「予想できない展開に持っていくことです」 謎のロボットを発明する大学生・回路師に話を聞いてみた<うp主インタビュー第4回>
ニコニコニュース / 2012年9月3日 16時0分
「頭のいいバカ」 ――愛情をこめて、たびたびそんなタグがつけられる"うp主"がいる。「回路師(かいろし)」もその一人だ。「スイッチを入れるとそのスイッチをオフにするだけのロボット」や、「パソコンに打ち込んだ文字を手書きに変換する大掛かりなロボット」など、効率度外視で、思わず吹き出してしまうような、奇妙な発明を続けている。2011年の動画アワードで「NHK『特ダネ!投稿DO画』賞」を受賞した動画『全自動引きこもり機2nd Editionを紹介します』では、表情豊かに動き回るロボットに「かわいいw」「荒ぶるなww」といった数多くのコメントが寄せられていた。
うp主「回路師」は、そんな風に今ある技術を使いながらも、だれもが新鮮に感じられる遊び心あふれる装置たちをいくつも発表してきた。彼は一体、どんな人なのだろうか?
■ 「閉鎖性とコミュニティ性の強さがニコニコ動画の魅力」
――最近、回路師さんは「日経エンターテインメント」や「大人の科学マガジン」などの媒体にも、作品を取り上げられていますが、こんな風に注目された経緯をお聞かせください。
いきなり取材のメールをいただいたときには、驚きました(笑)。以前から「Yahoo!ニュース」のトピックスや「ギズモードジャパン」などに動画を紹介していただいていたので、それを見て連絡してくださったのかもしれません。自分がつくったものがそういった形で取り上げられて、感動しました。これからも機会を作ってどんどん発信していきたいです。
――そもそも動画制作を始めたきっかけは何だったのですか?
初めて動画をつくったのは、2006年くらいです。まだニコニコ動画をよく知らない時期でした。学校で、友人がパソコンを使って、絵と音楽を組み合わせて映像にしているのを見て、「自分たちの持っているようなパソコンでも、こんなことができるんだ!」と驚いたのがきっかけでした。
――数ある動画サイトの中で、ニコニコ動画に投稿しようと思ったのはなぜですか?
コメントが画面に流れることで、どのタイミングで動画に反応があるのかがハッキリわかるのが面白いと感じたからです。ただし、最初に投稿したときには批判的なコメントを見てしまい、ちょっと悲しい気持ちになりましたが(笑)。でも、割合としては、ポジティブなコメントが多いですからね。
それに個人的な感想ですが、ニコニコ動画ってわりと閉鎖性があって、同時にコミュニティ性も非常に強いと思うんです。一部の人たちだけでワイワイしているような雰囲気も、僕としては楽しかったです。
■ 「モノの魅力は複雑さや技術力じゃなく、バランスにあると思う」
――2011年動画アワード NHK『特ダネ!投稿DO画』賞を受賞した「全自動引きこもり機2nd Edition を紹介します」をつくろうと思った経緯をお聞かせください。
全自動引きこもり機の1st Editionは、『全力でスイッチをONするとOFFするロボットをいじめてみた』というものでした。ところが、それは顔文字の部分が簡素だったり、マシンのスピードもイマイチだったりして、未完成なところが多かったのです。そこで、今度はもう少し優れたロボットをつくろうと考えました。また、"自分と引きこもり機の根比べ"というストーリーをさらにエスカレートさせてみたら、面白いかもしれないと思いました。
・[ニコニコ動画]【製作中】全自動引きこもり機2nd Editionを紹介します
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16234571
――回路師さんは、パーツからものづくりをするのですね。ほとんどの人は、世の中の大半のプロダクトがどんな構造をしているか、知りません。それについてどのように感じますか?
いつの時代でも、機械の中身がどうなっているかわからない人は多いと思います。だから、難しいことは知っている人に任せて、その製品を楽しめばいいと思います。複雑さや技術的なすごさが、そのアイテムの魅力に繋がるわけではないと思いますし。これからは、使う人のことを考えた、バランスのとれたモノづくりが行われていくべきだと、個人的には感じています。
――動画を制作するにあたって心がけているのは?
3つあります。1つ目は、テンポの良さです。リズムを上手くとることで、見ている人を飽きさせないようにすることです。僕は動画をつくるとき、まずその製作物の動きが合う音楽を考えます。そのあとで実際に音楽を聴いてみて、思い浮かんだ画を制作・編集するのです。
2つ目は、わかりやすさです。動画の説明文なんかを読まなくても、映像を見れば誰でも理解できるような内容になるように心がけています。
・[ニコニコ動画]【感謝殿堂入り!】全力でレポートを自動で書くロボットをつくってみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7687446
3つ目は、視聴者が予想できない展開に持っていくことです。意外性で、みんな笑ってくれるんじゃないかなと思っています。例えば、『全力でレポートを自動で書くロボットをつくってみた』という動画の場合には、まず最初は「学生がつくったレベルのロボットなんかが長文レポートを書けるわけないだろ」、と思うわけです。しかし、中盤になると、これはもしかしたら...と期待が高まってくる。でも、結局最後は、AA(アスキーアート)なんかを書くのに長けた謎の機械ができて、笑ってもらえるという感じです(笑)。
■ ニコニコ動画が示してくれた、新しい自分の可能性
――現在は大学生ということですが、将来どのような道に進みたいと考えていますか?
いまの大学では、ロボットに関する研究をしています。いつかは災害救助や医療の現場で役立つ「次世代ロボット」の開発に関われればいいなと考えています。もともとロボットに興味を持ったのは、小学校のときに「高専ロボコン」という全国の専門学生がロボットで競い合う大会をテレビで見たのがきっかけでした。そのあと、高等専門学校に入学して、そこでロボコン部に入って......という流れで、いまに至っています。
僕はそんなに目立つ外見でもないし人付き合いもそこまで上手なほうじゃない(笑)。だからなにかをつくっているときが安らげる時間や場所、というのは確かにあります。そうした考え方は、物作りへの自分なりのこだわりに影響を与えているのかもしれないです。
――ニコニコ動画に投稿を始めたこと、また動画アワードにおいて受賞したことは、回路師さんにどのような変化をもたらしましたか?
賞をいただいて、これまで制作した動画の再生数が全体的に増えました。そんな風に、あらためて見直していただけたのは嬉しかったです。ニコニコ動画への投稿に関しては、親や友達にはオープンにしています。その結果、ニコニコ動画が好きな友達と一緒に盛り上がれたり、学校の先生にも技術的な面で評価していただいたりして、コミュニケーションのツールとしても自分に影響を与えたと思います。
あとは、たまにですがイベントに呼んでいただくこともあります。色々な分野の有名人と話す機会などもいただき、自分の進む先につながるかもしれない、新しい可能性を広げることができたと感じています。
――今年の2012年の動画アワードについてどのようにお考えですか?
まずは『全自動引きこもり機2nd Edition』を、なんとか2012年中に完成させたいです。その動画で、まあ・・・できることなら賞をとれたら嬉しいです(笑)。個人的には、「画面に偶然映りました」という動画より、作り手が考え抜いて細部までコントロールした動画が、アワードで評価されることを期待しています。でも、何たってニコニコ動画なんだから、難しいことは抜きにして、ただただ腹を抱えて笑える動画がいっぱい出てきてくれたら、何よりも嬉しいです。
(了)
◇関連サイト
・動画アワード2012 - 公式サイト
http://blog.nicovideo.jp/award/index.html
(森田浩明)
【関連ニュース】
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- 「とにかく何かを作りたい! 情熱が止まらないニコニコ動画の職人達」(1/2ページ)
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