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やりこみゲーマーはなぜ苦行に挑み続けるのか──「普通に辛いです」それでも縛りプレイに身を捧げる理由【おやつの人インタビュー】

ニコニコニュース / 2020年11月11日 11時0分

 なぜ人は苦行に挑むのだろうか。

 例えば、山登りに魅入られた人たちがいる。険しい山道、過酷な環境、命の危険と隣合わせな状況に身を置くとわかりつつも、彼らは山に登る。

 非日常な体験、壮大な景色、そして山頂にたどり着いた瞬間の達成感。そんな魅力が彼らを山に誘っているのだろう。

 そしてそれはゲーマーの世界でも同じことが言える。

 頼れる仲間を集め、レベルを上げ、装備を整え、強大なボスに挑む。苦しいこと、辛いこと、大変なことがあったとしても、その先にあるゲームクリアという目標があるからこそ、ある程度の苦行は楽しさに昇華されるわけだ。

 わかる。ここまではわかる。

 しかし世界は広い。この世には、レベルを上げない、装備も集めない、技やスキルを封印するetc……など、まるでエベレストに近所のコンビニへ出かける格好で登ろうとする者たちがいる。

 やりこみゲーマー、狂人、偉大な変態、プロのドM……呼称はさまざまだが、我々一般人から見て領域外の存在に他ならない。数々の縛りプレイ動画を投稿しているゲーム投稿者・おやつさん(おやつの人)もそのひとりだ。

さまざまな縛りプレイ動画を投稿しているおやつさん(@Oyatsu_Co)。

 483──これは、おやつさんがとあるモンスターを倒すまでにやり直した戦闘の回数である。1戦の時間を5分でカウントすると約40時間かかる計算だ。じつに一般的なサラリーマン1週間分の労働時間にあたる。

 「(こんなことやっていて)辛くないんですか?」との問いかけにおやつさんは答えた。

 「普通に辛いです」と。

 そんな思いがけない展開から始まったインタビューでは、縛りプレイに挑む際、動画にする際のこだわりや、何度も戦闘をやり直ししているときの心境など、おやつさんの頭の中に迫ることができた。

取材・文/竹中プレジデント

縛りプレイは普通に辛い

──本日はよろしくお願いします! 投稿した動画がさまざまなメディアで記事として取り上げられているおやつさんですが、今回のような取材の申し込みって過去にはなかったんでしょうか。

おやつ:
 よろしくお願いします。今回のように連絡をいただいてお話をする機会は初めてです。いつもは、Twitterのリプライで「記事になってるよ」と教えてもらって、そこで記事になっているのを気づく感じなので。

──初めての取材という貴重な瞬間に立ち会えて光栄です。今回は“なぜおやつさんは苦行に挑み続けるのか”をテーマに、縛りプレイの醍醐味や実際にどのような流れで縛りプレイに挑戦しているのかなど、いろいろとお話をお聞きできればと思います。

おやつ:
 はい。なんでも聞いてください。

戦闘回数を縛ったり、行動を縛ったり、さまざまな縛りを自身に課してゲームに挑んでいるおやつさん。

──ありがとうございます。さまざまな縛りプレイに挑戦しているおやつさんですが、テイク数が100回を超える戦闘も珍しくないです。これは、一般人からすると非常に辛い作業に見えるのですが、プレイしている際はどんな気持ちなんでしょうか。

おやつ:
 楽しいか楽しくないかだと、全然楽しくないですね。普通に辛いです(笑)。

──そうなんですか!? てっきり、苦行じたいを楽しく感じてしまう人なのかと。

おやつ:
 いえ、そんなことないですよ。挑戦中は心の中で早く成功してくれと思っています。

── そのわりには、いつも嬉々として苦行に挑んでいるように見えるのですが?

おやつ:
 それを乗り越えないと動画にできないので、やるしかないんです。

──動画を作るためのゲームプレイなんですね。でもちょっと待ってください……「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」のラスボス戦では、ただ勝利するだけではなく、どんな風に勝つかの吟味もされていましたよね?

ただでさえ勝率が低いうえに勝ちかたすら吟味をする狂気。

おやつ:
 そうですね。確か4回目に勝利した戦闘を動画化しました。倒すのに約1時間、倒せないときの戦闘時間も長めなので、時間じたいはけっこうかかってしまいましたね。

──倒すのに約1時間かかる戦闘での勝利を3回も見送る。その結果、テイク数は182回にも及びました。こんなことをするなんて、やはり苦行を楽しいと感じているとしか思えないのですが……。

おやつ:
 それにはちゃんと理由があるんです。確かに当初は、最初に勝利した戦闘で動画を作ろうと思っていました。

 でも、その戦闘では、あっさりと勝利してしまっていて、盛り上がりに欠ける展開だったんですよね。この戦闘を動画化しようとすると、逆に編集が大変になると思ったんです。

──“勝利してしまって”という感覚が、もはや理解しがたい部分なのですが……。つまり、動画としての盛り上がりを重視したがゆえの吟味だったと。

おやつ:
 はい。シリーズのラストバトルでしたし、ボスを倒したときの達成感を見ている方々にも感じてほしかったのもあります。

勝ちかたにもこだわった結果、画面が絶叫コメントで埋まるほど盛り上がりを見せた。

──なるほどなるほど。あの戦いが特別だったんですね。

おやつ:
 あ、でもあの戦闘だけでなく、勝利してもやり直すケースは珍しくないですよ。

──えっ?

おやつ:
 だいたいの場合、敵の攻撃に対してあらかじめ対策を用意して戦闘に挑むんですが、敵がその行動をとらないまま倒してしまうこともあるんです。

 その場合は、勝利したとしてもやり直します。やはり見せられるものは全部見せきって倒したいという想いがあるので。

──すべては視聴者におもしろい動画を届けるため?

おやつ:
 そうですね。何より自分としてもおもしろいものを作りたいと思っているので、つまらないものは出したくないんです。

パイロヒドラ戦の吟味は二度とやりたくない

──おもしろい動画を追求するがゆえ、心が折れそうになる辛い戦闘を経験したことは一度や二度ではないと思います。いま思い返してみて、もう二度とやりたくないなあって思う戦闘ってありますか?

おやつ:
 あえてひとつあげるとしたら、「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦 」11戦目のパイロヒドラ戦です。あの吟味は二度とやりたくないですね。

──パイロヒドラ戦、敵を倒したときの味方キャラのステータスアップの吟味、そこに低確率(2.3%)でドロップする“ヒドラ革”というアイテム入手も同時に達成できるまでやり直しする狂気の吟味でした。最終的に483回目の戦闘でようやくクリアできたわけですが。

地獄の吟味。

おやつ:
 1戦にかかる時間じたいは短かったんですが、条件を満たす確率が非常に低かったため、やり直し回数も多くなってしまいました。

──実際にかかった時間はどのくらいだったんですか?

おやつ:
 1日中ずーっとプレイしていたわけではないので、トータルで何時間というのはわからないのですが、2、3週間くらいはパイロヒドラと戦い続けていたと思います。

──1戦だけでそんなに……。動画の反応を見ると、乱数調整のテクニックまで使って勝利したサンディーヌ戦(Part6)も非常に苦戦していた印象を受けるのですが、実際はどうだったんでしょう。

必殺・乱数表。

おやつ:
 そういう反応をいただくことはあるのですが、じつはそうでもないんです。

──まさかの。

おやつ:
 なかなか条件を満たせなくて、とうとう乱数調整にまで手を伸ばした……ように見える動画の演出をしているので、そう思われる方がいるのも当然だと思います。

 しかし実際は、事前のテストプレイの段階で、当たりを引き当てる確率が1/1024なのも調査済みでしたし、あの戦いかたで倒すことも予定通りのものでした。

──あの戦いかたというのは、リセットからAボタンを全力で連打し戦闘に入り、9.7秒後に最後のコマンドを入力して、即死技の次元断で倒すことですよね。いや、改めて言葉にしてみても意味不明な戦法です。

自身のボタン連打速度を計測、そこから逆算してタイミングよくボタンを押すことで狙った技を発動させようとする、とんでもない作戦を実行した。

おやつ:
 ただただ1/1024の当たりを引くまでひたすらやり直しをくり返す戦いかたですと、動画的におもしろみがないため、『ロマサガ3』の乱数の仕組みをエンタメ的に解説しようと、あの見せかたにしたんです。

──いやはや、完全におやつさんの手のひらで踊らされていたというわけですね。おもしろい動画のためという明確な目的があるにしろ、失敗が続き、何度も何度もやり直ししているときって、メンタル的にしんどいと思うんです。そんなときのメンタルケアってどうされているんでしょう。

おやつ:
 確率の低い挑戦の場合は、あらかじめプレイする時間を決めておくのが精神衛生上いいです。例え成果がでなくても、終わりが見えている状態というのは大きいですね。

 あと、自分の場合、本番前の事前調査で確率を出しているので、だいたいこのくらいやり直せば出るだろう、という情報がわかっているのは救いではあります。

ムリゲーを運ゲーに引き上げるのが縛りプレイの醍醐味

──聞けば聞くほど、縛りプレイの世界は、膨大な時間と労力が必要不可欠なんだなと戦々恐々としています……。おやつさん自身も「辛い」と感じているとおっしゃっていましたが、ではそんな世界にいまも身を置き続けているのはなぜなんです?

おやつ:
 それは私自身やっていて楽しいからでしょうね。

──辛いけど……楽しい?

おやつ:
 もちろんです。

──楽しいと思う瞬間ってどんなときなんでしょうか。

おやつ:
 けっこうありますよ。まず、事前準備の段階でおもしろい戦術を思いついたとき。そして、それを実行し、見せたいものを全部見せて勝利できたとき。あとは、録画しながらプレイしていて動画で使えそうないい絵が撮れたときも楽しいです。

──なるほど。おもしろい動画作りに繋がる部分に楽しさを感じているんですね。こういう縛りプレイですと、細い勝ち筋を掴んで勝利した瞬間にカタルシスを感じる印象があるんですが、意外とそうでもないんですか?

おやつ:
 確かにテイク数が多い戦闘ばかりを投稿しているので、確率を祈りで突破することが好きかと思われているかもしれないのですが、じつは運ゲーは好きではないんですよ。勝率が100%に近いほうが攻略として美しいと思っています。

──??????? おやつさんのこれまで重ねてきたテイク数といまの発言の温度差で頭が混乱してしまいました……(笑)。いったいどういうことなんでしょう。

おやつ:
 「ひたすら楽してFF6 part33」での鬼神戦がわかりやすい例なのですが、鬼神はこちら(味方)にストップ状態のキャラがいると行動が固定される性質を持ちます。

 その行動を100%防ぐことができる対策を用意して戦いに挑むことで、1ターン目さえしのぎきれれば完封できる状況を作りだせるんです。こういう最初の関門さえ乗り越えれば100%勝てる戦術が好きなんです。

 ただ、どうしても縛りプレイをしていると運に頼らざるを得ないところも出てくるのは事実です。そこを事前の準備や戦術の工夫によって、ムリゲーを運ゲーまで引き上げる。それこそが縛りプレイの魅力だと思っています。

テイク2でクリアしていた鬼神戦。

──ふむふむ、ムリゲーを運ゲーに。つまり動画で見かける「〇〇してくれることを祈ります」場面というのは、もうこれ以上どうしようもないから祈っているわけなんですね。

おやつ:
 そうですね。ただそんな状況でも、可能な限り勝率を上げる戦術を考えることが、縛りプレイの醍醐味と言えるでしょうか。

縛りの難易度以上に動画としての見栄えを重視する

──これまで数々の縛りプレイ動画に挑戦してきたおやつさんですが、プレイ条件という名の縛りを設定する際には、どのような点を意識されているのでしょうか。

おやつ:
 まず複雑なルールにしないことです。長いルールにしてしまうと、見ている側がわからなくなってしまうので、できるだけ縛りの内容は短く、かつその短いルールの中で実質的にさまざまな縛りを設定できるものが理想です。

 例えば、私が好んでよく使う“最少戦闘回数”や”最少勝利回数”というルールは、この縛りをひとつ設けるだけで、レベル上げや戦闘での稼ぎ行為、サブイベントを攻略して強力なアイテムを回収するなど、さまざまな要素に制限がかけられるんです。

縛り内容はシンプルなほうがいいとのこと。

──文言はシンプルなほど伝わりやすいと。確かに。

おやつ:
 あと、縛りの難易度も大事なのですが、それ以上に動画としての見栄えを重視しています。

──縛り内容が厳しければ厳しいほど苦行が映えそうですが。

おやつ:
 例えば、『ロマサガ3』で、“技や術を一切使わずに素振りだけで戦う”縛りにすれば、確かに難易度は高くなります。しかし、そうすると工夫する余地がなくなり、絵的にも地味になってしまうんです。

──単に厳しい縛りだからいいわけではないんですね。

おやつ:
 はい。加えて、そのゲームが持つおもしろいシステムを活かせるような縛りがいいなと思っています。『ロマサガ3』ですと、閃きやコマンダーモードをうまく使えるような縛りでしょうか。

──なるほど、勉強になります。事前準備から本番まではどんな流れなんですか? 事前準備でどのようなことを行っているのか気になります。

おやつ:
 まずは挑戦しようとしているゲームについてリサーチを行います。やりこみレポートや解析情報、攻略情報を読み込んでどのような攻略が可能か、縛りにするか、動画にした際の見栄えはどうか、などを考えます。

──そのゲームについて下調べからと。本番を走る前にテストプレイは行うんですか?

おやつ:
 はい。縛り条件が固まったら、実際にゲームをプレイしながらチャートを書き進めます。ある程度知識のあるゲームでしたら、事前にチャートの草案を書いておき、プレイしながら添削したりもしますね。 そして、テストプレイが終わったら本番へ、という流れです。

──事前調査にはどの程度の時間をかけているんでしょう。

おやつ:
 長くても1ヵ月、だいたいは1~2週間くらいの期間でしょうか。複雑なものの場合は、エクセルに計算式を入れてチャートを組みますが、だいたいはメモ帳にまとめちゃいます。このほうがゲームをプレイしながら見られるのでやりやすいんですよね。

「ひたすら楽してロマサガ3リマスター」プレイ時のメモ。

──おお……すごい。複雑なものはエクセルでとおっしゃいましたが、例えばどの挑戦シリーズのチャートはエクセルでまとめていたんですか?

おやつ:
 「【ロマサガ2】最少戦闘回数クリアに挑戦」はエクセルにまとめていました。事前準備の面からすると、このシリーズのチャート作りがいちばん大変だったと思います。

──ほうほう。例えばどのあたりが大変だったんでしょう。

おやつ:
 バトルの順番をひとつ入れ替えてしまうだけでクリア不能になってしまうので、事前に綿密な計画を立てる必要がありました。そのため、エクセルで、バトルで稼ぐ技術点、仲間の技能レベル、イベントポイントを計算してチャートを作った記憶があります。

──動画の様子からすごくて大変なのはわかってはいたんですが、こうして動画では見えない準備のお話を聞くと、改めてトンデモナイ苦行だなって……。

 多くの手間と労力をかけ準備を行い、本番でも幾重の苦行を超え、ゲームをクリア(条件を達成)した瞬間って、どんな気持ちなんですか?

おやつ:
 動画作りのためのプレイだった場合は、「やっと終わった。これで編集に入れるな……」ですかね。

──え、最初に思うことが動画の編集のことなんですか。……あくまでゲームクリアは通過点みたいな?

おやつ:
 そうですね。ひと区切りついたくらいの感覚です。本当の意味で終わったなあという気持ちになれるのは、その動画シリーズの最終回を出したあとになります。

おやつさんとゲームの出会い

──ここからは、数多くの縛りプレイに挑戦し続けるおやつさんが、どのようにゲームと出会ったのか、おやつさんとゲームのルーツについてお聞きしていければと思います。まずは、初めてゲームに触れたきっかけについて教えていただけないでしょうか。

おやつ:
 父がゲーム好きだったので、物心ついたころから家にファミコンがありました。それで、父がプレイしているのを後ろからよく見ていて、自分も遊んでみたいと思ったのが、ゲームをプレイし始めたきっかけです。

(画像はAmazon「ファミリーコンピュータ 本体」より)

──小さいころはどんなゲームを遊んでいたんですか?

おやつ:
 『ファミスタ』や『スパルタンX』、『ダビスタ』など、父が持っていたゲームを遊んでいました。当時、4歳か5歳だったので、複雑なゲームシステムは理解できていなかったのですが、なんとなくは遊びかたはわかったので、楽しんでプレイしていた記憶があります。

──ファミコンやスーパーファミコンの時代は、ゲームじたいが高価なものだったので、親や兄が持っているゲームを触らせてもらう、いっしょに遊ぶ、というのは当時のあるある話ですよね。

おやつ:
 あるあるですね。『三國志』というゲームで、父のプレイしているセーブデータを間違って消してしまったことがあって、怒られたことはよく覚えています。

──あ~、それもあるあるですね。「ゲームは1日1時間」みたいなルールはありました?

おやつ:
 明確な時間は決まってはいませんでしたが、長時間プレイしていると注意はされました。隙あらばゲームを遊んでいたので、やりすぎた結果、母にアダプターを隠されてしまったり(笑)。

──はいはい(笑)。

(画像はAmazon「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 専用ACアダプター」より)

おやつ:
 ただ、アダプターを隠されてもお小遣いでアダプターを買ってきたり、いま思い返すと危険なことなんですが、ラジカセかなにかのゲームとは関係ない電子機器のアダプターを代用できることに気付いてそれを使ったりと、隠れて遊んでいました。

──なんと! 子どものころからゲームに対して並々ならぬ熱量があったんですね。

おやつ:
 ゲームはもちろん好きでしたが、ゲームだけでなく外で友だちと遊ぶことも多かったです。どこにでもいる普通の子どもだったと思いますよ。

──いやいや、普通の子はアダプターを代用してゲームしようとは思いませんって(笑)。

おやつ:
 そうですかね(笑)。

──さすがに子供のころから縛りプレイをしていたってことは……?

おやつ:
 ないですないです。縛りプレイに挑戦しだすのは動画を投稿するようになってからなので、当時は普通にゲームを楽しむ子どもでしたし、難しくてクリアできないゲームも多かったです。

──おやつさんでもクリアできないゲーム……いまの印象からすると信じられないですね。

おやつ:
 初めて買ってもらったゲームが、白いロムで「白ドラ」と呼ばれている『ドラえもん』だったんですが、当時の自分には難しすぎて、全ステージ3面中、1面しかクリアできませんでした。

 当時のゲームって、子どもにクリアさせる気がないんじゃないか、と思ってしまうくらいに難易度が高くて。「白ドラ」もまさにそれでした。ただ、クリアできなくても、おもしろくてずっと遊んでいましたね。

(画像はAmazon「ドラえもん」より)

──ああ、いまでは信じられないほど難しいゲームってありましたよね。

おやつ:
 そうですね。あとは『星のカービィ 夢の泉の物語』も『ドラえもん』と同じくらいハマったゲームなんですが、こちらは子どもでもクリアできる難易度で、恐らく初めてクリアできたのもこのゲームだったと思います。

(画像はAmazon「星のカービィ 夢の泉の物語」より)

おやつさんとロマサガの出会い

──『ロマサガ』を初めてプレイしたのっていつころだったんでしょうか。

おやつ:
 小学校にあがってすぐくらいのころだったかと思います。父がパチンコの景品で『ロマサガ2』をとってきて、セーブスロットが4つあったので、父と自分でふたつずつ使い合ってプレイしていました。

(画像はAmazon「ロマンシング サ・ガ2」より)

──初めてプレイした際の感想って覚えてらっしゃいます?

おやつ:
 RPGをまともにプレイしたのが初めてだったと思うんですが、とにかく難しくて、RPGってこんなに難しいんだなと……。

 『ロマサガ2』では、戦闘回数によって敵がどんどん強くなってしまうんですが、当時はそんなシステムもわかっていなくて、ひたすら退却してゲームを進めていたんです。

──あっ……。

おやつ:
 ご想像の通り、その結果どうなったかというと、味方のキャラクターが弱いまま敵が強くなりすぎて詰んでしまったんです。ラストダンジョンにすら到達できませんでした。

 クリアできないのも悔しいので、いっしょに進めていた父のデータを使ってラスボスを倒した記憶があります。

──お父さんはクリアできていたんですね。

おやつ:
 はい。父は、敵を行動させずに自分たちだけ攻撃し続けることができる、クイックタイムハメという有名な戦術を使ってクリアしていました。

──なるほど。いまでは『ロマサガ』を翻弄しているおやつさんですが、最初の出会いは苦い思い出だったと。

おやつ:
 そうですね。そのこともあり、『ロマサガ2』と同じように父といっしょに進めていた『ロマサガ3』で、父より先にクリアできたときは、すごくうれしかったです。

(画像はAmazon「ロマンシング サ・ガ3」より)

──おお、成長を感じますね。

おやつ:
 ユリアンを主人公に選んだんですが、じつはステータス的にあまり強くないんですよね。でも主人公っぽい見た目に騙されて、当時の私は選んでいました(笑)。

──主人公っぽい見た目(笑)。『ロマサガ3』でおやつさんと言えば、主人公・カタリナのイメージが強いです。

おやつ:
 オープニングがいちばん早く終わるのがカタリナですので、RTAや最少戦闘回数の縛りを設けると必然的にカタリナばかりになってしまいますね。

初プレイ時、おやつさんが見た目に惹かれて選んだユリアン。
(画像は「ロマンシング サガ3 | SQUARE ENIX キャラクター」より)
おやつさんと言えばカタリナのイメージを持つ方も多いのではないだろうか。


『ロマサガ』を何度もプレイし続けていて飽きないのか

──おやつさんって、控えめに言ってかなりの回数『ロマサガ』シリーズをプレイされているわけじゃないですか。正直なところ、飽きないものなのでしょうか。

おやつ:
 さすがにもう目的なしに漠然とプレイすることはないですね。ただ、いまゲームをプレイする場合は、動画化を見据えてのものなので、その場合は、目的がハッキリ設定されているわけで。そのゴールに向かって進んでいくだけなので、飽きるというのはありません。

──なるほど。縛り条件によってプレイ内容も変化しますし、動画化という目的もあるため、飽きは感じないと。

おやつ:
 あと、みなさんが想像しているほど(『ロマサガ』シリーズを)何回もプレイしてはいないと思います。

──そうなんですか?

おやつ:
 RTAの際には、最初から最後まで走りきる必要があるため、何度もプレイしますが……。

──(食い気味に)いやいや、ちょっと待ってください! 何度もくり返すのは普通ではないと思うんですよ(笑)。

おやつ:
 でも、縛りもRTAもなく普通のプレイはそこまで多くないです。いちばんプレイしている『ロマサガ3』ですら、主人公全員でクリアしていないですから。

8人の主人公からひとりを選び物語がスタートする『ロマサガ3』。
(画像は「ロマンシング サガ3 | SQUARE ENIX システム」より)

──……本当ですか?

おやつ:
 本当ですよ(笑)。8人いる主人公のうち、エレンとモニカでは多分クリアしていないような気がします。

──てっきり『ロマサガ』シリーズはしゃぶり尽くす勢いで遊んでいるのかと……意外でした。

おやつ:
 これは誇張でもなんでもないのですが、とくにシリーズものを投稿している期間は、動画編集に時間をとられてしまうので、ゲームを起動するのは攻略情報の裏取りや編集用素材の撮影くらいです。

 恐らく、ゲームをプレイしている時間より、動画編集や攻略サイトを眺めている時間のほうがずっと長いと思います。

──なるほど。失礼を承知で申しますと、おやつさんのおっしゃる「そこまでプレイしていない」の言葉に対して、脳が理解を拒んでしまっています(笑)。

 ……さて、お話を戻しまして、これまで何度も『ロマサガ』シリーズをプレイしてきたおやつさんが感じる『ロマサガ』の魅力ってどんなところなんでしょうか。

おやつ:
 まず自由度が高く、プレイヤーによっていろいろな進めかたが可能なので、やりこみに向いているところでしょうか。加えて、先人の研究により攻略情報が豊富で、チャート作成や動画編集の際、参考にできる文献も多いんです。

 あとは、主人公が変わったりデバックルームに行けたりなどの、バグがおもしろいのも好きな理由のひとつですね。

──バグですか。本来であればあまりいい印象を持たれることのない要素だと思うのですが、そこも含めて魅力だと。

おやつ:
 そうですね。バグに愛されているゲームだと思っています。

 昨年『ロマサガ3』のリマスター版が発売された際も、発売日に生放送でRTAを走ったのですが、思わぬ現象に遭遇してなかなかクリアできなかったのはいい思い出です。

縛りプレイに興味を持ったのはやりこみレポートやスーパープレイ動画を見て

──続いては、おやつさんが縛りプレイに目覚めた経緯について掘り下げていきたいなと。ゲームの縛りプレイやRTAに興味を持ったのにはどのようなきっかけが?

おやつ:
 大学生のころ、ゲームのやりこみレポートやスーパープレイ動画をまとめたサイトがあって、そこで過去に自分がプレイしたことがあるゲームをものすごい難しい条件を設けたうえでクリアする様を見て、衝撃を受けたことがきっかけです。

 当時、ちょうどレトロゲーを遊んでいたこともあって、こんな遊びかたもあるんだ、自分もやってみようかなと。

──そんな狂人の巣窟のような場所が。恥ずかしながら、いまお聞きしてネットで調べるまで知りませんでした。

おやつ:
 有名なところだと、「庭」とも呼ばれていた「Ultimagarden」が流行っていて、当時やりこみプレイをしている人たちがたくさん集まり、自分のプレイ内容をレポートにまとめて公開していたんです。

──そのサイトで「こんな世界もあるんだ」と知ったあと、おやつさん自身も実際に挑戦してみたんですか?

おやつ:
 はい。公開されていたやりこみレポートを参考に『FF6』の低レベルクリアに挑戦してみました。

(画像はAmazon「ファイナルファンタジー6」より)

──実際にプレイしてみてどうでしたか?

おやつ:
 やりこみプレイじたいが初めてで、慣れていないこともあり、苦労する点も多かったのですが、先人の知恵のおかげでなんとかクリアできました。

──おお、すごい!

おやつ:
 いや、全然すごくないですよ。レポートに詳細な攻略情報がまとまっていたので、本当にそのチャートをなぞるだけでした。

 クリアできたときも、すごいことを考える人もいるんだなあと、実際にクリアできたことに対して驚きの気持ちが強かったくらいです。

──いまでは自身でチャートを作っているおやつさんですが、初めてチャートを作ったのはどのゲームだったんでしょうか。

おやつ:
 自分でオリジナルチャートを作るようになったのは、動画を投稿し始めてからになるんですが、恐らく『ロマサガ3』のTAS動画で、分身剣チャートだったと思います。

 自分で作ったと言っても、完全オリジナルというわけではなく、すでに存在していた分身剣チャートをもとに自分なりに最適化を目指して作ったものでした。

──やはり初めての経験というのは記憶に残りやすいと思うんですが、何か印象に残っていることはありますか?

おやつ:
 完走した感想で言うと、達成感はもちろんありましたが、本当にこれが最速なのかなという想いがまずありましたね。自分が気付いていないだけで、もっと最適化ができたんじゃないかと。

 いま改めて見直すとやはり最適化が甘いですね。その後、また違う分身剣チャートを出したんですが、10分以上タイムが早くなっていたので。

動画作りを始めたきっかけ

──いろいろなお話を根掘り葉掘り聞いてきましたが、最終的には“おもしろい動画を作りたい”信念に行き着きますよね。ここからは、そんな動画作りを始めたきっかけについてお聞きできればと。

おやつ:
 これも大学時代なんですが、単位を取りきって、わりと時間に余裕ができた時期がありまして。その際に、まだYouTubeのサーバーを利用していたころのニコニコ動画で「超絶へたくそマリオ3」という動画を見かけたんです。

 当時はゲームプレイ動画といえば、TAS動画やスーパープレイ動画がほとんどを占めていたんですが、その動画は初心者が『マリオ3』を普通にプレイするものでした。珍しかったのか反響もかなりあって。

 それを見て、これなら自分でもできそうだなと思い、『マリオ2』を普通にプレイした動画を出してみたのが、動画投稿のきっかけでした。

──普通のゲームプレイ動画よりTAS動画やスーパープレイ動画のほうがメジャーというのは、いま現在からすると考えられない環境ですね。そして、おやつさんが普通にプレイしている動画というのも、いまとなっては貴重な映像な気がします。

おやつ:
 いま見返すと、字幕も実況もない、編集もほとんどしていない動画なのですが、当時は普通にプレイする投稿者が少なかったこともあり、最初から数万人の方に見ていただけたんです。

 動画にコメントが流れて視聴者の反応を見られるのが楽しくて、その後も動画を投稿していくようになりました。

──投稿した動画のコメントで視聴者の反応はチェックされるんですね。

おやつ:
 します。みなさんの反応を見るのが楽しい瞬間ですし、つぎの動画を作るうえでのモチベーションにも繋がります。

──おやつさんの投稿動画を時系列で追っていくと、投稿開始からしばらくするとTAS動画が主流となり、その後、縛りプレイ動画へとジャンルが変化していきます。これについては何か理由があるのでしょうか?

おやつ:
 これは自分が作りたいTAS動画をだいたい作り終えたというのが理由ですね。また、TAS動画ではできなかった寄り道要素を入れた攻略やカット編集をはじめとする演出に挑戦してみたくなったというのもあります。

 ただ、PS2のTASにも挑戦しようかと考えているので、今後またTAS動画メインに戻ることがあるかもしれません。

動画作りのうえで影響を受けた人たち

──攻略チャートを作る際にはまず先人の研究を参考にするとおっしゃっていましたが、動画作りのうえで影響を受けた方がいらっしゃったらお聞きしたいです。

おやつ:
 思い浮かぶ方は3人いて、「FF5 モンク縛り」のばけぼのさん、「FF6 極限低歩数攻略」のエディさん、そしてbiim兄貴です。

 ばけぼのさんは、TAS動画で解説するための編集がメインだった当時、こういう編集もありなんだと思わせてくれた投稿者です。

──いま、ニコニコ大百科(詳細はこちら)でどんな縛りか調べてみたんですが、めちゃくちゃえぐい縛り内容ですね……。それこそ工夫の余地が少なく、絵的に地味になってしまうレベルで厳しい縛り内容です。

おやつ:
 そうなんです。縛りの内容じたいはシンプルでテイク数もかなり多いんですが、それを編集でおもしろく見せているんです。

──おもしろく見せる編集という面で影響を受けた方なんですね。

おやつ: 
 エディさんは、「ひたすら楽してFF6」の更新案を提示していただいたこともあり、多大な影響を受けました。

 これにあたり、「エディさんのせいで再走することになった」というコメントもあったのですが、じつは更新の大部分は別のプレイヤーが発見したものだったりするので冤罪なんです。

──冤罪(笑)。

おやつ:
 なんでしたら、エディさん自身も再走することになっているので、ある種、被害者側とも言えます。

──なんて不憫な……ここ、記事にまとめる際にしっかり書いておきます。エディさんも被害者と。

おやつ:
 あ、でも最近は自分からバグを掘り下げて、自縄自縛になっているので、半分くらいは自業自得な部分もあると思います(笑)。

──(笑)。ちなみに一度作った記録が更新されるってどんな気持ちなんでしょう。

おやつ:
 記録は抜かれて当然だと思っていて、むしろ記録を抜いて抜かれて切磋琢磨されていくほうが、そのゲームじたいが注目されていいんじゃないかと思っています。

 ですので、記録更新じたいは嫌な気持ちはまったくありません。逆に、動画のネタを提供してもらえてありがたいくらいです。

──ふむふむ。

おやつ:
 biim兄貴はある意味いちばんお世話になっているかもしれません。biimシステムのレイアウトは使いやすくて、動画を作る際に重宝しています。

 あと、特定の誰かというわけではないのですが、解析情報、やりこみレポートを残してくれた先人たちには感謝の気持ちを伝えたいです。

 私は自分で戦術やバグなどを発見するより、すでに発見されているものを組み合わせて攻略を考えたり、改良したりするほうが得意なので、これらの研究成果がなければ動画を作ることはできませんでした。

安心と信頼のbiimシステム。

苦労している様子もエンタメのひとつ

──TAS動画ではできなかった表現を目指したという縛りプレイ動画、やはり苦労している部分をいかに見せるか、というのが腕の見せどころなのかなと思うのですが。

おやつ:
 そうですね。苦労している投稿者を見たい、その様子を楽しみにしている方もいるでしょうから、エンタメのひとつだと思っています。

──視聴者に苦労している様を見せるためのテクニックってどのようなものがあるんでしょう?

おやつ:
 画面分割がいちばん伝わりやすいと思っています。ただ、「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦 」で実際に編集してみたのですが、非常に大変だったので、できればやりたくないです。

ひと目でわかる地獄絵図。

──できればやりたくない(笑)。

おやつ:
 実際のゲームプレイより編集のほうが大変です(笑)。

 分割以外ですと、テイク数を表示するというのもわかりやすく大変さが伝わりますね。ただ、テイク数を数えるのも分割編集ほどではないにしろ大変なんです。でも、見ている方もどのくらいかかったかは知りたい情報だと思うので、こちらを多用しています。

──テイク数が多いと盛り上がりますもんね。動画の編集はおやつさんがやっているんですか?

おやつ:
 はい。編集は自分で全部やっています。

──1本の動画を作るのにどのくらいの時間をかけているんでしょう。

おやつ:
 どのくらい編集をするかで時間は変わってくるのですが、最近投稿した「ひたすら楽してロマサガ3リマスター」ですと、1パートに対して10~20時間くらい編集だけでかかっています。動画1分につき、実時間1時間でできれば早いほうだと思います。

──うひゃーー! そんなにかかってしまうんですね。動画は大変だ……。しかも「ひたすら楽してロマサガ3リマスター」は、週1ペースで更新されていましたから、毎週20時間くらい編集で持って行かれていたという……。

おやつ:
 投稿日が金曜の夜中だったのですが、金曜日に入ってギリギリに完成することが多かったです。おこがましいかもしれませんが、週刊誌に連載中の漫画家の気分でした(笑)。

──いや、もう想像以上に大変な作業ですね。画面分割の編集を入れると、時間どうなっちゃうんです? 

おやつ:
 画面分割に加えて、音MADの編集も加えた「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」のパイロヒドラ戦のパートは、画面分割の部分だけで5時間くらい、MAD全体では20~30時間くらいはかかっていたかと思います。パート10全体で多分60~80時間ぐらいです。ただ、これは特別というか、別物ですね。

 普段の動画作りにおいて大変なのが、ゆっくり解説を入れる作業なんです。文章さえ最後までうってしまえば、あとはだいたいテンプレ化されているので早いんですが、苦手なこともあって文章を考える時間がいちばんかかっていますね。

MAD部分の編集だけでも20~30時間にも及んだらしい。

──解説にそこまでこだわって時間をかけるのには何か理由が?

おやつ:
 自分の書きたいことを書いてしまうと、情報量がギチギチになってしまうんです。そうすると、どこが大切なのか、どこを見ればいいのかわからなくなってしまうので、ときには細かい説明をバッサリ切り捨てちゃうこともあります。

──あえて説明を簡略化していると。

おやつ:
 はい。そのゲームを昔プレイしていて、動画で久しぶりに触れた人でもなんとなくわかる。そのくらいの理解度で楽しめる解説を心掛けています。

「ひたすら楽して」シリーズの生まれ

──“縛りプレイ=苦行という常識を覆す”をテーマに、ゲームクリアを目指す「ひたすら楽して」シリーズですが、やはり、「楽して」という文言と実際の苦行とのギャップを見せるエンタメ的な意図があったんでしょうか。

おやつ:
 ある程度エンタメ性は意識していましたが、シリーズ1作目の「ひたすら楽してFF5」を投稿した当時、並行して投稿していた「【ロマサガ3】閃きだけで最少戦闘回数クリアに挑戦」に比べると、実際のプレイも編集も圧倒的に楽だったのはあります。

あくまでおやつさんの中で、かつ比較級であるが、本当に楽だったらしい。

──比較すると実質楽だったと。確かに『ロマサガ3』ではテイク数100超えの戦闘が当然みたいなところありましたが、「ひたすら楽して」だと、ひと桁だったり戦闘によっては1発クリアできていたり、桁がふたつくらい違いますもんね。

おやつ:
 そうですね。『FF』シリーズは、搦め手のような攻略方法が豊富で、それにハメてしまえばあとは勝利確定にできる戦闘が多いので、本当に楽でした。

──縛り条件を考える段階から「ひたすら楽して」を銘打つ予定でチャートを作っていたんですか?

おやつ:
 じつは、「ひたすら楽して」というタイトルは後から考えたもので、縛りを設ける段階から考えていたわけではないんです。

──そうだったんですか!?

おやつ:
 『FF』のやりこみプレイには多くの先駆者がいらっしゃるので、事前調査の段階でいろいろとリサーチをしていたんです。

 そのなかでもとくに、「極限低レベル攻略」をされていたにゅすけさんのレポートを参考に、「さらにそこからおもしろい条件を入れられないかな」と考えてオリジナリティを出したのが、のちに「ひたすら楽してFF5」と名付けるシリーズの条件設定でした。

──つまり縛り条件を考えているときも、実際のプレイ中も、「ひたすら楽して」という見せかたを思い描いていたわけではないと。

おやつ:
 はい。熟考に熟考を重ねてつけたタイトルではなく、動画制作中にタイトルをつけなきゃなってなったときに、「じゃあひたすら楽してでいってみようか」くらいの感覚でつけたものなんです。

──わりと軽いノリでつけていたとはビックリです。そういえば、パート1冒頭に挿入される嘘字幕OPでの「多分これが一番楽だと思います」は、いまやおやつさんの代名詞でもある言葉になっていますよね。

おやつ:
 ああ、『エースコンバット』の。そうですね、いつの間にかそんな感じに。

──あのOPってなんで作ろうと思ったんですか?

おやつ:
 理由はシンプルで、動画の最初の掴みとしておもしろいネタを入れたいなと思ったんです。

 当時、嘘字幕シリーズが流行っているほどではないですが、一部の界隈では人気で、ルール説明をする際にいい感じの構成だったので組み込んでみました。

見てるだけじゃなくてこっち(動画投稿の世界)にきて

──最近、ちらほら生配信もされていますが、今後は生放送にも力を入れていく気持ちはあるんですか?

おやつ:
 生放送で新しいゲームをプレイしているのは、今後のやりこみ動画を作るため、そのゲームを知るためにやっているところもあります。

──では活動じたいの軸が動画メインというのは変わらないと。

おやつ:
 これまで通りそうですかね。ただ、レトロゲームばかりだといつかはネタが尽きてしまうので、新しいゲームも取り入れていろいろと勉強していきたいと思っています。

 つぎにやろうとしているシリーズが「ひたすら楽してオクトパストラベラー」なんですが、それも生放送でプレイしてみて感触がよかったので動画化しようと思ったんです。

(画像はAmazon「オクトパストラベラー – Switch」より)

──えっ!? つぎのシリーズって『オクトパストラベラー』予定なんですか? それ言っちゃって大丈夫なやつです?

おやつ:
 大丈夫ですよ。『オクトパストラベラー』は周囲の評判を聞いて、やりこみに向いているゲームだとは思っていたんです。でも、どういうゲームか触ってみないことにはやりこみのネタも思いつかないので、生放送でプレイしてみたんです。

──なるほど。いや~~「ひたすら楽してオクトパストラベラー」楽しみです!

おやつ:
 ありがとうございます。じつは「ひたすら楽してオクトパストラベラー」は、biimシステムを使わずに作ろうかと思っているので、私的にも楽しみです。

──ええっ、それって何か理由が?

おやつ:
 biimシステムは、右枠に説明を入れて、下にはゆっくりがしゃべる文章を入れてとテンプレ化されているので、投稿者として楽なんですが、そればかりになってしまうと編集の幅も広がらないので、新しい見せかたに挑戦したいと思っているんです。

──ゲームのやりこみ系の動画ってbiimシステムってイメージが強いので、どんな見せかたになるのか想像もつきません。

おやつ:
 確かにニコニコではbiimシステムを採用している動画は多いんですが、YouTubeではあまりメジャーではないんです。

 視聴者の方の反応も違って、YouTubeは幅広い方が見ているので、ニコニコならもう不文律なネタも「これ何のネタ?」と聞かれることも多いです。

──そういう意味でも新しい挑戦だと。いまのお話も記事で書いちゃって大丈夫ですか……?

おやつ:
 大丈夫ですよ。ほぼ決まっているので。とは言いつつ、やっぱりダメだわってbiimシステムで作っているかもしれませんが(笑)。

──(笑)。では最後になりますが、視聴者の方や縛りプレイの世界に興味がある方に、先駆者であるおやつさんからメッセージをお願いできないでしょうか。

おやつ:
 さきほど申し上げた通り、10分の動画を作るのに編集だけで10時間から20時間かかってしまうくらい、動画を作るのは大変です。

 シリーズものを投稿しているときは、毎週この日までに編集をやらなきゃと締め切りに追われる気分にもなるんですが、それでも完成したものを投稿して、視聴者の方々から反応をいただくことはとても楽しいことです。

 私自身、おもしろい動画を見ることが好きなので、みなさんもぜひ動画を作ってみてください、というのがいちばん伝えたいですね。見てるだけじゃなくてこっちにきていっしょにやりましょうよ、と。

(了)


 レベルを上げない、装備も整えない、ときには自らの行動すら制限する……縛りプレイは普通に辛い。人間であればそう感じるのは当然だ。

 しかし、おやつさんは縛りプレイに挑み続ける。“おもしろい動画”を作るため、視聴者に届けるため。

 そのようにおもしろいを追求しているからだろう。おやつさんの動画は多くの方が視聴し、多くの反応に溢れている。そしてその反応がおやつさんのモチベーションになり、つぎの縛りプレイ動画投稿に繋がっていくわけだ。

 そして、おやつさんは誘う。「見てるだけじゃなくてこっちにきていっしょにやりましょうよ」と。妖精ではない、まるで悪魔の囁きのように。

▼おやつさんの挑戦シリーズ一覧▼
「おやつさん投稿動画マイリスト一覧」

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