に無理やりに差し上げるつもりは毛頭なかったんです。だけど、密かに「いただきたい」と言ってきて、「だけども、これがばれると大変なことになるんで」と非常におどおどしながらいらっしゃる方たちとか。このアジア女性基金があまり知られないまま、不成功と言われているのは、私たちはほとんどその成果を発表しなかったんです。できなかった。そのおばあさんたちを守らなきゃいけなかったので。それで私たちは良かったんです。ただ私は、これにもちょっと書きましたけど、一つの経験があるんです。たまたまその方はニューヨークに住んでいる方で、私がニューヨークに全く別のことで講演に行ったときに、1人の男性が講演会場でアプローチしてきて。これは日米関係の講演か何かで行ったんだけど、その方は韓国の弁護士さんでカクテルの時間に私にアプローチしてきて、「あなたはアジア女性基金のディレクターだって聞いているけど」って、「そうです」って言ったら、「私は弁護士です」と、「私のクライアントに実は元慰安婦だった、ニューヨークに住んでいる人がいる。私は実はアジア女性基金は大反対で、それで慰安婦問題についていつもデモをしている、強烈な反日運動家です」ってちゃんと言うんです。ただ、偉いなと思ったのは、「でも、私のクライアントである彼女が受け取りたいと言っているので、そういう場合はどうしたらいいんだ?」って聞いてきたので、私は「喜んでいつでも書類とあれを送ります」と言って、その書類のやり取りが済んだ後、すぐそれからいったん帰って、すぐにまたニューヨークに行って、そうしたらその弁護士さんが「本人は日本人の顔を見るのも嫌で行きたくないから、代理に弁護士さんに受け取ってもらえないか」って言った。「いや、それはできない。本人のサインが必要だし、承諾書が必要だ」って言って、日本レストランの一室を取って、やむなく、「本人は受け取ってさっさと帰ってもいいですか?」って言うから、「いいです」って言って、それでそこに集まったんです。そして、本当に彼女はもう顔を強張らせて怖い顔をして、もう私の顔を見ないようにして入ってきて、とてもきれいにおしゃれして入ってきたんです。目の前に座って、隣に弁護士さんがいて、私と外務省の人と。そしてまずはお詫びの手紙を読み始めたら、しばらくしたらわーって泣き出して。もう本当に号泣っていうのはあのことでしょうね。途中で私は読めなくなって、あちら側に行って彼女を抱きしめて、「ごめんなさい、ごめんなさい」って言って2人で泣いたんですけど。そうしたら、彼女が「あなたが悪いんじゃない」って言って、「ありがとう。遠くから来てくれて」って。しばらくこうやっていてやっと収まって、こちらに戻って手紙を終わりまで読み上げて、それからふわっと彼女の顔を見たら、本当につきものが落ちたみたいに顔つきがもうまるで変わっていて。お金も受け取って、あれもした後、「せっかくだからお食事を召し上がりませんか」と。そうしたら、ぽつりぽつりと自分の身の上話をして、やはり一番多いのは騙されてっていうか、「1年働いたら家が1軒建つくらいのいい仕事があるから何月何日どこまで来い」って言われて、駅に行って、汽車に乗せられて連れて行かれたという話を。こちらが聞いたわけじゃないです。そういう経験もありますし、それから本当にそういうお仕事、商売だった方もいらっしゃいましたけど。「それなのに、そういう国家賠償とかも要求するんですか?」って聞いたら、「現地であまりにもひどくて、1日50人ぐらいの男の人に襲われて。これでは私はもう帰りたいと言ったら銃剣で突き刺されて」って言って。私の結論はもう関係ないんだと。元売春婦だったかどうかは知りませんけれども、そういうのは関係ない。もう現場では本人の意思に反して、とにかく帰る自由もなく、そういう慰安婦にさせられたというんですか。そういう方たちは、別にもともと強制的に連れて行かれたか、騙されたかは関係ないというのが、私たちの、少なくとも私の気持ちなんですね。
角谷:朴さん、どんなふうに聞きましたか?
朴:私は本の中でアジア女性基金を高く評価しました。ですが、それは韓国の人に伝えるためだったんです。なので、アジア女性基金を評価する理由は、先ほどあそこからずっと「だから、お金が欲しいんでしょ」っていうふうに流れているんですが。実はさっきドキュメンタリーの感想を聞かれましたが、ドキュメンタリーよりもここに流れている言葉がおもしろかったんです。かなりの不評、ほとんど90%以上が不評だったんですけれども。ある意味では、そういう今書き込んでいらっしゃる方たちに話したいと思って出てきているようなものなので話をしたいんですが、基金についてある程度知ることも必要だし、私が一番評価しているのは、お金じゃなくてたくさんの国民の気持ちが集まっていたということなんです。それを民間基金だっていうことで拒否した人たちがいる。それはいろんな主張によって拒否というのは有り得ると思うんです。ただ、それは韓国に全く伝わっていないので、となると、そこに寄付なり気持ちを込めた人たちの存在が残らないわけなんです。それは問題だという意味で私は高く評価をしました。これからもできるだけ機会があるたびに伝えていきたいと思っています。しかし、やっぱり日本内でこの問題について話すときは、もうちょっと別の問題をやっぱり話すべきじゃないだろうかという気がどうしてもして。話を戻しますと、さっき「日本人慰安婦をどうして話さないのか」ということが出ましたが、さっき話しましたように、朝鮮人慰安婦について考えるためには、慰安婦が誰なのかについて考えなきゃいけなくて。これはちょっと見えますか?
角谷:はい。
松嶋:画面が。
朴:さっきから「日本人慰安婦について話せ」というのが出てますが。
角谷:書き込みに多いですね。
朴:慰安婦は誰なのかということを考えるときに、皆さんがおっしゃるように日本人慰安婦が忘れられているんです。この本は今年の4月に出た本です。これを編んでいる方たちも、朝鮮人、韓国人慰安婦たちのためにいろんなことをやってこられた方たちです。この副題に「愛国心と人身売買と」っていうふうに書いてあります。これはどういうことかと言うと、私も本にそういうことを書いたんですけれども、やっぱりこういう枠組みで集められていたということなんです。よく強制連行か、あるいは騙されて連れて行かれたかということで対立しているんですけれども、ある意味でそれは関係ないと思うんです。つまり、強制的に連れて行かれてもわりあい楽な生活をした人もいれば、逆もあるわけなんです。
下村:そうそう。
朴:やっぱり大事なのは、そこでどういう生活をしていたのか。特に韓国人の場合は、日本は兵役とかはないんですけれども、韓国はまだあって軍人に行かなきゃいけないんです。みんな嫌がります。本当は行きたくないんです。でも、愛国というので行きます。本当は自国であっても嫌なんです。しかも、日本人として、ちょっと本には書いたんですけども資料が別に見つからなくて韓国の本とかを出しましたが、ここにはつまり朝鮮の人が日本語の名前を付けられたり、皇国臣民ノ誓詞を覚えさせられたりということが書かれているんです。つまり、日本人にならなければいけなかったということなんです。やっぱり日本人としてそういうことを考えてほしいし、よく売春婦だっていうふうに言ってしまっているんですけど、じゃあ、売春婦であればいいのかということなんです。ずっと「売春婦だ、そうじゃない少女だ」っていうのが対立していたのは、両方とも本当は売春差別があるんです。私はそう思っています。差別があるからこそ強調するわけなんです。それではいけなくて、これからこの問題がいつ解決するのかは分かりませんけれども、本当に不毛な20年以上だったと思うんです。なんらかの形が解決するとすれば、解決しなくでも同じなんですけれども、やはりこれだけ時間とかエネルギーを使って、今、下村さんはとてもいろんなつらい体験をお話ししてくださいましたけれども、本当にたくさんの人がかかわっているんですけれども、あまりいい結果には現在なっていないわけです。じゃあ、なんらかの形が出たときに何をやるべきか。それは女性というものが近代国家の中でどのように利用されていたかということなんです。そういうことを知るってことなんです。つまり、軍人は戦争に出れば、多くないけれどもなんらかの形で、日本だと恩給だとか補償されるわけです。でも、彼女たちにそういう補償をする法がなかったわけなんです。でも、いわゆる勤労挺身隊とか、あるいは看護婦とかにはあります。じゃあ、なぜ彼女たちはないのか。すぐ想像がつきますね。そういうことなんです。じゃあ、どうしてなのかっていうことを考えることによって、国家がよく汚い仕事をさせられる人たちがたくさんいて、必要とするけれどもちゃんと保護はしないというのはいろんな方面でありますね。彼女たちもやっぱりそうだったということなんです。ですから、私はこの問題を考えるということは、別に否定とか肯定とかっていうんじゃなくて、これだけたくさんの人が、知識の程度は違うけれども関心を持って知るようになったので、そのことを知るだけでも意味がある。逆に言えば、それを知らなければいくら議論しても意味がないというふうに思っています。ですから、その書き込んでいらっしゃる方たちに言いたいんですが、お金が欲しいということじゃないんです。過去、90年代に日本がやったこと、お金の補償を含めて、そもそも補償というのはお金以外ではできない場合もたくさんありますから、それはその手段にしか過ぎないんです。なので、そういった日本人の思いを評価する人たちがいるということを日本の人にも知ってもらい、また別のこういう人たちがいたということを韓国の人にも知ってもらうということが必要だと思います。でも、それが全く抜け落ちて、基金はこれだけあったとか、これだけ利用があって基金を反対したとかっていうことばかりが議論されることはとても残念だと思っています。
角谷:そこがメインだとは僕も思いませんけど、ただ問題は、そこにはやっぱりどうしてもそれぞれの立場やメンツを前に出す人がいて、やっぱりどうしてもその当事者の人たちの気持ちが前に出ることよりも先に声が大きい人たちがいたんじゃないでしょうか。
朴:そうです。私は10年前の本でも、例えば、『和解のために』っていう本を書いたんですけれども、「あなたが和解を言うべきではない」ということを言われたんです。でも本当は、ある意味でみんな当事者。2つあるんですけど、本当はある意味でみんな当事者なんです。自分の問題として考えたりする限りでは、みんなやっぱり当事者なんです。しかし、やっぱり当事者じゃない面もあります。この両方です。
角谷:だから、本人ではないという、当事者じゃないという。
朴:そうです。ところが今では、やっぱりむしろ当事者抜きの議論になっているという感じはどうしてもします。ですから、やっぱりそれはそれで韓国の。でも本当は、日韓問題というふうに言われますが、私は日本内部の問題だとある意味で思っていて、つまり韓国の意見というのは、ほとんど日本の支援団体とか研究者の一部の意見とほとんど一緒なんです。ですから、いい悪いは別として、日本内でこの全く対立している両方の方たちが合意をしてくれないと、ある接点を見つけてくれないとダメなんです。ある意味、もう日韓問題じゃないと思います。ですから、日本の問題だし、私はその理由を、90年代になって冷戦が崩壊して左右の対立がすごく目立つようになって、その結果というふうに思っているので。そこの延長で言えば、きのう領土問題をやったっていう話なんですけれども、領土問題にしろ、いろんな問題で、本当はアジアだけの問題じゃないんです。アメリカを始めとする西洋の問題が必ずかかわっているので、そういう枠組みのことが考えられずに日本と韓国とかでけんかしているっていうのは、とっても恥ずかしいというわけじゃないけれども、不毛な気が。本当に見るべきことをこれからでも見るべきだと思うんです。
角谷:もったいないことはその通りです。ただ一方で、時間がないというふうに下村さんもおっしゃったのもその通りで、やっぱりご存命の人たちがいる間に何かできないかっていう思いは、やっぱり両国とも本来はあるべきだし、あるはずなんです。また、あるんですね。
朴:そうです。その合意点を見出すべきというふうに考えています。
角谷:そうですね。
下村:だけどもうあれから、私がやっていたとき、終わったのは2007年ですから、95年から。あれからもう十何年経っているわけでしょう。そのときの方たちはほとんど亡くなっているわけですから。例えば、カネダさんみたいに、あのときに受け取った方は亡くなっています。だから今だったら、仮にどんな賠償、どんな謝罪と言われたって、本人には無関係になってしまう。私が言いたいのは、国と国の、一つの運動体としての日本の国に対しての、まさに帝国日本とか、それはそれで私はいいと思うんです。長期的にやっても。だけど、やはり一方において、やっぱり被害者である当事者が置き去りにされて、悪いけど、その運動をやっている中心の人たちは全く皆さん若いし、お金にも困ってないし、食べ物にも困ってなくて、そういう方たち。私は台湾もやったんですが、台湾も婦援会というのがあって似たような状況なんですけども、ただ、台湾には頼浩敏さんという素晴らしい弁護士の方が、これは日本の東大に日本の国費で留学して、今は大変立派な、政府のトップのほうになっていらっしゃる弁護士さんなんですけども、それを大変に今感謝してらして「この問題は政治問題化ではなく、これは人道問題として私はやります」と。「そのおばあさんたちも、どんなにいじめられるとか、そういうことがあったら私は最後まで守ります」と言ってくれて、全部一緒に同席してくださって、それはすごく助かりました。もう卵を投げられたり、いろんなことがあっても微動だにしなくて、今でも堂々たる社会的地位を守っていらっしゃる、私はこの方にお会いしただけでも、私はこのアジア女性基金をやって良かったなと思うぐらい、素晴らしい、今でもおつき合いしていますけど。だから、そういう国ごとに。
(つづく)
◇関連サイト
・[ニコニコニュース]「『従軍慰安婦問題』を考えよう」全文書き起こし(1)~(4)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150802_「従軍慰安婦問題」を考えよう?sort=created_asc
・[ニコニコ生放送]「従軍慰安婦問題」を考えよう - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv227566268?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/
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