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ネット配信者の原点にして頂点......いや底辺? 古参配信者のカリスマ・永井先生インタビュー

ニコニコニュース / 2016年9月12日 11時0分

ニコニコニュース

 ゲーム実況、ニコ生主、YouTuberなどの先駆けとなったネット配信者が「永井先生」だ。その名前は知らなくても「なんぞこれ」という言葉をネット中に広めた人、といえばピンとくる人もいるのではないだろうか。

 活動の歴史は古く、まだ動画配信などの文化がなかった「2ちゃんねる時代」に遡る。ネットに広く名が知られるようになったのは、動画配信システム「PeerCast」の人気配信者となり、ニコニコ動画黎明期に配信の録画が転載された頃。元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏が「ニコニコ動画の面白い動画」として言及したり、しょこたんのブログや漫画『GANTZ』に「なんぞこれ」といったセリフが登場するなど、当時のネット配信者としては極めて大きな影響力を持つ人物として話題になった。

 放送スタイルは、パチスロと雑談。そして絶望的に下手くそなゲーム配信。本名やプライベート、性癖まで何もかもをさらけ出すオープンなスタンスで、リスナーから送られた大量の金品をほぼ全てパチスロに注ぎ込んで暮らす「38歳児」だ。一時は「型枠大工」の見習いとして働いていたが今は辞め、配信に専念。本人は「IT社長」などと名乗る事実上の無職である。

 今なお常時接続で連日数千人規模のリスナーを抱える人気配信者だが、メディアへの露出は驚くほど少ない。ネット上で人気になった配信者が公式放送に出るなど、表舞台に進出するのが当たり前になった今でも、「顔出しなしの長時間垂れ流し放送」といった古風なスタイルを貫いている。

 暴言、失言の類も数えきれないが、そのトークスキルはこれまでのネット配信者の中でも稀有なもの。そんな永井先生のあまり隠されていない素顔(配信で何もかも喋ってしまうため)に迫るべく、愛媛県伊予市の自宅まで行って話を聞いてきた。

取材・文/たろちん

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■初めての放送は「Yahoo!チャット」

――永井リスナーの1人としてお会いできて嬉しいです。今回は、今までメディアにほとんど露出してこなかった永井先生の活動について、しっかり記録して後世に残す機会にしたいと思っています!

永井浩二氏(以下、永井氏):
 そんなん、残す意味がないですよ、マジで(笑)。

――今でこそ、ニコニコ動画やYouTubeから人気の配信者などが出てきていますが、永井先生はその先駆け的な存在ですよね。ネットで活動を始めたきっかけは?

永井氏:
 きっかけは完全に「モーニング娘。」ですね。

 2000年くらいに工場で夜勤のバイトをしてたんですけど、年上の先輩がパソコンを持ってまして。愛媛のクソ田舎なんで、当時はパソコン持ってる人も少なかったんですけど、その先輩が「モー娘。のファンの人らがHPを作っててすごいぞ、ええぞ」と(笑)。
 で、その頃「モーニング娘。」の大ファンやったんで、とにかくそのHPが見たくてパソコンを買いました。21歳くらいっすね。

――2ちゃんねるの「モーニング娘。(狼)板」でコテハンとして書き込みしてたんですよね。

永井氏:
 最初は2ちゃんってものを知らなくて、普通のファンサイトを見てたんです。
 そしたら、そこの掲示板に「ブス」とか「死ね」とか心ない書き込みをしよるやつらがいて、俺はレスで「いい加減にしろ!」とかって戦いよったんです。
 でも、それを見た人に、「あいつら2ちゃんのやつらやから構うなよ」って言われて。

――2ちゃんにマジレスしてたんですね(笑)。

永井氏:
 それで「2ちゃんってどんなとこぞ」って見に行ったら、そっちのほうが面白くて入り浸るようになった、と。
 当時は「テレホーダイ」っていう、夜11時から朝8時までなら月1800円でネットができるプランやったんですけど、8時を越えてもつい書いてしまって「また余計なお金かかってしもた」みたいな。

――コテハンから「ねとらじ」のラジオDJとして人気になっていったんですよね。

永井氏:
 そうっすね。実は、一番最初に放送みたいなのをやったんは「Yahoo!チャット」なんです。
 チャットルームにいる人に声を聞かせられる「ボイス機能」っていうのがあったんですけど、だーれも喋らんから、俺だけ「はーいこんばんは!」とか言ってて(笑)。そしたら「きたー」とか「歌うたってー」とか言ってもらえて、ラジオDJみたいになっていってしまいました。
 そのときは、永井やなくて「あべちゃん」とかって名前でやってましたね。

――安倍なつみのファンだったからですね(笑)。「ねとらじ」以外にも、永井先生は「モー娘。(狼)板」や趣味の「パチスロ板」などにミニコントのような動画【※】も投稿してましたよね。

※パチスロ音楽にのせて母親の財布から2000円盗んだことを歌う「けいこごめんよ(KC)」などが有名

永井氏:
 当時、ソニーの「サイバーショット」っていう、最新のデジカメを買ったんです。550万画素やったかな。動画は1分くらいしか撮れないんですけど、それで近所の友達とかと動画を撮って、2ちゃんに投稿してました。「俺が扉から出てきて裸で踊るから、お前らは無視してくれ」とか、ちゃんと台本も考えて(笑)。

 当時のネットって、みんな文字だけやし、誰も姿出さんかったから、やっぱり「何しよんこれ」って面白がってもらえました。今では当たり前やけど。

――YouTubeができる前に、それをやった先駆者なんですよね。当時はネットで顔を出したり個人情報を出すことにすごく抵抗感の強い時代だったと思うんですが、永井先生はどうしてそういうことができたんですか?

永井氏:
 いやぁ......頭が悪かったからじゃないですか(笑)。小学校時代から目立ちたがり屋で、人に笑ってもらったらめっちゃ嬉しくなるんです。その延長でずっとやってきてるんじゃないですかね。

 小学校の時、ゲームを作ってみんなにやらせるのが好きだったんですよ。鉛筆ですごろくみたいなのを書いて、「ここに武器がある」とか「パワーがなんぼ」とか決めて、友達にサイコロ振ってもらって。で、「どう、おもろい?」って聞く。自分の作ったもんで喜んでもらうのが、好きなんすよね。

■PeerCast時代は「ゲームやっとかないかんのかなとか思った」

――2006年にはPeerCast(ピアキャス)が登場して、映像を使った配信が始まります。この配信の録画がニコニコ動画やYouTubeに転載されて、「永井先生」の名前や「なんぞこれ」といったフレーズがネットで広く認知されるようになりました。

永井氏:
 もともと一番やりたかったのが、映像でパチスロの実機を見せながら喋る、実機配信なんです。
 それまではラジオで『北斗の拳』とかのパチスロを打って、「お前ら今ジャギステージ行ったぞ!」とか俺が声だけで全部説明してたんで、もう見せたくてたまらんかったんですよ。ピアキャスで自分の一番の夢が叶ったって感じです。

――ピアキャスは、配信側も視聴者側も設定が複雑で、初心者にはハードルが高かったですよね。

永井氏:
 俺は、リスナーの人にリモートで設定してもらいました。
 パソコンの個人情報とか全部さらけ出して、遠隔でパソコンを動かしてもらうという(笑)。今この部屋にある、パソコンとかWebカメラとかゲーム機とか、全部リスナーさんからのいただきものっすからね。ほんとリスナーさんには感謝してます。

――その頃からゲーム配信も増えましたよね。『アイドルマスター』『ドラクエ3』『バイオハザード』など、まだ「ゲーム実況」という言葉が認知される前から、ニコニコ動画で大きな人気になっていました。

永井氏:
 「ゲーム画面に自分の声が入って放送できる」っていうのも、スロット配信と一緒で、やってみたかったことなんですよ。

――でも永井先生って全くゲーマーじゃないですよね? それも『ドラクエ8』で最初の町から出られなくて詰んだりするレベルで。

永井氏:
 あれ、全部マジやからな(笑)。
 まあ短気なんで、ゲームとかクリアまで続いたことがほとんどないんやけど、出たばっかりの「プレイステーション 3」とか「Xbox」とかを、リスナーさんにいただいたのが大きかったです。「せっかくできる環境があるんだからやってみたい」っていう気になったんで。

――その下手すぎる「チンパン」プレイが、かえって笑えると人気になったと。ただ、ニコニコにある動画は、永井先生本人じゃなくリスナーさんが転載したものですよね。そこで人気が出たことで、いわゆる「ニコ房【※】」「ゲーム房」がピアキャスリスナーにも急増しました。そのときはどう思いました?

※「ニコ厨(ニコニコ中毒)」と同義。永井配信ではリスナーのクラスタを「~房」と表現する

永井氏:
 あの時は「ゲームやっとかな、いかんのかな」とか思ったっす。俺、あんまりそういうこと思わんのやけど。
 ずっと自分の好きな「モー娘。」とか、パチスロの配信ばっかやってきたけど、「ゲームやってくれ」って人がすごい増えて、こういうものの方が楽しんでもらえるのかって。そういう感情は、ニコニコで初めて芽生えたものかもしれないですね。

――永井先生があまりにゲーム下手なせいで、リスナーからも「コメ読め猿」とか「壊れたラジコン」とか相当ボロクソ言われてますけどね(笑)。今までやってきたゲームで、永井先生が純粋に楽しかったゲームってありますか?

永井氏:
 『みんなのGOLF(みんゴル)』は好きっすね。「どういう角度で入れるんか」とか楽しいし、みんなに見てもらいたい。ただゴルフ放送はめっちゃ「つまらん」って、ゲーム房にすら言われるんで......。

――『みんゴル』が始まると「終わったらTwitterで『ゴ終』ってつぶやけ」って言って、リスナーが去っていくという(笑)。

永井氏:
 あと、最近めっちゃ感動したんが、『ダークソウル』をクリアできたことですね。

 最後のボスを倒すときに、攻撃を跳ね返す「パリィ」ってのをするんですけど、あれを連続で決めよったときは、スロットやりよるときみたいに(脳)汁が「ブワーッ」って出ました。俺は全然ゲームできんけど、ゲーム好きな人らが大興奮してやってるのは、こういうことかって。
 リスナーの人らに相当教えてもらいながらだったんですけど、「お前には絶対クリアできん」って言われてたゲームをクリアできて、今までゲーム放送をやってきた中で一番興奮しました。

■引退と復帰、そして「自称IT社長」へ

――永井先生は人気絶頂の2008年頃に、急にピアキャスを引退してネットから姿を消しましたよね。その後2010年に、あるニコ生主の放送にゲスト出演というかたちで復帰しましたが、その頃はかなりコメントが荒れたというか......。

永井氏:
 いかっ! そこはお前、黒歴史【※】やから......。

※詳細は「ニコニコ大百科」などで

――ま、まあ僕も正直いちリスナーとして、あの頃は「永井先生終わったな」と思いました。で、2012年の頭に再び引退して完全終了かと思いきや、2012年末に、突如2ちゃんねるのスロット機種板に書き込みをして、今の復活につながっています。空白の時期は何をしていたんですか?

永井氏:
 もう「型枠大工」の仕事と、パチスロだけっす。給料は全部パチンコ屋に流しよるクソみたいな生活。

 ところが、仕事で指が裂ける大怪我をして、保険に入ってないから金もなくなって、どうにもならなくなって「お前ら永井なんやけど」って、2ちゃんのスレに書き込んだんです。
 その時はガラケーしかなくなってたんで、昔サイバーショットで動画を撮りよった時みたいに、泣きそうな声で「永井です」って。指にフランクフルトみたいな包帯巻いた状態で、動画を投稿したっていう。

――「パソコンも金ももうないんよ~」ってボロボロになってて、昔の永井先生が戻ってきた感じがしました。

永井氏:
 そしたら、リスナーさんがパソコンやカメラを送ってくれて、また配信ができるようになったんです。昔よりカメラの画質もバリバリによくなってて、自分のやりたかった放送がついに最終章に行ったという。

――どうしてもう一度、ネットに戻ってこようと思ったんですか?

永井氏:
 ほんとに「もう辞めよう」と思っとったんですよ。でも、あまりに長い間やりすぎてネット中毒になってたんだと思います。

 また放送で「お前らー!」って言いたかった。
 じゃないと、わざわざガラケーで動画撮って見せたりしないですから。

――復帰後は、「Ustream」や「FC2ライブ」などを中心に配信してますね。特にFC2では、換金可能な「チップ【※】」が一度に50万チップ以上入るようなこともあって、かなり永井先生の生活の支えになってると思うんですが。

※1チップ=1円。換金時は一定の手数料がかかる。永井配信での通称は「プッチ」

永井氏:
 それはほんと間違いないっす。チップ入れて応援してくれるリスナーさんとかのおかげで、今の俺が生きていけてるんで!

――そうした収入があって、「型枠大工」を辞めて「自称IT社長【※】」になったわけですよね。お父さんお母さんは、今の永井先生の暮らしについて理解はしてるんですか?

※いわゆる「無職」のこと

永井氏:
 やっぱり古い人間やから、今も「インターネットは悪いもん」と思っとるところがあります。
 ただ、リスナーさんから食べ物とかも届くんで、オカンが「浩二、これ食べてかまん?」とかってせびってくるようにはなりましたけど。もう勝手に開けて見てしまっとるんよ(笑)。

 だから「まだブログにお礼を載せてないけん待てと!」って言ったりして。

――復帰後は、お父さんとお母さんが放送に登場するプレミア配信もありましたね。

永井氏:
 オトンとオカンが放送でカラオケしたこととかありました。オトンが「わしは氷川きよしが歌えるんじゃ!」とか言って(笑)。
 ただ、インターネット放送でお金がもらえるとかは理解してなくて、「ドラ息子が毎日ネットばっかりやって寝よる」っていう認識だと思います。

――「俺はこんだけお金もらってるんだよ」って言えばいいじゃないですか。

永井氏:
 いや、俺がオカンにちゃんと金入れてたら言えるんやけど......。
 最初は5万とか入れてたんやけど、ちょっとスロットのほうで負けが込んで(笑)。

――いくらあっても、なくなるまでスロ打つからじゃないですか! もう1回、「型枠大工」の仕事をしようとかは?

永井氏:
 いや......もう2度と無理っすね。真夏とか、1本20キロあるパイプを、1日800本とか延々上に運んでいったりするんやで?
 しかも、昔の俺は平日の夜中3時までビール飲みながら『アイマス』やって、朝6時に起きて現場行ってそれをやってたわけやから。もうフラフラで、目から火花が出そうになって、45歳の匠の人らに「お前なんしよん!」って回し蹴りくらったりして毎日やってたんよ。
 でも、その経験があるから、俺は負けんのよ。

――その経験があったら、毎日ブログくらい書けるんじゃないですか。ブログ書くほうがよっぽど楽ですよね。

永井氏:
 お前、アンチか(笑)!

――いや、これは僕というか、リスナーの人みんなが言ってることなので(笑)。

永井氏:
 まあ、でもその通りなんよ。
 ぬるくなってナメとる自分がおるのはわかっとるんやけど、つい「明日でええわ」ってなってしまうんすよ。リスナーの人らに感謝しとるし、いただきもののお礼とかもブログでしようと思っとるんやけど、できないんです。

 ......クズやろ?

――まあ......クズですね(笑)。

■メディアに出ない理由は「歯がないけん」

――永井配信では、弟のひろくん(永井博之)もよく登場しますよね。

永井氏:
 博之も今では1人で放送するようになったけど、最初は「なんしよん、お前」とか言って、俺が放送してるのを煙たがってたんすけどね。
 でも、いつの間にか、永井兄弟2人で並んでパソコンに向かうことが多くなりました。博之も友達がおらんわけじゃないけど、俺と同じでスロットばっかりやりよる感じだから、ネットで「ひろくん、ひろくん」って言われて嬉しいんやないかな。

――永井先生から見て、ひろくんの放送は変わったなとかありますか? 「配信のコツがわかってきたな」とか。

永井氏:
 いや、博之の単独配信を俺は見てないから、知らんっすね。「自分で好き好んでやりよるから昔とは違うんやろな」って思うくらい。

――ひろくんは、自分1人の放送で永井先生の動画を見ながら笑ってたりするので、結構お兄ちゃんのファンだったりするのかなと思ったんですが。

永井氏:
 いや、違うで! 
 今日も博之は1人でスロット行ってるんやけど、俺は「クソクソに負けて欲しい」と思ってるし、向こうも俺に「負けろ」って思ってるし。

――2人のそういう掛け合いが配信でも人気なわけですが(笑)。逆に永井配信で、兄弟や友人以外の他の人気配信者と「コラボ放送をしよう」とかって思ったことはないんですか?

永井氏:
 それは思ったことないですね。というか他の人の放送を見ないので、自分しか知らんのですよ。

――永井先生のあとに出てきたニコ生主やYouTuberが、有名になって大金を稼ぐような人も出てきてますが、そっちの道で稼いでいこうとかは思わないです?

永井氏:
 「テレビの番組に出てほしい」とか「スロットチャンネルの出演依頼」とか、なんぼでもきたことあるんですよ。でもこんな汚いツラを出したら、放送事故になるから全部断ってます。俺がタッキー【※】やったら余裕で出てますよ。

※滝沢秀明。永井先生の中でのイケメンの象徴らしい

――みんなが永井先生に期待してるのは、別にイケメンじゃなくてトークだと思いますが。そもそも最近は永井先生も普通に顔バレしてますし、自分でマスク着けた写真をTwitterに載せたりしてますよね。

永井氏:
 違うんよ。俺、歯がないけん【※】。
 ここ記事にしてほしいんすけど、俺がメディアに出ないのは、歯がなくて見た目が放送事故になるから。

※永井先生は諸事情により上の前歯がありません

――え、じゃあメディアに出ない根本的な理由は「歯がないから」ってだけなんですか?

永井氏:
 それが全てっすね。「芸能人は歯が命」って言葉があるように。

――(笑)。でも、マスク着けて公式放送出る人も多いですよ。それこそ「競馬予想番組」とか「スロット対決する放送」とか、永井先生が普段配信でやってることを、そのままできるような公式の依頼があったらどうです?

永井氏:
 それだったら全然できますよ。顔が出ないんだったら。
 でもリスナーから「自分の放送でやれ」って言われるやろ? そんなんは、俺は違うから。

――100万円積まれても出ないですか?

永井氏:
 出んね。

――おお、男らしい......けど永井先生わりと金で動くからほんとですかね。

永井氏:
 俺は、そういうのには出ん。

――1000万だったら?

永井氏:
 いや......もうええが! 
 1000万確定だったら、マスクしてでもインプラントで歯入れてでも出るわ! わかるやろ!

――すいません(笑)。

■配信は「人生そのもの」

――永井先生は間違いなく、ネットの一つの時代を切り拓いてきた配信者だと思うんですが、今後新しくやってみたいことはありますか?

永井氏:
 新しいことより、今やってることを続けたいっすかね。
 ただ、ほんとは「みんなが参加できる大会」みたいなことを、もっとやりたいんですよ。

――大会というと?

永井氏:
 前に配信でやったのが、『ダービースタリオン』でいろんなリスナーさんが作った馬を集めて、レースをするってやつ。
 俺が、みんなからもらったパスワードを全部打ち込んで、レースの実況も早口でやったりして、商品も用意したり。だけど「改造馬」っていう不正みたいな馬で応募してきたり、1人で何通も応募してきたりとか、そういうのを防げないんですよね。

 「スロットとか博打とか知らない男も女も、みんなが楽しめる参加型の企画」をやるのが一番の夢ですかね。みんながドキドキできて、めっちゃおもろい大会。「麻雀大会」も「スロット大会」もやったけど、知らない人は楽しめないじゃないですか。「生きてる人なら、みんなが楽しめる遊び」って、なんかあると思うんですけど、まだそこにたどり着けない。それが、小学校の時にすごろく作りよった頃の気持ちとつながるのかもしれないです。

――リスナーに対するサービス精神は、すごく純粋なものがありますよね。配信ではわりとすぐブチギレて、コメントと口論したりもしてますが(笑)。

永井氏:
 まあ配信では酒も入ってるし、俺はすぐ頭に血が上って「おどれすどれ!」ってなってしまうとこがあるから......。
 ただ、リスナーさんが俺のイラストを描いて送ってくれたりするんやけど、そういうのも「歯がない」とか「汚いオッサン」の絵で描いてくれたほうが喜ぶ人が多いし、そうやって描いてほしいんですよ。それこそ、アンチの人らにも喜んでもらわないかんのよな。

――なるほど、結構繊細な考えがあるんですね......。永井先生にとって「配信」ってどういうものですか?

永井氏:
 言っていいすか。
 「人生そのもの」です。

――それは「お金もらえるから」って意味ですか?(笑)

永井氏:
 いや、そういうのでもなく! 

 やめられない止まらない「かっぱえびせん状態」なんですよ。「放送やるためだけに生まれてきた」と言っても過言ではないっていう。

――じゃあ、もう引退とかはしないですか?

永井氏:
 ないなあ。もう死ぬまでやめれんと思います。

――よかったです! 永井先生がおじいちゃんになって盆栽をする配信を、みんな楽しみにしてますよ。

永井氏:
 60歳くらいの俺が「お前ら~、今日はどこ切ったらええ~?」って(笑)。そんなんなったら死ぬっすね(笑)。

 放送での傍若無人な印象と違って、実際の永井先生は想像以上に「いい人」だった。「返信はこないだろう」と、ダメもとで送った取材依頼のメールにも素早くレスをくれ、スケジュール調整などもしっかり対応してくれた。ネットでは自他ともに認める「脳欠損」キャラクターだけに、意外なほどまともなやりとりができてちょっと拍子抜けしたほどだ。

 現地でタクシーに乗って永井先生の家に行くことを告げると、運転手のおじさんは「永井君? お得意様だよ」と言って笑った。パチンコ屋への移動手段としてあまりに頻繁に利用するので、周囲のタクシー会社の間では有名人だそうだ。

 配信部屋は大量のパチスロ実機で思った以上に足の踏み場がなく、インタビューは永井先生のベッドの上に座って行った。部屋にコバエが飛んでいることに気付くと、「すいません、クソ田舎なんで」と言ってサーキュレーターの風でコバエを追い払ってくれた。ちょっと滑稽なその行動ぶりは、いかにも配信でよく知る「永井先生」だった。

 取材後は永井先生のほうから「飲みに行きましょう!」と声をかけてくれて、松山にある永井先生行きつけの居酒屋に連れていってくれた。初対面の僕にたくさん質問をしてくれて、話を膨らませていくあたりで、永井先生のトークの上手さは天然のものなんだと感じた。道中のタクシーの運転手や店員に「東京から来てくれたんよ」と気さくに話しかける姿が印象に残っている。あと、地元の電車の切符の買い方がわかっていなくてちょっと心配になったことも。

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