声優・鈴木達央流“最強系主人公”の演じかた──ハチャメチャに強い『魔王学院の不適合者』アノス様を「スマートな上司」に落とし込んだ言葉や音へのこだわり
ニコニコニュース / 2020年9月26日 12時0分
『魔王学院の不適合者』の主人公アノス・ヴォルディゴードの強さがハチャメチャだ。
戦闘では、ハンデとしてその場から一歩も動かず魔法を使わない。手足はもちろん瞬きすら使わないと宣言。いやいやこれは勝てないでしょ、と思ったら、
心臓の鼓動だけで相手を瞬殺。
背後から心臓を突き刺され、致命傷を負う。もうダメだ~~~と思ったら、
瞬時に蘇生。そして「殺したぐらいで俺が死ぬかとでも思ったか」と問いかける。
神様に時間を止められてしまった。今度こそもう無理だ、時間を操る神様になんか勝てるわけなかったんだ……と思ったら、
まったく意に介さず神様の能力を無効化。さらに「時間を止めたぐらいで俺の歩みを止められるとでも思ったか」と問いかける。
アノス、いやアノス様は、2000年前に“暴虐の魔王”として人々に恐れられた存在が生まれ変わった姿。そのデタラメな強さも納得だ。
いわゆる“最強系主人公”に位置付けられるわけだが、それにしても「殺したぐらいで俺が死ぬかとでも思ったか」「時間を止めたぐらいで俺の歩みを止められるとでも思ったか」などの圧倒的強者の言葉はなかなかにインパクトが大きい。
そして同時にこうも思った。
この普通に生きていたら一生に一度も口にしないであろうセリフを演じる声優はどのような心情で声をあてているのか、と。
そこで、アノスを演じる声優の鈴木達央さんにインタビューを実施。演じるアノス様にどのような印象を受け、いかに役作りを進め、何を意識して演じていったのか、“最強系主人公”に対してどのような演技的アプローチを行ったかお聞きした。
お話をお聞きしていくなかで紐解かれていったのは、鈴木さんの尋常ではない言葉、音へのこだわりと、役を超えて演者同士の関係性を大事にする想いであった。
水戸黄門や暴れん坊将軍から“スマートな上司”へ
──『魔王学院の不適合者』は、いわゆる最強系主人公が活躍する異世界転生ものにあたると思うのですが、それにしたってアノス様の強さはぶっ飛んでいますよね。
鈴木:
めちゃくちゃですよね。城も回しちゃうし(笑)。
【ご視聴感謝!】
— TVアニメ「魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」 (@maohgakuin) July 11, 2020
第2話をご覧いただいた皆様、ありがとうございました!
今後の「魔王学院の不適合者」の展開にご期待ください!
第2話放送記念として、城回しGIF画像をプレゼント!
放送詳細はコチラ▼https://t.co/dbpotMWZz1#魔王学院 pic.twitter.com/Xuk6wnc8i4
──本日は、そんなめちゃくちゃで最強なアノスというキャラクターを、鈴木さんが役に対してどうアプローチし、演じられていったのかをお聞きできればと思っています。まず、アノス様を演じる際にどのようなことを意識されていたのか教えていただけないでしょうか。
鈴木:
最初にイメージしたのは水戸黄門や暴れん坊将軍でした。印籠を出す、刀をカチャっとして斬りかかる、というようなお決まりの形式。いわゆる歌舞伎の見得切りのように大げさな言葉や態度を見せるものだと。
──水戸黄門や暴れん坊将軍のイメージはどういった理由でお持ちになったんですか?
鈴木:
最初の段階では、“アノスが2000年前から転生してその世界で無双していく”ことに重きを置いていたんです。要は仰々しさが強かった。
ただ、収録の際に、総監督の大沼さん(大沼心)と監督の田村さん(田村正文)から「スマートな上司でいてほしい」という言葉がありまして。役作りのうえで大きなヒントになりました。
──そのヒントによってどのようにキャラ像が変化されたんでしょう。
鈴木:
スマートというのは仰々しくなっているものをよしとしない。そうじゃないところでカタルシスを出してほしいというディレクションでした。
ではスマートさはどうしたら出るのかと考えたとき、転生した世界に対して、物事の捉えかたをもっとフラットにしないといけないと思いました。そうしないと、すべてに対してひとつひとつリアクションを取らないといけなくなると。
──確かに。何かあるたびに大げさに驚くのはアノス様っぽくない気がします。
鈴木:
しかも位として上からの驚きかたになるため、そうするとずっと見下してしまう状態になってしまう。スマートな上司というのは、上の位にいてはいけないんです。目線を下げないと。そのうえで、1章にあたる1話~4話に関しては、あえてその目線をひとつ引き上げました。
──それにはどういった理由が?
鈴木:
4話までは、転生したこの世界に対して腑に落ちない気持ちが多く、思慮深くなっているんです。みんな魔力が弱い、策を弄している奴もいるが穴だらけ、しかもなぜか魔王の名前も変わっている、どういうことだと。
ただ、4話のラストでそれは今は考えなくてもいいとなるんです。自分の望んでいた世界はここなのかもしれない、今を存分に堪能しようと、考えかたがシフトしていく。そこで自然と目線も下がっていくんです。
「めちゃくちゃな強さだな」がアノスの第一印象
──続いて鈴木さんとアノス様との出会いについてお聞きできればと。アノス様を知った際の第一印象を教えていただけないでしょうか。
鈴木:
このアニメのオーディションを受ける際に、小説と漫画をそれぞれ読ませていただいたのですが、めちゃくちゃな強さだな、というのが第一印象でした。心臓の鼓動で相手を倒すという時点で冗談みたいな強さじゃないですか。
──確かに。ほかにも息を吐いただけで魔剣の炎を消したり、指パッチンで相手を消し飛ばしたり、やりたい放題です。
鈴木:
そうそう。ただ、読み進めていくうちに、これらの描写は読者にそう思わせるためにあえて描かれているもので、後々の展開にしっかり紐づいているのが印象的でした。最初のインパクトが大き過ぎて食傷気味になるかと思いきや、そこが全部計算だったという。
──オーディション前に作品じたいは読み込まれていたんですね。
鈴木:
オーディションの時点で、アノスのキャラ像にしっかりとアプローチして、役としてのイメージを構築したうえで、マイクの前に立たないといけないとは思っていました。
──その際のキャラ像ってどういうイメージだったんでしょう。
鈴木:
当時は、今よりもちょっと年上のイメージで演じていました。ただ、オーディション中に「声が届く印象としてもう少し線の細い感じは可能ですか?」というやりとりがあり、そのなかで少し若返っていったのかなと。
キャラ同士の関係性の差を意識しての演技
──以前、ライブドアニュースのインタビュー【※】にて、「個性がないことが弱点だとずっと思っていた」「意外とオレ、個性あったなと気付かせてもらいました」とお話されていましたが、オーディションの際にもこのスタンスで臨まれていたのでしょうか。
※2019年12月18日掲載:ひと声聞けば「その人だ」とわかる個性が欲しい――声優・鈴木達央が抱える承認欲求
鈴木:
どちらも近い時期でしたので、同様のスタンスでした。やっと個性がついてきたかなと思えるようになったのと同時に、これからも個性探しを大事にしていかないと、と。ただ、アノスを演じることによって、これまで自分が意識していなかった部分での個性を見つけられたのはあります。
──具体的にどのような個性なのでしょうか。
鈴木:
例えば、さまざまな言葉が入り組んだ長いセリフを喋る際、その言葉のなかに込められている大事なところや、そのセリフがどのセリフにかかって意味を成しているのか。
そんな国語的な分解力とそれを表現・体言する芝居力とが符合するところをより細かくできる。そういう部分を自分の個性のひとつとして認識できました。
──なるほど。聞いているだけでも難しそうです。ここまでお話を聞いていて、演じるに至るまでの考えかたがかなりロジカル寄りだなと印象を受けたのですが、ご自身ではそのあたりどうお考えなのでしょうか。
鈴木:
そうですね。どこで何をしゃべるのか、その場面では何が大切なのか。演じるキャラクターの感情がどこに飛んでいるのかなど、ロジカルに考えている部分は多いと思います。
敵に対してなのか、クラスメイトに対してなのか、キャラクター同士の対人関係による差はしっかりと出せるよう、日ごろから意識しています。
──味方に対するアノス様の言葉に“優しさ”がにじみ出ていると感じていたのですが、意図した演出だったのですね。少し気になったのが、作品のヒロインポジションかつ、物語のなかで関わりも多いミーシャとサーシャは関係性的には近しいと思うのですが、このふたりとやりとりする際にはどのような関係性の違いを意識されたのですか。
鈴木:
ミーシャは、いちばん最初にできた友だちで、自分を受け入れてくれた存在というところが大きかったので、それに対して自分だったらそんな相手にどういう特別な想いを抱くのか、紐解いていきました。それにより、友だちよりも一歩踏み込んだ仲というか、気心の知れた友人というところを表現しないといけないと。
サーシャはミーシャよりは踏み込んでいない距離感なのですが、彼女からのアプローチじたいが強いのと、自分にほだされている部分もあるというところで甘くなっている。
自発的な想いか、相手からの想いによる後天的なものか。同じ時期に仲を深めたふたりなんですが、感情の踏み込みかたがちょっと違うんです。
──そういった関係性の違いについてはどのようにアプローチしていったのでしょう。
鈴木:
原作者の秋先生がそれらの心情をしっかりと描かれているので、そこを自分のなかに取り込めるように、小説を読み解いていくようにはしています。収録に入る前には4章まで読み進めていたと思います。
役作りのために蓄積した情報をあえて1回忘れる
──少し気になったのですが、原作の先を読み込むということは、演じるキャラがその時点では知り得ない情報も知ってしまうわけで。そのあたりは演じる際に影響が出てこないのでしょうか。
鈴木:
そこはしっかりと忘れるようにしています。
──忘れる?
鈴木:
はい。作品を読み込んでいく際、情報を箇条書きのようなイメージで自分のなかにストックしていくんです。そして、情報が蓄積された状態を作り出したうえで、アフレコの台本をいただいたときにそれらの情報を頭のなかから消すんです。
──素人意見で恐縮なのですが、忘れることって意識してできるものなんですか?
鈴木:
練習をしている間にできるようになってきました。例えば、イメージとしはパソコン上でファイルを作ってさまざまなデータを整理してまとめる。これがストックしていくイメージです。そして、それをゴミ箱に捨てたり、別のハードディスクに移した場合、データとしては消えてはいるんですが、じつは残骸はまだ残っている。その状況を頭のなかで作るんです。
本来覚えていないといけない情報をあえて1回消して、アフレコ台本を読み込んでいくなかで再度引き出していく、というのを必ずやるようにしています。
──すごいですね。さまざまな声優さんのインタビューを拝読してますが、その役へのアプローチは特殊だと思います。そんな役作りのなかで大変だった部分ってありますでしょうか。
鈴木:
大変というわけではないのですが、ファンタジー世界独特のその世界では通じるけど我々の日常では耳にしない言葉が多かったので、それらをいかに聞いている方にすんなり理解できるように伝えられるかは難しかったです。
──伝えるためにどのような技術を用いているんでしょう。
鈴木:
魔法についてのセリフがあった際、その魔法の名前が大事なのか、それとも効果が大事なのかで変わってきます。もし魔法の名前が大事ならその名前を際立たせるようにし、効果じたいはあまり耳に残らないような喋りかたをします。
加えて、わざとらしくやってもダメなので、その魔法の名前を際立たせるための感情の変化が自然になるように、そこに至るまでの道筋を逆算していくんです。
──非常に繊細な作業ですね。
鈴木:
逆に、2章で出てくる“精霊病”のように効果のほうが大事な場合、それはどういうものなのか、それに対して何が必要なのかを強く押し出す必要があります。
魔剣大会で優勝し自分の父親のことを褒めたたえた結果、伝承が広まり、レイの母親が助かった。この父親への感謝をあえて仰々しくやることで、伝承が広まったことでレイの母親が助かったのだとわかりやすく伝えられるんです。
ぶっ飛んでいるセリフもじつは作品の根幹に繋がっている
──アノス様と言えば、「殺したぐらいで俺が死ぬかとでも思ったか」や「時間を止めたぐらいで俺の歩みを止められるとでも思ったか」などの独特な言い回し(魔王構文)もぶっ飛んでいるなあと。
鈴木:
若干ネタバレになってしまうんですが、その疑問に関しては、原作を読み進めていくと答えが見えてくるんです。
アノス自身、この世界を構築している神々に対して憤りがすごく強いんです。4話で登場した時の番神のように、自分たちが気に入らないことに対して介入してくる。物事への介入が必要ということは神様というものが不完全なんですよね。それに対して憤りを感じている。
つまり、「殺したぐらいで俺が死ぬかとでも思ったか」というセリフは、お前らの手の上で俺がいつまでも転がされていると思ってるんじゃねえぞというアンサーでもあると思うんです。
──おお、アノス様かっこいい。
鈴木:
自分が気に入らないという理由でいつも世界に介入してきた奴らは敵だ。でも、そんな世界を享受して生きようとしている種族に関しては愛おしいと思っている。愛おしいからこそ、争い続けていることを見るのが辛くなった。だから、カノンに新しい世界を提案するわけなんです。
──2話冒頭のシーンですよね。
鈴木:
はい。壁を隔てて争いをなくすための大魔法を使うんです。でもその世界を愛しているからこそ、自分は転生してそれを楽しもうと思う。新しい世界を見て回りたい。……そう思っていたらまた何かに介入されているようなので、アノスはそれを許さないと。
じつは、異世界ものという世界観じたいがミスリードになっていて、異世界を構築している神様に対して喧嘩を売る話なんです。
──アノス様にとって、この世界の理となっている神こそが敵だと。
鈴木:
だからこそ、理を滅する剣ということで、理滅剣も存在しています。この剣は神様という存在を消せるもので、アノスのスタンスそのものでもある。そして、それらアノスのスタンスが全部セリフに繋がっているんです。
先輩たちとの会話を通して何かを感じ取ってほしい
──電撃オンラインのインタビュー【※1】のミーシャ役の楠木ともりさんとサーシャ役の夏吉ゆうこさんの対談のなかで「鈴木さんが現場を盛り上げてくれる。スイッチを入れてくれる」というお話を見て、アニメイトタイムズのインタビュー【※2】で、鈴木さんが「演じるキャラによりブース内での立ち居振る舞いが変化した」的なお話をしているのを思い出しました。
今回の『魔王学院の不適合者』における収録現場でも、アノス様という演じるキャラを意識しての立ち振る舞いを意識されていたのでしょうか。
※1 2020年7月24日掲載:『魔王学院の不適合者』の魅力を楠木ともり&夏吉ゆうこが語る。「まずは4話まで見てください!」
※2 2019年12月29日掲載:『ケンガンアシュラ』鈴木達央さんインタビュー|アフレコ現場は声の拳願絶命トーナメント!? 座長が語った“役者道”に男が漢に惚れた話
鈴木:
それはまさにその通りですね。今回はアノス役というところで、ひと言で表すと堂々としていました。何があっても物怖じしないと言いますか。
──まさにアノス様自身のような。
鈴木:
そこに自分のエッセンスを加えて、彼女たちがこれまで話す機会が多くなかったであろうベテランの方々と彼女たちとの橋渡しをして、いろいろな話ができるような空気感を作れるようには意識していました。
──演者同士が話しやすいように。収録現場での空気感を大事にされている。
鈴木:
人同士が歩み寄るのって誰かがドラマを起こしたときなんですよね。それこそ、『魔王学院の不適合者』でも、アノスが2000年後に転生していなかったらこの物語はなかったわけじゃないですか。2000年後に転生するというドラマがあったからこそ、この物語に繋がるんです。
それこそ、収録現場においては、誰かが喋らなければ会話は起きないんですよ。逆に誰かが口火を切って喋れば会話が生まれる。そして、もしその話題に発展性があれば会話が広がっていく。
──ちなみにどのような会話をされるんですか?
鈴木:
例えば、メルヘイス役の芳忠さん(大塚芳忠)とごいっしょだったときは、「30年くらい前に芳忠さんが出演している作品をこの前見ました」というきっかけから、当時の収録についてや芳忠さんが30代のときのお話などをお聞きしました。そうすると「あの頃はちょっと無茶してたかも」みたいな当時のお話をポロっと喋ってくれて。
──当時を知らない若い方からすると、そういうお話を聞けるだけで貴重な体験ですよね。
鈴木:
そうなんです。当然のことなのですが、今の子たちは今の人たちしか分からないんですよ。お芝居は生きているので、この人ってこんな喋りかたをするんだ、こんな風に笑う人だったんだとわかると距離感が変わって、相手の演技の受け取りかたにも影響を及ぼすんです。先輩たちとの会話を通して少しでも何かを感じ取ってほしい。そんな想いがあります。
──それが先ほどもおっしゃっていた鈴木さんならではのエッセンスだと。
鈴木:
はい。これまで俺は、生意気なことを言っても笑って許してくれる先輩たちの度量の深さに甘えながら、さまざまなご縁を紡がせていただいてきました。そんな俺であれば、あえて空気を読まずいろいろ喋りかけることもできるので、それによって若い彼ら彼女らが変わっていくきっかけになるのであれば、すごくいいんじゃないかと。
『魔王学院の不適合者』のアフレコは、7話以降はコロナの影響で数人ごとの収録だったのですが、6話まではみんなで収録することが可能でした。今思い返しても、6話までにその現場で培ったものが大きかったと感じています。
夏吉、楠木のふたりが最終的に全部の空気感を変えてくれた
──収録現場での話す機会を増やしていったことで、魔王学院チームとして明確に何か変わっていった部分ってありますか?
鈴木:
いちばん変わったのは夏吉、楠木のふたりですね。そして、それによってあのふたりが最終的に全部の空気感を変えてくれました。ふたりのインタビューでは「俺が盛り上げた」と言ってくれていますが、本当は俺じゃないです。魔王学院チーム、とくに音響チームの空気感をよくしてくれたのはあのふたりです。
──えっそうなんですか!? 先ほどのお話を聞いた限りでも、鈴木さんが意図的に会話を発生させたりパイプ役になったりと、引っ張っていっている印象でしたが。
鈴木:
最初のきっかけじたいは俺かもしれません。収録現場に新しく入ってきた方がちょっと静かにしていると、俺自身すぐにいじるようにしていて。緊張していても、もうここはホームだよって感じてられる空気感を持ってもらう。それだけでアフレコ全体が全然変わってくるんです。
そういうのを続けていったことで、彼女たちが新しく入ってくる子たちへの迎えかたが変わっていった。それによって現場の空気感がすごくよくなっていきました。
──鈴木さんの立ち振る舞いを見て、夏吉さん、楠木さんらの行動が変わっていったと。
鈴木:
そうですね。というのも、アノスは物語の中でもきっかけを与えて、ここまでは俺がやってやる、後はお前がやれよ。ということが多いじゃないですか。
それと同様に、収録現場でも俺は彼女たちへのきっかけ作りをしただけなんです。新しい子の迎えかたも「達さんならきっとこう言うかも」「達さんならこういうことをやるかも」と、彼女たち自身が考えて動くようになっていったのではないかなと思います。
──本当にアノスとミーシャ、サーシャの関係のようですね。
鈴木:
作品内もでミーシャとサーシャはいろいろなことに気付き、吸収し、成長していく。その成長速度以上に演じる俺たちも成長しないと役に反映できないんです。
成長を促さないといけないと思い、厳しいことを言うときもありましたが、彼女らはそれらをどんどん吸収していって、自分が思っている以上の成長を見せてくれました。
アノスの魔王たるゆえんが示される7話のエミリア先生のシーン
──第3章に入り、最終回に向かっていく『魔王学院の不適合者』ですが、鈴木さん自身の推し回は何話か教えていただけないでしょうか。
鈴木:
推し回かあ。難しいなあ。1章、2章、3章と3部構成になっているので、4話と8話、その章のクライマックスは印象に残るというのはあります。
後は、ゲストの方がいらっしゃったり、お芝居がすごく入るような話数というも気になります。そういう意味では、7話のエミリアのシーンはキモですかね。
──母親を襲撃されてお怒りになるアノス様が見られるシーンですね。
鈴木:
あのシーンは、アニメ内で恐らくアノスが暴虐の魔王としての暴虐の部分が立っている唯一のシーンなんです。ほかの場面だと許してくれたりすぐに生き返らせたりしてくれるんですが、エミリアは踏み込んでいけない領域を侵してしまった。法律で裁けるかもしれない、でもそれは俺が許さないと、復讐というかたちでやってしまうんです。
──それだけ母親の存在が大きかったということでしょうか。
鈴木:
はい。彼にとって家族というものがいかに大切なのかを示しているんです。そして、なぜ彼が勇者ではなく魔王だったのか。それは大切なものを崩されたときに、いちばん選んではいけない方法を彼は選んでしまう。彼が悪であり、2000年前に暴虐の魔王と呼ばれていたゆえんでもあるんです。
──エミリア先生をおしおきする際の表情だったり声だったりはまさに暴虐の魔王そのものでした。エミリア先生もすごくて……。
鈴木:
本当にさすがですよ。変幻自在な演技を見せてくれて、「やっぱ、あみっけ(小清水亜美)ってすげーいい女優なんだな」って思いました。
実際7話の収録の際は、ミサ役の寧々まる(稗田寧々)といっしょに収録をしていたんですが、その入れ違いのタイミングで、あみっけや拓篤(寺島拓篤)と話す機会があって「目の前で小清水亜美の全力の叫びだったりとか、全力の悪役を見られるのはそうそうないぞ」と。そして、その演技に対して「どう感じた?」と寧々まるに聞いたりしていました。
──ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ここでエミリア先生が完全終了というわけではないので、ぜひアニメ2期をやってくれと。小清水亜美さんの演じるエミリア先生をまた見せてくれてと願わずにはいられません。
鈴木:
ね。俺も楽しみです。
──最後に定番ではありますが、アニメを楽しみにしているファンの方々へメッセージをお願いできないでしょうか。
鈴木:
『魔王学院の不適合者』の放送もここまでたどり着くことができました。見ていただいている方々に楽しんでいただけるのが伝わってくることもあれば、まだまだもっとたくさんの方にたのしんでいただきたい思いもあります。
ぜひこの記事を見て気になった方は1話から見ていただければうれしいと思います。全スタッフ全身全霊を込めて救ったフィルムになっておりますので、ご覧いただいた際には感想をいただけると全スタッフの励みになりますので、ぜひお待ちにしております。
(了)
今回のインタビュー記事掲載に際して、鈴木達央さんサイン入りチェキを抽選で1名様へプレゼント。
プレゼント企画の参加方法は、ニコニコニュースTwitterアカウント(@nico_nico_news)をフォロー&該当ツイートをRT。ぜひ奮ってご応募を。
「鈴木達央さんサイン入りチェキ」を1名様にプレゼント🎁
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) September 26, 2020
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▼インタビュー記事https://t.co/zTwx88u74j
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