ニコニコ生放送「本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"」(2015年9月18日放送)全文書き起こし(3)
ニコニコニュース / 2015年10月18日 12時10分
9月の「ニコニコドキュメンタリー」は、アメリカ在住の映画評論家・町山智浩氏が選んだ、超大国アメリカの裏側がわかる過激なドキュメンタリー作品を特集。その第1段「ジーザス・キャンプ 〜アメリカを動かすキリスト教原理主義〜」が2015年9月18日(土)20時00分から、ニコニコ生放送で配信されました。
本ニュースでは、生放送後におこなわれた作品をテーマにしたトーク番組の内容を、以下の通り全文書き起こして紹介します。
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※出演者=話者表記
モーリー・ロバートソン (ミュージシャン/ジャーナリスト)=モーリー
大田俊寛 (宗教学者)=大田
森本あんり (宗教学者)=森本
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大田:だから、森本先生の『反知性主義』は、福音派のリーダーになったような人たちが、もともとプロ野球選手だったり、セールスマンだったり、全然神学教育とかは受けていなくて、どちらかというとエンターテインメント畑の人たちが出てきて。
森本:そうです。
モーリー:勧誘のプロみたいな。
森本:そうですね。セールスマンみたいに福音を売って歩くっていうか、伝道して歩くって言うけど、本当は逆なの。そういうふうに伝道してきた人たちを真似して巡回セールスという商業形態が成立したんです。初めは、あれはセールスマンがいたんじゃなくて、聖書の話をして歩く人たちがいて。
モーリー:プリーチャーがですか?
森本:そうそう。巡回する人たちがいて、それを真似してほかのものを売り始めたのが巡回セールスなんです。本当は順番が逆なのね。
大田:なるほど。
モーリー:実は、何を隠そう私のアメリカ人の父親のそのまた父親、祖父はペンテコスタルのプリーチャーでした。そして、私の父も『ジーザス・キャンプ』の子のように、子どものころからあそこにいたリーヴァイぐらいの年齢で説教できたって聞きました。
森本:髪の毛も長かったんですか?
モーリー:そうそう、ポニーテールの子。うちのお父さんはもう80いくつですけど、昔、子どものころはそうやって育てられたんですよ。ところが、彼はティーンエイジャーに差しかかったときに、例の痙攣するスピリットが、自分の牧師の家族のおじさんとか、兄弟とかがみんな「うおー」ってなっているのに、自分は冷静で熱狂できないっていうふうに、牧師をやっている、家族でプリーチャーをやっていたんで相談したところ、「そういうときは振りをしていれば後からついてくる」って言われちゃったんだって。
(一同笑)
モーリー:それで「何これ、サーカスなの?これ、嘘じゃん」みたいに、父は15歳ぐらいのときに幻滅してしまい、「僕は別の道を生きなきゃダメだ」、いわゆる、神をフェイルしてしまったと。神に満たなかった、みんなのように熱狂できなかったという失意と疑念があって。名前もトーマスなんですよ。
森本:ダウティング・トーマス(笑)。
モーリー:疑うトーマス。だから、そういう名前をつけられたことがよくない、うちの父親は。
(一同笑)
モーリー:トーマス・ロバートソンはダウトをしちゃったんですね。その結果、もう完全に反対側へいっちゃって、科学を勉強して医師になったんです。私が生まれたときから宗教は好きじゃなかったです。
森本:なるほど。
モーリー:教会には連れていってくれなかった(笑)。
森本:そうなんですか(笑)。
モーリー:反動でがつんとあれになっちゃったんですよ。
森本:モーリーさんも若いころは髪の毛が長かったんですか?
モーリー:はい、あったときは。
大田:あはは(笑)。
モーリー:やったことはあるんです。
森本:そうじゃないかと思って。
モーリー:自分のことだけ言うと、僕は非常におもしろい立場にいて、父側はそういうふうに自分の直接の父親がペンテコスタルの家族に育ったんだけど、ちょっと捨てた口なんですよ。科学に寝返って、逆に科学の原理主義になった。
大田:そうですか。
モーリー:だから、そういうスピリチュアルとか、ニューエイジとか、仏教とか、いろんな哲学の話はあんま好きじゃないです。
森本:そうですか。
モーリー:そういう感じだったんで、僕は逆に大学の時代、知らず知らずいろんなニューエイジ系のスピリチュアリズムに熱狂的にコミットをし(笑)。
森本:大体それで年代がわかりました。
モーリー:わかりました?ありがとうございます(笑)。
森本:シャーリー・マクレーンとか(笑)。
モーリー:シャーリー・マクレーン前後でございます(笑)。ここで質問が入りました。北海道の20代の男性からです。もうこれを見て、番組が終わったころには改宗されているかもしれないから、覚悟しておいて。「キリスト教はどうして布教に一生懸命なのでしょうか?何か聖書に布教をすすめることが書かれているのでしょうか?」。お二方に答えをいただきましょう。
大田:伝統的にキリスト教がそんなに布教に熱心だったかっていうと、たぶんそうではなくて、布教に熱心だったのは本当に、それこそパウロとか、伝道旅行とか、さっきモーリーさんがおっしゃったローマ帝国で弾圧されているころとか、そういうころで、中世の段階ではそれほど熱心な布教っていうことではなかったんじゃないかと思うんですよね。むしろ、布教に対して自覚的になっていったのは、プロテスタントの宗教改革が起こって、それに対する対抗宗教改革で、イグナティウス・デ・ロヨラとか、ザビエルとかのイエズス会とか、ああいう布教活動を重点的にやる修道会とかができてきて、それでプログラム化していって、「世界中をキリスト教化するんだ」みたいな動きが自覚的に出てきているので、キリスト教の歴史全体を見ると、そんなに一貫して頑張って布教していたわけではないのかなというのは思いますね。
モーリー:なるほど。先ほどイエズス会の結成についてひと言話されたんですけれども、そうすると、それまでちょっとのほほんとしていたローマ教会が、カウンター勢力であるところの、競合勢力のプロテスタントががーっと広がっていくので危機感を覚えて。
大田:そうですね。
モーリー:うちもやらなきゃっていうので、イエズス会という精鋭部隊をつくった感じ?
大田:はい。
森本:そうですね。
モーリー:なるほど。それが全世界に行って、九州、種子島とかにも。
森本:にも来ましたしね。
大田:はい。競争のマーケットがないと、キリスト教も(笑)。実はそれほど布教はしないのかもしれないですね。
モーリー:なるほど。
森本:社会ごとに飽和状態になれば、新しく伝える人もいないわけですよね。だから、中世キリスト教はそれである程度は一旦完結しているわけですよ。ところが、今のお話もそうだし、それからプロテスタント側からいうと、近世っていうか、現代というか、20世紀の初めぐらいになると、やたらに世界宣教の可能性が見えてくるんですよ。「世界にはまだキリスト教を知らない人たちがこんなにいる」と、「だから、教えにいくんだ」と。
モーリー:アフリカ暗黒大陸とかね。
森本:とかいうふうに言い始めて、どんどん。
モーリー:それが植民地化と同一していくっていう。
森本:手を携えていくわけですね。
モーリー:ちょっとだけ脱線させてもらいたいんですけど、ちょうど19世紀から20世紀に差しかかるころっていうのは、確か大英帝国が非常に安定した、もう世界を輪につなぐような大インドとか、アフリカもあちこち領土を持って、フランスもいっぱい持っていて、ちょっと落ち着いていた帝国主義の時代。帝国主義っていうのは、要は側面から見ると、労働力と資源をただひたすら奪い続けているわけなんだけど。ただ、そのときにいわゆる正義、この人たちが野蛮で文明を知らないから、倫理と技術と文明を教えてあげて、その文明の中にあるのがクリスチャンバリューだったんでしょうか?
森本:そうそう。日本も本当にそのとおりなんですよ。明治の初めのころになると、やっぱり宣教師がやってくるでしょう。横浜に行くわけですよ。港に着くでしょう。そうすると、宿屋に案内されるでしょう。「どうぞ、こちらにお泊まりください」なんて。宣教師たちはそこに泊まるんだけど、びっくりしちゃうわけ。なんでかわかります?壁は紙なの。障子にはかぎがないわけ。だから、ちょっとなめて穴を空ければ見えちゃうぐらいの。それで何も泥棒が入ってこないわけ。西洋のそのときのホテルのことを考えたら信じられないんですよ。もしかしたら、我々は野蛮な国に来て、この大事なキリスト教の福音を教えて、道徳を教えてやろうと思ってきたんだけど、実は日本の人たちって、もしかしたら我々よりずっと道徳的じゃないかと(笑)。
モーリー:「やばい」みたいな(笑)。
森本:紙1枚で、かぎもなくて、そういうふうに宿屋ができている。すごい国に来ちゃった。「これはもう宣教はいりません」って書いて本国に送った手紙があるんですよ(笑)。
モーリー:ちょっとそれと繋がるのかどうかわからないんですけども、中南米はもともとマヤ、アズテックのいろんな土着信仰とか、もう長いテオナナカトルみたいな神とか、いろんなのを信じていたんですけれども、そこに入っていったさまざまな神父のうちとか、布教活動のうち、カトリックの原型をとどめたものもあるけれども、たまにいわゆるシンクレティズムっていうんですかね、合体してしまった。だから、マリアなんだけど、マリアっていうよりも別の宗教の神秘的な幻覚のような偶像も作られていたりとか、中南米とかはあちこちありますよね。それはやっぱり現地の土着が強過ぎて、オーバーパワーっていうか(笑)、融合しちゃったんでしょうか?
森本:上手にやっているところっていうのは、いくらもありますよね。オーバーパワーとおっしゃいましたけども、その時には主にそれはカトリックのほうが強いですよね、上手に取り入れていく力っていうのは大きいので。それは屋台骨がしっかりしているから、ちょっと変なものが入ってきてもそれを吸収できる余力があるんです。プロテスタントは、そういう意味ではちょっと幅が狭いから、そういうのはやりにくいんですよね。だから、シンクレティズムっていうのは宗教混交っていいますけど、やっぱりカトリックのほうが強いですよ。
大田:カトリックはもちろん一神教なんですけど、いろんな聖人崇敬と呼ばれるような、稲妻の聖女とか、聖バルバラとか、そういういろんな聖人崇敬っていうのがあって、事実上。
モーリー:聖人崇敬ってどういう漢字ですか?
大田:聖なる人間の、セインツの崇敬。
モーリー:崇敬、敬うっていう?
大田:はい。
モーリー:そうですか。
大田:それで崇敬と崇拝は違うって彼らは言うのですが(笑)。崇拝というのはあくまで神に捧げられるものであって、聖人に対しては崇敬という別の仕方のあがめ方みたいな。
モーリー:でも、ちょっと待って。それって、もともといた別の神様をそういう序列で下にして、菩薩にしている感じとは違う?
大田:かもしれないですね(笑)。
モーリー:つまり、本当は多神教なんだけど、それを言っちゃったら終わりだから、なんとなく寄り合いして、日本の憲法9条みたいに曖昧にしているのよ。
森本:あはは(笑)。
モーリー:「戦争はしない国、いや、できるけど、しない国。アメリカはどう思う?」みたいな。
大田:もともとクリスマスとかイースターとか、いろんなカトリックのお祭りが。
モーリー:異教のあれですよね。
森本:異教のお祭りから。
モーリー:クリスマスは確かユールっていうやつで、イースターの場合はなんだったんですか?
大田:ちょっと僕も忘れてしまった(笑)。
モーリー:ウサギの繁殖祭り?
森本:それはごく最近の話で、イースターっていうのはやっぱり春分の祭りの話と繋がってきますよね。でも、そういうのをやっぱりプロテスタントは嫌なんですよ。
モーリー:純粋じゃないから?
森本:アメリカに来たピューリタンたちは、クリスマス禁止令っていうのを出しているんですよ。
モーリー:おっと。
森本:クリスマスをお祝いしたら、25シリングの罰金。
モーリー:いい。
森本:贈り物を交換したら罰金。
モーリー:しかも、そのシリングってまだイギリスの通貨のまんまだし。
森本:そうです(笑)。
モーリー:最高、面白過ぎる。いや、私、きょうはアメリカ史をゼロから勉強しているんです。さっきは町山さんのいろいろなお話を聞いて、大学でいうと101のBぐらいだったんですよ。今100番に戻りました。
森本:そうですか(笑)。
モーリー:すごいわ。植民地時代のアメリカ、自分の父親が入植したアメリカの南部、バイブル・ベルトなんですけど、よく見えてきた。
森本:そうですか。
モーリー:そうなんだ。それで、またベーシックなところに戻ってきましたけど、神奈川県の30代の男性。みんな今日は、これは求道者っていうの?道を求める人たち、たぶん求道者がいっぱいいる。「I can see you. Can I have a Witness.」ですね。皆さんWitnessで手を挙げてテレビに向かってください。というか、ちょっと今のはペンテコスタルっぽかった。
森本:上手(笑)。
モーリー:すいません(笑)。
森本:献金はここに送ってください(笑)。
モーリー:そうそう、献金はここ、1、800の番号ですからね(笑)。1、800が流れてくる。あなたの年金を送ってくださいみたいな(笑)。そっくり送って。そうしないと、中国が尖閣をとっちゃいますよっていう話ですよね。「神が尖閣を守るために改宗して、あなたのお金を毎月送ってくださいと言っているんです」みたいな、そんな感じ。
森本:イェーイ。
モーリー:神奈川県の30代の男性です。「十字架っていうシンボルはキリスト教がつくったんでしょうか?それとも、キリスト教が生まれる前からあったのでしょうか?」。
森本:そうですか。どうですか、先生(笑)?
大田:それはもちろんキリストがはりつけになったからだと思うんですが(笑)。
森本:でしょうね。
大田:それこそ、東京オリンピックのエンブレムと同じように(笑)。
モーリー:トレース疑惑(笑)。
大田:十字架はすごく単純なので、たぶんキリスト教以前にも似たようなシンボルはあったのではないかと思いますが。でも、それはローマ帝国の一番残酷な処刑方法ということで、ああいう磔りつけ刑っていうのがあって、それでキリストが殺されたからっていうことですね。
モーリー:だんだんいろんな、異端も含めたさまざまな宗派とか、キリスト教をネタにした新興宗教、スピリチュアリズムとか、そこら辺になってくると、どんどんいろんな別の意味をプラスというか、クロスのマークにオーバーラップさせて、見方によってはスヴァスティカ、卍の中にも一応真ん中にはプラスのマークはあるっちゃあるわけで、そこに動きがくっついたのが卍だとか、いろいろオカルティックな、それはインタープリテーションになっちゃうんだけど。
大田:なるほど。
モーリー:キリスト教のメインのマークは十字架だというのはみんなご存じだと思うんですけど、ほかにもいろんなシンボリズムというか、幾何学模様とかはあるんですか?
大田:すぐ思いつくのでは、それこそ先ほどモーリーさんがおっしゃった、コンスタンティヌスが初めて神からの啓示を受けたときに、確かラバルムっていう紋章だったと思うんですけれども、キリストの2文字を組み合わせたような紋章とか、そういったものはカトリックの初期には結構使われていたと思います。
モーリー:あと、魚のマーク?
森本:魚、よくご存じですね。
モーリー:ローマのタイルかなんかで、魚のマークとかいうのがよく世界遺産の写真で出てくるんですけれども、なんで魚なんですか?
森本:あれはイエス・キリスト、神の子、救い主っていう言葉のアクロニムをとると、イクトゥスっていうんですけど、それはギリシャ語の魚っていう意味なんですよ。I、X、U、Sっていう(笑)。
モーリー:よくI、N、R、Iは。
森本:インリ。
モーリー:IESUS NAZARENUS REX IUDAEORUMだっけ?そういうINRIとか、そういうマークも。
森本:なかなか知的なことをご存じですね(笑)。
モーリー:本当(笑)?
森本:ラテン語だからね、なんといっても。
モーリー:ラテン語は勉強していないけど、そういう断片をニューエイジの本で覚え込んで。
(一同笑)
モーリー:ごめんなさいみたいな(笑)。ついでに、興味本位で聞きますと、ダビデの星、三角形が上と下で要は交わっている形なんですけれども。
大田:ユダヤ教ですね。
モーリー:それぞれの3つっていうのは、やっぱり神と人間と世界とか、なんか意味合いはあるんですか?三角形同士の組み合わせの。
大田:ちょっと僕も知らないですけど、あるんでしょうね。
モーリー:神秘的な。
大田:うん、ちょっとわかんないですね。
モーリー:あまりキリスト教の中では、そういう三角形とかは、三位一体とかにはあるけど、あまり意識しない?
大田:というか、それはユダヤ教のシンボルではないですかね。
森本:そうですね、ユダヤ教のシンボルですね。
大田:シナゴーグとかではよく描かれていると思いますけども。
森本:逆三角形のマーク、駐車禁止みたいなマークね(笑)。
モーリー:駐車禁止のマークね(笑)。
森本:じゃなかった、止まれか(笑)。
モーリー:はい、止まれ。
森本:あれは三角の赤になっているでしょう。あれは実はYMCAのマークなんですけど、YMCAってあるでしょう。
モーリー:ヤングマン・クリスチャン・アソシエイションですよね。
森本:それ。その三角を発明した人はアメリカ人なんだけど、モーリーさんみたいに日本の大阪で15歳ごろまで育った人なんです。大阪弁ちゃきちゃきの人なんですよ。その人が赤い三角マークをYMCAで貼らせて、世界中があれを使っているの。だから、モーリーさんもなんかマークをつくらないと。
モーリー:そのうち出てくるかもしれない(笑)。今のところ五角形に丸を二重に書いたウィッチクラフトのマークしか思い浮かびませんけど。すいません、それで、『ジーザス・キャンプ』に出てきた原理主義なんですけど。
(一同笑)
モーリー:要は、こういうちょっと奥ゆかしいさまざまなバリエーションや2000年以上の歴史があるキリスト教の、しかも、アメリカでは実はマイノリティに当たる福音伝道の一部のとてもラウドなマイノリティが大変なプレゼンスをアメリカ国内で、しかも宗教と政治をほとんど合体させるように、スピリチュアライズされた政治ムーブメントといっていいのかな、ああいう人たちは。これが実は「やっぱアメリカ変だよな」っていうふうに突き放して見ていられない気がするんですよ。例えば日本でも、まさにここを聞きたいんですけども、オウム真理教から江原さんのスピリチュアリズムブームなんかも繰り返し波があるんですけど。日本はやっぱそういうプライムターゲットなんじゃないですか?強めの原理主義にとって、餌食になりやすいというか。
大田:さっきの話で出てきたように、日本の人たちはなぜか変なフィルターがかかっているかのようにキリスト教とか世界の宗教について無知であるっていう状態があって、だから、その点で言うと、非常にナイーブというか、うぶなところがあって、世界ではもう同じような過ちが何度も繰り返し行われていて、ある程度免疫がついているようなものでも、日本人では足をすくわれるかのようにぱっと、森本先生の比喩で言えば、ウイルスに感染してしまって大繁殖してしまう可能性もありますよね。なので、本当にキリスト教の歴史を含めて、世界でどういう宗教的な事件が起こっているのかっていうことをちゃんと勉強するっていうのが必要ではないかという。すごいお利口なお答えなんですけど。
モーリー:ありがとうございます。じゃあ、お利口じゃないところにこの話をどんどん1回突っ込んでみたいんですけど、例えば大本教、明治期に土着のような形で、「おふでさき」で文字が読めないおばあさんが、わーって「艮の金神という神様に乗り移られたぞよ」と言って、「これからは立て直しじゃ」と、艮の方角に閉じ込められていた金神、金の神様がもう1回出てくるんだと、リバイバルだぞと、アルマゲドン。
(一同笑)
モーリー:それで非常に和風テイストだった、神道テイストだったんだけども、非常に広範に影響力を持ち、最後は皇室のメンバーも一部入信したり、一大巨大ムーブメントになった、熱が。だから、日本社会って、結構...
森本:そして、迫害されました。
モーリー:そして迫害されて大本営にやられ、2回にわたって本部を爆破され、そこから出ていったいくつかのまたちっちゃい新興宗教があって、もともと反天皇に凝り固まっていた出口王仁三郎の弟子だった、口述筆記をしていた谷口雅春、彼は生長の家を始めるわけですね。今の日本会議にもつながっているんですけれども。そして、何を隠そう、生長の家始祖の谷口雅春の奥さんの輝子が私の母方の遠縁なんです。すいません(笑)。もう父からはペンテコスタルでベラベラ、母方からは手かざし、合掌、ありがとう。もうどういうワイズブラッドを受け継いでしまったのかという。
森本:すごいね。そうなんですか。
モーリー:むちゃくちゃな存在として生まれてしまいました。
森本:オーラが見えてきた感じ。
モーリー:恐れ入谷の鬼子母神でございます(笑)。
(一同笑)
森本:鬼子母神ってきましたか(笑)。
モーリー:いや、それで、日本社会も結局そういう妙ちくりんなリバイバルムーブメントにあたる、しかも、政教一致を唱える新興宗教の波って大正からすごくあったと思うんですよ。だから、これを対岸の火事として見るんじゃなくて、実はちょっと振り返っただけで日本も相当に神懸かったセクターがあったんじゃないんですか?
森本:どうですか(笑)?
大田:歴史的に見ると、やっぱり伝統的で、体制的で、安定した宗教っていうのは、きっちりとした聖典があって、それに基づく宗教的な法とかがあって、そして、カトリックに典型的なような階級組織っていうのがあって、制度面が非常に完成しているんですね。そういうものが伝統的で安定している宗教の形態なんですが、それに対してどういうふうな形でカウンターカルチャーというか、攻撃をしかけていくかというと、歴史的に何度も何度も繰り返されてきて、それこそキリスト教のペンテコステっていうのは精霊がおりてきたっていう使徒行伝の中に書かれている、そして使徒たちがトランス状態で神の言葉を語るっていう、そういうのがキリスト教のもともとの発端ではあったんですけど、そういう制度的なものに対して、我々はその神の息吹っていうのを直接受けるんだっていう。
モーリー:息吹っていうのは、息のことですね。息が吹いて、プネウマでしたっけ?
大田:プネウマですね。それこそスピリットというか、出口なおのおふでさきも艮の金神という神様が自分に直接憑依してきて、自動筆記で神の言葉を書かせるんだっていう、そういうものですよね。大本教から出てきて、モーリーさんのお母さんが入っていた。
モーリー:お母さんの親戚で。
(一同笑)
モーリー:親戚はちょっと入っているけど。僕、子どものころを今思い出した。生長の家のジーザス・キャンプに行った。
森本:えっ。
大田:そうですか(笑)。
モーリー:8日間。
森本:そうですか(笑)。
モーリー:「天皇陛下万歳」ってやった。朝の4時半に、みんな斜めに皇居の方向はこっちです、飛田給の錬成道場で、部屋の中で斜めにお辞儀するんですよ、最敬礼。思い出した。それで、ハーフの僕が「君が代」を歌った。だから、ジーザス・キャンプだったね、天皇陛下キャンプ。
森本:なるほど。
モーリー:メッカみたいにきっちりその方向に向かうっていうのも、ちょっと異様だったよね。別にいいじゃん、日の丸が目の前にあるんだから、四角い部屋を四角く前に向いてお辞儀、そこにご真影とかあればいいんだけど、そうじゃなくてかっちり皇居の方向を、ちょっとみんな斜めに7度みたいに向くんですよ。だから、そこもちょっとシンクレティズムが入っているかもしれないけど。すいません、ちょっといろいろ言っちゃったけど。
(つづく)
・[ニコニコニュース]「本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"」全文書き起こし(1)~(5)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20150918_本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"?sort=created_asc
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ" - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv234564933?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/
外部リンク
- ニコニコ生放送「本当は知らない"キリスト教"と"アメリカ"」(2015年9月18日放送)全文書き起こし(1)
- ニコニコ生放送「町山智浩×モーリー・ロバートソン『アメリカってヤバすぎ?超大国の裏側がわかるドキュメンタリー3選』」(2015年9月18日放送)全文書き起こし(1)
- ニコニコ生放送「メディアの公平性ってなんだ!?メディア帝王とジャーナリズム」(2015年9月19日放送)全文書き起こし(1)
- ニコニコ生放送「これでキマリ!世界のマリファナ事情~解禁の流れはどこへ向かう?~」(2015年9月20日放送)全文書き起こし(1)
- ニコニコ生放送「『世界から見た日韓問題』―タイズ・ザット・バインド エピソード2―」(2015年8月8日放送)全文書き起こし(1)
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