追求したのは「TRPGのおもしろさを最大限伝えられるか」。シェアの取りかたを研究し、趣味の範囲を超えて動画づくりを目指す理由とは【肉声動画投稿者・まにむさんインタビュー】
ニコニコニュース / 2020年3月18日 11時0分
本企画は、ニコニコにおけるTRPGの歴史を振り返るべく全3回に渡っておくる連載企画だ。前回の記事では、ニコニコ動画に投稿された動画データをもとに歴史を振り返ったが、本稿では、実際にTRPG動画を投稿している投稿者へのインタビューをお届けしていく。
TRPGとの出会いや、動画を投稿するようになったきっかけや動画制作へのこだわりなど、ゆっくり動画サイドと肉声動画サイドでどのような違いがあるのか。そして、ゆっくり動画投稿者は肉声動画を、肉声動画投稿者はゆっくり動画をどう見ていたのか。
ゆっくり動画、肉声動画投稿者それぞれのTPRG動画との歩みを振り返ることを通して、ニコニコにおいてTRPG動画がいかに愛され育まれてきたのかを紐解いていきたいと思う。本記事では、肉声動画投稿者であるまにむさんへの取材の模様をお届けする。
TRPG動画 連載企画 |
1.動画データをもとにTRPG動画の歴史を振り返る(記事はこちら) |
2.ゆっくり動画投稿者インタビュー ダニエルさん(記事はこちら) |
3.肉声動画投稿者インタビュー まにむさん(本記事) |
取材・文/竹中プレジデント
TRPGとの出会い
──本日は、まにむさんとTRPGの歩みを振り返ることを通して、ニコニコ動画におけるTRPG動画という文化がどう育まれてきたのかを、肉声動画サイドの視点から紐解いていければと思います。まずは、まにむさんがTRPGと出会ったきっかけを教えてください。
まにむ:
2012年ぐらいでしょうか。友人がTRPGを遊ぶという話を聞いて、気になって見学しようと思ったら、そのままセッション【※】に参加することになった感じです。
※セッション……TRPGを遊ぶこと。その集まり。
──初めて遊んだTRPGのジャンルは?
まにむ:
クトゥルフ神話TRPG【※】ですね。
※クトゥルフ神話TRPG……クトゥルフ神話の世界観を体験するホラーTRPG。
(画像はAmazon購入ページより)
──初めてTRPGをプレイしたときの感想はいかがでしたか。
まにむ:
めちゃくちゃおもしろかったです! そのときの楽しさが僕のスタートラインというか、TRPGをもっと楽しみたいという気持ちがその後の動画投稿活動へつながっています。
──セッション中の会話(ロールプレイ)であったり、ゲームシステムであったり、TRPGを構成する要素の中でとくに魅力を感じた部分はどこなのでしょう。
まにむ:
シナリオです【※】。最初のセッションの段階で、プレイヤーとして遊ぶよりもシナリオに興味を持つようになって、シナリオを書き始めるようになりました。
※シナリオ……セッションの中でプレイヤーたちが冒険する世界設定、出会う事件、結末などストーリーの軸をまとめたもの。市販のものもあるがプレイヤーが自作することも多い。
──遊んでいるうちにシナリオを書くようになるのはよくあると思うのですが、いきなりシナリオへはかなり珍しい気がします。初めてTRPGと出会って動画が投稿されるまで約3年の期間がありますが、これにはなにか理由が?
まにむ:
TRPGのおもしろさを表現するなら動画というかたちがベストだと頭には浮かんでいたんです。ただ、当時は漫画家を目指していて、動画を作るとなると漫画が疎かになってしまうため、動画制作には至らなかったんです。なのでTRPG動画は見て楽しむ程度でした。
──TRPGを遊ぶ前からTRPG動画の存在はご存知だったんですか?
まにむ:
いえ、動画があるのを知ったのはTRPGのセッションをした後でした。
──2012年前後はちょうどTRPG動画の投稿数や全体の再生数が伸び始めた時期ですね。動画内容の変動も大きく、『アイドルマスター』のキャラクターがTRPGを遊ぶ体裁でストーリーが進む動画から、実際のセッションの模様を表現する動画のかたちへ移り変わっていったのもこのあたりの時期だったかと思います。
まにむ:
もともとは、実際のセッションではなく、自分で書いたシナリオを動画で表現するものがTRPG動画の主流でしたよね。
もう動画は削除されているんですが、「ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話」【※】が本当におもしろくて。実際のセッションではなく、自分で書いたシナリオを動画で表現するものだったのですが、シナリオを書く力がある人が全力を注げば、ここまでおもしろくなるんだなと衝撃を受けました。
※「ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話」シリーズ……2012年より投稿されたTRPG動画。“TRPG認知度の向上”の役割は終えたとして、投稿者によって動画が削除された。
──残念ながらミラー動画でしか見たことがないのですが、ものすごくおもしろいですよね。当時はほかにどんな動画をご覧になっていたんでしょう。印象に残っている動画があれば教えてください。
まにむ:
人気動画はだいたい全部見ていたと思います。「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声TRPG」【※】が完結しなかったのはショックでしたね。
※「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声TRPG」シリーズ……2011年に投稿されたTRPG動画の元祖的ポジションにある動画。残念ながら11話にてシリーズ打ち切りとなった。
TRPGのおもしろさを最大限伝えられる表現を追求して動画を制作
──さて、そんなTRPG動画界に激震が走るのが2015年。「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」が投稿され、400万再生を超える大ヒット動画となります。ありきたりな質問になってしまいますが、ここまで伸びるとは想像されていましたか?
まにむ:
想像していませんでした。事前に100万再生を超える動画に焦点を置いてリサーチをして、100万再生を狙って作った動画ではあったんですが、でもそれはあくまで狙いであったので。実際に100万再生を超えたときはすごく感動しました。
──当時調べた中で、ご自身の動画投稿のスタイルに影響を与えたものってありますか?
まにむ:
「うろジョジョ」【※】はかなりベースになっています。手書きのイラストを背景に、うろ覚えでジョジョのストーリーを朗読していく内容なんですが、100万再生を超える動画も多い人気シリーズで。このくらいの表現でも視聴者は理解して楽しんでくれると気づけたきっかけです。
※うろジョジョ……「うろ覚えで振り返る 承太郎の奇妙な冒険」シリーズ。投稿者であるvanila.iceさんが、ジョジョ第3部の内容をうろ覚えで朗読する作品。
──そう聞いたうえで動画を見比べてみると確かに! 2015年のタイミングで動画投稿を始めたのはなにかきっかけが?
まにむ:
漫画家を目指すうえで自分なりに期限を設けていて、その期間内にデビューできなかったので漫画家の道を諦めたんです。それで、以前からやりたいと思って構想を練っていた動画を作ってみようと。
──2015年以前のTRPG動画のほとんどは、画面上部にキャラクターの立ち絵があり、画面下部にテキストが流れるアドベンチャーゲーム形式の見せかたで構成されていました。
そんな中、まにむさんが最初に投稿された「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」は、イラストがあって吹き出しがあって、さながら漫画、アニメのような見せかたに衝撃を受けたのが記憶にあります。この見せかたは漫画家を目指したバックボーンだったり自身の強みを活かしての選択だったのでしょうか。
(画像は「慧音「フリーダムってレベルじゃねぇぞ!」ゆっくりクトゥルフTRPG Part 0」より)
(画像は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」より)
まにむ:
いえ。自分の能力を活かすというより、どのような表現ならTRPGのおもしろさを最大限伝えられるかだけをひたすら考えていました。
当時のニコニコ動画で、どのような動画が流行っていて、どのような動画が再生数を取れているのか、たくさん見て研究して、それらを組み合わせたら、TRPGを表現するうえでみんなにおもしろさが伝わるんじゃないかなと思ったんです。
──TRPGのルールであったり用語であったりを丁寧に解説しているのも印象的でしたが、なにか意図があったのでしょうか。
まにむ:
当時、ほかの投稿者さんたちが説明をつけていなかったのは、TRPGというジャンルを広める段階が終わっていたからだと思うんですよね。
TRPG動画が出てきた初期のころは、用語やルールに関して説明を入れているものも見かけたので、そこで視聴者を取り込んで数年たっているため、説明はしなくても大丈夫、という感じでなくなっていたんだと。
自分が動画を投稿しようとしたタイミングでは、ブームは一旦落ち着いた段階かつ、ゆっくりと肉声では視聴層も異なってくると思ったので、初めてこのジャンルに触れる方も多いことを想定して説明を細かくつけたんです。
──動画に登場しているメンバーはどのような集まりだったんですか?
まにむ:
もともと自分と参加メンバーのおりちゃんが知り合いで、僕がおりちゃんに「TRPGで遊んでみない?」と誘ったんですよね。その際に、おりちゃんがしゃべりやすいメンバーをおりちゃん自身で揃えたのが、あの集まったメンバーです。なので、しんさんと自分はあのセッションが初対面だったりするんです。
──ええっ。それが動画化されて400万再生を超えるってすごい話ですね……。動画がヒットしてから周囲の反応や動画メンバーどうしの関係性で変化したことがあれば教えてください。
まにむ:
僕自身で言うと、もともとは動画投稿を継続するつもりはなかったんですが、視聴者がたくさんいて求められている反応をいただけて、動画投稿を続けていこうと思うようになりました。
周囲の環境ですと、僕も、恐らくメンバーも、動画を通して知名度が上がったことで、知らない方々からセッションのお誘いを受けるようにはなりました。ただ、僕たちメンバー内の関係性は変わっていないですね。
肉声動画というスタイルをなぜ選んだのか
──さて、さきほど肉声という言葉も出てきましたが、2015年以前のニコニコ動画で投稿されているTRPG動画は、ゆっくりボイスを使用しているものがほとんどで、肉声をそのまま動画に入れ込んでいるものは少なかったと思います。TRPG動画を作る際、なぜ、あえてメジャーではない肉声動画というかたちを選んだのでしょう?
年 | TRPG | ゆっくり | 肉声 |
2011 | 2,100件 | 20件 | 3件 |
2012 | 3,151件 | 1,561件 | 3件 |
2013 | 3,787件 | 3,378件 | 12件 |
2014 | 3,883件 | 4,013件 | 13件 |
2015 | 4,162件 | 5,056件 | 67件 |
2016 | 4,765件 | 6,480件 | 471件 |
2017 | 4,373件 | 5,667件 | 443件 |
2018 | 5,956件 | 6,031件 | 350件 |
2019 | 8,325件 | 5,400件 | 358件 |
※TRPG(「TRPG」タグ)、ゆっくり(「ゆっくりTRPG」タグ)、肉声(「肉声セッション」タグ)がついている動画を年別でカウント。あくまで動画についているタグをソートし集計したものであるため、該当する動画がカウントされていない(逆もしかり)ケースも少なくない。(データは2020年2月13日集計)
まにむ:
僕の感覚だと、肉声のほうがメジャーでゆっくりのほうがニッチなジャンルなんです。TRPG動画に限れば、確かにゆっくりがメジャーで肉声がニッチではあったのですが、ゲーム実況をはじめ、ほかのジャンルを含めて考えると、肉声ばかりじゃないですか。
なので、逆になんで主流は肉声なのにTRPG動画ではウケていないんだろうと不思議に思っていました。
──2015年以前においても、肉声を用いたTRPG動画は存在するのですが、数もほとんどなく再生数も伸びきらない傾向でした。
まにむ:
当時、TRPG動画をいろいろ見るようになって、肉声のものが全然なくて、気になって肉声動画に絞って探してみたときがあったんです。
おっしゃる通りいくつかは投稿されていて見てみたんですが、内容じたいはおもしろいのですが、動画として見せるときにその魅力が伝わりにくいと感じたんですよね。だからもっとおもしろい表現をしないと伝わらないし、ウケないんだろうなと思っていました。
──その表現が漫画テイストな見せかただと。まにむさんの投稿後、肉声動画が一気に増えていきますよね。動画の見せかたもまにむさんの動画のようにイラストと吹き出しで見せる手法が取り入れられ、多くの人気動画が生み出されていきました。
まにむ:
もちろん、ゆっくり動画もおもしろいんですけど、ゆっくりボイスであるということに壁を感じる人は多いのかなと。TRPG動画でも、肉声でおもしろい動画があれば、肉声動画を見る視聴者が多いと僕は思っています。
──肉声動画の魅力ってどこにあるのでしょう? 個人的には、リアルな掛け合いや反応をダイレクトに感じられる部分だと思ってはいるのですが。
まにむ:
肉声の魅力というより、僕らの日常会話って普通は顔を見て会話するものじゃないですか。そこから、顔が見えない肉声だけのもの、ゆっくりボイスで作られているもの……と、なればなるほど、オタク向けに、よりニッチになっていくんです。
そういうものになればなるほど、ニコニコのコアユーザーの好みではあると思うのですが、やはりフィルターがひとつ挟まっていると思います。肉声はそのフィルターがない、その違いでしょうか。
──短絡的に考えると、再生数を伸ばせるのであればそっちのほうが劇的に増えていく気もするのですが、ニコニコにおいては2020年現在でもゆっくりと肉声だとゆっくり動画のほうが圧倒的に多いんです。これについてはどのような要因があるとお考えでしょう。
まにむ:
僕もゆっくり動画の投稿者は、なぜ肉声で動画をあげないのだろうって常に思っています(笑)。
──なんと! 想像でしかないですが、自分の声を公開するのに抵抗だったり恥ずかしさがあるんでしょうか。
まにむ:
僕も恥ずかしさが理由かなとは思っています。ゆっくり動画を投稿されている方々は、セッションのおもしろさに自信を持っている印象がありますし、技術力のある方ばかりなので、肉声動画を作ってみるのもいいんじゃないかなとは思っているんですけどね……。
──現状は増えないと……。
まにむ:
クリエイティブな部分の話だと、動画の制作時間でしたり、それを継続できる環境の問題が大きいのかなと思います。もともとあの動画は、どうやったらTRPGのおもしろさが伝わるかだけを考えて動画を作ったんです。制作じたいに半年近くかけていますし、なかなか真似できるようなものではないと思っていました。
──半年!? すさまじい制作期間ですね。
(「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」シリーズはこちら)
まにむ:
ですので、同じような動画を作ろうとしても、1話は出せても2話、3話と続かないんですよ。例えばコウノスケさん【※】は、彼も漫画家志望だったので、継続できる能力があったと思うんですが、趣味で作っている人にとって制作時間がかかるし完結まで続けるのは大変だと思います。
※コウノスケさん……「ちょっと噛み合わない初心者たちのクトゥルフ」、「ノリで火星に来た探索者たちのクトゥルフ」をはじめ、多くの人気肉声動画を投稿した投稿者。
──肉声動画が増えるために、または投稿を続けるために必要なことってなんだとお考えですか。
まにむ:
絵を描いている人たちが諦めないこと、それに尽きると思うんですよね。せっかく1話がおもしろくても、2話3話と続くうちに絵を描く人のモチベ―ションが下がっていって、作業が遅れたり止まってしまったりすると、動画の更新が途切れてしまうので。それをやりきれるようにしてもらえればいいんですけどね。やりきっている人たちはちゃんと再生数を残しているので。
または、「ポケモンTRPG」シリーズ【※】は、キャラクターイラストを切り抜いて動画を作っているので、あのような作りもひとつの方法だと思います。
※「ポケモンTRPG」シリーズ……ポケモンシナリオを改変して作成されたTRPG動画。
問題点があるとすれば、YouTubeには出せないんですよね。消されるし、広告を付けることは絶対にできないし。そこをどう考えるかですかね、投稿者が。人気が出たとしてもYouTubeに出せないのはもったいないと、僕個人としては思います。
再生数やコメントなどの反応が動画投稿活動の原動力
──2018年に動画の投稿がなかったのにはなにか理由があるんですか?
まにむ:
正直なところ、動画制作がめんどくさくて……。
──なにか別のことに熱中されていたんですか?
まにむ:
なにかというわけではなく、動画を作っていたら、なにもできないんですよ。仕事をして帰ってきたら動画制作、本当にそれだけ。趣味の時間を全部制作時間にあてないといけないので。それが辛いので間が空いてしまうんですよね。
(画像は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG に」より)
──動画制作の中でとくにここが大変だったっていうエピソードがあれば教えてください。
まにむ:
例えば最初の動画シリーズですと、動画を継続してあげるつもりがなかったせいで、内容的にものすごく濃い、制作時間がかかるものを作ってしまったため、そのクオリティで作り続けないといけなくなってしまったことです。
継続的に上げる前提であれば、継続しやすい方法も考えたでしょうが、当時はひたすらつきつめて作っていたので……。その作品が連載ものになってしまったのが、ちょっときつかったです。
──そんな辛い動画制作を続けられている理由にもつながるかと思うのですが、動画投稿活動の中でもっとも脳汁が溢れる瞬間ってどのタイミングなのか教えていただけないでしょうか。
まにむ:
やはり再生数とかコメントとかを見ているときです。
──動画への反応だったり感想だったりがモチベーションにつながっていると。
まにむ:
はい。そこが原動力だと思います。
(画像は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」より)
──ちなみに動画化するセッションって、どういう基準で選んでいるんですか? 例えば、動画にするのを前提にセッションを行うのか、セッションをしていておもしろい内容になったから動画にしようとなるのか、どちらなのでしょう。
まにむ:
シナリオじたいは動画を視野に入れて作っていて、動画メンバーも自分の中で最終的な着地点みたいなものはあります。ただ、セッションがおもしろくて動画化するパターンもありますね。
例えば、2019年に投稿した動画は、もともとはあのメンバーで動画を作る気はなかったんです。でもセッションしてみたらおもしろくて、動画にすることになりました。
趣味の範囲からその先へ
──それが2019年からスタートした新シリーズ「笑い過ぎて一生忘れられないTRPG」と。こちらの動画は、前シリーズとはかなり変化が大きい動画の作りになっています。なにかきっかけが?
まにむ:
2017年の終わりくらいから、YouTubeが動画の投稿ベースとして基盤になりつつあったので、そこから自分もYouTubeでの再生数の取りかたやシェアの取りかたを研究していたんです。
それまでのやりかたでも別に悪くはないんですが、YouTubeには全然合っていないと思ったので。YouTubeに合わせたのが2019年の動画スタイルです。
──YouTubeに合わせたスタイルですと、ニコニコとはどこが違うのでしょう。
まにむ:
更新頻度と、再生時間です。ニコニコはどちらかというとクリエイティブなものを求めているので、2015年の動画はクリエイティブを追求した動画を作りました。それに対していまのYouTubeは、見やすいものを求めているんですよ。視聴者の年齢層も低いので集中力も続かないんです。
集中力の続く時間が、小学生が5分、中学生が10分、高校生で15分程度らしいので、その年齢層に合わせた動画の作りになっています。極端な話、小学生も見られるように、5分以内であっさりとしたものとして。これでしたら1週間に1本ペースで出していけるので。
(「笑い過ぎて一生忘れられないTRPG」シリーズはこちら)
──2019年の動画は半年からどのくらい短くなったんですか?
まにむ:
作り終わったらすぐに投稿しているので、だいたい1週間です。
──半年と比べるとかなり短くなっていますが、それでも1週間かかるものなんですね……。動画の編集はご自身で?
まにむ:
基本はそうですね。作業を分担すれば、1日1本あげられるようにはなると思うんですが。ひとりでやろうとすると1週間になってしまいます。
──それをほかの方に依頼されない理由ってなにかあるんですか?
まにむ:
じつはいまは少しずつ人に頼むような体制を築こうとはしているんです。文字の打ち込みであったりとか、BGMの選曲とか編集とか。ただ、人に作業をお願いするということはその分の報酬をお支払いする必要はありますよね。
単に趣味の範囲で作るのであれば今の状態でも問題ないのです。もしYouTubeの流れに乗るのであれば、いろんな人と協力して投稿頻度を上げる必要があります。そこにはお金が必要で、趣味の範囲を超える動画づくりになると思います。悩みどころですが。
──悩んでいる理由をお聞きしても?
まにむ:
いろんな人と協力して毎日投稿出来るようになったら、毎日動画作らないといけないじゃないですか(笑)。
──(笑)。
TRPGというジャンルの最高潮はこれから
──2019年からガラリと活動サイクルが変わったまにむさんですが、今後の目標は?
まにむ:
結局は毎日投稿ですね。そのためには、自分の考えかたを変えたり、生活スタイルを変えたり課題は多いですが。そうした課題を乗り越えて毎日投稿出来るようになれば、今よりさらにより多くの人たちに動画を知ってもらえるようになると思うので。
──なるほど。最後に、インタビュー定番の質問になりますが、ファンの方へメッセージをいただけないでしょうか。
まにむ:
ファンの方へのメッセージとは違うかもしれませんが、もっと多くの方がTRPG動画を作るようになっていってほしいです。
──ほう……それはどういう意図が。同ジャンルの投稿者が増えることって純粋にライバルが増えることだと思うのですが。
まにむ:
そのほうが楽しいじゃないですか! やっぱり張り合いがないとモチベーションも上がってこないんです。2015年に動画投稿を始めた当時、ニコニコの総合カテゴリ1位はものすごい高いハードルだったんです。それこそ半年かけてクオリティを追求した動画を出しても1位に届かないケースもあるほどで。
でも、当時の有名な投稿者のほとんどが、今はもうニコニコ動画に投稿しなくなっていて、ランキングの競争率が低くなってるように感じます。だから動画投稿がどんどん増えて、競い合い、盛り上がってほしいです。
ニコニコ総合1位、TRPGジャンル1位がもっと高い壁なのであればモチベーションも高まるし、なにより競い合うライバルがいるとやっぱり楽しいですよね。
──TRPG界隈全体が盛り上がってほしいと。まにむさんの視点から見ると、TRPGというジャンルの盛り上がりっていつくらいがピークで、いまはどのくらいの熱量なんでしょう。
まにむ:
TRPGはまだまだマイナーなジャンルで、最高潮はまだきていないと僕は思っています。いま主戦場であるYouTubeは、1日で100万再生を取る世界で、自分の動画はそこにはぜんぜん届いていないですし、ランキングにすら入っていません。だからまだピークが来てないジャンルだと言えるんです。
そこを目指すためには、認知度を高める瞬間を作りながら“数”を増やしていく必要があると思うんです。そうして、YouTubeでも上位に食い込むようになったときが、TRPGの最高潮になるのかなと。それこそ自分は一時期のブームを捨ててしまったので、そこにたどり着くためにもっと伸ばす努力をしていきたいです!
──ありがとうございました!(了)
TRPGというジャンルに「最高潮はまだきていない」、そこにたどり着くために趣味の範囲を超えて動画制作に取り組もうとしているまにむさん。現在の目標は、動画を毎日投稿し、今より多くのひとたちにTRPG動画を知ってもらうことだと語る。
どのような動画が流行り、どのような動画が再生数につながるのか、綿密な研究のもと、それを動画制作へと落としこんでいく。“動画制作にひたすらストイックに向き合っている”というのが、取材を通してまにむさんに抱いた印象だった。そしてその研究がしっかり再生数という結果につながっているのが、まにむさんの“すごさ”なのだろう。
本記事では、まにむさんとTRPG動画との歩みを振り返ってきたわけだが、ゆっくり動画投稿者であるダニエルさんへのインタビュー記事も同時掲載しているので、ゆっくり動画サイド、肉声動画サイドにおいて、それぞれどのような違いがあるのかの対比も合わせて楽しんでいただけたら幸いだ。
TRPG動画 連載企画 |
1.動画データをもとにTRPG動画の歴史を振り返る(記事はこちら) |
2.ゆっくり動画投稿者インタビュー ダニエルさん(記事はこちら) |
3.肉声動画投稿者インタビュー まにむさん(本記事) |
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