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第1期 叡王戦本戦観戦記 三浦弘行九段 対 行方尚史八段 (岩田大介)

ニコニコニュース / 2015年11月5日 18時0分

第1図

■同学年

 三浦と行方は1973年度の生まれで同学年。奨励会入会は行方が先輩、四段昇段は三浦が先輩。修業時代をともに過ごした仲である。対戦成績は三浦7勝、行方8勝と拮抗している。対局日は10月31日、寒さを吹き飛ばすような熱戦が展開された。

■角換わり

 本局の戦型は角換わり。ここ数年の角換わりは後手が工夫を凝らすことが多い。第1図の9三歩型も注目されている工夫のひとつだ。△9四歩の1手を中央の駒組みに回すことで、先に仕掛けようとしている。

 果たして、行方は△6五歩と仕掛け、主導権を握りにいった。ただし9筋攻めが絡まない分、どうしても攻めは細くなる。これが後手の課題である。

【第1図】http://p.news.nimg.jp/photo/263/1667263l.jpg

■24年前の定跡

 第1図から△6五歩▲同歩△7五歩▲4五歩△同歩▲6六銀△9四歩▲3五歩で第2図。この数手は序盤のポイントだ。順を追って見ていきたい。

 △7五歩に▲同歩は△6五桂▲6六銀(▲7六銀は△6六角)△8六歩▲同歩△同飛で後手の攻めが続く。三浦は▲4五歩△同歩と攻め味をつけてから▲6六銀とした。△6五桂を消しつつ、△7六歩には▲7四歩を用意している。

 △9四歩が驚きの一手。一見すると緩く感じる。解説の木村一基八段が「うえー、大丈夫かよ」と思わず声を上げたほどだ。しかし、指されてみれば、なるほどの一手。木村八段は最終的に「作戦的に機敏な一手だった」と高く評価している。どういうことなのか。24年前の定跡手順を下敷きにして、△9四歩の意味を探っていこう。

【第2図】http://p.news.nimg.jp/photo/264/1667264l.jpg

【A図】http://p.news.nimg.jp/photo/270/1667270l.jpg

 先後同型の実戦例のひとつにA図がある。ここで▲6六銀は少し消極的。▲2四歩△同歩▲6六角△4四角▲4五桂△6六角▲同銀△4四銀が定跡で、先手有利とされている。24年前のタイトル戦で実際に指された順だ。

 さて、A図と第2図を比べていただきたい。不思議なことに、A図で▲6六銀とした形と第2図はまったく同じ。先手が望んだ変化ではない。後手が誘導したのだ。

 行方は▲6六銀が指された後、24年前の定跡を思い浮かべ、△9四歩で先手有利の変化が消えていることを発見した。それゆえに、△9四歩は「作戦的に機敏な一手」なのである。

 第2図は△4四銀も考えられるが、行方は「そういう姿勢で指していない」という。△9五歩と積極的に歩をぶつけた。形勢は難しいが、9筋を絡めた攻めを実現させたという点で、後手が一本取ったといってもいい。

■歩の手筋

 本局は最終的に1筋と5筋を除く計7筋で、歩取りや歩の突き捨てがあった。そのため、継ぎ歩、垂れ歩、たたきの歩など、歩の手筋が数多く登場する。そのいくつかを紹介したい。

【第3図】http://p.news.nimg.jp/photo/265/1667265l.jpg

 第3図の△3六歩は先を見据えた好手。以下▲2四歩△同金▲4六角△3七歩成▲同角△8五桂。歩を成り捨てることで▲4六角の金桂両取りを回避することができたのだ。先手は△8五桂に▲7三角成としたが、空成りであり、打った角がぼけた感は否めない。

【第4図】http://p.news.nimg.jp/photo/266/1667266l.jpg

 第4図の▲4三歩も味わい深い。木村八段は「効果的な手渡しの典型例で、秒読みで正しい応手を見つけるのは困難」と解説する。▲4三歩に△同飛は▲6一馬があり、△同銀も後手の駒に勢いがなくなる。本譜は△同金としたが、後手の飛車先が重くなった。

【第5図】http://p.news.nimg.jp/photo/267/1667267l.jpg

 第5図の▲2四歩も厳しい。△2四同金は▲3六桂の両取りがある。本譜は△3二玉でと金づくりを受けたが、先手の攻め駒に近づいたともいえる。行方は玉上がりを「二人がかりで攻めている」と悔いた。

 ただ、叡王戦は早指し戦である。当然ながら緩手もあった。第3図の進行の最後、▲7三角成に△9八歩では△3六歩がよく、第5図でも△3二玉に▲4六桂では▲3六桂がよかった。パシパシと頬をたたいて気合を入れる三浦、「いやあ、そうか」とうめく行方。どちらも苦しみ、もがきながら前に進んでいった。

■終盤の山場

【第6図】http://p.news.nimg.jp/photo/268/1667268l.jpg

 迎えた第6図。終盤の山場だ。三浦は▲5一馬の予定だったが、△3二飛が見えたことで迷いが生じた。以下▲2四馬△3九飛成▲6八玉△2八竜▲4二歩成△1二玉。手番の先手が指せそうに見えるが、後手玉に詰めろをかけるのが難しい。カナ駒を1枚でも渡すと、逆に先手玉が詰めろになる。▲9八金と自陣に手を入れるのは△7四桂がうるさい。

 実戦は54秒まで読まれ、予定変更で▲4二馬とした。以下△3三歩▲7五銀△4五銀と進み、後手に分のある終盤戦へ。△4五銀では△4一歩が明快だったが、本譜もきわどく残している。

■絶対に詰まない

【第7図】http://p.news.nimg.jp/photo/269/1667269l.jpg

 第7図の△7八歩に▲6九玉は△4六桂▲2一歩成△5八桂成▲同飛△4二飛▲同歩成△4六桂▲2二と△1三玉▲2三と△同金(B図)が一例。難解ながらも三浦は自信がない様子。後手玉を寄せにくいという。

【B図】http://p.news.nimg.jp/photo/271/1667271l.jpg

 本譜は▲7八同玉△5六銀▲同歩△同角▲6七銀△同角成と進む。その数手後の△4二飛が決め手になった。▲4二同歩成の形は後手玉が絶対に詰まない。以下は行方がきれいに寄せた。

 感想戦は木村八段を交えて行われた。木村八段もまた同学年だ。それぞれが意見を出し合って変化を追求していく。二十数年前の奨励会でも同じような光景があったのかもしれない。

(岩田大介)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]【将棋】第1期叡王戦 本戦 三浦弘行九段 vs 行方尚史八段 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv237814480?po=newsinfoseek&ref=news
・将棋叡王戦 - 公式サイト
http://www.eiou.jp/

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