史上最大のプロパンガス爆発「つま恋ガス爆発事故」。静岡のレクリエーション施設で起きた“開きっぱなしのガス栓”による悲劇を解説
ニコニコニュース / 2021年4月20日 18時0分
今回紹介する、ゆっくり亭さんが投稿した『史上最大のプロパンガス爆発事故『つま恋ガス爆発事故』【ゆっくり解説】』では、音声読み上げソフトを使用して、1983年に発生した静岡県掛川市のレクリエーション施設「ヤマハレクリェーションつま恋」でのプロパンガス爆発事故について解説していきます。
最大の犠牲者を生じたプロパンガス事故
魔理沙:
1983年、11月22日12時45分に静岡県掛川市のレクリエーション施設で発生したガス爆発事故なんだ。事故を起こした施設の名前が「ヤマハリゾートつま恋」というもので、近くで詠まれた平安時代の和歌の由来で名付けられた。群馬の嬬恋とは関係ない。
霊夢:
ヤマハの施設なのね。ヤマハなら管理がしっかりしてそうだけど。魔理沙:
つま恋は開業した翌年、フォークソング全盛期を築いた吉田拓郎と かぐや姫が夜を徹してコンサートを開催し、また歌手デビューの登竜門とされたコンテンスト「ポピュラーソングコンテスト(略してポプコン)の会場としてフォークソングの聖地として有名。このヤマハリゾートつま恋には満水亭というレストランがあった。満水亭は夏はバーベキューハウスとして、冬は鍋物を提供する和風レストランとして運用されていた。夏は満水亭から150メートル離れたガス貯蔵庫から地下に埋蔵したガス管を経て、店舗内のバーベキュー用のテーブルの床下に設置したガス栓からゴム管で床上へのガスを供給していた。
一方、冬は床に畳を敷き詰め、その上に2kg入りのガスボンベを置き、そこからガスを供給していた。
霊夢:
夏と冬で使うガスも別々なのね。魔理沙:
そこが悲劇の原因になってしまう。事故発生前の11月13日、夏季から冬季への模様替えを行ったが、その作業の過程において、作業員が調理器具をつなぐ末端のガス栓をしめずに器具の撤去してしまう。99箇所のうち、31箇所のガス栓が開いたままの状態となった。この工事期間中はガスの元栓が締められていたことから、このミスには誰も気づかなかった。模様替え後初営業日となった11月22日0時10分頃、調理場の湯沸かし器を使用するために元栓が開かれる。それと同時に工事のときから開かれたままのガス栓からガスが一気に漏出した。その時漏れたガスの量は爆発の時点で1日の平均使用量の2倍に達していた。
ガス漏れ警報器が作動し、作業員のひとりが責任者に電話連絡し、窓の開放や火元を切ることを指示したが、客への避難誘導やガスの元栓を閉めるなどの対処は行われなかった。店内にいた客もガスの臭いに気づき、タバコを控えた者、火を使わず仕出し弁当を食べた者もいた。0時40分頃、連絡を受けた責任者が満水亭に到着。責任者は湯沸かし器や2kg入りのガスボンベをチェックしたが……。
12時45分ごろ、漏れたガスが製氷機の火花に引火し、大爆発を起こした。このガス爆発により、客や従業員ら14名が死亡、27名が重軽傷を負った。
霊夢:
避難してなかったから犠牲者が多くなってしまったのね。魔理沙:
この死者14人というのは、プロパンガス事故の死者としては史上最多で、従業員の死者は2名で、12人は客が犠牲となった。犠牲になった客は、翌日からつま恋で行う新入社員研修の準備で来ていた自動車会社の社員6名と、そのアシスタントにバイトで来た立教大学の女子学生5人が含まれた。事故の現場となった満水亭は、1977年の開店後、ガス管を増設したが、液化石油ガス法で義務付けられている県知事への届出はなかった。開店後にも小規模の増設工事が行われた。ガス納入業者が事故の9ヶ月前の2月にガス管の検査を行おうとしたが、店舗側の協力が得られず、ガス抜きをした上での十分な点検は行われなかった。
また当店舗には緊急遮断装置が取り付けられていなかった。この事故を受けて、通産省は飲食店等に、今回の事故のように一度にガスが大量に流れるなどの異常が起きた際に、自動的にガスを遮断する構造になっている安全構造型ガス栓の設置を義務づけた。
またガス業界はこの事故を受けて、マイコン内蔵のガスメーターやガス漏れ警報器等の安全機器の導入が急速に進み、ガス事故の件数は急速に減っていった。つま恋はその後2016年に営業終了し、ヤマハは土地・施設のすべてをホテルマネージメントインターナショナルへ売却。現在はホテル マネージメントインターナショナルによる「つま恋リゾート彩の郷」として事業が行われている。
この事故では、川崎フロンターレやサガン鳥栖の監督だった松本育夫も自動車会社の人材開発担当として居合わせており、「四肢の複雑骨折と全身40パーセントの熱傷」という瀕死の重傷を負った。
息を止めて動く現役時代の練習のおかげで爆発の熱風を吸い込まず、気道や内臓各器官の熱傷が避けられたことで、事故現場から自力で脱出。救急車の中では「サッカーを続けたいので足だけは切らないでくれ」と懇願したと伝えられている。
LPガスは使い方によっては安全と危険とが背中合せであるという教訓を残した事故でした。より詳しい解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。
▼動画をノーカットで楽しみたい方は
こちらから視聴できます▼
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