動画アワード2011グランプリ受賞・あかへる、「車載動画」の魅力語る<うp主インタビュー第1回>
ニコニコニュース / 2012年6月1日 12時0分
一年間に投稿された動画のなかから、高い評価を得たものを顕彰する「動画アワード」。昨年(2011年)のグランプリを受賞したのは「車載動画」というジャンルに属する動画だった。車載動画とは、車やバイク、自転車などにカメラを固定し、走っている様子の映像を撮影してインターネット動画サイトで公開するというものだ。
・動画アワード2012 - 公式サイト
http://rd.nicovideo.jp/cc/award/news
グランプリを受賞した車載動画「CBR1000RRとC57 1 貴婦人」は、動画投稿者の"あかへる"さんが山口県山口市や島根県津和野町をバイクで走っている様子を撮影したもの。軽快なエンジン音を鳴らしながら景色の良い道路を駆けていく様子や、SLやまぐち号と並走する様子に対して、視聴者からは「こんな絶景、東京じゃ見れないよなぁ」「並行サイコー」といった、まるで一緒に旅へ出ているようなコメントが寄せられている。
インターネットに様々な動画が存在するなか、この車載動画というジャンルが、なぜこれほどまでに高い評価を得て、人気になっているのか。年間グランプリ受賞の車載動画『CBR1000RRとC57 1 貴婦人』を投稿した"あかへる"さんに、その魅力や受賞作品について聞いてみた。
(聞き手・森田浩明)
■「仲間うちでエロ本をこそこそ回し読みしているぐらいのイメージだった」
――「車載動画」を撮りはじめたきっかけはなんですか?
(巨大掲示板の)「2ちゃんねる」のバイク板(=バイク関連の投稿があつまる場所)のなかに動画を撮影して公開する人たちがいて。3年前に「zoome」(動画共有サイト、2011年8月サービス終了)を使って、自分もそこに投稿してみたのがきっかけです。それから、ニコニコ動画に投稿するようになったのは、瞬時にユーザーからの反応が返ってくることが面白いと思ったところが大きいですね。
――「動画アワード2011」で年間グランプリを受賞した動画のことをお聞かせください。
グランプリをいただいた動画は「どこかに行ってきたよ!」というより、ひとつの作品として完全に「撮りにいった」「創り込んだ」という感じです。それ以前に投稿した動画は、映像を時系列に並べたレポート的なものばかりで、それだけだと個性がないかなと思って。「どうせ作るなら、少しでも良いものにして喜んでもらえたら」といった気持ちが、『CBR1000RRとC57 1 貴婦人』という動画のかたちになったと考えています。
――『CBR1000RRとC57 1 貴婦人』より前に投稿された動画は、前後にカメラを搭載していただけでしたが、だんだんとカメラも増えてアングルも凝っていきました。
動画の見せ方にどんどん凝りだして、あの動画(『CBR1000RRとC57 1 貴婦人』)は自分の集大成みたいな感じです。もちろんグランプリなんか全然意識していなかったです。
僕の場合、動画の再生回数は3,000回から5,000回ぐらいを想定しています。それこそ中学生くらいの男の子が、仲間うちでエロ本をこそこそ回し読みしているぐらいのイメージでやっていたので(笑)。グランプリをいただいて、自分自身がビックリしています。
――グランプリを受賞したことで、身の周りの変化はありましたか?
病気療養中の人から動画を見て元気がでました、とメールをいただいたのは嬉しかったですね。それと、(年間グランプリの前に受賞した)秋の動画アワードの賞金を募金したのですが、被災地の人から「ありがとう」という言葉をたくさんもらって恐縮しきりで・・・この場を借りてお礼が言いたいです。
■車載動画の「疾走感」を演出するための工夫
――動画によって違うバイクが登場しますが、何台持っているのですか?
ホンダの「CBR1000RR」とヤマハの「XTZ125」の2台を持っています。
(グランプリを受賞した動画で使った)「CBR1000RR」は旅用というよりはスポーツバイクですね。長距離の旅を楽しむよりは、美味しいものを食べに出かけたり、きれいな景色を楽しんだり・・・半日から1日の休日を使ってバイクに乗ることを楽しむことを考えた結果、こうしたタイプのバイクを選びました。
――「いったい、どれだけカメラを積んでいるんだ?」といったコメントが多いですが、バイクに搭載しているカメラは何台ですか?
全部で5台ですね。グランプリをいただいた動画に登場する「SL」(機関車)のように被写体が決まっているときは3台くらい、風景を撮るときは5台すべて回しています。バイクで走りはじめたら、あまり途中で止まらないので付け替えるのが面倒で、とりあえず数を増やして回しっぱなしだという(笑)。
ただ、家に帰って動画の編集をしていると予期せぬ映像が撮れていたりします。カメラが偶然ズレた結果、絶妙な構図でバイクと風景が撮れていて、「ああ、こういうアングルで撮るとこんな風に映るのか」、「バイクってこんな風に動いているんだ」とか。その辺りも、カメラをたくさん積んでいることのいいところだと思います。
――動画の撮影や編集をするにあたっての工夫はありますか?
走るスピードの一定感、というのは気にしているところのひとつです。シーンごとにスピードが違ったら映像がバラバラになってしまうので。
グランプリをいただいた動画の話だと、最初は高速道路のシーンから始まるんですけど、進むにつれて少しずつ速度を落としているんですね。急にスピードを落とすと動画に"ガタつき"が出てしまう。シーンを繋ぐ部分を綺麗に整地すると、全体として疾走感が損なわれないので、その辺りは注意しています。
――"あかへる"さんの動画では、道路がいつも空いているのですが、これは偶然なのでしょうか?
実は何度も撮りなおしています(笑)。そのあたりも疾走感を出すためのポイントですね。
――ニコニコ動画に投稿した動画のなかで、一番のお気に入りはどれですか?
2010年の9月に投稿した『下松ラーメンと白壁の街並み』という動画が個人的には一番気に入っています。
時間の都合でカットしていますが、実はあの日に5食ほどラーメン食べています(笑)。食べることは大好きですね。限りある人生、美しいもの、美味しいものを楽しみたいですね。
■「ユーザーと一緒に動画づくりをしていくことがニコニコ動画の面白さ」
――改めてにはなるのですが、ニコニコ動画に投稿する魅力やおもしろさはどこにあると思いますか?
ユーザーからのコメントがあって、なおかつ「再生数」や「マイリスト数」などの数字にわかりやすく反映されることかなと思います。
僕の場合、最初はただカメラや構図の知識がないまま、単純にカメラをバイクに載せて、「わあ、楽しい」という感じだったのですが、コメントでいただい意見を参考にしたり、他のうp主(=動画投稿者)さんの素晴らしい動画を見たりして、編集や撮影の技術を学んでいきました。
それから、動画の投稿続けていると、色んなコメントのなかで「あ、いつも見てくれている人だな」って気づくときがあります。そうした人がいるってことが励みになって、こうして続けてくることができたんだと思います。続けたからこそ少しずつ上達して、最後に驚くような賞をいただくことができました。
そうやってコメントをくださった人たちと一緒に動画づくりをしていく課程が、ニコニコ動画の面白さだと感じます。
――なるほど。
ただ、その反面、動画投稿者側からすると、数字の大きさがイコール尊敬の大きさ、愛情の大きさと感じてしまう一面もあると思います。視聴者の方たちとの繋がりの大きさが数字として表れるというのは、結構大きなプレッシャーではないのかなと。喜んでもらいたいがために、行き過ぎた表現をしたり、興味を惹こうとしてやり過ぎたり・・・。
再生回数が増えていくにつれ、動画づくりにおける表現の方法だったり、投稿者としての責任や立ち位置だったりについて、すごく考えさせられました。「インターネットってなんだろう」、「人との繋がりってなんだろう」って。プライベートのごく一部を切りとっただけの動画が、あっという間に何万、何十万人って人の目に触れて、公のものへと変化していくわけですから。
――批判されることもあるかもしれません。
(肯定的・否定的どちらにせよ)評価をされることは仕方のないことかなって思います。ネガティブな意見も表現のひとつだと思うし、作品があるから批判ができるわけで。色々な人がいて、いろいろな考え方があっていいと思います。もちろん誹謗・中傷はダメですけど。
正直、ポジティブな意見をいただくと本当に嬉しくて、「またがんばって動画作るぞ」ってなりますよ(笑)。僕の場合、「そこ(動画を撮影した場所)へ行きたくなった」とか、「バイク買ったよ」、「免許とったよ」ってコメントに本当に励まされました。特に、グランプリ受賞で多くの人に喜んでもらえて、動画からたくさんの幸せをいただきました。
――最後に、今後はどんな動画を作ろうと思っていますか?
難しいですね(笑)。
・・・原点に戻って自分のやりたいこと、地元の風景だったりご当地グルメだったりの記録、老後に自分が見て楽しめる動画を作っていきたいですね。あとは、問い合わせの多い機材の紹介動画かな。お礼の意味もこめて「車載HOWTO」のようなものを作りたいと思います(笑)。
(了)
◇関連サイト
・[ニコニコ動画]CBR1000RRとC57 1 貴婦人 - 会員登録が必要
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15282971
・動画アワード2012 - 公式サイト
http://rd.nicovideo.jp/cc/award/news
(森田浩明)
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