「テレビはもう『文春』なしでは芸能スキャンダルが流せない」 デーブ・スペクターが語るワイドショーの内幕
ニコニコニュース / 2017年2月1日 11時0分
ベッキー、舛添、ショーンK......。『週刊文春』が独自のスクープを連発するたびにワイドショーは後を追うように報道し、連日テレビを賑わせた。
前回の田原総一朗氏へのインタビューに続き、「私は『週刊文春』をこう思う」というテーマで語っていただいたのは、ワイドショーのコメンテーターとして芸能界の事情に精通するデーブ・スペクター氏だ。
自身が出演するニュース番組でも再三「文春」発のネタを取り上げたデーブ氏。なぜテレビは「文春」に勝てないのか? 「文春」がなければワイドショーは成り立たないのか? デーブ氏の目から見た「文春」について、赤裸々に語ってもらった。
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――2016年は『週刊文春』が多くのスクープを飛ばした一年でした。このたびニコニコでは、「文春」さんがどうやってネタをつかんだのか、記者の方たちがどんな努力をしたのかというのを取材して、再現ドキュメンタリードラマにしたんですよ。
デーブ・スペクター氏(以下、デーブ):
それは面白いですね。それベッキーさんに出演頼んだんですか?
――いや、ベッキーさんには頼んでないですね。
デーブ:
あ、頼んでないですか。
――出てくれたら良かったんですけどね。というわけでデーブさんには「文春砲」の功罪も含めて率直にいろんなことをお伺いしたいと思います。1年間「文春」というメディアをどういうふうにご覧になりましたか?
デーブ:
もう新幹線みたいな勢いで、止めようがない。2016年は本当に「文春」の年だったよね。その相乗効果で、自分がタレコミ情報を持ってるフリージャーナリストだったら、やっぱり一番目立つところに当然持って行きたいわけですよ。僕が聞いた話だと「文春」さんでは200か300ぐらいのネタ、記事にしてもいいという打診をいつも抱えてると。もちろん取材してるうちに除外したり先送りしたりいろいろやるんですけど、大変な数なんです。どうせならば「文春」でやってほしいと思うんですよ。アカデミー賞やグラミー賞みたいな感じで、やるならトップを狙いますよ。
――まさに「文春」はその座をつかんだ感がありますね。
デーブ:
日本で「文春」が伸びる環境としてひとつあるのは、新聞が弱いからですよ。アメリカの場合は「ワシントン・ポスト」、「ニューヨーク・タイムズ」、「ロサンゼルス・タイムズ」、そして大衆紙の「ニューヨーク・ポスト」など、週刊誌よりはるかにやってることがすごいんです。日本だと新聞が競争相手になってない。ライバルはせいぜい「東京スポーツ」くらいですよ、東スポ。政治ネタって本来は大手新聞がやる仕事なんです。朝日、読売、毎日、産経、東京。でもなかなかやらない。
――あまりやらないですよね。
デーブ:
なんのために新聞買ってるのかというと、もはやチラシとテレビ欄。今はテレビ欄もネットで見られますから、じゃあ新聞って必要なのかと思いたくもなる。正直に言いますと。紙面も地味だし。僕は新聞のほうが今はピンチだと思いますよ。「文春」との競争に一切なってないです。テレビ局も芸能スキャンダルを自らやらないし、だから「文春」のやり放題。年齢的に知らない人もいると思いますが、昔『噂の眞相』という雑誌がありまして。
――岡留安則さんが編集長を務めていた雑誌ですね。
デーブ:
これ、誰も頭が上がらないものだったんです。僕あれ大好きで、発売より1日前に送ってもらったので、スキャンダルが出てるとその人に電話したりして。特に業界人にとってみれば『噂の眞相』がなくなってから何やってもよくなった。政治家とか芸能界とか。番犬がいなくなったんです。廃刊後にネタは『BUBKA』とかいろんな雑誌に流れましたが、もう影響力があまりないです。そして結局やり放題になっちゃった。ノーチェック。こういう状態が『噂の眞相』が廃刊になってから20年ぐらい続いた。
――その役割が今は『週刊文春』になったと。
デーブ:
もちろん昔から「文春」もロス疑惑とかロッキード事件とかやってましたけど、『噂の眞相』がなくなってスキャンダル的なものを載せる媒体があまりなかった。特に芸能界関係は。『噂の眞相』は本当にすごい雑誌でした。
――そこから今は「文春」一強になっているわけですね。
デーブ:
同時に、意図的かどうか分かりませんが、『週刊文春』が取り上げるスクープはテレビに向いてる。テレビがやりやすい、やりたくなるものです。「文春」は木曜日発売で、水曜日に早刷りが回ってくる。発売前に何が出るか分かるので、もうそこで後追いの取材をするわけです。よーいどんで。そしてテレビはそれを木曜日に流す。
――テレビで扱いやすいというのは。
デーブ:
芸能スキャンダルって、要はテレビが自分たちでやる勇気がない。分かってるのにやらないんですよ、でもある程度「文春」に載ってればもうOKが出る感じ。向こうが何かしらのコメントを出してればなおさら。それでも取り上げるなという「天の声」というか圧力がかかる場合もありますけれども。テレビはもう「文春」なしではスキャンダルが流せない。
――ある種パブリックなネタになってしまうんですね。
デーブ:
そうなんです。「真ん中にホチキスが付いてる共同通信」みたいなもんなんで、載った時点でもうどこもやっていいぞとなるんです。しかも前の日に準備ができるので、コメント取ったりして発売日に流すわけです。
『週刊文春』のうまいやり方は、翌週に「第2弾」を出す。最近特に多い。スキャンダルの当事者が「第2弾出たらまずいな」と思って、ここで謝罪したほうがいいのか、第2弾出るまで待つのか、その待機期間もテレビ的においしい。何が出るか本人だって分からない。それが危機管理の失敗にもつながる。第2弾が出る前に謝罪や釈明をしとけば良かったのにやらない。そうすれば状況がもっと悪くなってテレビも喜ぶ。まあ、本人はちょっとかわいそうですけども、互いにマッチポンプ状態になっていて、全部「文春」頼りになってしまう。
――そしてテレビが取り上げる効果でまた「文春」が売れると。
デーブ:
「文春」は2016年に何回も完売したと聞いてるので、売れるとまたその取材費に掛けられる。そうすると当然モチベーションが上がります。だからトップの雑誌になるというのは、大変な責任がありながら、プラス面もいっぱいあります。
――「文春」が一人勝ちしているのは、新聞、雑誌、テレビなどメディア界全体が萎縮してしまっているがゆえに目立っているということでしょうか。
デーブ:
普通の出版社はタレントが載っている書籍や雑誌も扱うし、あまりスキャンダルに触れたらほかの出版物に影響が出るわけです。でも「文春」は特にないんです。一番近いのは『CREA』ぐらいですかね。でもそんなの気にしてたらもう「文春」出せなくなる。そういうところが強みでもある。
――ネットを通じた記事のインパクトの広がり方は10年前とはまったく変わりました。SNSなどを通じて一気に拡散します。そのことについてはどう思われますか。
デーブ:
かつて週刊誌に悪口書かれた人の中によく僕の知り合いがいて、泣きながら電話がかかってくることがあるんですよ。でも週刊誌って主に2日間くらいしか売れないんです。そして仮に買ったとしても全部読むとは限らない。発行部数の公表と実売は全然違うので、実売は意外に少ないし。まあ、「文春」は売れてますけど! つまり昔の常識では放っとけば大丈夫ですよというのがほとんど。
――ところが現在は違うと。
デーブ:
そう。逆にいちいち騒いだり反論したり、訴えるとか言うとそれがSNSで拡散される。ネットの記事にもなります。ネット記事ってポイントだけ要約するので、「文春」の内容の10分の1ぐらいしか載ってない。肝心の記事そのものを読まないで、あっちこっちで転載されてるダイジェストだけを見る。おいしいとこだけみんなつまみ食いする。でもそれが今のリアルですよね。
――デーブさんご自身も芸能人として記事を書かれる可能性がありますよね。新谷編集長の「親しき仲にはスキャンダル」というキャッチフレーズもありますし。
デーブ:
それもどこか線を引かないといけないんじゃないですか。新谷さんだって人間ですから、これ出したら相手が傷つくということは承知していると思うんですよ。本当に悪者ならば別ですけども、ちょっとしたミスとかで、ショーンKはいい例だと思うんですけど、それでもやるっていう判断はある意味編集長の宿命でもあるわけですよね。これからも頑張っていってほしいと思います。
――ありがとうございました。
「文春砲」の裏側に迫るドキュメンタリードラマ『直撃せよ!~2016年文春砲の裏側~』は、いよいよ2月4日(土)20時放映です。前回の田原氏、今回のデーブ氏に続き、2月3日(金)には水道橋博士氏へのインタビューを掲載します。
◇関連サイト
・「昔は他の週刊誌だって結構取材してたんだよ」田原総一朗が『週刊文春』一強時代に喝を入れる
http://originalnews.nico/10508
・総力特集「文春砲」直撃せよ!~2016年文春砲の裏側~|ニコニコドキュメンタリー
http://nicodocumentary.jp/
・[ニコニコ動画]予告編「直撃せよ!2016年文春砲の裏側」ニコニコドキュメンタリー
http://www.nicovideo.jp/watch/1484804482
・[ニコニコ生放送]『直撃せよ!~2016年文春砲の裏側~』ニコニコオリジナル ドキュメンタリードラマ - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv286954974?po=newsinfoseek&ref=news
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