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ニコニコ生放送「本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"」(2015年9月18日放送)全文書き起こし(4)

ニコニコニュース / 2015年10月18日 12時10分

ニコニコニュース

 9月の「ニコニコドキュメンタリー」は、アメリカ在住の映画評論家・町山智浩氏が選んだ、超大国アメリカの裏側がわかる過激なドキュメンタリー作品を特集。その第1段「ジーザス・キャンプ 〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜」が2015年9月18日(土)20時00分から、ニコニコ生放送で配信されました。

 本ニュースでは、生放送後におこなわれた作品をテーマにしたトーク番組の内容を、以下の通り全文書き起こして紹介します。

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※出演者=話者表記
モーリー・ロバートソン (ミュージシャン/ジャーナリスト)=モーリー
大田俊寛 (宗教学者)=大田
森本あんり (宗教学者)=森本
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大田:生長の家っていうのは、僕が理解している限りでは、大本教の流れと、それこそアメリカの新興宗教でクリスチャン・サイエンスっていう、メアリー・ベーカー・エディっていう人、女性、この人も結構霊媒だったようなそういう人ですけど、もともとフランツ・アントン・メスメルっていう催眠術の創始者であるメスメリズムっていうのがあって、このメスメルっていう人が結構人工的に、どういうふうに精神をコントロールしていけば人をうまくトランス状態に誘導できるかみたいな、そういうことを発見して、精神治療の方法としてヨーロッパで広めていたっていうのがありまして。

モーリー:メスメルのワークショップに行くと、貴婦人たちがみんなで裸足になって足湯みたいなのをして手をつないだりして、だんだん、要は男女の関係が非常に厳しく、禁欲的な高貴な社会の人って、そういうところだと急にちょっとエッチな気分というか、もちろんだれも言わないけど。そうすると、メスメルが金属のワンド、魔法の杖を向けると。

大田:動物磁気っていうのが。

モーリー:動物磁気、アニマル・マグネティズムを向けられると、「感じちゃう」みたいに、「あはーん」って、それで「あうあうあう」ってなるのね。

(一同笑)

モーリー:だから、要は何が言いたいかというと、『ジーザス・キャンプ』は、あれはオリジナルじゃなくって、ああいう神に宿られた精霊でエクスタシーっていうのと、ちょっとエロチックなエクスタシーと、メスメルとかマリー・ベーカー・エディとか、あとスピリチュアリズム、あとセオソフィー、神智学、そういう妙なオカルトがかった霊媒的なムーブメントって、ヨーロッパとかアメリカを実は1900年ごろ席巻していますよね。

大田:そうですね。

森本:アメリカって、19世紀ってそういうもののオンパレードですから。我々がちょっと知っている「変だな」と思うキリスト教のちょっと変わったものとか。

モーリー:ヘビを持ってぎゃーとか?

森本:蛇使いもそうだし、もうちょっとよく知られているとこではモルモンだとか、エホバの証人だとか、さっきのシェーカーもそうですよね。シェーカーっていうのはやっぱりキリスト教っていうか、宗教的な側面と、それから性的なものに対する禁欲が非常に強い。

モーリー:男女が全く違って生活しなきゃいけなくて、年に何回かお祭りがカレンダーで、そのときにたいまつを持って一緒に並んで歩けるっていうのが胸がどきどきして、それが性のかわりだったみたいな。

森本:というか、毎週シェーカーのダンスをするんですよ。

モーリー:ダンスをするんだ。

森本:男性側と女性側と、全部花いちもんめみたいなのをやるわけ。お互い、絶対触れ合わないんだけど、非常に近くで。

モーリー:やらしい(笑)。

森本:ダンスをすることがシェーカーの礼拝なんです。だから、エクスタシーと宗教っていうのはやっぱりエロティシズムとすごく近いわけですよね、密接に。

モーリー:スーフィーのグルグルダンスとかも。

森本:そうです。

モーリー:結局、エクスタシー、酩酊、恍惚境が全部、これは安定したバージョンのプロテスタントやカトリシズムはどうやって昇華されているんですか?

森本:には見えないわけですよね。だから、そういうものをだんだん角をとっていくわけです。そして安定化、さっき先生がおっしゃったように社会の中に受け入れられる仕方で形をメロウしていくわけです。メロウダウンしていくわけです。

モーリー:中産階級が育って、ブルジョワとか、プチブルとか、「ちょっと頑張っていれば現実的に経済的にはうまくいく、正社員になっちゃったし」とか、それぐらいの人だと、そういうメロウなのが好きですよね。

森本:そうですね。

モーリー:今の状態で、エスカレーターで上がっていくと。ところが、蹴落とされる人もいっぱい、どの世の中、時代にもいるわけで、その人たちほど熱烈に。

森本:そうです。ある程度そういうディスラプションというか、社会がひっくり返る、社会にとって危険要素がないと、やっぱり宗教っていうのは存在意義がやがてはなくなっちゃうと思う。つまり、全部お行儀がよくて、全部道徳的で、宗教がない人とある人との全く違いがないんだったら、そもそも宗教はいらないわけですよ。

モーリー:葬式仏教とか。

森本:そういうふうに完全な仕方で日本社会に受け入れられた仏教はそういう葬式仏教になりますよね。仏教の鋭さだとか、現世否定のところだとか、そういうとこはもう消えてなくなってしまうわけ。

モーリー:1回スピリチュアリズム、これは日本語でなんていうんですか?スピリチュアリズムってどう呼ばれているんですか?

森本:カタカナで。

大田:神霊主義とか。

モーリー:日本でも神霊主義会議みたいなのはあったんでしたっけ?結構、戦前のアメリカのスピリチュアリズムが日本に持ってこられたような。ムーブメント、みんなで集まって大会をやったりとか、そんなのはなかった?

森本:日本ではどうかな。

大田:日本ではあまりないですね。

モーリー:日本からアメリカに渡って、それに参加して、持って帰った人がいたんでしたっけ?学者とかで、そういうスピリチュアリズム。

大田:一時期大本教に入っていた、あの人はなんていいましたかね。コメントで流してもらえないですかね(笑)。

(一同笑)

モーリー:そうそう、だから、いたのよ。結構ここら辺、生長の家、大本、スピリチュアリズム日本版、日本フランチャイズっていうのか(笑)、あと神秘主義、それから、そこからドイツ版の分かれたアンソロポゾフィー、人智主義、ルドルフ・シュタイナー。

森本:専門じゃない?

大田:はい、ある程度。

モーリー:私が言うと恥ずかしいから、言ってくださいよ、先生。そこら辺(笑)。

大田:はい(笑)。

モーリー:日本でも結構シュタイナーとか、シュタイナー教育っていうのは、一部のお金持ちとかを中心にすごく盛んな感じがあるんですけども(笑)。

大田:そうですね。それは僕はほかのインタビューでも結構批判的に言及して嫌われてはいるんですけど。結構大学の先生とかでも「僕、実はまだルドルフ・シュタイナーを信奉していて」みたいな、そういう人とか(笑)。

森本:純粋にね。

大田:はい。結構いらっしゃって、隠れニューエイジャーというか。

モーリー:大体、今のニューエイジと呼ばれる一般的なものの起源が1回流れ込んでいるのが、そういうシュタイナーですか?

大田:そうですね。

モーリー:最近になってやっと、シュタイナーなんですけど、BBCが、シュタイナー学校はいまだに世界中に、ヨーロッパにあって、ちょっとニューエイジとエコロジーを取り入れた風通しがよくて、「窓をみんな開けましょう」みたいな。

森本:身体知とかね。

モーリー:そうそう、身体知とか、リトミックとかあるんですけど、実はその中に、外には出していないんだけども、相当に人種差別的な教義が子どもに教えられているんじゃないかということをBBCあたりが追及して、シュタイナーの本部は強く否定しているんだけども、だんだん証拠が出そろっているっていう。というのは、シュタイナーの場合、インドのヒンドゥーのカースト制度みたいなものを輪廻の形で取り入れて、白人に生まれたのが進化の結果みたいな、白人進化論。黒人が一番下。

大田:それはナチスも同じだったんですけど、現代の文明のマスターレースっていう支配種族っていう考え方があって。

モーリー:マスターキーみたいな。どの部屋も開けられますみたいな。

大田:それは違うと思うんですけど(笑)。

モーリー:マスターっていうのは、主人となる種族、人種?

大田:はい。それがもともと北方のアトランティス大陸にアーリア人の源郷があって、そこからどんどんアーリア人が南下して現在のいろんな諸文明をつくっていったんだっていう、そういう文明論が、アーリア人種優越論なんですけど、ナチスの中にあって。

モーリー:シュタイナーもそれを独特に解釈している?

大田:はい。それはもともとは神智学とかで言われてきたものなので。そして、それは本当に戦後は、アーリア人種優越論っていうのは世界中から批判されたんですけど、シュタイナー学校とかで、恐らく歴史の授業とかで(笑)。

モーリー:こっそり。

大田:こっそり(笑)。

モーリー:ジーザス・キャンプ、シュタイナー・キャンプをやっているんだ。やばくない?いや、おもしろい。それで、ちょっとそうやって少しノイズをこのディスカッションに混ぜてしまって、クリスチャニティの枠をがっと広げてしまったんですけど、要は、スピリチュアリズム、大本教、生長の家、ルドルフ・シュタイナー、いずれにしろ、一つ共通して見られる破壊的な意思が物質文明否定、精神文明に大転換して回帰しなくてはならない。現在の人間は物質的欲望に縛られて動物になってしまっている、欲望に委ねられている、これを粛正して、その後に霊性のレベルの高い、神に近い人間を新たな神の王国、ユートピアをつくっていかなきゃならんというのは、結構共通した輪切りが見えるんですけど、このリバイバルに。

森本:いや、まさにそれは大田先生がずっと勉強してきた、グノーシス主義の主張ですよね。

モーリー:グノーシスからもうそうなんですか(笑)?

森本:そうですよ(笑)。

大田:(笑)

モーリー:1000年以上同じことをやっているの?うまくいっていないんだけど(笑)。

(一同笑)

森本:違う(笑)?

大田:かなり中身は変わっているんですけど、表面的な装いはやっぱり似ていますよね。

森本:人間が持っている、人間っていうのは肉体と精神と両方持っているけど、肉体を軽んじて精神が本当に尊いものだと、肉体っていうのは精神の牢獄なんだという認識っていうのは、古代ギリシャの思想の中でとても盛んなんですよ。だから、キリスト教もほとんどそれに影響されかかる、乗っ取られそうになるわけ。だけど、キリスト教って、皆さんはどう思っておられるかわかりませんけど、禁欲主義っていうのはキリスト教の非常に大きな敵だったんです。

モーリー:そうなんですか。

森本:キリスト教は禁欲主義とどうにかして手を切ったから、ようやく自己成立することができたんです。あのときにキリスト教が禁欲主義と一緒になったら、もう今存在していません。

大田:ある意味で、修道制の中に囲い込んだっていう形になるんですかね。

森本:そうですね。例えば、旧約聖書を見て、禁欲的なところは一切ありません。非常に現世的です。新約聖書になると、少しそういう禁欲的なところが入ってきます。なぜなら、ギリシャ的な思想の影響を受けるから。だけど、基本的には神様は肉体も精神もつくった神様だから、人間が肉体を持っているのは祝福なんですよ。

モーリー:例えば、私の間違った推理も入っているかもしれないですけど、エロイソスの秘儀っていうのがギリシャのカルトの中にあって、エロイシアミステリーっていうのか、エロイソス?エリューソス?日本語になったときに、ELUSYSだったかな、エロイソス。

大田:僕でも知らないな(笑)。

モーリー:LSDを飲むやつ。

森本:そうですか(笑)。

モーリー:LSDの原型になる、当時の物質で、麦角菌。

森本:エリュオっていうのはギリシャ語で解放するって意味ですからね。

モーリー:そうなんですか。

森本:はい。

モーリー:それで、秘儀でイニシエーションを受けるときにそれを飲むと、もう狂乱状態になって、死の向こうが見えて、全く酩酊して人事不省になるんですけど、たぶんそれを周りにいるプリーストやプリーステスが、カタカナで、日本語ではエレウシスって言うそうです。

森本:それは救いって意味ですね。

モーリー:そうなんですか。だから、脱魂しているというか、肉体を完全に否定して遮断して。

森本:エクスタシーですね。

モーリー:エクスタシー。もう感覚も遮断した状態で神と合一して、「なんだったんだ、あれは」みたいに帰ってきて、ちょっと恐れを知るっていうのか、イニシエートされるっていうのが古代ギリシャに結構あったらしいんですよ。

森本:オウムだって使いますよね、そういう手法は。

大田:そうですね。もともと神殿の巫女さんみたいな人たちが古代ギリシャとかにもいて、それこそ密儀なので、神殿の奥の部屋で何をやっているかっていうのは正確にはわからないんですけど、薬物を使って神の女性というか、巫女さんみたいな人を特殊な脱魂状態に導いて託宣というか、占いみたいなものを得て、何か民衆に対してメッセージを与えていたっていう話はよく聞きますよね。

森本:モーリーさんがおっしゃったのは。

モーリー:それをちょっと強引に結びつけた理由っていうのが、一見するとオーロジーっていうか、乱交儀式みたいに、そういうのもギリシャとかローマにあったから、そういう非常にセクシャルで肉欲を解放しまくったようにも考えられるけど、実は脱魂を通じて肉体を本質的に否定して、神に直接行きたいからやっているようにも見えるんですよね。つまり、肉体への徹底した汚れの意識っていうのが根底にあるから、そういうことをやるような気がちょっとして。でも、それをキリスト教の場合は避けたってことですよね。

森本:そうですね。今おっしゃったのは、オルギアっていうのはやっぱり、それもギリシャ的な考え方ですけど、やっぱり肉体の解放っていうところが1つあって、逆にもう1つは。

モーリー:デュオニソスのカルトとか。

森本:そうですね、バッカスだとか、そういうところですよね。あるんですけど、やっぱりキリスト教とか聖書の思想っていうのは、肉体は神様からもらったすばらしいものだと、セクシュアリティもすばらしいものだっていうような認識ですよね。実はそれが大きく。

モーリー:そうすると、安定しゆくキリスト教。過激ではない、安定期って言っていいのかな、安定期ってちょっと妊娠みたいだけど(笑)。そのキリスト教がモデレートになっていった時代っていうのは、そういうふうに調和して、肉体と霊性だったりが二律背反ではなく、オーガニックって言っていいのかな、有機的な統一体として一生を全うしてよき人として生きようみたいな、そういう感じになっていったってことですか?

森本:やっぱり社会の要請とあまりにもかけ離れるような、例えば集団生活だとか、家族生活だとか、例えばセクシュアリティを否定すると結局子どもが生まれなくなるから続いていきませんよね。そういうことが全部なくなっていかないと、社会の安定的な担い手の要因にはならないわけですよ。そういうのを、逆にはみ出していくところには必ずそういうのが出る。モルモン教だって、最初はそうですよね。一夫多妻で、奥さんが30人も40人も50人もいたわけですよね。そういうところはだんだんなくなっていって、現在ではモルモンっていうのは、アメリカ社会の中ではアクセプテッドな社会になっているわけ。

モーリー:自分たちからも歩み寄っている感じですか?

森本:そうですね。

モーリー:アクセプタブルになって。

森本:なっていくわけ。

モーリー:大統領候補、ミット・ロムニーとか出したりとか。

森本:そのぐらいになるんですから。

モーリー:そうすると、「じゃあ、それでいいじゃん」と、足して2で割って、足して2で割って、足して、みんな薄まってお互いになんとなく干渉し合わず仲良く生きていけばいいんだけど、そう思っていたら、20世紀後半からむっちゃイスラムもキリスト教もリバイバリズムっていうんでしょうか、さまざまな理由で原理主義、複雑な社会の中で単純な解、解答を求める動きっていうのが出てきたんですけども。

森本:そうですね。

モーリー:これはなぜなんでしょう?

森本:いや、僕はそんなに20世紀に特殊なことだとは思いません。

モーリー:ポリティカルイスラムとか。

森本:ポリティカルイスラムって、そういう状況、環境がそろったからそういう表現ができるようになりましたけど、宗教のとんがったところっていうのはいつでも戻ってくるんですよ。

モーリー:前からずっとあった?

森本:うん。

モーリー:周期的に。

森本:内在しているわけですよね。

モーリー:なるほど。

森本:それを一生懸命抑えて丸くなっていくんだけれども、やがてやっぱ出てくるわけです、飛び出て。そういうのがないと、やっぱり宗教って面白くないんじゃない(笑)?

モーリー:あはは(笑)。じゃあ、面白いからジーザス・キャンプは、これはこれであり?

森本:というわけにもいかないけれど(笑)。

モーリー:じゃないんだよね。

森本:うん。

モーリー:ジーザス・キャンプの原理主義はどこが特殊なんでしょう?どこに特徴があるんでしょう?

森本:やっぱりセクルージョンというか、ほかの世界との交流が非常に少ないですよね。

モーリー:『ハリー・ポッター』を見るなとか。

森本:とかね。それから、ほかの教会について、「あんなのは本当の教会じゃない」と、「おれたちこそ本当の教会だから、ほかの人たちと交わりをするな」というふうになっているでしょう。だから、やっぱり今そういうのはなかなか難しくなっていますよね。メディアだとかのコミュニケーションが深いから。

モーリー:なるほど。大田さん、原理主義って必要な気もするんですよ。今の日本は本当にセーフティーネットがどんどんぷちぷち壊れていって、これが「安倍のせいだ」って言っている人たちが今Twitterなんかですごく大きくなっているんですけど、僕から見ると、それは宗教なの。「安倍のせい教」なんですよ。簡単な答えが繰り返し雪崩を打ってクラスタの中でRTされて、これが彼らの礼拝だっていうふうに僕はちょっと見てしまうんですけど。

大田:僕自身は、中世の世界っていうのは、さっきお話ししたように一なる神様がいて、そして最終的にはその神様が終末において「あなたはいい人、あなたは悪い人」っていうふうに白黒つける、ある意味最後の審判ですべてが明らかになる、すごく単純な世界だったんですね。ところが、ヨーロッパはそういう信仰を持っていたんですが、カトリックとプロテスタントにキリスト教が分裂して、明示的なのはドイツ三十年戦争という、これが最初の第一次世界大戦だったんじゃないかっていう、もう血みどろの、一説によるとヨーロッパの人口が半分ぐらいまで減ったんじゃないかっていうようなものすごく大きな戦争が16世紀にあって、それで宗教的な考えに基づいて白黒はっきりさせる、「あなたは善人、あなたは悪人」っていうことで争い合ってしまうと、もう本当に殲滅戦になってしまうので、この発想はやめようということで。近代はどういう原理になったかというと、僕はちょっと難しい言葉で均衡抑制といって、チェック・アンド・バランスの原理を近代の社会では取り入れるようになった。

モーリー:日本と中国、それでいいかなと思ったんですけど。

森本:(笑)

モーリー:均衡抑制でいいじゃん(笑)。ごめん、ちょっと...。

大田:国家間もそういう関係ですよね。それに1つの国家の内部でも、典型的なのは三権分立っていうこと、3つの項を立てて、どの項目も間違える可能性があるから、絶対的な善とか絶対的な悪とかはなくて、すべてはグレーで間違える可能性があるから、隣にいる人がそれをチェックしてバランスをとり合うっていう、非常にグレーで複雑なシステムっていうのを近代は採用していったわけなんですね。でも、1人の個人としてそれを見ると、世の中が非常にわかりづらくて。

モーリー:官僚的に見えますね。

大田:はい。

モーリー:エリートが決めて、自分はそこになんらかかわれない、みんなは楽しいのに自分はパーティの外で見ているような。

森本:でも、三権分立もそうだし、それからデモもそうですけど、基本的には人間っていうのは悪を行う能力を持っているんだっていう認識なんですよ。だから、パワーを持った人は必ずコラプションする。絶対的権力は絶対的に腐敗する、そういう話ですから、やっぱりある人だけにそういう権力を持たせておくのは危険だっていうのは、キリスト教的な認識なんですよ。三権分立っていうのは大体モンテスキューとかって話が出ますけども、あの中に入っているのは原罪思想でもありますよね。人間にはそういうものが、どうしても克服することのできない我欲っていうのがあるんだと。力を持てば、必ずそれは悪用されるんだとか。だから、アメリカの憲法を作った人たちっていうのは、民衆の力もあまり信じていないんですよ。今、デモは僕は賛成しますけれども、そういうところで民衆がすごく力を持ってどんどんどんどん、投票もそうですけども、民衆が集まって力を持つってことに対してもやっぱり危機感を持つっていう。権力の側にも危機感を持つけども、民衆がそうやって力を持つことにも危機感を持っているというのがアメリカの。

モーリー:そのアメリカの建国理念っていうのは、行き過ぎたときには「そろそろにしなさいよ」っていうチェック・アンド・バランスが組み込まれている?

森本:そうです。最終的にはそれは憲法の中にも入っているし、最高裁判所のシステムにも入っていますよね。

モーリー:ちょっと反対の立場から見た、今の中国の中、国家が認めていないカトリックやプロテスタントの地下教会、秘密教会があって、かなり信者がそこにいて。

森本:多いですね。

モーリー:当局がそれを邪教認定して、法輪功同様弾圧していると。

森本:法輪功もありましたね。

モーリー:結局、キリスト教の中に権力をあまり集中させない、権力の疑いがあるっていうのが、ちょっと圧政を受けている中国の、それに慣れてみんな順応して生きてはいるけれども、格差が激しくなってきたときに、不満を言っただけで捕まっちゃうような国だと、どこかに救いっていうことですごくアピールする人たちが。

森本:かもしれませんね。中国は官製教会と、つまり地上の教会と地下の教会があって(笑)。

モーリー:ローマみたい(笑)。

森本:そうですか。両方あるんですよ(笑)。カタコームにいる人たちと、外にいる人と。

モーリー:それで、また大田先生に伺いたいんですけど、僕の中で原理主義と神秘主義、オカルティズム、ベラベラも含めてなんだけど(笑)。それと世界陰謀論、これは幕の内みたいにセット、パッケージなんですよ、バンドル。なんでそうなるの?なんで、だれか大きな敵がいて、昔はアメリカのソ連だったのね。

森本:いなくなっちゃったからね。

モーリー:イルミナティだとか。

森本:イルミナティ(笑)。

モーリー:とか。なんでそうなるんですか?

大田:根っこにあるのは、非常にわかりやすい二元論なんですよね。やっぱりグレーの世界、複雑な世界は嫌で、すべてを黒と白に分けて、普段は、表面上は白の勢力しか出てこないけれども、その裏に黒の勢力が暗躍していると想定すると、どうしてこの世はこんなに理不尽で、私はこんなに報われないのかっていう説明を一挙に手にできるって思ってしまうんですね。

(つづく)

・[ニコニコニュース]「本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"」全文書き起こし(1)~(5)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150918_本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"?sort=created_asc

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ" - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv234564933?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/

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