たった4時間で3万のローマ兵を葬った名将ハンニバルの戦略とは? “歴史上最大の待ち伏せ”と言われるトラシメヌスの戦いを解説
ニコニコニュース / 2023年1月30日 11時30分
今から遡ること約2230年前、中央イタリアにあるトラシメヌス湖畔を3万人のローマ軍が急ぎ行軍していた。彼らの心にあるのは強敵カルタゴ軍を倒して祖国を救済すること。しかし……このローマの軍団は、これから4時間後……、湖畔に立ち込める霧の中で為すすべなく唐突に消滅してしまう。「歴史上最大の待ち伏せ」とも言われる罠にローマ軍は飲み込まれてしまったのです。それを仕掛けたのは、古代西方世界に現れた無敵の名将「雷光」ハンニバル・バルカだった。
今回紹介する、いつかやる社長さんが投稿した『【ゆっくり解説】世界の戦術・奇策・戦い紹介【トラシメヌスの戦い】』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、ルビンとレオのふたりのキャラクターが、歴史上最大の待ち伏せとも言われる“トラシメヌス湖畔の戦い”について解説を行っています。
■ハンニバルの策略
ルビン:
じゃあ今回はローマの女達を涙させたトラシメヌス湖畔の戦いを紹介しましょう。
ルビン:
舞台は紀元前219年西地中海。貿易国家カルタゴと共和制ローマは、地中海での覇権と国家の生き残りを賭け、ハンニバル戦争とも呼ばれる第二次ポエニ戦争を開始した。
ルビン:
開戦初期、カルタゴの将軍ハンニバルは、まさかのアルプス越えを行い、北イタリアを奇襲して余裕こいてたローマの度肝を抜かすと、続くトレビアの戦いでは悪魔的かつ周到な包囲作戦をもって完勝。数え切れないローマ兵の血でトレビア川を赤く染め上げます。レオ:
ローマ君ギッタギタにしてぼろ雑巾にしたから、現地のガリア人をいっぱい味方にできたんだよな。それで本題はここからだけど、次にハンちゃんはどう動くんだ?ルビン:
北での戦況を有利にした彼は、首都ローマがある中央イタリアへの進軍を窺うのだけど、そこはもちろん敵も阻止しないわけがありません。
ルビン:
ローマは新たに2人の執政官を任命して、軍を編成すると、中央イタリアへの主要路上にある要衝アレティウムとアリミヌムにそれぞれ3万の軍を配置し、ハンニバルの侵攻ルートを固く封じてしまうのです。レオ:
うーむ、これでハンちゃんは前に進めなくなっちまったのか。
ルビン:
ところがですね、イタリア中の情報を集めていたハンニバルは、ここからアレティウムのローマ軍に対し、戦史上最古といわれる戦略的な迂回機動を実行した。つまり堅固な敵拠点をごり押しで抜くのではなく、スルーしようとしたのです。レオ:
いやいや、スルーしたくても他に道はもうねーんだろ?
ルビン:
これが誰も通らないほど危険なだけであるにはあったのですよ。春の洪水期間中で大湿地帯となり、病原菌うずまくアルノ川沿いをいくルートがね。レオ:
だからよ、それはもうルートじゃねぇ。ルビン:
この魔境の行軍は、カルタゴ軍の予想よりはるかに困難だった。劣悪な地形でろくな睡眠がとれないから兵の疲労がゴリゴリたまり、荷駄動物は泥の中で死に絶え、多くの馬の蹄が腐り、しかも軍には熱病など、あらゆる病が蔓延したのです。ハンニバル自身もその熱病のため、片目の光を失った。レオ:
ボッロボロじゃねーか。ルビン:
しかし、それでも彼の断固たる決意は揺るぎません。そして、その執念は数日後、アレティウムのローマ軍を唖然とさせることとなる。なにせいつのまにかカルタゴ軍が自分らの真横をすり抜け、あざ笑うかのように背後へと進出したのですから。レオ:
おお! これでハンちゃんは有利になったってわけか!
ルビン:
いやいや、これがそうでもないのですよ。たしかに要害アレティウムをスルーして、ローマ軍の思惑を裏切ったけど、この態勢はハンニバルにとって、一歩間違えば破滅を招きかねなかった。なぜならカルタゴ軍も背後に敵を抱えてるわけだから退路がないし、下手したらアリミヌムとアレティウムのローマ軍に挟撃される恐れがあったからです。レオ:
じゃあ、おいそれとローマに攻め込むわけにはいかねぇな。
ルビン:
その通りです。その通りなのですが、ここで重要なのは、ローマ軍にとっては首都を攻められるかもしれないという不安があること。そして、この時ハンニバルが狙っていたのはローマの攻略ではなく、アペニン山脈を挟んで分離している敵軍の各個撃破だったということです。レオ:
それってこの状況なら、かなり簡単じゃね?ルビン:
いや、達成難易度はクッソ高いです。まずアレティウムのローマ軍をどうにかして野外に引きずり出し、アリミヌムから敵援軍が来る前にすばやく壊滅的ダメージを与え、しかもカルタゴ軍は兵を補充できる当てがないから、勝利するにしても損害が極小でなきゃいけません。レオ:
縛りプレイもいいとこだなおい。じゃあまず最初にやらなきゃいけないのは敵を外に出すことだな?
ルビン:
そう、だからハンニバルは敵の心理につけこむ手にでます。近隣の村や町に飢えた兵達を解き放ち略奪と破壊を行わせ、またローマにむかうような素振りをみせつけたのです。アレティウムの敵将フラミニウスも激怒してまんまと出撃。これ以上の狼籍を阻止するべく、ハンニバルを急速に追いかけ始めます。レオ:
こういう場合って、やっぱ追いかけちゃうもんなんだよなぁ。
ルビン:
もちろんフラミニウスのプライドもあったけど、それなりの事情があったのですよ。もしこれ以上ハンニバルをほっとけば、将兵たちの信頼を失って士気が下がるし、またカルタゴ軍のローマ攻撃を許したら本国から糾弾される恐れもある。レオ:
出撃しなくてもリスクだらけだったのね。ルビン:
まぁ、ハンニバルはすべて読んだ上でこの動きをしたわけですけどね。しかもこの誘引によって彼はローマ軍の致命的なあるものをも奪います。レオ:
あるものを?ルビン:
この時、ローマ軍はカルタゴ軍に早く追いつこうとしてたんだけど、速度をあげればあげるほど敵への警戒が犠牲にされてしまったのです。レオ:
いやいや、今は警戒より速度だろ?ルビン:
もちろん追いつくためには速度をあげねばなりません。しかしハンニバルにとって、その警戒の低下こそが、フラミニウスの焦りこそが、かつてない罠にローマ軍を陥れるための最も欲していた布石だったのです。さあ、時は紀元前217年6月21日、3万のローマ軍が霧の中に消えるトラシメヌス湖畔の戦いの幕開けです。
ハンニバルは全てを読んだ上で動き、ローマ軍の敵への警戒心を奪いました。コメント欄では、「敵地ど真ん中でこれほど主導権握れるものなのか」「敵将の心理をよくここまで読めるな」「同じ指揮官だからこそ敵将の心理が分かるんかな」といったコメントが寄せられました。
■トラシメヌス湖畔の戦いの幕開け
ルビン:
執政官フラミニウスのローマ軍3万を待ち受けるのは、無敵の名将ハンニバル・バルカが指揮する5万のカルタゴ軍。ハンニバルが戦場として選んだのは、急斜面の丘が迫るトラシメヌス湖畔の隘路だった。
ルビン:
軍より先行していた彼はここを絶好の待ち伏せ場所と一瞬で判断し、多くの兵を緑が覆い茂る兵陵地帯に伏せさせると息を殺してローマ軍がやって来るのを待ったのです。レオ:
5万もの兵が待ち伏せするとか聞いたことねーぞ。
ルビン:
そして21日早朝、カルタゴ軍を急追するローマ軍が到来。濃い霧が立ち込める隘路に深く入り込み始めた。レオ:
さすがに少しは怪しんでもいいんじゃねーか!?ルビン:
たしかにそうなんだけど、フラミニウスは安全だとたかをくくっていた。なぜならハンニバルは前夜に野営する際、湖畔のもっと奥の方で煌々とかがり火を焚かせ、カルタゴ軍主力が実際より遠くにいるように錯覚させてたからです。レオ:
ローマ軍は敵がもうここら辺にいねぇと思ってたんか。
ルビン:
しかもここでローマ軍の疑念を払拭する情報が舞い込みます。前方にカルタゴ軍の補給部隊が音を立てて動いているのがわかったのです。フラミニウスはこれを敵の後続隊だと判断し、カルタゴ軍をいきなり襲うべく行軍速度をよりあげてしまう。そして、そんなローマ軍を待っていたのはあまりに予想外な事態だった。
ルビン:
先頭を進んでいた部隊がいきなり戦列を敷いたカルタゴ軍と衝突。同時に低いラッパの音が霧の中で不気味に鳴り響いたのです。
ルビン:
まもなくカルタゴ軍騎兵が兵を一気に駆け下りるとローマ軍の最後尾を襲撃して、まずはその退路を遮断します。つまりハンニバルは敵を袋に入れ、両端を縛って閉じ込めたわけです。レオ:
袋のねずみとはまさしくこのことですな。
ルビン:
この度重なる異常事態にただただ戸惑ってしまうローマ兵だったけど、そんな彼らに天から降り注いだのは、大量の矢と投げ槍の雨だった。矢の餌食になり、訳も分からずバッタバタと倒れるローマ兵。しかもこの攻撃は霧の中で行われているとは思えないほど正確だった。レオ:
なんでそんなに正確だったの?ルビン:
ハンニバルは事前に矢の集中する場所を湖畔沿いと選定し、弓兵などに射撃方向と飛距離などを検証させていたのです。また全兵には戦闘中でも混乱しないよう、合言葉も決めて徹底させていた。レオ:
ローマ君来るまで短時間だったのに準備よすぎー! つーかローマ君がかわいそうに思えてきたんですけど。
ルビン:
いや、同情するのはまだまだ早いです。なにせまもなくカルタゴ軍歩兵が容赦なく襲いかかってきたのですから。この攻撃に戦闘態勢を敷く暇もないローマ軍は大混乱。いたるところで行軍隊列は寸断され、無残にも引き裂かれてしまう。どころかフラミニウスはもうすでに討ち取られてしまっていた。レオ:
これはもう……戦いじゃねーなぁ。ルビン:
もはや反撃も後ろに逃げる事もできないローマ軍でしたが、カルタゴ軍はそんな敵を湖に追い込み、草をむしるように殺し尽くしていった。
ルビン:
ローマ軍の中で唯一この死地から逃げおおせたのは、決死の攻撃で前に活路を開いた6000人のみだったけど、そのほとんどがカルタゴ騎兵に追撃されて後日捕虜となってしまう。こうしてトラシメヌス湖畔の戦いはカルタゴ軍の死者1500、戦傷2500に対して、ローマ軍の損害3万というハンニバルの一方的な勝利で終結します。レオ:
あー……うん……もう圧勝すぎて感想がでてこねぇ。
ローマ軍が来るまでの短時間で準備をし、5万の兵士で待ち伏せをしたハンニバル。何もかもハンニバルの思惑通りに進み、ローマ軍は全滅しました。コメント欄では、「悪魔かこいつは」「すっげーシンプルなんだけど驚くほど効果的だよなぁ」「行軍速度上げるために装備外してたから矢でも致命傷なんだよな」「ハンニバルは戦術だけでなく統率力も凄まじ過ぎる」「戦争ですらないからな」といったコメントが寄せられました。
■ハンニバルの勝利で終結したトラシメヌス湖畔の戦い――その後のローマは?
ルビン:
その後、トラシメヌスでの惨事は首都ローマに伝わるのですが、そこで法務官が群衆にむかってたった一言、苦しみで呻くように報告します。「我々は大敗北を喫した」レオ:
嘘やろって感じだろうな。ルビン:
この思わぬ悲報にローマ市民は悲しみと不安に狂い、多くの女達が最愛の夫や子供が帰るのを門で待ち続けたと伝わっています。レオ:
残念ながら帰ってこねぇんだよなぁ。
ルビン:
ローマはハンニバルという恐るべきたった一人の化け物によって、今まさに国家が興ってから経験したことのない事態に直面していた。
ルビン:
この危機にローマは1年後、8万6000という盤石の大軍を送り出し、ハンニバル率いるカルタゴ軍5万にカンナエの地方で再び決戦を挑みます。しかし……、迎えたその結末にローマはあっけにとられ絶句してしまう。なぜならカンナエで起きた事はそれほどに信じられない……怪異じみたものだったのですから。
ローマは、ハンニバルによって経験したことのない事態に直面し、その後も苦しめられました。コメント欄では、「これだけ負けても最終的に勝つ国の体力がやばい」「それだけ負け続けても戦うローマもバケモノ」「ハンニバルの戦術はハンニバル自身すら破れなかったからねえ」といったコメントが寄せられました。
トラシメヌス湖畔の戦いについての解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。
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