「技術者として考えれば、原発の安全性に絶対はない」 元原子力プラント設計技術者、後藤政志さん<「どうする?原発」インタビュー第4回>

ニコニコニュース / 2012年8月16日 10時18分

元原子力プラント設計技術者、後藤政志さん

 人には扱えるものと、扱えないものがある。技術者はそれを判断し、線引きしなければならない――。原子力発電所の心臓部分である原子炉圧力容器を覆う「原子炉格納容器」の設計に携わってきた経験から、後藤政志さんはこう断言する。「技術者として考えれば、安全装置は確実に作動するものでなければならない。でも、原発の安全装置が絶対作動するかは保証できないんです」

■「安全」より「世論」を気にする日本の原発

 1989年から東芝に勤め、新潟県柏崎刈羽原発や静岡県浜岡原発、宮城県女川原発の設計を担当した。その時のことを反省する。

「原発は安全だと言われていました。でも、本当に安全なものをわざわざ『安全です』とは言わない。危険性があるからこそ、安全だと強調します。外で安全と言い続ければ、中の技術者もだまされ、安全だと思い込んでしまう。これが、安全神話。事故を防ぐことができなかった。だからこそ、再稼働は許されない」

 後藤さんはいつ原発の安全神話を疑うようになったのか。設計を担当していた格納容器は、原発が事故を起こした際の「最後の砦」だ。たとえ原子炉の内部がどうなろうとも、格納容器さえ無事なら、放射性物質が外部へ洩れる心配はない。だから、当時の格納容器には圧力を外部へ逃がすための「格納容器ベント弁」が取り付けられていなかった。「安全だから事故は起きない」という前提だった。

 「ところが、1992年以降、『格納容器ベント弁』が取り付けられるようになった。もし、何かの事故で数台のポンプがすべて止まれば、内部の圧力が上がってしまう。それを外へ抜く『ベント』をしなければ、爆発を起こし、格納容器が破壊する。そうなると、ダメだと思いました」

 さらに疑問があった。「弁にはフィルターが付けられていなかった。もしもベントしたら、そのまま放射能をまき散らします。1986年のチェルノブイリ原発事故以降、ヨーロッパではフィルターは標準装備。日本の原発ではなぜ、フィルターを付けなかったか。目立つからです。安全だと主張しているのに、『あれは何だ?』と聞かれたとき、『これは過酷事故対策です』と言ったら反対派がうるさい。そして現在も日本中、どの原発にもフィルターはついていない。安全より世論を気にする。これが現状です」

 技術者として原発の安全神話を疑いながら、匿名で問題点を訴えてきた。しかし、2009年に退社、福島第一原発の事故を受け、ネットなどを通じて積極的に情報発信を始めた。福島第一原発の現状は依然、厳しいと警告する。

「直接、中を見られないので推測ですが、溶けた燃料が今、原子炉の中にある。あるいは格納容器の床に落ちている可能性が高い。そして、いまだに冷却し続けないといけない。つまり、事故はまったく収束していない。1979年の米国スリーマイル島ではメルトダウンを起こしましたが、圧力容器の底は何とか抜けずに済んだ。それでも、原子炉の中が分かるまで10年近くかかった。福島の場合は格納容器自体がひどく汚染されていて、人が立ち入れる状態はもっと先になるでしょう」

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