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「消費増税、若者のため」 岡田副総理、ニコ生で「社会保障改革」語る 全文書き起こし<後編>

ニコニコニュース / 2012年3月24日 18時45分

岡田克也副総理

 岡田克也副総理は2012年3月22日夜、ニコニコ生放送の番組に出演し、消費増税を軸とした「社会保障と税の一体改革」について語った。岡田副総理が自ら「消費増税」を説明した番組の前半が終了し、後半では司会の角谷浩一氏や視聴者からの質疑応答の時間も設けられた。

 番組の最後に、司会の角谷氏の「今日は言いたいことが言えましたか?」と問われると、笑顔で「はい」と答えた岡田副総理。以下、岡田副総理が存分に語った「若者のための消費増税」の考え、後半部分を全文書き起こして紹介する。

・「消費増税、若者のため」 岡田副総理、ニコ生で「社会保障改革」語る 全文書き起こし<前編>
http://news.nicovideo.jp/watch/nw221485
・[ニコニコ生放送]本記事の書き起こし開始部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv85913851?po=newsinfoseek&ref=news#28:51

■社会保障を年金・医療・介護に「子育て」を加えて4事業に

司会・角谷浩一氏(以下、角谷): さて、消費税の話ですけれども、なぜ必要かというのは冒頭にお話いただきました。その意味もよくわかりました。

 ただ、歴代の内閣がやりきれなかった。また、シミュレーションが上手くできなかったり、想定外のことだったりがいくつかあった。その想定外は、沢山の日本の人は長生きできるようになったというような、医療の向上だとか、色々なことがあるでしょう。それは良いことなんだけども、それに対して政策がなかなかすぐ切り替わっていかなかった。

岡田克也副総理(以下、岡田): 社会保障制度は国民のほうを見て、最後に決めるときにどうしても甘くなるんですよ。私はずっと、若いときから携わってきました。

 例えば、年金の支給開始を65歳にするという年金制度の改革は、もっと早くできたはずなんですが、やっぱり改革を少しゆっくりするとか。年金の額をもっと、保険料も上げなきゃいけないんだけど、ゆっくり上げるとか。どうしても痛みを考えて、甘くなってしまって。

角谷: それぞれの政権が、覚悟を決められなかったと?

岡田: はい。これは与野党悪いんですよ。その結果として、若い世代に全部かぶってきているということですから、そういう政治は変えないといけないと思うんです。

角谷: そうしますとね、「お金が足りない。間に合わないんです」「ここまで日本は借金していて、これを増やせば増やすほど若い人たちに負担が増える」。だから今、「まだ間に合いそうな今が、ギリギリなんだ」というのがご説明ですよね。

岡田: はい。

角谷: 今までの借金をともかく止めなきゃいけない、今までのツケを何とかここで食い止めるんだという政策まではわかりました。

 でも若い人たちからみれば、これから社会に出ようとか、これから色々就職をしたり、起業をしたり、それから所帯を持ったり、子どもを産んだりと、まだこれからの長い人生を夢を持って語りたい若い人たちにとっては「今までの借金があるから大変なんだよ。もう、これからはあんまり良い国じゃないけど我慢してね」っていうふうに聞こえちゃうんですよ。

岡田: さっきの説明の消費増税の1パーセント部分なんですが、年間の金額にすると7000億円ぐらいなんです。我々は子育てに対しては相当力を入れて、しっかりやろうと思っているんですよね。

 今まで社会保障っていうと3事業と言ってですね、年金・医療・介護、これは概ね高齢者の方のためのものですね。それにやっぱり子育てを加えて4事業にしたい。

 日本は先進国の中でも、働くことと子育てすることが両立できない最後の国だと思うんですね。それをきちっとできるようにして、特に、女性が働きながら子育てできるように。あるいは若い夫婦が子育てできる。そのために、かなり政策的な資源を投下しようというふうに思っているわけです。それは、若い人に是非、希望をもって結婚、仕事も一生懸命してもらいたいということなんですね。

 もうひとつは、このままの社会保障制度を継続していったら、どこかで壁にぶちあたっちゃうわけです。例えばギリシャだと、年金や社会保障のカットになったわけですね。我々はそうはしたくない。今の日本の社会保障は、そうはいっても国民皆保険・皆年金で、世界に冠たるものなんですね。世界標準で見たら、かなりレベル高いです。これを持続していくという自身が、すごく意味のあることだと私は思うんですね。

角谷: それを維持するためには、色々まだまだ税率のアップだとか、できるだけ現状を維持するための努力はしなきゃいけない。それは若い人たちもそうだし、年配の人たちは自分達が今まで払ってきて、今は年金をもらう立場にあるという人たちは穏やかに過ごせるように、国がやろうとしている努力はわかりますよ。

 だけど、経済の状況が変わってきたりして、みんなが今幸せになるのがとても難しくなった。先ほどに貧困のお話もありました。結局、勝ち組と負け組にはっきり分かれてしまった。

岡田: それを補正するのが国の役割なんですよね。これ、日本だけじゃなくて、世界全体で経済のグローバル化の中で、どうしても貧富の格差って言うのが問題になっていますね。

 特に日本は、それが酷いんですよ。それは国がしっかりと最低限のところは支えなきゃいけないということで、我々は今度の改革のなかで保険料を払えないような方に対して、国がきちんと払える形をとるとか、国民年金も払えていなくてあまりに年金が少ない人に対して年金の多いかたから少し我慢していただいて、年金の少ない人にまわすとか。そういうことを今、国会の法案に出しているところです。

角谷: 政界の中では第三勢力になるんじゃないかといわれている橋下(徹・大阪)市長はですね、例えば「高額所得者の人たちは社会保険のお金も掛け捨てみたいな気持ちで払ってもらいたい」というふうな声も政策の中で出てきています。

岡田: それはかなり大胆な案ですね。我々の案は、年金でも税金が入っている部分があるんですよね。その税金の部分だけは所得の多い方には我慢してもらって、その分だけ年金支給額を下げさせてもらいたいということは言っているわけです。

角谷: そうしますと、お金を持っている人が少し多く払ってもらいたいとなりますけど、中間層を厚くするという政策が高度経済成長時代の自民党政権の中でずっと行われてきて、バブルを経て低成長時代になってくると、こういう社会で物事の考え方・価値観・お金の使い方・使い道が当時とは随分変わってきたと思うんですね。

 「社会制度」だけじゃなくて「社会の生活の変化」みたいなものに、政治や政府はもうちょっと対応しないと、もう少し世の中にあったものを作っていかなきゃいけないじゃないかと思うのです。

岡田: 昔は大家族だったり、地域社会が支えたり、企業が支えたり、社会保障制度の支え手が多様だったんですね。今、それぞれが昔と比べれば弱くなっている。だから、それはやっぱり国がやるしかないんですね。

 最低限の所は国が支える。それから、所得の格差が広がるということは、中間層だった人が所得の少ない層に移行してしまった。それを落ちっぱなしじゃなくて、もう一回押し上げるような仕組みをしっかり導入していく。これは民主党の政策の大きな柱なんですね。

角谷: それは若い人たちにはあまり伝わっていないのですね。増税の負担というのは、自分の生活の負担と考えますよね。それが、その先に関わってくるんだというのがなかなか繋がらない。

岡田: 増税して、全額社会保障のために使うわけですから、結局それは医療や介護や年金の支払い、あるいは子育てに使われる。例えば医療とか介護のサービスというのは所得の多い人も少ない人も同じサービスなんですね。そういう意味では、増税して社会保障に使うということは、それ自身が「所得の再分配」なんですよね。そこを是非わかって頂きたいと思うんですよ。

角谷: そこはなかなかわかりにくいと思う。何度言っても足りないくらいわかりにくいと思うんですよね。

■「国民が信頼してくれている時でないと大連立は出来ない」

角谷: それから、福祉政策というのを全般にざっくり見ますと、多分必要な人・必要な所に、必要な分の予算が付くということは実はとっても大切で。一律でもいけないし、かといって足りないといけない。つまり、「必要な所に、必要なだけ」というきめ細かさが、政府であっても地方自治体であっても必要だと思うんですよね。

 これを国民にわかってもらわないと、どうも「ドンブリ勘定」だったり、「どこかで誰かが中間搾取しているんじゃないか」と思われるのではないか。それは、色々な天下り先があるからということになります。そこら辺の議論が「同時進行じゃないといけない」というお話がありました。

岡田: 我々は行政改革を一生懸命やっているわけですよ。例えば独立行政法人に対する天下りというのは、5分の1ぐらいに今はなっているわけですね。「我々は天下りの斡旋はしません」ということは、はっきり申し上げているわけです。

 そうは言っても将来的に4~50代で官僚を辞めて人生歩もうという時に、民間でやっているような再就職の支援会社を使って、第二の働く場を見つけてもらえるということは、国として後押しした方がいいと思うんです。「あなた、もう次の仕事ありません」「勝手に仕事探してください」というのも、やや行き過ぎで。そうなると結局、辞められませんから。そういったことも合わせてやっていこうと思っているんです。

角谷: そこら辺の政策の実現可能性の全体像が見えてきて、「みんなで押し上げて、こういう政策転換をしているんだな」「だから、このお金はこういうふうに使われるんだな」となる。

 納税者としての最大の興味は「自分がいくら納税したか」から、東日本大震災を受けてたくさんの人が寄付などをして、今はNPO法人への寄付に対しての税制の法律もできて、自分が納付した税金がきちんと使われているかどうか、運用されているかどうかに段々移ってきている。もし政府に渡すことによって、お金がどこ言っちゃったかわからない・・・

岡田: そこら辺が一番大事なところなんですね。だから、例えば北欧諸国というのは税金がとんでもなく高いんだけど、みんなそれで安心しているんですね。それは、将来の社会保障で返ってくると考えられているから。政治・政府に対する信頼感なんですよね。やはり、日本もそうもっていかないと絶対いけない。

 残念ながら、現実は既成政党に対して非常に厳しいご批判をいただいている。私はだからこそ今、自民党と公明党と民主党、もちろん国民新党も、色々な党が協力して、一つ一つ御互い話し合いながら、物事を成し遂げて行くことが大事で、お互い喧嘩している政治を、国民は見たいと思っていないと思うんですよね。

角谷: そんな話をされちゃうと、聞くまいと思っていたのですけど、岡田さん自民党の人たちと色々お会いになって、「大連立のお話をして歩いている」と新聞に書いてあるんですが・・・

岡田: それは間違いで、あちこち話しているっていうんじゃなくて、報道は「ある自民党の有力者に、私が大連立を申し入れて断られた」と。これ、まったく事実に反すること。私はそんな申し入れもしていませんし、断られてもいないのですね。非常に迷惑して、いま抗議しているところです。

角谷: 会ってもいないんですか?

岡田: いや、会うのは会っています。これは、党の中も外も含めて色んな方と意見交換して、少しでも政治を動かそうと、我々が提案している法案についても理解してもらって、出来れば一緒にやってもらいたいと、法案に賛成してもらいたいと思うわけです。それは、当然のことなんですね。

 ただ大連立というのは、いまの時代、さっき言ったように国民の皆さんが既成政党に対して、非常に不信感を持っておられると、むしろ怒りを覚えておられるときに、手を繋いで連立を組むなどということは、私は出来るとは思っていないんですね。

角谷: 出来ると思っていないどころか、そもそも小選挙区制度っていうのは、岡田さんが自民党時代から、自民党を飛び出してからも、ずっと何か新しい政治の形を変えなければいけないとして作った。これは二大政党が出来るんだと。

岡田: それは当然なんですよね。

 ただ、今はですね、衆議院と参議院でねじれた状態になっていて、参議院では民主党は多数持ってないんですよね。法律を一本作ろうと思うと、やはり野党の賛成をもらわないと法律にならないので、幹事長の時から公明党、自民党、民主党の三党でひとつひとつ丁寧にやってきた。

 そういう立法の手間を省こうとしたら「大連立」という風になるんですが、これは、やはり政党政治にとって異例のことですから、それは相当、政党に対して国民が信頼してくれている時でないと大連立は出来ないと思います。

角谷: まあ、そうですよね。

■「一人ひとりの生き方を大事にする成熟した日本を作りたい」

角谷: 話が行ったり来たりして申し訳ないんですけども、既成政党への信頼といいますと、先ほど「国会議員の年間給与を300万円減らすんだ」と言ってました。でも、どうして「政党助成金にメスを入れる」って話にならないんですか?

岡田: 僕は言いたいことはあるんですけれど・・・

角谷: 言っていいですよ。

岡田: これは政党のことなので、まあ閣僚である私が言わないほうがいい。

角谷: でも、政党助成金は僕たちの税金ですよ?

岡田: まあそれは、各党間で話し合っていただくことなので。

角谷: そうなんですか?副総理は、ずいぶん色々なことを提言してるんですから・・・

岡田: 最初ちょっと言い過ぎて怒られましたよ、そこは懲りたんです(笑)。

角谷: 懲りたんですか(笑)。言いたいけど我慢している?

岡田: 今は我慢してます。

角谷: 我慢しているんですか?じゃあ、言いたくなったら、言う時は来る?

岡田: いやいや、それは私、閣僚ですから(笑)。

角谷: そうですか。分かりました。まあ、そういった「政党助成金にメスは入らないのか」と、いうのが僕たちから言うと素朴な疑問になります。

 年金受給者が国民の全体のなかでどんどん増えていってしまい、働いている若い人たちがどんどん少なくなって、若者1人が高齢者1人を、騎馬戦で言えば背負うような形、3人で1人をという状態では無くなってくるんだというお話がありました。

 選挙制度の議論もずっと続いていますけれども、例えば「ドメイン投票法」という法律が各国で議論されています。まだ世界で採り入れられた国はありませんが、例えば未成年の子ども2人を含む4人の家族があったら、子どもたちの票を親が代理投票して「状況を変えようじゃないか」という議論が、ドイツやハンガリーの国会ではあるものの、法案として成立はしていないそうです。

岡田: 僕らは、成人年齢を18歳に下げようってことは議論しているんですね。

角谷: もっとダイナミックな議論が始まっても良いんじゃないですか?

岡田: でも2歳分成人年齢が下がるだけでも、若い人の声はより強くなりますよね。もちろん、投票に行ってもらわないといけないんですけれど。

角谷: つまりね、そういう部分を含めると、「一票の格差」問題というのが、今選挙を縛るんじゃないかという議論があります。でも、もっと考え方を柔軟にして、「区割り」だとか「人口比」などではない、もう少し広い議論が必要なのでは。もちろん成人年齢を18歳にするというのも良いかもしれません。だけど、もっと国民的な議論に巻き込んで行ければ・・・

岡田: それは、アイデアとしては面白いと思います。ただ、憲法を変えないと難しいと思います。

角谷: まあ、そういうことなんですよね。で、それは色々な問題があるのは分かります。でも、議論としてもっと吹っかけて良いんじゃないですか?それがちょっと物足りない気がします。

 それから、先ほどから何度か繰り返すようですけれども、やはり若い人に「こうなれば自分の生活はこういう風なイメージが出来るな」っていう、将来の可能性を示して欲しい。やっぱり、ビジョンを持たないで「いまお金が足りないから無いから頼みます」というだけでは・・・

岡田: いやいや、それは若い人のためにも、持続可能な状態に持っていかないといけない。今より下がってしまうから、申し上げているんですよね。

 私は、日本というのは本当に良い国で、この前の東日本大震災の時に、世界中から手が差し伸べられましたよね。多くの国が「日本って良い国だ」「日本人は好きだ」と思っているんですね。そういう状態をきちんとキープしていくこと、それだけでも私はすごいことだと思うんですね。

 国内では、世界に冠たる社会保障制度、これを維持していくというだけでも非常に大事。しかし、それすらなかなか簡単なことではないので、まずはそこに全力を上げたいと。

 あとは、やはり日本は成熟した社会ですから、国が「えいやー」と方向性を示すのではなくて、一人ひとりの生き方を大事にする、多様性を大事にする、人の考え方もお互いに認め合う、そういう成熟した日本を作っていきたいと思うんですね。

角谷: 岡田さんは今、副総理です。これから政治家として色んなことを将来的にも考えてもらわなければいけない時期に来ていると思いますよ。

 例えば「消費税が20%になる」というような話が出てきた時に、僕たちはびっくりします。でも、その代わりに「出産・教育・福祉は国へ任せてください」と、そのくらいはっきり言ってくれたほうが、「それなら、この税金が高い理由が分るな」となる。北欧のやり方や、フランスなんかそういう風なスタイルかもしれませんけれど、「だから心配しないで、いま辛いかもしれないけど、これ(消費増税など)をやっていくことが、若い人のためになるよ」と、もっとそういう風に言ってくれないと。

岡田: まあ、これは、ステップを踏んでいかないとね。いきなり「消費税が20パーセント」って言われたら、みんなびっくりしますよ。

角谷: 民主党内は「消費税は何年経ったらまた上げるんですよ」という話を盛り込むとか盛り込まないとかで、また揉めますよね。アレルギーがあるのは分かります。だけど、増税の覚悟は国民に教えてくれないと、「一体、いつまで我慢すれば良いんですか?」って気持ちになると思いますよ。

岡田: ですから、このままでは持ちませんからそこは理解していただいて、10パーセントにした後どうするかってことは、2015年前後に、もう一回議論させていただくということだと思うんですよ。今から、それを全部決めるというわけにはいかないんですよね。

角谷: なるほどね。あんまり先走るといけないというのは、岡田さんとの先ほどの話で分かりました。

岡田: メディアにも、それだけは言われちゃうんですよ。

角谷: そこだけ取り上げられてしまう。国家のビジョンを組み立てていくときに、いっぺんに言うとそこだけ(恣意的に)ピックアップされてしまうから良くないと言うのは分かりました。

■「デフレの時代は、若い人にとって絶対チャンスだ」

角谷: 例えば消費税増税の議論のなかで、生活必需品とか生鮮食品、生活食料品、こういうものに関しては、税率を軽減したり据え置いたりする議論は無いんですか?

岡田: そういう議論はありました。ただ、10パーセントの段階では見送ろうと。つまり、ヨーロッパなんかでも、15パーセントとか20パーセントのときの話なんですよね。で、私は個人的にはあまり好きではないんです。

 というのは、国が「考え方」を押し付けることになる。フランスでも、トリュフはぜいたく品でも安い税率、輸入品のキャビアは高い税率、そういう風に、国がいろいろ介入して決めるのは私は良くないと思う。

 例えば、「自分は食べ物は最低限でいいけども、車だけは良いスポーツカーに乗りたい」という人もいるわけで、あまり僕は国が生活に口を出すような形は良くないんじゃないかと思う。我々がいま考えているのは、むしろ所得の少ない方に、その消費税収の一部をお返しすること。そうすると、返したお金には色が付きませんから。そういうやり方を考えているわけです。

 その前提として、やはり番号制というのが必要ですね。いい加減なことをする人が出ないように、そこはきちっと番号で押さえて、そして所得の少ない方に一部還元する。

角谷: それが歳入庁の考え方ですか?

岡田: それはちょっと違うんです。『給付付き税額控除』というような難しい名前なんですけれども、税金を払っている人は、それを一部負けてもらえるということが出来ますよね。でも、所得税を払っていない方は、払っていないんだから負けてもらえないじゃないですか。そこへ消費税でもお返しする考え方なんですね。

角谷: 手厚くやろうというのも良く分かります。でも、一生懸命頑張って、一生懸命働いて、一生懸命国に納税している人たちへも、「足りないからもうちょっと払って下さいよ」って税金を持っていかれる。頑張っている人たちを評価する方法というのは、無いんですかね?

岡田: 所得税の税率がかつては75パーセントくらいだったのが、5割に下がってきているんですね。ですから、頑張った方には相当報われる仕組みにはなっていて、それがちょっと行き過ぎたんではないかという反省が、いま出ているということではないのでしょうか。

 で、私はこのデフレの時代というのは、若い人にとって絶対チャンスだと思うんですよ。つまり、デフレではどんどん資産価値が減っていきますから、資産のある人のほうが、資産の無い人より嫌なんですよ。だけど、資産の無い人にとっては、デフレって別に悪いことでは無い。むしろ、土地にしろ、施設にしろ、安く物が手当できる。だから、あまり悲観的にならず、こういう状況を上手く活かして、若い人に頑張ってもらいたいと思うんですね。

角谷: もしチャンスだと言うのなら、そのチャンスがあるよってことも、もっと国民に分かるように説明してもらいたいと思います。年収300万円の人が、1000万人を超えてる国です。ですから、世界に冠たる経済大国である一方で、そういう・・・

岡田: 最も貧困率の高い国のひとつになってしまった。だから、最低限のところはしっかり国が支えるということですね。

角谷: ぜひ、そういう風にして頑張っていただきたいと思います。

■「不景気条項」は、時の政権が政治責任を負って判断する

角谷: 皆さんからメールが来ています。ご質問も多いと思いますから、お答えください。北海道の男性です。

「2014年4月に上げる消費税の法案を、なぜ、いま急いで提出しようとしているのか。『社会保障と税の一体改革』と言うのなら、社会保障の法案もセットで提出すべきではないでしょうか?」

岡田: 社会保障の法案はたくさんこの国会で出していますし、これからも出します。年金や、子ども・子育てなど、消費税法案とセットです。2014年はもうすぐで、色んな準備もあるんですね。けっこう、Suica(スイカ)とかですね、ああいうカードって準備に時間がかかるんですよ。

角谷: 移行期間がちゃんと無いと厳しいと言うことですか?

岡田: はい。ただ経済的にひどくなった時は、消費増税にストップをかける、ストッパー的な条項も入れるということですね。

角谷: 例の「不景気条項」という話がありまして、いま数値を入れるか入れないかというのが民主党内で議論があるようですけれども、およその数字でも結構ですけども、どういうイメージだと、景気が良くなったということで、「不景気条項」のなかで、これは行けるという判断になるんですか?

岡田: それは、数字では色々あるんですね。経済成長率もあるし、鉱工業生産(指数)もあるし、失業率もあるし、それは、最終的には総合的に判断して、その時の政権が決めるしかないんです。

 それで景気がさらに悪くなったりしたら、その政権はもう持たないわけですから、結果は当然政治責任を負わなければいけない。だけど、あんまり数字で固めてしまうと、判断の余地が無くなっちゃいますよね。それはかえって、私は危険だと思うんです。

角谷: ああ、なるほど。数字は逆に入れずに、もう少し全体の空気が必要だと・・・

岡田: 全体を判断して、その代わり政治責任をきちっと取るということですね。

角谷: そうすると、増税を決めた後の内閣のほうが大変ですね。

岡田: そうだと思います。

角谷: 岡田さんが大変になるかもしれませんよ。

岡田: いやいや、私は関係ないです。

角谷: 関係ないんですか?そうですか。

■平均医療費が最も少ないのに最長寿「長野県」をモデルに

角谷: 次のメール行きます。東京都の男性です。

「消費税を上げるという話は聞きますが、社会保障の改革の内容はまったく聞きません。消費税についても、インボイス制や複数税率の導入など、改革の余地があると思います。税率を上げるという説しか聞きませんが、何をどう改革するのですか?」

岡田: さっき説明した通り、子ども・子育て7000億円。それから、医療・介護は、地域・中学校区単位ぐらいで、一体的にやる仕組みにする。そういう形で、自宅で医療、入院だけじゃなくて、そういうことで、経費も少なくて済むし、結局、質の高い医療が確保できる。長野県なんか一人当たりの医療費が最も少ないけれども、最も長寿な地域なんですね。そういうことをモデルにしてこれをやりたい。

 それから年金は、所得の少ない方に厚めに支給するような最低保障機能を高めるという改革をやる。こういうことが、いずれの法案もこの国会に出して、平行してやっていくということです。

角谷: なるほど。

岡田: こういうこと、なかなか放送されないんです。

角谷: 放送されないんですか(笑)

岡田: だからぜひご理解いただきたいなと思う。

角谷: これは多分、何度も言わないと、なかなか国民には浸透しないんだと思いますね。やっぱり、負担のことだけが(国民の)頭に残る。それは、政府や与党が理解を求めるためにやり続けなきゃいけないものだと思いますね。

岡田: 週末ごとに、全国まわってますから(笑)。

■「40・50代の公務員もスリム化しなければならない」

角谷: はい。北海道の30代の女性です。

「現在、パートなどの非正規で働く人は、保険料全額負担にもかかわらず、給付が不利な国民年金や国民健康保険に入るしかありませんよね。これを改善して、パートの人でも厚生年金に入れる案を進めていたと記憶しているのですが、どうなっていますか?」

岡田: これはこの国会に法案を出します。今まで1週の労働時間が30時間だったものを、20時間の方まで厚生年金へ加入できるということで法案を出すんです。ただ一方で、事業主、つまり会社のほうは負担が増えてしまうんですね。だから、反対があるんですよ。

 そういうなかで、苦労して第一歩は踏み出すかたちにいたします。今、国民年金だった方が厚生年金になれば、保険料の負担は減ります。つまり、事業主も年金の支払いを負担しますから。で、給付は増えます。そういったことは、この国会で法案を出しております。

角谷: はい。あまり時間がなくなってきたようですから、あと少しにします。こちら東京都の男性です。

「公務員採用を減らすと新卒者の雇用も減らされることになりますが、若い人に理解をしていただくには、切りにくい、既存の公務員を切らなければ、ただのパフォーマンスにしか見えません。本当にやる気はありますか?」

岡田: もう少し40代50代のところもスリム化していかなければいけないということですね。そのために、自分で第2の人生を選びやすいような仕組みを作っていくことを、当然考えています。

角谷: その辺りを同時に・・・

岡田: それは同時なんですけれども、だだ、採用のほうはもう試験の日が近づいていて。順番はこちらが先だったんですが、ほぼ同時にやっていきますから。

角谷: はい。同時に景気を良くするための、もう少し別の「秘策」みたいなものが、まったく別のところで走っていってくれないと。こっちだけでは・・・

岡田: これはあまり評価していただけないかもしれませんが、日銀は今回、金融緩和の新しい措置を取って、その結果として株が上がったり、円が安くなったりしていますよね。これは政府と日銀のあいだの連携プレーなんですね。そういうところもぜひ認めていただきたい。今まで、ここまで日銀と政府が連携したことは無かったんです。

角谷: それは大きな変化なんだということは、やはりなかなか理解されていないようですね。

■「消費増税」を不安に思う若者たちと少しでも議論を

角谷: あと2つの質問にします。女性27歳、東京の方。

「派遣労働者として働いています。夜中まで働いても生活はギリギリ、特別ぜいたくな生活をしているわけではありません。これで消費税増税となったら(将来)生活をしているか不安です。私たちのような派遣労働者への保障は進んでいるのでしょうか?」

岡田: 派遣法の改正も、この国会、ようやくまとまりました。我々から言うと、必ずしも満足できるわけではないのですが、各党が賛成しないと法律になりませんから、第一歩として、この国会で成立ということです。

角谷:そうすると、どこまで、どういう風になるんですか?

岡田: 当初の製造業の派遣を制限するとか不十分なところはあります。そこは率直に認めます。各党(事情が)あるものですから、まあ、やむを得ないことです。

 派遣労働の全部が悪いわけじゃないのですが、スキルも蓄積しませんし、大変ご苦労いただいているわけですから、そういうものを減らすための努力っていうのは、これからも、一生懸命続けていかなければいけません。

角谷: それは、正規雇用に向けるような施策が盛り込まれるという風に見ても良いですか?

岡田: そういった方向で、しっかりこれからも議論していきます。

角谷: 最後の質問です。これは、群馬県の19歳の男性です。

「ニコ生見ています。岡田さんは、今日議員バッチを付けていないように見えますが、なぜでしょうか?」

角谷: これはコメントでもずいぶん同様の指摘があったようですけれども、これはどういうことでしょうか?

岡田: ずっとそうなんです。国会に入るときだけは、バッジを付けていないと入れてくれませんから付ける。それは基本的に20年間、バッジは付けない主義ですね。

角谷: 岡田さんのスタイルなんですね。

岡田: そうです、スタイルです。別に意味なんてそんな無いんですけど。

角谷: そうですか(笑)。

 僕は今回、意見をやり取りするというよりは、今岡田さんたちがやろうとしていることがどういうことなのかを出来るだけ聞いて、全然分からないと思っている人たちにも、この議論の土俵を少しでも作れるようにしなければいけないという風に思いました。

 皆さんの書き込みやコメントをたくさんいただいています。色んな意見があるし、不安を感じている若い人がたくさんいる。やはり「増税」っていう言葉だけが残ってしまう不安感に対して、「あなたたちのためになっているんだ」ってことを伝えてもらっても、あんまりまだピンと来ていない。これについては、岡田さんがこれからも努力し続けなければいけないと思いますが・・・

岡田: そのために、やっているつもりです。

角谷: そうですね。また機会があったら、ニコニコ生放送にご出演していただいてもよろしいでしょうか?

岡田: もちろん。

角谷: 今日はだいたい、言いたいことが言えましたか?

岡田: はい。ありがとうございます。

角谷: ということで、ちょっと時間の制約があるし、まだ民主党内では議論の最中であります。この後、また国会に戻られるのだと思いますけれども、今日は岡田副総理にお話を伺いました。

 皆さんからたくさんのコメントをいただきました。全部ご紹介できなかったことは本当に申し訳ありませんが、まずは今日は岡田さんの話を徹底的に聞いてみようということでした。

 この後も、こういった問題について色々な議論があったり、今度は国会での議論が始まりますから国会が動いたり、その時にはまた色々とお話を伺えればと思います。今日はどうもありがとうございました。

岡田: ありがとうございました。

◇関連サイト
・「消費増税、若者のため」 岡田副総理、ニコ生で「社会保障改革」語る 全文書き起こし<前編>
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(書き起こし・ハギワラマサヒト、吉川慧、内田智隆、編集・丹羽一臣)



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