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ゆくゆくは『劇場版アズールレーン』も作りたい──目指すは「ハイクオリティな劇場版が作れるアニメスタジオ」。Yostar・李社長が語るYostar Picturesの展望

ニコニコニュース / 2022年3月10日 15時0分

 2020年2月、ひとつのアニメ会社が秋葉原の地にて誕生した。

 Yostar Pictures──『アズールレーン』をはじめ人気スマホゲームを運営するYostarの「ユザーが満足してくれる高いクオリティのアニメPVを作りたい」という想いから生まれた会社である。

 設立から2年、Yostar Picturesは数多くのアニメPVを制作してきた。

 『アークナイツ』ではイベント開催に合わせてのアニメPVがお馴染みになりつつあるし、『アズールレーン』周年を記念したアニメPVも公開。自社でアニメ制作会社を持った強みをこれでもかと見せてくれている

 さらに、『アズールレーン びそくぜんしんっ』、『空色ユーティリティ』とTVアニメ制作、最近では『アークナイツ』アニメ化の発表と、アニメPVにとどまらず活躍の場を広げるYostar Pictures。

 加えて、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇 』、『劇場版 呪術廻戦 0』など、歴史的ヒット作品の制作協力に名を連ね、着々とアニメ制作会社としての実績を積み重ねている。

 ニコニコニュースオリジナルでは、2年前の会社設立のタイミングでYostar Picturesに取材を実施。その際には「なぜアニメ会社を設立したのか」「これからなにを仕掛けようとしているのか」などのエピソードを語っていただいた。

Yostarがアニメ制作会社を設立した理由──労働環境の改善、チーム作り、作品への愛…いいアニメを作り続けるために変えたかったこと

 あれから2年、Yostar Picturesはどのような道のりを歩んできたのか。

 設立2周年を迎えるこのタイミングで、代表取締役社長の李衡達氏、取締役の稲垣亮祐氏斉藤健吾氏ら、Yostar Picturesのキーマンたちへ2年振りにインタビューを実施。

 アニメ『アズールレーン びそくぜんしんっ!』やオリジナルアニメ『空色ユーティリティ』の制作エピソードをはじめ、現在制作中のアニメ『アークナイツ』への意気込みをうかがった。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版
左から、斉藤健吾氏、李衡達氏、稲垣亮祐氏。

 娘が生まれたことで料理と子育てにプライベートを捧げ、脱オタクライフを過ごす李衡達氏

 会社の拡大と安定を目標に掲げつつ、個人として美少女ノベルゲームを作る夢を語る稲垣亮祐氏

 『空色ユーティリティ』でオリジナルアニメ制作という大きな一歩を踏み出し、さらに映像以外のコンテンツ拡大も目指す斉藤健吾氏

 会社としても、個人としても、この2年間さまざまな動きがあったようだ。

文/前田久(前Q)
編集/竹中プレジデント
撮影/トロピカルボーイ田畑

「魂と魂がぶつかりあわない!」コロナ禍でのコンテンツ制作の悩み

──2年ぶりに取材にうかがいましたが、最近の調子はいかがですか? 李社長のオタクライフは、相変わらず充実しておられます?

李:
 娘が生まれてオタクライフからはすっかり離れてます。俺の子、かわいすぎる! もう完全にリア充です(笑)。

 プライベートは料理と子育てだけ。だから最近は、オタク的な判断は現場で作品に関わるスタッフたちの感覚に任せていますね。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

──おお、衝撃です……。2年というのはそれくらい、大きな変化がある時間なんですね。会社としてはいかがでしたか ?

李:
 まず何より、やはり新型コロナウイルスの影響が大変でした。誰も想像してなかったような状況ですからね。といっても、Yostar Picturesに限れば、そこまでコロナ前後でやっていることは変わっていないんです。

 ただ、Yostar本体に打撃があったので、その影響がどうしてもYostar Picturesのほうにあったんですよね……。

斉藤:
 僕らは幸い、もともと会社を立ち上げたときからリモートで、デジタル環境で仕事をできるようにしようと考えていましたからね。

稲垣:
 そうですね。コロナで急に方向転換を迫られたわけではなかったので、仕事の進めかた自体は上手く対応はできたのかなと。むしろ、やろうとしていたことが定着しやすかったといいますか。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

──描いていたビジョンを進められつつある。

稲垣:
 まだまだ先は長いですが、手ごたえはあリます。今はこれまでやってこられたことの持続と、そこからの発展という次のフェーズに入っていると感じてますね。

 このまま失速しないように、勢いを維持しつつ、事業を拡大する。できれば、スピード感をもっと上げたい。その意味での焦りは少しあります。

斉藤:
 いろいろなことができるスタッフが増えてきましたし、働きかたにも幅が生まれているんです。たとえば、アニメーターの中にはオーストラリアに住んでいる方もいるんですよ。

稲垣:
 メルボルン在住ね。

斉藤:
 そう。完全にリモートで仕事をやってもらってます。

──それはスゴい。まったく対面なしですか。

斉藤:
 とは言っても、リモート会議だけじゃなく、Twitterでもちょくちょく絡んでいるし、距離をそんなには感じないんですよ。「本当にオーストラリアにいるの?」みたいな感覚です(笑)。

 対面の機会がまったくないことで、デメリットを感じる部分も多少はありますけどね。とくに文章のやりとりでは、ニュアンスが全然伝わらないところはあって……

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

李:
 文章だと、魂と魂がぶつかりあわない!(笑) コンテンツビジネスは魂の、情熱のぶつかり合いが大事なんですよね、やはり。

斉藤:
 勘違いが生まれたりもしますしね……。

稲垣:
 わかる~……。

斉藤:
 比較的上手くやれてはいるものの、そこは課題なのかなと思っています。

李:
 悩むところですね。正直なところ、これ以上の対策は素直に諦めて、コロナが終わるまで待つしかないような気もしています……。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

会社の規模は3倍に。それでもアニメづくりは難しい

──大変な状況ではありつつも、着実に会社の歩みは進めておられる、と。

李:
 あと、とにかく人が増えました。報告を受けるたびに驚きますね。人が増えるペース速いな! って(笑)。

稲垣:
 アニメづくりはもうほんと、人海戦術なんで(苦笑)。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

──2年前の会社設立時のお話ですと、社員は大体 20 人ぐらい、外注も入れると大体 30 人ぐらいで回している体制だとうかがいました。現状の規模はどのくらいに?

斉藤:
 そのころの倍じゃ済まないんじゃないですか?

稲垣:
 3倍ぐらいですね。外注も含めると100人に近い体制ですし、今年(2022年)の4月にはさらに新卒を結構採ろうと考えています。

李:
 それだけ人を増やしても、やはりスケジュールが厳しくなるときがあって、やっぱり想像以上にアニメづくりは難しいですね……。準備期間が長くかかってしまうことが多いんです。「あ、アニメってここまで制作期間が必要なのか」と、予想外でした。

 当初、『アズールレーン』でもPVをバンバンやっていきたいと考えていたんですが、『アークナイツ』と異なり、ゲーム内において日本、中国のイベントスケジュールが統一されたことで、原作イラストの入手からアニメPVを作るまでの時間の余裕がまったくなくて。こちらの狙ったタイミングで作って公開しようとしても、なかなか思うようにはいかない。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

稲垣:
 扱う作品数が増えるに応じて新しい人を入れても、その新しい人が業務に定着する時間と、求められたスケジュールが完全には噛み合わないんですよね

 アニメ業界ではそういうとき、外注で人を集めて、乗り切ったら都度チームを解散させる形をとることが多いです。でも、そのやりかただと、次に動くときに同じ人たちにまた集まってもらおうとしても、やってくれるかどうかは分からない。

──別の作品でスケジュールが抑えられたりしますものね。

稲垣:
 そうしたスタッフ集めの調整の手間をなくして、なるべく制作体制を安定させるために自社でスタッフを抱えるわけですが、それでも新しいキャラクター、新しいタイトルがどんどん登場する状況に対応しながらゲームのためのムービーを次々と作るのはどうしても難しいところはあります。

 求められる絵柄であるとか、作業のクオリティに慣れるまでの時間もそうですし、人が増えれば増えるだけ管理業務は大変になるんですよね。

──ああ、なるほど。クリエイティブな人材を増やしたら、制作管理も増やさないと、現場をスムーズに回せない。

稲垣:
 だから徐々に人を増やし、作業体制を改善してはいるものの、できることが増えればやるべきことも増え、さらに課題が生じて……みたいなことの繰り返しですね。

 でも、これは仕事の常(つね)ですよね。だから僕たちにできることは、立ち止まらず進むことだけかなと。

──そうした意味では、まだ地ならしの段階というか。

稲垣:
 そうですね。教育体制もようやく整ってきたところですから。これまで新人たちに教えていたことをテキスト化できてきたんです。

 天才は最初からうまいんですけど、アニメのスタッフは技術職なので、教育のメソッドやマニュアルが整ったとしても、ちゃんと学んで、教えて、実践して……となると、やはり数年はかかる。まだまだ、これからのことが多いですね。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

『アズールレーン びそくぜんしんっ!』は納得のいくクオリティでお届けできた

──この2年のあいだには、ショート作品ではありますがYostar Pictures初のTVアニメ作品である『アズールレーン びそくぜんしんっ!』も送り出されました。こちらの手応えはいかがでしたか?

李:
 実はかなりタイトなスケジュールで制作をお願いしたんですよね。2019年の年末の生放送で『アズールレーン びそくぜんしんっ!』のアニメ化を発表しましたけど、アニメの制作じたいをスタジオに依頼したのはその1週間ぐらい前ですからね。

──なんと。

李:
 制作期間は1年未満。アニメ業界の一般的な企画の準備期間がわかってる人間から見れば、かなり早いペースです。で、クオリティも問題ないレベルでした。「このスタジオ、行けるな!」という、ホッとしました

稲垣:
 改善したかった部分はもちろんありはするのですが、狙い通りには作れたかなと思っています。

 『アズールレーン』というYostarが有名になるきっかけになったタイトルをアニメ化させてもらえてスタジオとしても意味があったし、美少女もので、個人的な趣味にも合っている企画だったので(笑)、ありがたかったですね。

李:
 本当に急な依頼だったので、ちゃんと間に合うのか内心ドキドキしていたんですが、みなさんにお願いした、放送前の全話納品という条件もちゃんとクリアしてくれましたしね。そう、その点は本当に素晴らしかったです。

 おかげで宣伝もしやすかったですね。タイアップ案件のための版権イラストも大量に描いていただける余裕がありました。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

斉藤:
 たしかに、かなり描きましたね。ピザハットとか、ファミリーマートとか、ドン・キホーテとか。ショートアニメ作品にしては異例なくらいタイアップがあり、いろんなシチュエーションで楽しく描かせてもらいました。

李:
 余裕を持ってマーケティングのためのいろいろな仕込みができることって、超大事なんですよ! 本当に! 

──メディア側の人間としてもよくわかります。放送前に画像素材があると、ニュースにする際にも非常に助かるという。

李:
 わかってらっしゃる!

稲垣:
 Yostar Picturesとしての最初のTVシリーズということもあって、スケジュールを守ることはかなり意識しましたね。


オリジナルアニメ『空色ユーティリティ』を作れたことは大きな一歩

──もう一作、完全オリジナルの短編アニメ『空色ユーティリティ』も2021年の年末に放送&配信されました。こちらはいかがでしたか?

斉藤:
 『空色ユーティリティ』を作れたことは、自分にとってはかなり大きいです。去年はそのために、小さなチームを作ってフル稼働していました。

 去年の4月にちょうど李社長と話す機会があって、考えていた企画のアイデアを話してみたら、あっさりと「いいよ、やりなよ」と返されて(笑)。

李:
 去年、ゴルフが超流行ってたじゃないですか。そうした意味で旬っぽい企画ですし、アニメで美少女とゴルフを組み合わせるのはそれまでにないコンセプトだったし、チャレンジしてもいいかなと思ったんです。

 あと、それ以上に、ちょっと偉そうな言いかたになってしまいますけど、普段は会社から与えられて仕事をこなしている状況の中で、自分から言いだしてくれた企画なわけですよ。

 そういう社員がやりたいことをやれるステージを用意しないと、優秀な人材は離れてしまうんですよね。そうした意味での経営的な視野からも、やったほうがいいと思ったんです。

斉藤:
 そうだったんですね。おかげで、育ってきた新人を本番に投入して、試してみるいい機会にもなったんです。新人の子たちの絵に僕が修正を入れて、どういうところに気をつけたらいいのかを直接話したりもできました

 あと、ちょうど新人の中に、ゴルフをする女の子がいたんです。その子に話を聞いて作品の描写に反映したりもして、そういう形で作品に関わる経験ができたことは、これからの仕事にも役立つはず。そうした貴重な勉強できる場になったんじゃないかと。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

李:
 まだ若い会社ですからね。すぐにアニメ業界内で大きなインパクトのあることをやれるわけではありませんから、まずは若い社員たちの実力を成長させるために、小さなステップを積み重ねることが大事だとも思っていました。将来を見据えて動きたいんですよね。

──人材育成やコンテンツ開発に時間を掛けて投資されているのは、素晴らしいと思います。

李:
 やれるうちはやりましょう、みたいな感じですね。昨今のエンタメ業界、とくにゲーム業界は転換が激しいじゃないですか。10年以上、Yostar本体が存続する保証もない。もしかしたら、来年には消えるかもしれない。だからこそ、やれるうちは悔いを残さないようにやりましょう、と。

──『空色ユーティリティ』のお客さんからの反響はどうだったんですか?

斉藤:
 放送後、日々、Twitterでタイトルを検索しているんですが(笑)。それを見る限り、評判は割といいのかな? と。普通にうれしいです。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

稲垣:
 僕はほかのところ……付き合いのあるアニメ業界の人たちからもいい評判をいっぱい聞くので、本当に作れて良かったなと思います。

 去年の4月から勢いで企画を始めて、これで完成まで辿り着けなかったら、許可を出してくれた人たちに対してちょっと会社としてカッコ悪いなと思ってたんですけど(笑)、無事にやりきってくれた。それだけじゃなく、完成したものの出来も僕は満足ですし。

斉藤:
 完成しないなんてことある? 全然イメージしてなかったけど。

稲垣:
 あるよ。この業界、チャンスがあってもできない人はいるじゃない。会社の立ち上げメンバーのひとりである斉藤が、やれるチャンスにちゃんとやれた、やってくれたことが、僕は制作プロデューサーとして、仲間としてすごく誇らしいです。

斉藤:
 そうかぁ。僕はもう、制作進行の子に素材を渡すとき、「このキャラ、めっちゃ可愛く描けたから見てよ!」みたいなことをずっと言いながらやってたことしか覚えてないくらいで(笑)。とにかく楽しい仕事でした。

 いろんな媒体に取材もしてもらえて、そういう意味でも注目してもらえたのもうれしかったし。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

李:
 私も完成データをもらってから、繰り返し見てますよ。放送でも見ました。それくらいいい作品だと思っています。

 結果的には、欧米のドラマのパイロットフィルム的なものになったように感じているんです。反響を受け止めつつ、ここから次の展開も考えていけたらいいですね。

人も、会社も、どうやったらいいものを作り続けていけるのか

──この2年のあいだには、アニメを取り巻く環境の変化もあったかと思います。中でもコロナ禍の中で有料配信サービスの契約者数が伸び、サービス間の競争が激化する中で、独自コンテンツとしてのオリジナルアニメへの注目度が上がりました。

 また、劇場でも『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が歴史的な大ヒットを記録し、今も『呪術廻戦0』が好調だと報じられています。

稲垣:
 アニメがさらに世間の注目を集めるようになってきているのは、お付き合いのある同業他社のみなさんのお話を聞いていても感じてはいます。業界全体の傾向として、仕事もどんどん増えていっていると思いますし。

 ただ、話題になるようなハイクオリティな作品を送り出せるアニメスタジオはけっこう固定されているのが現状ですよね。実際は、いくつかのスタジオによって、業界が注目されている状況なのだと思います。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

──立ち上げからまだ2年ではありますが、そうした状況を横目に考えておられることはありますか?

稲垣:
 我々もゆくゆくはそこに負けない制作能力と、そこから生まれるブランド力を持てるように、がんばっていかないとな……とは考えています。ただ、すぐにどうこうではなく、あくまでまだまだ先の長い話として、ですけどね。

 今の会社を立ち上げる前から、アニメ業界でそれなりにいろいろ経験させていただいてきましたが、この業界は常に荒波なんですよね。そこに浮いているだけで嵐に巻き込まれることもある。船を安定させるのってなかなか難しいんです。それこそ、ほとんど神頼みするしかないときもあります(笑)。

 ただ、船員の、仲間の力が、結束があれば乗り越えられる波もある。本当にそれに尽きるんですよね。Yostar Picturesという船はどんどん大きくなっていますし、人も増えています。あとはこの船の勢いを維持して安定させていく。それが僕の仕事だと思っています。

──会社としての「持続可能性」みたいなことを意識しておられるんですね。

稲垣:
 クオリティの高いアニメをとにかく1回、何を犠牲にしても作ろうとしたら、作れなくはないんですよ。

 人を掻き集めて、無茶をさせて、お金も使って。でもそんなことを続けていたら、やがては誰もついて行けなくなくなる。でも、だからと言って、視聴者の方の期待に添わないものばかり作っていたら、それもダメですよね。

 働きかたの問題も含めて、人も、会社も、どうやったらいいものを作り続けていけるのかを考えるのが大事だと思っています。

斉藤:
 たしかにうちに限らず、各スタジオでアニメーターへの向き合いかたが、少しずつ変わってきている印象はありますね。

稲垣:
 それでいうと、アニメ業界に限らないとは思うのですが、ベテランと若手がどういっしょにアニメを作っていくのかを考えるのも、業界全体における課題ですね。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

アニメ『アークナイツ』制作に全力を尽くしている

──2年間の歩みを振り返っていただき、将来の大きなビジョンに繋がるお話もうかがいましたが、直近の未来では、ついに『アークナイツ』のTVアニメ化が動き始めますね。

稲垣:
 これも『アズールレーン』と同じぐらい、Yostarにとっては大事なタイトルです。

 Yostar Picturesとしても、スタジオの立ち上げからPVを作らせていただいている関わりの深いタイトルで、そのPVそのままのクオリティで、作品の世界観を活かしたTVアニメが作れたら……と考えながら制作に取り組んでいます。

斉藤:
 僕的にはこれこそ、まずはちゃんと完成させることが目標のタイトルです。目の前にある仕事をどんどん終わらせる気持ちでいま取り掛かっています。

 

──すでに公開されているアニメPVが素晴らしいですから、ファンのみなさんとしては、その延長にあるものとしてTVアニメにも期待されているのかなと。

斉藤:
 品のコアメンバーは、PVを作り続けているスタッフで固められているので、そこはご安心いただきたいですね。

稲垣:
 そうですね。『アズールレーン びそくぜんしんっ!』を短期間で作ることができたのは、スタッフィングをきちんと固められたのが理由として大きいんです。

 その点『アークナイツ』も、PVと別のチームを作ってやってるわけではなく、作品に慣れたスタッフにお願いできている。だから、あとはそのチームで予定通り、狙い通りに作っていけるように全力を尽くすだけですね。

(画像はアークナイツ「事前登録開始記念 アニメPV 30秒」より)

李:
 Yostarという会社は、ゲーム会社として不完全な部分がまだ多過ぎるんです。名前はそこそこ知られていますが、運営しているタイトルは全部、自社開発ではないものです。

 現状はあくまで他社が開発したゲームのマーケティングなどをサポートして、世の中の広い人に向けて送り出す手伝いをちょっとしているだけ。私たちがやるべきことのひとつは、ゲームに関連しているけれどもゲームそのものではない部分で、無料で楽しめるコンテンツを提供し続けること

 それによって、魅力的なゲームをより広い人たちに届けるのが会社としての義務であると、少なくとも僕は思っています。『アークナイツ』のTVアニメも、そうした義務を果たすために機能してくれれば、目標は達成だと考えています。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

『劇場版アズールレーン』、作りたくない?

──では、最後に、それよりもさらに先の、今後の野望はありますか? 斉藤さんはオリジナルアニメを作るという夢をひとつかなえられましたが。

斉藤:
 僕は『空色ユーティリティ』というオリジナルのコンテンツ自体をもっと大きくしていきたいですね。

 あとは自分自身がクリエイターとして、もうちょっといろんなこともできるようになりたい。今考えてるのは、単純に絵を描くことだけじゃなくて、服をつくろうと思ってるんです。ミシンを買って。

 たとえば『空色ユーティリティ』のゴルフウェアを自分で作って、そういうアパレルでの展開をしていくのもありかな? とか。

──映像クリエイターにとどまらないことを。

斉藤:
 ええ。映像だけにこだわらず、いろんなことを掛け合わせてコンテンツを発展させていくことをやってみたいですね。

──『空色ユーティリティ』絡みでいうと、作品と紐付いたゴルフの大会はやらないんですか?

斉藤:
 やりたいですね! ティーチングプロの資格を取って、『空色ユーティリティ』と絡めながら、ゴルフ入門みたいな企画ができても面白いかもしれません

 ファンのみなさんはもちろん、いろいろな方々の期待に応えてこの作品を育てていきたいですね。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

稲垣:
 野望かぁ……僕はもう、今日は何度も言葉を変えて繰り返している気がしますが、会社の拡大と安定です。……あ、でも、ちょっとだけ個人的な目標をいえば、ゲームを作りたいです

李:
 えっ!? 大変ですよ?(笑)

稲垣:
 ああ、いや、Yostar作品のような大規模なものではなくて。僕、アニメ業界に入る前、実はプログラマーになることも考えていたんです。サウンドノベル、美少女ノベルゲームを作りたくて。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

──ああ、稲垣さん、葉鍵ブーム前後の美少女ゲームの盛り上がりが直撃している世代ですもんね。

稲垣:
 そうそう。絵も描いて、音楽も自分で作って、プログラムも組んで……って、全部ひとりでやるのが夢だったんです。

──「吉里吉里で同人ゲームを作るぜ!」みたいな。

稲垣:
 そう! いやー、実は『吸血殲鬼ヴェドゴニア』みたいな作品を作りたくて、某社に企画書を出したこともあるんですよ(笑)。

李:
 今はソシャゲがえっち過ぎて、そっちにお客さんが流れているから、エロゲで勝負するのは大変でしょうね。

 でも『ブルーアーカイブ』の新しい章は、まるっきり往年のエロゲみたいな演出をやってたんですよ。あれ、おもしろいです。エロゲ好きだった人たちにはプレイして、5回はシナリオを読んでほしい!!

 ……というのはさておき(笑)、メディアを変えても、作品の根幹にあった文化は消えていない。えっちなキャラ、素晴らしい演出、最高のシナリオをおもしろいと思う人は変わらずいる。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版
(画像は「【ブルアカ】「エデン条約編」PV」より)

稲垣:
 僕はやはり、美少女ゲームへの忠誠心があるんですよ(笑)。だからもっと会社が安定して、自分のことをやる余裕ができたら、人生の目標としてそういう人たちに届くようなゲームを自分で作ってみたいと思いますね。

李:
 やはり何はなくとも、生き残りましょう。その意味では、今のところはYostarの仕事を大量にお願いしていますけど、ゆくゆくは他社の案件も受けられる体制をきちんと作っていきたいですね。

 外からの仕事だけで普通にランニングコストをまかなえるくらいのアニメスタジオにするのが理想です。そうして体制を作り、時間をかけて成長し、10年後にはハイクオリティな劇場版が作れるスタジオになっていたらいいなぁ。

──素敵なビジョンです。まずはTVアニメの『アークナイツ』に、『空色ユーティリティ』の今後の展開を楽しみにしております。

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版
Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

李:
 ……それにしても、ホントに『劇場版アズールレーン』、作りたくない?

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

稲垣:
 作りたいです。今でも作るだけなら、無理をすれば作れはします。でも、一発で終わってしまうのはおもしろくないですよね。

 そうじゃなくて、継続してしっかりした劇場版クラスの作品を作り続けたい。そういうことができる体制のスタジオにしたい。それができたら、本当にスゴいことですから。

李:
 そうなったときには、『アズールレーン』だけじゃなくて、さっき話した『ブルーアーカイブ』の新しい章……エデン条約編も劇場で作りたいなあ。実現したら、熱いですよ……!

Yostar Yostar Pictures アズレン 劇場版

 約2年で会社の規模が約3倍になり、アニメづくりの体制も整いつつあるYostar Pictures。

 『アズールレーン』や『アークナイツ』の自社運営タイトルのアニメPVに限らず、『アズールレーン びそくぜんしんっ』や『空色ユーティリティ』などのTVアニメ制作にも着手。アニメ『アークナイツ』も全力を尽くして制作中だ。

 さらに、「ゆくゆくは他社の案件も受けられる体制をきちんと作っていきたい」と李社長が語るように、アニメ制作会社として着実に歩みを進めている。

 そして、ゆくゆくは「ハイクオリティな劇場版が作れるアニメスタジオ」を目指したいと。『劇場版アズールレーン』も『劇場版ブルーアーカイブ エデン条約編』も見たすぎるし、李社長のおっしゃる通り実現したら熱い。本当に熱い。

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