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ニコニコ生放送「あなたが知らない食の世界 ~TPPで変わる?日本の食卓~」(2015年10月31日放送)全文書き起こし(4)

ニコニコニュース / 2015年11月6日 17時0分

ニコニコニュース

 「ニコニコドキュメンタリー」では2015年10月31日(土)20時から、アメリカの巨大食品会社の暗部に鋭く切り込んで話題となった「フード・インク」を、ニコニコ生放送で配信しました。

 本ニュースでは、生放送後におこなわれた作品をテーマにした解説番組「あなたが知らない食の世界 ~TPPで変わる?日本の食卓~」の内容を、全文書き起こして紹介します。

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※出演者=話者表記
松嶋初音 (司会)=松嶋
鈴木宣弘 (東京大学大学院教授)=鈴木
速水健朗 (ライター/編集者)=速水
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速水:この映画『フード・インク』の中にも出てくる話で、マイケル・ポーランっていう人が一番言っている主な事って、やっぱ人間って、例えば今牛にトウモロコシを食わせるっていう話、その危険性の話をしていましたけど、全部トウモロコシでできているんですよ(笑)。

松嶋:そうなんですよね。

速水:そうすると、やっぱり元々のトウモロコシが遺伝子組み換えだったら、それを牛が食っている時点でそうだしっていう、どんどんトウモロコシから逃げられないっていう、お菓子だってほとんど入っているわけですからね、シロップにもなっているわけだし。

松嶋:そうなんですよね。だから、表示されていないだけで、実は知らず知らずのうちにそういったトウモロコシを食べているっていうこともあったりするわけですよね。

鈴木:その点ではほとんどの加工食品にトウモロコシ由来のものが使われているわけだから、それはほとんど遺伝子組み換えだっていうことですからね。ただ、そういうものについて加工度が高ければ表示されないからわからないわけですよね。

松嶋:そうなんですよね。

鈴木:そういう物はほとんどそうだと。だから、むしろ日本では。

松嶋:例えば、遺伝子組み換えの表示っていうか、「組み換えでない」っていう表示は見たことがあるんですよ。

鈴木:そうですよね。

松嶋:それ以外のもので、組み換えをしている物で加工度が高い物で、私たちが食べている物っていうのは何があるんですか?

鈴木:醤油とか、大豆油とか、あれも表示義務がないわけですよ。ですから、何も書いていませんから、基本的には遺伝子組み換えだということですね。

松嶋:あらまあ。

鈴木:その他のお菓子類は加工度が高いですから、もうほとんど何も表示されないけども、必ずトウモロコシ由来のものが使われているから、ほぼほとんど(笑)。

速水:それこそさっき言ったように牛とかは食っているものがトウモロコシなだけで表示義務は当然ない訳ですよね。けど、ある。結構世界的に遺伝子組み換え反対運動って、ものすごい消費者運動としては影響力が大きいんですよ。なので、企業としては遺伝子組み換えのものを、例えば遺伝子組み換えトマトっていうのがもう20年ぐらい前に売り出されたことがあるんですよね。ただ、それは直接人間が食べるものだったので、ものすごい反対運動が起こって潰されたんです。売れなかったから扱わなくなったんですよ。それ以降、直接遺伝子組み換えでつくった野菜であるとか製品っていうのは、売り出してもどうせ反対運動でダメになるっていうふうに分かっているんですけど、今おっしゃったように、穀物であるとか、飼料であるとか、加工食品であるっていうところでは表示義務もないのが大半なわけだし、そこではもういくらでも混ざっているっていう、反対運動が完全に空回りしている状況なんですよね。

鈴木:だから唯一、さっき言われたとおり、「遺伝子組み換えでない」っていうことを表示することで主張するという、そういう事が日本では可能なわけですけども。ですから、アメリカはそれをやめさせようと。

松嶋:『フード・インク』の中にもありましたよね。

鈴木:TPPで。

松嶋:はい、誤解しちゃうからっていう。

鈴木:そうそう。消費者が安全な物を安全じゃないと誤認するのはおかしいと。だから、政府は「TPPで日本の食品の安全基準が変わるようなことはあり得ない」って言っているけど、あれは間違いです。それは「国際基準を守らせる」っていうふうに言っているわけですから、日本が国際基準に合わない、非常に高い基準を、例えば遺伝子組み換えの表示を、「遺伝子組み換えでない」という表示をしていいというふうな基準を科学的根拠に基づかないで決めているのは、そういう事をやめさせると。

松嶋:なるほど。

鈴木:国際的に安全だと、アメリカが完全だと認めた物については、それに合わせろということを要求するということがTPPの条文の意味であって、それは「国際基準を守りましょうと言っているだけだから、何も影響がないんだ」っていうのは完全に誤解した解釈なんです。これから2国間で、TPPの条文で「国際的な基準を守りましょう」っていう事をもとにして、日本がやっていることで遺伝子組み換えの表示も含めて、誤認表示も含めて「科学的根拠を出しなさい」と、「遺伝子組み換えが安全じゃないという科学的根拠を出しなさい」と。それは簡単には出せませんよね。「だったら、それはやめなさい」と、いわゆる科学主義ってやつですよね。EUは逆に、疑わしいものは規制しましょうと、もう本当に人の健康にどんどん影響が出てきてからでは危ないんだっていう考え方を持っていますけども、TPPではそれは基本的には認めないってことですよ。だから、アメリカからの圧力で日本のいろんな安全基準がさらに緩められる。それでもやめなかったら、TPPでいうとISDSっていう条項ですね。アメリカの企業が日本の安全基準や環境基準によって売れなくなったり、損害を受けたと。その分の損害分を計算して国際法廷で損害賠償をさせるという、それを潰すという脅しがあるんですよ。

松嶋:めちゃくちゃですね。

鈴木:これがTPPで問題になっていたんだけど、このルールがやっぱり残っちゃったんです。だから、最後はそれで脅されて変えさせられるっていう流れがもう延々と続くというのがこれからの問題じゃないかと思います。

松嶋:なるほど、わかりました。では、メールが来ていますのでちょっと読ませていただきたいと思います。19歳の男性の方からいただきました。「日本の食の安全基準は海外に比べて厳しいと言われていますが、どの程度厳しいんでしょうか?その基準が変わるんでしょうか?」変わりますか?

鈴木:変わります。例えば、日本では防カビ剤とか、これは農薬なんですけども、収穫した農産物に農薬をかける事は禁止されています。輸送距離が短いから、その必要もないわけですけど。でも、アメリカから穀物や果物を輸入してくるときに、運んでくる時にカビが生えないように農薬をぶっかけているわけですよね。それを日本で禁止してしまうと、それはアメリカが困るからっていうんで、今でも無理矢理それは食品添加物でもあるんだっていう二重の分類にしてあげて、農薬をかけることを無理矢理認めてあげているんですよ。でも、食品添加物に分類すると、レモンのパッケージに何が入っているかで農薬の名前が出てきちゃうわけですよ。だから、アメリカはTPPで今度はそれをまた問題にし始めて、それが不当なアメリカに対する差別表示だと、これをやめろと言い始めている。アメリカに言われて無理矢理食品添加物に二重分類してあげたのに、今度はそれによって表示しなきゃいかんことがアメリカの差別だと、だからやめろと言われて、2国間の並行協議という場で、日本は実は一昨年の12月にその事について改善するってもう認めちゃったんですよ。

松嶋:弱いですね(笑)。

鈴木:だけども、そんな事はやっていないと言い張っていたんですけど、でもTPPの付属文書を見たら日本が認めたって書いてあるんですよ。だから、そういうふうな誤魔化しがいっぱいあるんですよ。

松嶋:なるほど。そういう情報っていうのはあまり伝えられないというか。

鈴木:そうです。ほとんど出てきません。

松嶋:もやっとされたままっていう感じがしますよね。逆にそのモンサント社の方々とかは何を食べているのか気になりますよね。自社のものっていうか、それを使ったものを食べているのかなって、逆にすごくオーガニックの食品が並んでいたら。

鈴木:そういうニュースがありましたよね。

松嶋:食べていないんですか(笑)。

鈴木:ネットのニュースで、AFP通信か何かで、「社員食堂ではオーガニック食品を出します」って。

速水:(笑)

松嶋:いやいや、いやいや(笑)。

鈴木:本当冗談みたいな話で、本当かなと思うんですけども、確かな情報として一時出ました。何年か前ですけどね。

松嶋:だから、あの議会の場にいらっしゃったあの女性もですよね。「そういった危険でないものを危険というふうに思ってしまう可能性があるから表示させる義務はない、なくしたほうがいいんじゃないか」みたいな、あの方もすごくオーガニックなものを食べていたら。

速水:本当に信念として大丈夫だと思っている。

松嶋:可能性もありますよね。

速水:可能性ももちろんありますよ。

松嶋:ただ、すごく聞いてみたいなと思って。それは安全なのかなっていうふうな感じはすごく気になってしまいますけれども。さあお時間も迫ってきましたけれども、ちなみに、ちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどのデータで米だけは守っている感じがじわっとしたんですけれども、日本で、ここですね、「関税維持だが無関税輸入枠を設ける」ということで、米だけ守っておけばいいじゃないかみたいな、日本人全体も「米さえ守られれば」みたいな感じで。ちょっと最近「米さえってちょっと違くない?」みたいな感じで出ていましたけど。

速水:やっぱり農家の人とかに聞くと、もうこれは明らかなんですけど、日本における畜農もあれば、米以外の野菜を作っている人たちもいっぱいいるわけじゃないですか。けど、やっぱりそういう人たちに聞くと、「やっぱり米だけは別なんだ」っていう、同じヒエラルキーの中で野菜も作って、米も作って、畜農もやっているっていうだけじゃなくて、やっぱり稲作農家だけはもうものすごく昔から守られているんですよ。それこそ実際彼らの言い分ももちろんあって、「作れ、作れ」っていっぱい作って、農機具を買わされて米を作って、実際いらなくなったら、1970年代ぐらいから「もう米を作るな」って言い始めるわけですが、「その分補助金を出すから」っていうように。これは先生の専門分野ですけど、常に日本の農業政策ってやっぱり米だけは別格扱い。今回のTPPも分かりやすく米だけ守れば守ったって事になるんだっていう意識がやっぱり未だにありますもんね。

鈴木:そうですね。やっぱり米が一番の砦で、米を守るために他をどれだけ譲るかというような考え方っていうのはやっぱり強いとは思いますね。

松嶋:米以外はもうほんとにゆるゆるというか。

速水:本来、国として、それこそさっき先生がおっしゃったような、軍隊を持つとかそういう安全保障、食糧安全保障で重要なんだっていう考え方でいうと、むしろ守るべきは、僕は畜農とかだと思っているんですけど。さっきそれこそ農業は知識産業じゃないっていう、パテント取るのはどうかって言いましたけど、やっぱり知識産業なんですよ。急に日本の畜農がもう完全に1回撤退したところからやろうとしたって、誰も技術がわからないからできないので、そういう意味でそこの維持みたいなことを考えると、ヨーロッパはやっぱり自分たちの農業を守るってことに関しては、自由化して、それをブランド化して競争力を持たなきゃいけないっていう事は全然言わないんです。むしろ「昔ながらの農業をみんなで補助金を出して守ればいいじゃん」と。今TPPで言うと、ほんとに自由化されて競争の中にたたき込むのかそうじゃないのかって二者択一で言われて、補助金を出すのは既得権益だっていう言い方をして悪者にされるんですけど、農業の分野に関してはある程度補助金ってシステムは国民の理解のもとやるべきだと思っていて、競争で負けたとしても守らなきゃいけない分野って明らかにあるので、そこら辺の意識は国民も変わった方がよくて、TPPをやるかやらないかだけではなくて、そうじゃない補助っていうことももうそろそろ具体的に考えていいのかなって。

鈴木:そうなんですよ。さっきヨーロッパの話もあったけども、まさにヨーロッパは農家の皆さんの農業所得の95%が補助金で賄われているっていう恐るべき状況なんです。それが、実は日本は農業所得の15.6%が補助金なだけなんですよ。日本の農業が過保護だって言われているけど、本当は海外と比べるとそうでもないんですね。

松嶋:そうですね、比べてしまうと。

速水:「フランスは90だ」って言っている。

(一同笑)

鈴木:そうなんです。だから、そうやってヨーロッパの皆さんは正に命を守って、環境も守って、国境も防衛している産業としての、その価値をやっぱり考えてみんなで支えるっていう意識が非常に強いですね。だから、アメリカでもそうですよね。ブッシュ大統領は戦争好きで困ったもんだったって言ったけども、農家の皆さんに必ずお礼を言っていたのは、食糧はやっぱりナショナルセキュリティの問題だと。だから、「食糧を自給できない国なんか想像できるか」と、「それは国際的圧力によって危険にさらされている国だよ。どこの国のことか分かると思うけど」って、「そういうふうにしたのも我々だけどな。もっともっと徹底しよう」って、それは私がつけ加えた部分もちょっとあるんだけど。

松嶋:(笑)

鈴木:そんな感じで他の国はやっている。あと、日本は米だっていう話があったけど、まさに他の国は酪農がそういう意味では一番中心になっていて。

松嶋:そうですよね。

鈴木:アメリカでも酪農は公益事業だっていうんですよ。電気やガスと同じで、必要な量が必要なときに安全なものが子どもに届けられなかったら人が死んじゃうじゃないかと。だから、これは海外に依存しちゃいけないんだって言っているんですね。非常に分かりやすいですよね。

松嶋:でも、日本にはそうはしないという話ですね(笑)。

鈴木:そうそう(笑)。日本は一番中心の米さえも今回だいぶん輸入額の拡大とかをやりますんで、農家の皆さんも、非常に規模を拡大してきた米農家の皆さんももうやっていけないかもしれないっていう声が出ているんですよ。だから、実は総崩れ状態なんです。米だけは守ろうとしてきたけど、それさえ守れない状況。アメリカに言われて、どんどん譲らざるを得ない。日本は本当にTPPでとにかくまとめることを目的化しちゃったものだから、農産物なんかもう1年前からどんどん譲って、最後は唯一のメリットだと言われていた自動車まで譲ったものだから、自動車での利益もほとんどなくなっちゃったんですよ。だから、他の国の方が驚いていましたよ。「日本って何であんなにアメリカに譲るんだ」って、「我々は頑張っているぞ」って。だから、最後まで抵抗したのは他の国ですよね。日本は全部譲っちゃったから、もう譲るものはなくなって、それでほかの国が抵抗しているんで、「何だ、あいつら。早く降りろ」という事を言っていたっていうんですね。情けない状況になっている。でも、日本が譲らなければまとまらないって言うならというので、日本だけは譲ってくれるから、アメリカはどんどん日本に譲れと言ってきたわけですよ。だから、日本が完全に草刈り場状態になって、とにかくもう譲れないのに何でもかんでも譲ってしまったというのがTPPの。

松嶋:そうですよね。それってほんとにTPPの話が出たときから、やっぱ日本の交渉力っていうのは信頼ができないっていうふうな話で、そもそも不安視されていたところですからね。それがやっぱり案の定というか。

鈴木:そうですね。

松嶋:守るところはもちろん守ったかもしれないけれども、譲るところがあまりにも多過ぎるというところもありますよね。

速水:僕は、実はTPPに関してはそうでもないところがあって、もちろん日本のメリットになる部分もあるし、自由貿易が進んで全体のパイが増える部分っていうところにみんな期待している部分っていうのはものすごく分かるんです。ただ、やっぱり農業の部分で考えて、全体にとってみると農業の額なんて低いんだって言われるところもあるんですけど、それよりも知的産業とか別のところで闘えよっていうこともあるんですけど。さっき言ったように、守らなきゃいけないっていう部分っていうのは、補助金的なものと新しくつけ加える、それプラス食糧の安全の問題があるので、そこはもう情報戦なんですよね。向こうから来るもの、実は裏側のこういう意図があるんだっていうものを知ることで、今のそれこそ『フード・インク』の最後のほうで消費者が選択するっていうことが、いわゆるTPPって何も押しつけられるわけではなくて商品が並ぶだけなんですよ。

松嶋:選択肢。

速水:それを選択することで避けることはできるんですよね。だから、消費者の知恵みたいなものがかつてに比べると非常に重要になっている。僕らはここ10年ぐらいでもう経験したことじゃないですか。特に震災以降とかでも、みんな各自で自分たちで勉強して自分たちの理解、答えがないんですもん。それこそ、こういう人もいる、こういう人もいる、どっちが言っていることが本当か全くわからないって、さっきの遺伝子組み換えと同じ状況っていろんなところで起こりつつあり、中国から来る野菜だってそうだし、餃子だってそうだし、放射能だってそうだし、そういう状況で自分のいわゆる指標となるような考え方、情報の取り方とかを、もうこれは人に頼れない部分ってある程度あって、それは夫婦ですら分かれているわけですから。

松嶋:そうですよね。

速水:僕が取材した中では、思想と食の好みっていうのはつながっていて、かつてで言うと、自民党を支持している嫁と共産党を支持している旦那だとしても全く問題がなかったんだけど、今はそういう問題、党の問題ではなくて考え方、エネルギー政策とか、農業政策、TPP反対かどうかだけでもかなり生き方が変わるぐらいの時代になっている。そういうときに自分の指標、情報をどう判断を持つかっていう、これはどっちにしても大事ですよっていうのは変わらないかなっていう。

松嶋:なるほど。

鈴木:そこなんですよ。本当にもう締めの言葉になる話だったと思うんですけど。

松嶋:大丈夫です。もう実は延長中ですので(笑)。

鈴木:そうですか。まさに最後は消費者の選択だと思うんです。ですから、海外から安い食糧が入ってくると、だけど、それについてのいろんな情報を自分なりに分析して、国産と比べて、国産の食糧を食べるってことが質の安全性の面と、あるいは、いざというときの備えとして国産を支えようかと。あるいは、イタリアの米がそう言われているように、イタリアのロンバルディア平原の水田について、イタリアの皆さんは「これはオタマジャクシが住めるよね」と、それから「洪水を防止してくれるよね」と、それから「水も濾過してくれる」と。こういう機能も含めて、お米の値段っていうのを考えれば、それに我々は対価を払おうということですね。

速水:一部メリットに関しての反発がいっぱい来ているので答えますと。

松嶋:TPPの(笑)。

速水:TPPで自由化すると当然輸出も増えるんです。そのくらいの知識もないんでしょうかっていうふうに思っちゃうんですけど。TPPもわりと、政治的な判断のあれになっていて何が何でもダメだって言う人たちもいるんですけど。

鈴木:私ね。

(一同笑)

松嶋:そこは今日のお二人はちょっと意見があれですけど(笑)。

速水:TPPに関してはちょっと分かれますね。ただ、基本的には食の問題、食の安全保障の問題がある、個々の安全の話があるというところではたぶんかなり一致していると思います。

鈴木:そう、最後は消費者の選択だと。だから、安いものが入ってきても国産のほうがいいっていう人たちがしっかりと国産の食糧を買うような動きができれば。だから、農家を保護するとかそういう問題じゃなくて、自分の食糧をどうやって将来にわたって自分が守っていくのかっていうことから。

松嶋:そうですよね。

鈴木:そういう補助金の。

速水:それを考えるとこからが一歩です。

鈴木:そういうふうに考えたほうがいいと思いますね。

松嶋:食に安さというのを求めていってしまうと、回り回って実は自分の首を絞めていることになっているっていうことも考えながら、選択をするっていうことも大切ですけど。

鈴木:そうですね。

松嶋:締めたいところですけど、やっぱり選択するというのはすごく難しいところでもあって、やっぱり選択できないというところもあるのかなっていう気持ちもするんですよね。例えば、高いものは買えない、安いものしか食べられないっていう人は、もしかしたら選択したくないんだけど選択せざるを得ないって部分ももしかしたらあるのかなという感じなんですが。ちょっとお時間も迫ってきましたね。

鈴木:そこが悩ましい。

松嶋:ということで、ここまで食をめぐって安さ・美味しさだけではない、非常に違った角度の問題まで踏み込んでまいりましたけれども、では、お二人にご感想をお聞かせいただければと思うんですけれども。まず鈴木さん、本日はいかがでしたか?

鈴木:今日はいろいろこうやって議論させてもらって、本当に勉強になりました。自分の考えもまた深められたと思いますので、私もこれを機会にTPPの問題や食の問題をまた色々考えて、その悩ましい部分も含めて、どういうふうに我々はやっていったらいいのか一緒に考えていきたいな、さらに議論していきたいなと思っております。良い機会になりました。ありがとうございます。

松嶋:ありがとうございました。速水さん、お願いします。

速水:やっぱり冒頭で話した話ですけど、『フード・インク』みたいな映画が、ドキュメンタリーが日本で作られないことの弊害っていうか、「いや、作れるでしょう」と思うんですけど出てこないんですよ。それこそ何でだろうって、こういうニコニコとかでドキュメンタリーみたいなのを作るっていうときに、やっぱ食の問題がこれだけ盛り上がってみんなの関心があるんだったら、『フード・インク』ぐらいちゃんと切り込んだものを、それこそ「色んなとこで取材できませんでした」って取材拒否をされながら作っていくみたいな事って。明らかに僕はジャーナリストなので僕らの責任でもあるんですけど、そういう意味では、わりと日本の難しいところはやっぱジャーナリストってインサイダーなんですよね。だから、食糧関係でもやっぱりそこに噛みついてはいけないところとかがある。アメリカができるのは、やっぱりアウトサイダー、その業界の外の人が「ん?」って言って入ってくるところがあって、だから、そこで取材拒否するっていうことが繰り返されても作品になるみたいなところがあるので、ちょっと僕はTPPを含めて今日は食の問題自体もできたけど、やっぱ『フード・インク』って映画に立ち返ると、これが日本で作れないことの問題みたいなのが一番忸怩たるものがあるなって気がしましたね。

松嶋:確かにそうですね。

速水:そういう意味では、今日そこに一つ僕らで議題にできたのは良かったのかなっていう気はしますね。

松嶋:そうですね。こうやって語れる機会があったのもすごく良かったのかなというふうに感じますけれども、さあ、改めてニコニコユーザーの皆さんは『フード・インク』並びに対談で食ということについて考えるきっかけになって頂ければ幸いでございます。ということで、鈴木さん、速水さん、本日はありがとうございました。

速水:どうもありがとうございました。

鈴木:ありがとうございました。

松嶋:ニコニコドキュメンタリーでは、来月も「本当のことを知りたい」というユーザーの思いに応えるべく、また違った形のドキュメンタリーと対談番組をお送りする予定です。そちらも楽しみにしていただければと思います。本日はおつき合い頂きましてありがとうございました。またお会いしましょう。おやすみなさい。

(終了)

・[ニコニコニュース]「あなたが知らない食の世界 ~TPPで変わる?日本の食卓~」全文書き起こし(1)~(4)
http://search.nicovideo.jp/news/tag/20151031_あなたが知らない食の世界_~TPPで変わる?日本の食卓~?sort=created_asc

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]あなたが知らない食の世界 ~TPPで変わる?日本の食卓~ - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv239257943?po=newsinfoseek&ref=news
・ニコニコドキュメンタリー - 公式サイト
http://documentary.nicovideo.jp/

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