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「ネットで民意 オープンガバメントへの試み」 「仕分け」を仕分ける 新仕分け特別セッション全文書き起こし <前編>

ニコニコニュース / 2012年11月22日 19時30分

新仕分けを振り返る津田大介氏.jpg

 復興関連事業や次世代クリーンエネルギー、生活保護費負担金など、現在注目されるテーマが対象となった「新仕分け」が、2012年11月16日から3日間にわたり行われた。今回はニコニコ生放送の中継を通じてリアルタイムに実施されたユーザーアンケート結果や、ツイッターで寄せられたコメントが「民意」として、仕分けの現場で活用された。情報を公開し、ソーシャルメディアを活用して国民の参加を促す「オープンガバメント」への第一歩になるのか。新仕分けの最終日となった11月18日、「特別セッション」として、ニコニコ生放送で引き続き放送、新仕分けに参加していない有識者をまじえ、その意義やレビューシートの在り方、今後の展望などを討論した。

・[ニコニコ生放送]「仕分け」を仕分ける 新仕分​け 特別セッション生中継&​岡田副総理記者会見) - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv115221366?po=newsinfoseek&ref=news

進行役・行政刷新会議事務局・伊藤伸氏(以下、伊藤):ここからは『仕分けを仕分ける』と題して特別セッションを行いたいと思います。まず参加者の方をご紹介いたします(以下の参加者を紹介)。

秋山咲恵氏((株)サキコーポレーション代表取締役社長、以下、秋山)
市川眞一氏(クレディ・スイス証券(株)チーフ・マーケット・ストラテジスト、以下、市川)
清水涼子氏(関西大学大学院会計研究科教授、以下、清水)
津田大介氏(ジャーナリスト、以下、津田)
速水健朗氏(編集者・ライター、以下、速水)
福嶋浩彦氏(中央学院大学社会システム研究所教授、以下、福嶋)
古市憲寿氏(東京大学大学院総合文化研究科博士課程、以下、古市)

伊藤:またこのセッションは、岡田克也副総理もご参加いただきます。また藤本祐司副大臣、寺田学補佐官もご参加いただきます。事務局からは、加藤秀樹・行政刷新会議事務局長、藤城眞・行政刷新会議事務局次長、進行役は引き続事務局の伊藤が進めて参ります。このセッションですが、まず事務局長の加藤より仕分けの意義等について話をした後、古市さんと速水さんにこの3日間に関するレビューシートを読み込んでいただいていますので、そこから感じる点をお話頂き、それから自由討論をしていきたいと思います。それではまず、加藤局長よりお願いします。

加藤秀樹氏(以下、加藤):こういうオープンな議論での仕分けを3年間で6回行ってきました。仕分けの成果というと、残念ながらメディアは、何を廃止したとか、いくら削ったとか、そういうところを中心に報道したわけですけれど、それは、その日の成果なのだと思います。それ以外にもっと長い目で見た成果ははるかに大きいものがあるんじゃないかと思います。つまり、その日の成果プラス波及効果です。

 元々仕分けをやらなくても、例えば会計検査院とか、あるいは国会の決済委員会というところで行政のお金のチェックをする仕組みになっていたわけですね。ところが、残念ながらそこが必ずしも十分機能していなかった。それでこういうことをやった。例えば、検査院は2009年に仕分けが始まって以降、3年間の指摘事項の平均が9000億円あまりです。ところが、2008年までの10年間は600億円ちょっとです。13倍か14倍になっています。これもやっぱり効果じゃないのかな。

 それから、一年前に衆議院の決算行政監視委員会で、これは国会ですから与野党合意して、「仕分け」と呼ばないですけれど、実質的には仕分けを行なっています。これに基づいて、国会として大臣に対して決議を送っています。本来の仕組みが機能し始めたのは、非常に大きいことだと思います。

 もう一つは、今日もそうですけれど、事業の議論をするわけです。抽象的な議論だと分かりにくいですから、事業を議論することによって、その事業をすることにさせている制度とか、その事業を行なっている組織とか、組織と制度の議論が必ず出ます。そして、その検討が随分始まっているわけですね。大きいのは特別会計、独立行政法人、これは制度まるごと議論されております。

 もっと個別のことで言えば、「もんじゅ」という仕組みをどうするか。それから、原子力政策、あるいは地方交付税の制度についての議論が始まっている。これもやはり大きいと思います。それから、今回の刷新会議の仕分けのコピーが、「国民の国民による国民のためのチェック」ということです。
今回は特に、ツイッター上でいろいろ議論していただきました。初日に野田総理が「オープンガバメント」という言葉をお使いになりました。この辺については、今後出てくる大きい成果だと思いますが、津田さんを始め、3人の方に議論していただければと思います。

 それを可能にした仕分けの特徴ですね。これは「レビューシート」と呼ばれている国の事業のフォーマット化ですね。これは世界初です。OECDなんかでもかなり注目をされています。それから外部の人が加わって議論するということと、その全面公開。こういう特色を今後どう活かして、さらに大きい成果に結びつけるかということかなと思っております。以上です。

■「オープンガバメント、政治のプロセスの透明化に」

伊藤:それでは、レビューシートを読み込んで頂いております古市さんから、所感をお話いただければと思います。

古市:今回の仕分けのレビューシート、ウェブサイトでも公開されているものを、仕分け人の方と同じように読んでいたんですけれど、一つ良いのは、どの事業であってもフォーマットが統一はされているので、比較可能性は昔よりも高まったのかなという気はします。ただ、それでもすごく読みにくいなと思うところがあって、例えばすごい細かい話なんですけれど、縦で読むページと横で読むページがあったりとか、お金の単位でも何億円と何百万円が混ざっていたりして、読みにくいところはありました。

 あとは肝心の内容なんですけれど、わかったような気がして、わからないなっていうレビューシートも正直たくさんありました。つまり、一応項目は全部決まっているからひと通りは書いているんだけれども、仕分け自体でも話題になっていましたが、「多面的」って言葉ですとか、曖昧な言葉で濁しているだけであって、なかなか実情がわからない。お金の流れも一応は書いてあるけれども、百億円単位で書いてあったら、その百億円の中身があまり分からないなってところがあったりしました。

 ツイッターできていた意見が目に止まったんですけれど、その方はある独立行政法人に内訳を出して欲しいって言ったら、それを国交省の間でたらい回しにされて、情報が開示されなかった。黒塗りで検証できないような資料が開示されただけだったと。レビューシート自体はフォーマットが統一されて、比較可能性が高まったという点においては価値があることだと思うんですけれど、これだと実感がなかなか見えないし、具体的に何が行われていて、内訳がなんだってことにもう一歩踏み込んで、見た人が興味を持った時にどうしたら良いんだってところまでが担保されたら良いのかなって思いました。

伊藤:ありがとうございます。このあと自由討論を進めて参りますが、まずは速水さんと津田さんにこの3日間の感想を含めてお話いただいた上で、そこから議論を進めていきたいと思います。

速水:速水です。ツイッターやニコ生3日間、ずっと僕だけがフルで見ていたので非常に目が疲れました。肩がこる。レビューシートの話をまずしてくれということなんですけれど、今回の僕らの役割、僕らがやったことは、ツイッターやニコ生で来るコメント、今起こっている議論に対してみんなの意見のようなものを、なるべく議論に反映させるようなことをやろうと。その時にただ見ているだけだと、そこに対しての感想しか上がってこない。今までの事業仕分けの象徴が「蓮舫の襟」っていう、ネットではそこにしかみんなの注目がいかないような、日本のネットコミュニケーション的な反応の仕方、そういうものになってしまうんじゃないかって危惧もあり、どんなものが反応あるかは想像するしかなかったんです。

 やってみると、僕が誘導したわけではないんですけれど、データがありますよって公開されたものを、PDFで見てくれてた人も多かった。3日間のうちでも、議論によって、テーマによって、参加の度合いが違うんですが、初日の午前中だったと思うんですけれど、レビューシートはあらゆる事業の税金の使われ方の内訳が、実際に支払われた企業のトップ10まで額によって名前が出ているんですよ。同じ重機を買っているのに、なんでこんなに値段が違うんだろうってツッコミがあった。これが今回の仕分けをツイッターで意見を募集しながらやった中の一つの成果として、わかりやすいもののような気がしました。

 議論によっては、レビューシートの中身が前年度の実績がないものとか、新規のものだったりすると、なかなか参考になるものがないんですが、そういうレビューシートを見ながら議論に参加している方が結構いたのが良かったと思います。あとは感想的なところ、僕が気になっていた部分は、「オープンガバメント」、政治のプロセスの透明化というか、今回はただ単に透明化しただけじゃなくて、意見参加できますよってことをやったと思うんです。ツイッターなりの意見を参照してそれを議論の中に投入してくれっていうのが、僕や津田や古市への依頼だったと思います。ニコ生を放送していたということもあり、ニコ生のコメントも結構拾いました。

 これは、仕分け人の方々にも聞きたいんですけれど、会場の4つのモニターに本当にそのままコメントが流れるんです。2日目の生活保護は結構盛り上がったんですけれど、みんな「ナマポ」、「在日外国人問題に斬り込め」とか、否が応にも入ってくるんですよね。そういうありえない体験を皆さんされて、これは「オープンガバメント」と「愚行」の間というか、ここまでやって良かったんだろうかってところまで踏み込んでいた。これに関して、もちろん各役所の担当の方々も食い入るように見ていて、ここでしゃべる方々以外にも、10人くらい後ろに来ていらっしゃる方が、あんぐり口を開けて見ている光景を見て、試みとしてのオープンガバメント的なことの象徴的な絵でした。仕分け人が官僚を追い込むという図だけではなかったと思うんです。

 仕分け人の方々にも厳しいことだったり、内容に関係無いような髪の毛の薄さのことだったり、そこまでニコ生のコメントは来てしまうので、こういうものが僕は効果があるというか、本当に効果があるのかどうか分からなくて、でも新しい試みとして面白いことでもあったんです。でも、これは今後なくなる可能性もあるので、皆さんにどうだったか伺いたいなというのがありました。

伊藤:今「ごめんなさい」ってコメントもかなり流れていますね。津田さんからお話を伺った上で議論していきたいと思います。

■「オープンガバメントに8割が評価」

津田:今、速水さんの方から「ニコ生のレベルが低いよ」「コメントがひどいじゃないか」みたいな話もあったんですけど、僕は全く逆の感想を持っています。今日の最後の仕分けで取ったアンケートで、「今回の『新仕分け』のように、オープンガバメントの取り組みをどう思いますか?」というアンケートをやったら、思った以上に(評価するという)感想が多かったんですね。「非常に意義がある」が56.8%、「まあまあ意義がある」が23.2%。両方合わせて8割近くが評価しています。

 もう一つ、行政事業レビューシートについてのアンケートでは、より評価が高くて、「(このように)国がやっていることや、税金の使われ方について公開することをどう評価するのか」という質問に対して、「非常に意義がある」が71.7%、「まあまあ意義がある」が18.6%でした。約9割が意義を認めるということで、みんな文句を言いながらも、取り組み自体に対しては、非常に評価していただけた。これは非常に面白かったなと思います。
 
 ツイートを見ていても、「少しでも政治に参加しているという気持ちを味わうことができた」とか「政策ってこんな雰囲気で議論されているのかってわかる」とか。ただ、見せ方の問題でいえば、(仕分けは)仕組み上、1時間でバンバン切っていかないといけないので、議論を深めることはできない。これは事業仕分けへのネガティブな批判として言われるんですけど、1時間で切らないといけないスピード感があるからこそ、緊張感がある議論があって面白いし、それ自身がたくさんの人に見ているコンテンツ価値につながるんだと思います。

 先ほど、岡田副総理の方からありましたけど、僕が「すごい象徴的だな」と思ったのは、今までは永田町や霞ヶ関だけで行っていた予算編成という物に、第三者が介入するということです。それがネットに開かれるようになって、1回目から実験的に行われてたけど、2回目からはマストになりました。それを見ようという気になれば毎日8時間に及ぶ議論を全部、動画が公開されているわけだから、暇な人は見ることができるわけですね。そうやって公開されていることが何よりも重要です。

 それにプラスして、ある意味で「最後の仕分け」とも言われている今回、インターネットの意見として質問や、ニコニコ生放送のリアルタイムアンケートの結果が、ここで実際に読み上げられました。ここの仕分け人の席に座っている意見の一つとして、ネットの意見や意志が可視化されて、一つ、空白の席としての「ネット代表」の席があって、参考意見としてネットを通じて参加できるようになった。そういう意味でシステムとしても完成形に近くなってきたんじゃないかなと思っています。

 「オープンガバメント」も言葉としては簡単なんですけれど、出てきたのは3年くらい前なんですね。3年くらい前で、進めたのはアメリカのオバマ大統領とイギリスのブラウン首相と言われていて、オバマは本当にオープンガバメントやりましょうって決めて、まずそれ用の集約サイトを作ったんですね。サイトを作って、人口とか国勢とか犯罪調査とか、政府が持っているあらゆるデータをウェブに一つにまとめて、すごい見やすいように、いわゆるAPIという形で、外部の業者やマスコミも簡単に呼び出して利用できるようにしたんです。

 アメリカの場合は「ニューヨーク・タイムズ」みたいなマスメディアもきちんと利用するんですけれど、日本の場合はまず政府がデータを公開しない。利用しやすい形で公開しない。そして、またそれを利用して読み解く人の少なさっていう両方の問題があって、「卵が先か鶏が先か」みたいな議論で止まっていた。今回は行政事業のレビューシートが、古市さんの方からも指摘ありましたけれど、もっとわかりやすく利用しやすい形にデータが整って公開されていくことによって、非常に深まっていくんじゃないかと思いました。

 僕も1回目から仕分けの会場に訪れたり、中継を見たりして思うのは、国政だけでなく地方自治にこそ、むしろ本当に意味があるんじゃないかなと。アメリカの大統領選挙なんかも、単に共和党や民主党に投票するだけじゃなくて、住民投票で重要な政策を決めていたりしますし、国民参加の仕組みとしての仕分けを見て、仕分けでの意思を示したものが条例制定とか、予算の使い道みたいに反映されていくようなシステム、そこへの発展の可能性も感じましたね。

 事業仕分けはこれからも続けていって欲しいんですけれど、一点だけ厳しいことを最後に言わせていただけると、事業仕分けによって、これだけムダにお金って使われてきたのかって分かったことはあるんですけれど、それが明らかになったって意味では非常に意義深い反面、それってでも実は国会で通っているよねって、ムダな予算を国会で通しているわけですから、事前になんでチェックできなかったんだと。予算を通しているってことは、役人だけでなくて政治家の不作為や責任もあるわけです。

 そういう部分を事業仕分けという形で、仕分け人の側や質問する側に政治家の人がいることによって、自分たちの責任を棚上げにこれどうなのって言うことは、この構図自体がどうなんだってツイートもありました。僕自身もそう感じることもあったので、仕組みとしては良かったんですけれど、政治家は一方で政策を作っていく上での当事者でもあるので、今後、仕分け的なことが発展していく中で、政治家の人たちをどういう形で仕分けに関わらせていくのかってことは、オープンガバメントとか仕分けの重要な論点の一つになるんじゃないかなと思いました。長くなりましたけれど以上です。

■「官僚がどんな顔でしゃべっているか見える」

伊藤:ここから自由討論としていきたいと思いますが、大きく論点を二つに分けたいと思います。一つは、今回のこの新仕分けのしつらえに関してですね、モニターを使ってツイッターなどと連携をした、それプラス、レビューシートや行政の情報の見せ方、オープンガバメントの部分が一つ。その後に、今後こういった仕分けの手法をどういう風に政治や国会、または地方に活かしていくか、大きく二つに分けていきたいと思います。

 3日間コーディネーターをやっていて感じたんですが、この取り組みは事務局で発案をして、副総理にご了解をいただきました。もしかしたら、副総理はここまでこういう風になるとは思ってなかったかもしれないですし、途中で止められるかなと思った部分はありますが、最後までやっていただけて良かったなと思います。これだけ随時、コメントが流れていると、速水さんがおっしゃった通り、みんな見ざるを得ない、これは良い面もありますが、あえて私が悪い面を申し上げると、特に説明者の方もそうですし、こっちの方にいってしまって聞いていない場合が多かったです。これは、私自身も両方見ながらになると、どうしても集中が散漫になってしまったなと反省もあります。そういう意味では行政の中でこういうことをやったことはちょっと刺激が強すぎたかなという部分も、正直に言って感じる部分もあるんですが、これは仕分けに参加されていた方も色んな考えがあると思います。そういったところから議論を進めていきたいと思います。自由にいかがでしょうか?

寺田:一番最初の仕分けから全部出た人間として、初めてこういう形で、インタラクティブにやっていますけれど、正直ひどいことを言われるのが政治家なので、慣れています。野次られるのも慣れているんですが、逆にいろいろ感想を見たかったんですよね。まさしく今ですけれど、自分がしゃべっている時は見られないですし、質問した後に返答が来ますけれど、返答を聞いている間は見られないですから、リアルタイムに見られないのはあった。僕はこういう仕組みはあって良いと思うし、良い所と悪い所はあると思いますが、良い所を享受するためには、リアルタイムに見たいなと思いました。

藤本:自分がとりまとめ役をやっているものについて、これを見ちゃうと集中できなくなるんですね。自分がやらなきゃいけない時は、あまりコメントが見られなくて、自分がとりまとめ役でない時には、結構見ているという。要するに、ネット視聴者の方がどういうことを言っているのかってわかっている時には、実はとりまとめに参加していないっていう、そういう現象が起きてしまったかなと思います。そういう意味で、そうじゃない時は見ていると、なるほどと思うところや、そういう視点もあるんだなって思うところもあったりしましたね。

市川:話をぶち壊すようで大変、恐縮なんですけれど、私は全然、見ていないんですね。これは、私が社会人になった時からマーケットの中で生きていますので、常にマーケットの動きがフラッシュしている時に、いかにそれを見ないかという訓練をずっとこの25年間くらいしてきましたので、全く見ないです。見ない理由は、ここに書かれていることに意味がないと申し上げるのではなくて、これを見てしまうと、もう発言ができなくなる。そこは、古市さん、津田さん、速水さんが、途中である種フィルターを通して、全体の最大公約数を伝えてくださる、それはすごく気にして見ていましたけれど、実際にこの場で流れているものは見ていないですし、かつでれば子どもにも見てもらいたくないなと思いながらやらせていただいておりました。

津田:コメントでは「それで正解ですよ」、「見なくて良いんですよ」って、同意の意見がいっぱい来ていますよ。

福嶋:私は見ていました。自分がしゃべっている時は見られませんから、それは良かったんだと思うんですね。しゃべっている時に見ていたらなかなかしゃべりにくかったです。

津田:福嶋さんは一番人気だったので、見て良かったと思います。

福嶋:私も政治家だったことありますので、打たれ強いから、何を言われても気にせずにしゃべってはいました。まだ限られた第一歩かもしれないですけれど、こうやって直接、国民の皆さんが参加する、ツイートで参加するのは、画期的だったと私は思いますね。レビューシートってことも大前提ですけれど、やっぱりこうやって議論する時の場を見ることに、一つ意義があると思います。官僚の人たちが悪いとか、官僚をちゃんと使わない政治が悪いとか、色んなことを言いますが、ほとんどの人たちは官僚の人がどんな顔で、どんな風にしゃべるのか見たこともないわけですよね。こういう議論の場だと、それぞれの人の個性とか、良いところも悪いところもすごく見えますから、そういう場を直接見ることは、ものすごく大きな意義があると思うし、更にそれに対してツイートで色んな意見を言うことは、私は画期的だったと思いますね。もちろんまだ一歩にしか過ぎないし、改良するところは山ほどあると思いますが。

津田:1日目を見た後に、速水さんとセッションした時にも言ったんですけれど、仕分け人の方々もお忙しい中で、すごく勉強されて、その中で質問していく。でもそれでも足りない部分ってあると思うんですね。その時にこの仕組みの途中からの吸い上げで良かったなと思ったのは、ツイッターなんかで疑問点が出た時に、仕分け人の方々が質問しないようなことを説明員の方に、こういう質問が来ていますけれどどうですかって聞いたり、それによって判明した事実があったりした。むしろ、仕分け人の方々のサポート役として機能しているような面もあったし、その可能性が出てきたのはすごく良かったなと思いました。

■「民意伝える」ニコ生のコメントが3万

加藤:ここにモニターを置いて、見る見ないっていうのは本質的な問題ではないと思うんですね。見たり見なかったりは、慣れてくればできる。ただ大事なことは、こういうところで議論して、それがネットで誰でも見られる状態になると、これだけの意見が出てくるっていうことですよね。ツイート数がいくつでしたっけ? ニコ動コメント数が30000。それ以外にニコニコ動画のコメント数もありますね。ですから、こういう風にいろんな人が、いろんなことを考えながら、洋服の話も含めてですけれど、返ってくるっていうことを、政治家は日常的に感じているわけですけれど、やっぱり官僚もそれを感じるべきだと思いますね。

 それがないと、当事者意識が行政に携わっている本人ですら希薄になってくる。もちろん、国民の側でも当事者意識がものすごい希薄になっている。お金がどっかから降ってくるみたいに思っているところがある。官僚にも当事者意識がなくなっている。あえて言えば、マスメディアの記者たちにも。当事者意識がなくなっていると思うんです。それをこういうものでもっと実感するのが大事じゃないかと思います。

速水:フォローすると、ニコニコ動画のコメント数が、初日は6,6万、2日目は約6万。今日は今の時点で3,1万。ツイート数も、厳密には速報とそうではないものが分かれている、RTとか含めてだと思うんですが、初日2300、2日目約4000、3日目約1000、これも現時点の暫定だと思います。そういう数字でした。

伊藤:これは双方向のコミュニケーションをどういう風に今後行政の中に取り入れていくのかに繋がると思いますが、外から秋山さんに御覧いただいて、その辺も含めてどうでしょうか?

秋山:まず、面白かったです。この画面を見ると、会場は絵面が非常に堅苦しいんですよね、それをニコ生のコメントがものすごい勢いで並んでいるのを、私はうしろの傍聴席で見ていたんですけれど、なんてシュールな風景だろうと思ったんです。私からコメントさせていただこうと思うのは、私が10年間くらい政府の色んな審議会に委員として参加して、いわゆる政府の側の議論に参加させていただく機会が比較的多かった人間なんですけれど、それと今回の仕分けを比べて感じているのは、実は議論の本質そのものはあまり変わらない。

 別に、審議会だから特別すごい話をしているとか、全然違う感覚でものを言っているとは思わないんです。審議会でもそうですけれど、参加してみて思うのは、今回のレビューシートのように情報が出てくる。その審議会の委員になって初めて、省庁の方が非常にわかりやすくまとめてくださったデータを見て、世の中こうなっているんだとか、実はこんな数字になっているんだって知って、そのことに対して率直に意見を述べ合う。それと同じことが、レビューシートを使ってされていたというのが第一印象です。ただ、レビューシートが良いのは、どうしても、集中的な省官庁の審議会だと、総論が中心になってなかなか各論にまで切り込むような時間が取れないものを、レビューシートがあるので、ここでは各論にも切り込めたということがとても良かったなと思います。

 それからあともう一点、この二つ目がとても大事なことだと思ったんですけれども、政府の会議に出ていると、同じようなトピックで、「これは変えるべきだ」「これはおかしい」と言われることが、10年間くらい言い続けられていることがとてもたくさんあるんですね。なぜ、「こんなことぐらい...」と思うようなことが変えられないのかという素朴な疑問があるんですけど、そこにはやはり、政治家の方が決断して動いていただくにはいろいろ難しい面があるというのも段々わかってきて。そういう意味で、今回のこういう、ニコ生やツイッターも含めて、その民意を、政治家の方が直接接していらっしゃる範囲以外のところから、「実は民意ってそこだけじゃないんだよ」っていうことを、もう少しリアルに感じていただけるフィードバックの、民意を伝えるひとつのツールとしては非常にインパクトがあって良いのではないかと思いました。

■「最後に政策へどう反映させるかは政治の仕事」

伊藤:副総理、どうぞ。

岡田:いろいろと書いていただきましたが、政治家ですから、それはまあ慣れているんですが、役所の皆さんは、ちょっとショックを受けた局長さんや部長さんもいらっしゃったかもしれませんね。ただ、いろいろ説明するのに一生懸命で、見る時間はなかったかもしれませんが、その後ろにいた、比較的若い官僚のみなさんがしっかりと見ていて、中には笑いをかみ殺している人もいたのではないかと思います。あとは、この行政事業レビューシートの存在を多くの人に知っていただいたこととか、政策論についても、1か100かということではなくて、40、60とかですね、そういう議論がたくさんあるんだということを知っていただいたことも、私は意義あることじゃないかなと思います。

 それから、私自身の立ち位置ですが、歯切れがちょっと悪いところもあったかもしれませんが、今回はなるべくここで決まったことを、最終的な政府の決定に反映させようと思っておりましたので、評価者の皆さんが出されたようなことを、2回くらい意図的に和らげました。その代わりといってはなんですが、今日お決めいただいたことは、しっかり最終的な予算に反映されるように、きちんとやる、そういう責任が我々政府にはあると考えております。

伊藤:仕分けはレビューの使い方につながると思いますので、市川さん。

市川:これはですね、いつも思うことですし、ある意味では仕分けの本質に関わる部分ではないかとも思っているんですけれども。私もよく、仕分けである一定の結論を、この6回の中で出してくるなかで、その通りにいかないことはありましたし、これは加藤局長がもしかしたらお叱りになるかもしれませんけど、私はそれでもいいと思ってるんです。というか、それが当たり前のことだと思うんですね。例えば、予算に関わる仕分けであれば、政府予算案というのが、今年はちょっとわかりませんけども、憲法で、12月末までに政府は内閣によって予算を作る責任があるということになっていますが、その途中のプロセスは、これは与党内でも、政権内でもいろんな議論があって、それが最終的にまとまっていくことに意味があると思うんですね。

 その間は、いろんな議論があるはずなんですよ。ただ、これまでは、いろんな議論がどこにも伝わらない中で、概算要求の数字が出てきて、それが最後、次官折衝、大臣折衝ぐらいになって初めて出てきて、総額がどーんと出る、っていうプロセスだった。実際に個別の状況に対して、私も含めて、一般の国民が触れる機会っていうのは非常に少なかったと思うんですね。それをオープンな席で議論をさせていただいて、その結果、ある一定の結論が出ますと、出たものについて、仮に内閣として全体のバランスを見たときに、本来この仕分けの内容が必ずしも適切ではないと判断されたのであれば、それは公開の席で議論してるわけですから、そのことを説明されて、「これはこういう理由で仕分け通りにならなかったんだ」、それがたぶん民主主義ではないかと思います。

 その意味で、この3日間、副総理が2回か3回くらいですね、「私は甘いかな」とかおっしゃりながら、全体の表現を丸められたこともありましたし、それはこれまでの仕分け、特に強く覚えていますけど、第1回目の2009年11月の仕分けの初日だったと思いますが、当時取りまとめ役をやられておりました菊田真紀子議員が「私の政治判断で」と言って変えられたことがあったんですが、やはり、我々はあくまで議論を精一杯させて頂き、ある一定の方向の結論を出すというところまでが仕事で、最後にそれをどう政策に反映させるかさせないかというのは、やはり政治の仕事だと思いますので、その点を見る側と参加する側は誤解してはいけないのではないかと思います。

岡田:そういうふうに言って頂き、ありがとうございます。ただ、ここは通常の審議会とは違って、各省庁と評価者のみなさんが議論をして、最終的に結論を出すわけですから。しかもそこに、私をはじめ政務の人間も入って議論をしているわけなので、やっぱり極力その結果が反映されなければ、逆に言うと、何のために議論をしているのかということにもなりかねませんので。そういう意味で、私自身は、出てくる以上は最終的な結果につながるような、そういう責めを負って出ていたつもりでございます。

加藤:私はもう一つ、これは期待を込めてなんですけどね。ここでやった議論を極力、岡田副総理はちゃんとやっていた、これはすごくありがたいし、仕分けをやって頂く方にもたぶんやりがいがあるんだと思います。大事なことだと思います。ただ、期待を込めてと言ったのはですね、そのときにテレビでコメントをする人たち、マスメディアというのは、批判をする方向が違っていることが多いと思うんですね。「しょせん、仕分けはここだけの議論だろう」「刷新会議は権限がない」、あるいは、「役所は言われたことをやらないではないか。政治家もやらないではないか」ということを、まあずいぶん訳知り顔に言う人が多い。

 私はそれは全く違う、そういう人たちのために、「ちゃんとやれよ」ということを、メディアとかコメンテーターは、政治家にも言う、官僚にプレッシャーをかける、そっち側でないといけないんですよね。そこに当事者意識のなさを感じたし、それを「皆でプレッシャーをかけてよ」というためにオープンの場所でやっているんだと私は思っています。ですけども、それは一気には進まないわけですから、こうやってここまでオープンになって、これを続けていけばそこは段々、ずいぶん色んなコメントがありますけど、良いコメントが多いと思いますし、役所の人もずいぶん変わってきてますから、期待したいと思ってます。

伊藤:古市さん、どうぞ。

古市:僕もときどきテレビでコメントとかを求められるんですが、やっぱり政府批判って一番言いやすいんですよね。「政府にはしっかりしてほしいですね」って、オチもつけやすいし。ただ、今日の会議を見てても、そんな任せてもいられないなってことは、お昼のセッションでも喋ったんですけど、思ったんですね。官僚の方の中で、「このひとは信頼できるな」っていう人はいるんだけれども、「この人にはさすがに任せられないな」っていう方も正直、いたりして。だから、本当に任せっぱなしじゃダメなのかなっていうのはすごく思いました。

伊藤:清水さん。

清水:全般的な話なんですけれども。私の仕事柄ですね、関西でやることが多いんですね。さっき配られたこのペーパーですと、一番上の会計検査院のような立場で監査をするんですけれども、それと決定的に違うのは、監査とか検査とかいいますと、やっぱり事後的な作業ですので、チェックするときにはもう終わってることって結構多いんですよね。だから、「同種なことがあったら次回気をつけてくださいね」という結果になるとういうふうなことがあります。

 そういうのが1点と。それから、政策の裁量っていうことには立ち入ってはいけないんですね、監査というのは。政策を実施していく上で、妥当な方法かとか、そういうことは言えるんですけど、政策そのものについてうんぬんすることはできないんです。それが違う点ということですね。あと、市川委員もおっしゃっていましたけど、廃止とか抜本的改善とかいう、割と国民的目線に沿った形での、ズバッと判断をする、短期間ですからある意味思いつきのところも多少あるかもしれませんけど、それに対して行政がどう対応していくのかということについては、それなりに重い説明責任というのが求められると思うんですね。そのへんのところが大きく違うところということで。地方自治体でもこういう手法を取り入れようとしているところが増えてると思うんですけど、今後も推進していって頂きたいなと思っております。

伊藤:津田さんどうぞ。

■「ツイッター、ニコ生のコメントは『世論』の上澄み」

津田:さっき岡田副総理の、最後の閉会式のところでの挨拶でもあったと思うんですけど、これは、無駄な予算の一刀両断ではなくて、それぞれの個別の案件に関して、非常に難しい問題を抱えているということが明らかになったことに意義があったんじゃないかということで、それは僕も本当にその通りだなと思っていて。やはり、情報がどんどん公開されて、プロセスが透明化していくということは、ある意味で言うと、いろんな人が関わり合いになるということでもあるんだけれども、自分たちで、コメントを含めて、ネットを使って政治参加のきっかけができてるわけです。

 そうすると、さっきの古市さんの話にも関連してくるんですけど、「全部お上が悪い、政治が悪い」っていうふうに言ってられなくなるんですね。何か政治を知ってしまって、関わる機会があるということは、いままでは飲み屋で政治放談とかしてれば良かったっていうことが、いままではそれがある種の世論みたいなものとして消費されていたものが、自分で関わることによって、知ったことによって、「結構問題は複雑なんだね」っていうことに気づいたときに、初めてそこから進みだすっていうこともあったわけですから。情報技術というものを使って、そこから出てきている世論みたいなものを、きちんと...、僕はたいていの意見はしょうもないようなコメントもたくさんあったと思うんですね。ツイッターにしてもニコ生にしても。

 今回、僕がこの試みで良かったなと思うのが、どちらかというと実名に近いツイッター、コメントの質がニコ生に比べて高いんじゃないかと言われる、質の高いツイッターと、ニコニコのコメント、両方があったっていうのがすごくいいなと思っていて。でも、意外と「おっ」っていう意見はニコニコのほうにもあったりするんですね。これはだから、実名・匿名どっちも含めて、参加できるということによって、アイディアレベルのものだと良いものもあったりするというところで、そういったものの中から、「このアイディアは使えるんじゃないか」「いい質問じゃないか」というようなものをきちんと吸い取る。

 そして、その中って、言葉を変えると、世論の上澄みだと思うんですよ。ネットで可視化された。その世論の上澄み、それをカッコ書きの「世論」として、「これがひとつの世論ですよ。聞くべき意見がこんなにたくさんありますよね」っていうのを、政治家の方とか官僚の方に、パンとぶつけるというのが、これからのメディアの仕組み、一番必要なものだと思いますし、本来だったらそれをマスメディアがやらなければいけない、一番重要な仕事の一つに、今後なっていくと思うんです。今回、政府と行政刷新会議は良い仕事をしたと思います。良い仕事をしたと思うんですけど、既存マスメディアが新しい取り組みとか、ネットから上がってきたものの可能性みたいなものをほとんど報じていないですから、僕はマスメディアに関しては、正直、落第だと思います。本当に反省してもらいたいと思います、マスメディアに関しては。

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