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なぜクマはイヌを恐れるのか? それは先史時代からDNAに刻まれた積み重ねによるものだった!

ニコニコニュース / 2024年11月18日 19時20分

 今回ご紹介するのはジオチャン(生物解説)さんがニコニコ動画に投稿した『クマがイヌに弱い理由がこちら【解説動画】』です。

 大きな体に鋭い爪、走れば車並みに早く、体重は60~70kgほどの筋肉の塊であるクマがなぜ自分よりも小さく力も弱いイヌを恐れるのか。
 今回はこの謎について解説していきます。


■なぜクマはイヌを恐れているのか

ジオちゃん:
 近年日本中で人間がクマに襲われる被害が相次いでいる中、イヌがクマを撃退したという事例がいくつも報告されています。
 それではなぜクマは自分よりも小さなイヌを恐れるのでしょうか。今回はクマがイヌを怖がる理由について解説していきます。

ジオちゃん:
 クマがイヌを怖がる理由は複数あると考えられています。
 クマはイヌの鳴き声が嫌いです。イヌは本能に従って行動するため、クマに遭遇した場合、ヒステリックに吠えたり唸り声をあげたり噛みついたり飛びかかったり追いかけたりすることがあります。

ジオちゃん:
 イヌの鳴き声は人間の80デシベルに対して約110デシベルと大きいです。クマは優れた聴力を持っているため、この声は人間よりも耳障りです。

 したがって、突然イヌの鳴き声のような騒々しい爆音を聞いた時、警戒心の高いクマは逃げ出すことがよくあります。
 このため、野生生物学者はクマが二度とその場所に戻ってこないようにする警報としてイヌの鳴き声を使用しています。

ジオちゃん:
 また、この声はオオカミと非常に似ています。クマの仲間は本能的にイヌ科の動物を恐れる、とクマに詳しい生物学者のキャリー・ハント氏は言います。
 それはコヨーテの群れなどに子グマを奪われることがあるからです。

ジオちゃん:
 1対1の対決では体格差からクマが圧倒できますが、コヨーテやオオカミなどのイヌ科動物は群れで連携して狩りを行います。
 オオカミは高度なコミュニケーション能力と組織的な狩りの戦略を持っており、クマを圧倒したり、子グマを襲ったりするため、クマはオオカミを避ける傾向にあります。 
 そしてクマはイヌをオオカミと認識している可能性があります。

ジオちゃん:
 イヌは人間と一緒にいる場合が多く人間の移動速度はゆっくりです。
 そのため忠実な本能を持つイヌは、立ち止まって人間を守ろうとします。クマにとってこれは決して後退しない勇敢なオオカミのように見えています。

ジオちゃん:
 さらにクマはイヌを見かけた時、人間が周りにいることを警戒します。彼らは人間とイヌをセットで認識するように進化しているのです。
 クマは人間に対して特別な恐怖心を抱いており、人間を見ると避けようとするのが一般的な反応です。

 これは人間が先史時代よりクマを狩ってきたためで、クマ狩りのために特別に繁殖させてきた犬種さえあります。
 このようにクマ狩りにイヌを使う伝統は歴史に深く根ざしており、人間とイヌとの長年にわたる協力関係を反映しています。

■クマ狩りと狩猟犬の歴史

ジオちゃん:
 それではクマ狩りの始まりと、クマ狩りの犬種がどのように進化してきたかを詳しく見ていきましょう。
 歴史的にイヌは狩猟において重要なパートナーであり、数千年前まで遡ることを示す証拠があります。

ジオちゃん:
 初期の人間はすぐにイヌが持つ野生動物の追跡能力に気づき、それが当然クマ狩りにも利用されました。
 古代の遺物や文献によると、ヨーロッパやアジアではイヌがクマ狩りに使われ、これらの初期の狩猟犬は長距離に渡ってにおいを追跡し、荒れた地形に立ち向かう能力が高く評価されていました。

 そして当初は、より一般的な狩猟犬が使用されていましたが、時が経つにつれてクマ狩りに適した特性を持った犬種が改良されていきました。
 フィンランドのカレリア地方原産のカレリアン・ベア・ドッグは恐れ知らずの性格と敏捷性で知られています。

ジオちゃん:
 印象的な黒と白の毛皮を持つこのイヌは、元々は毛色にかなりバリエーションがありましたが夜間や雪の中でもしっかりと見分けることができるよう現在の毛色に固定されました。
 カレリアン・ベア・ドックは筋肉質の引き締まった体つきで、脚にもしっかりした筋肉がついている大型犬で、単にタフなだけでなく非常に賢いイヌでもあります。
 彼らはクマを追跡して対峙することに優れており、鋭い感覚により人間が気づくよりずっと前にクマの存在を察知することができます。

 米国原産のプロット・ハウンドはその勇敢さと粘り強さで知られています。 ベースカラーに他の色が混ざり合う独特の模様の毛皮と筋肉質で引き締まった体つきに長い脚が特徴です。これらの特徴はクマ狩りの厳しい地形に適しています。

ジオちゃん:
 ノースカロライナ州のプロット家によって代々飼育されてきたこのイヌは、大型の獲物を狩るために使われました。
 彼らは強力な嗅覚能力を使ってクマを追跡し、追い詰めます。

 ブラック・アンド・タン・クーンハウンドは鋭い嗅覚と勇敢さを持つクマ狩りの犬種です。彼らは追跡中に森中に響き渡る、大きく歌声のような鳴き声が特徴です。この猟犬は長距離や険しい地形での追跡に優れており、どんな障害物があってもクマの足跡を追うことができます。

ジオちゃん:
 さらに、粘り強いだけでなく、それに見合うスタミナも備えておりハンターが追いつくまで逃げる獲物を追い続けます。

 これらの犬種をクマを狩る猟犬に育て上げる訓練は基本的なしつけから始まります。

ジオちゃん:
 「待て」は危険な状況においてイヌを安全な距離に保つために必要で、「来い」は人間の監視なしでクマを追いかけないようイヌを呼び戻すのに重要です。
 これらのしつけは予測不可能な地形では不可欠となります。基本的な命令を覚えるとクマ狩りに特化したトレーニングが開始されます。まずクマのにおいを覚えさせることでイヌがクマを認識して追跡できるようにします。

ジオちゃん:
 これは短いトレイルから始めて徐々に複雑さと長さを増やしていきます。そして恐怖心をなくし落ち着いて行動できるようにイヌを銃声や大きな音などの狩猟の音に慣れさせる訓練が行われます。

ジオちゃん:
 最後に安全な環境で管理された模擬狩猟を行い実際の狩猟のシナリオをシミュレートします。
 これによりイヌは自分の役割を理解し実際の狩猟中に何が起こるかがわかるのです。

 近年、日本以外でもクマによる被害が増加しています。
 温暖化により流氷が減少したことで、ホッキョクグマにとって重要な生息地が奪われています。

ジオちゃん: 
 ロシア北部のノヴァヤゼムリャ諸島に数十頭のホッキョクグマが押し寄せた時、誰もどうしたら良いかわかりませんでした。
 クマは家や公共の建物に侵入し、人々は外に出ることを恐れました。

 これはホッキョクグマはロシアでは絶滅危惧種であるため連邦政府は射殺許可証の発行を拒否していたためです。

ジオちゃん:
 同様にアメリカクロクマの生息域も拡大しており、石油やガスの開発はクマの生息地の近く、またはクマの生息地内でますます増加しています。
 通常ゴミ捨て場を漁っているクマを発見した場合クマを安楽死させるか麻酔銃を撃ち、檻に入れて何マイルも離れた場所に連れて行くかのどちらかが行われます。

ジオちゃん: 
 ただどちらも被害の現象にはつながっていませんでした。そこで1996年、生物学者のキャリー・ハント氏はイヌに特別な訓練を施しました。
 これには前述したカレリアン・ベア・ドッグが選ばれ、クマが人間の居住地に近づきすぎると吠えて追い払うように訓練したのです。

 それ以来米国とカナダの行政と、野生生物保護機関ではイヌに頼る傾向が強まっています。
 現在カレリアン・ ベア・ドッグはワシントン州とネバダ州、カナダのアルバータ州さらには日本でも活躍しています。

 この新しい方法により何千頭ものクマが銃弾を免れることとなりました。
 クマがゴミ捨て場など特定の場所に慣れてしまった場合、この猟犬は特に役立ちます。
 野生生物保護管はクマをその場で捕獲し、イヌを連れてきます。するとイヌは、クマに向かって吠えて、ひどく怖がらせます。

ジオちゃん:
 これは、ここは本来いるべきではない場所で、二度とこの場所に戻ってはいけないことを知らせるためです。
 イヌがクマに向かってしばらく吠えた後、檻を開けるとクマはロケットのように飛び出し 逃げていくといいます。
 その後イヌはクマを追跡し、吠え、脚を噛み飼い主に呼び戻されるまでこれを続けます。

ジオちゃん:
 こうすることでクマは賢いため学習して二度と戻ってこなくなります。この方法は安全が十分に配慮され、この20年間で怪我をしたイヌはいないと言われています。
 ただしこの訓練には大変な労力がかかり誰もがその課題に取り組めるわけではありません。

 また訓練を受けていないイヌにとってクマと対峙するのは非常に危険です。

 

 クマとイヌ、そして人間の関わりが先史時代からあったなんて驚きですね。そして、積み重ねてきたDNAに刻まれたことからクマはイヌや人を恐れていることがわかりました。

 昨今の環境問題にも触れているフルバージョンでの解説をご覧になりたい方はぜひニコニコ動画でご覧ください!


▼動画はこちらから視聴できます▼

クマがイヌに弱い理由がこちら【解説動画】

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