オリジナルアニメ制作のために1年半かけて小説を作る!? 『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』に詰め込まれたオリジナルアニメの可能性
ニコニコニュース / 2021年7月1日 20時0分
TVアニメは大きく2種類に分けられる。マンガや小説などの原作が存在する原作つきアニメと、原作が存在しないオリジナルアニメだ。
しかし、4月から放送されたTVアニメ『Vivy -Fluorite Eye’s Song-(ヴィヴィ-フローライトアイズソング-)』(『Vivy 』)はそのどちらでもない。オリジナルアニメ制作にあたって、ゼロから小説が書きあげられ、それを原案としてアニメが作られた特殊な作品なのである。
独特な制作方法に関して、『Vivy』のアニメのシリーズ構成・脚本を手掛けた長月達平氏(『Re:ゼロから始める異世界生活』原作者)はこう語る。
「オリジナルアニメは原作ものと異なり、内容のおもしろさを先に判断できないのが難しい。一方、原作ものはネタバレを避けられない問題がある。原案小説を書くやりかたは原作もののアニメ化と同様の材料が先に揃い、それでいてネタバレを気にしなくてもいい。これはおもしろいじゃないかと」
また、本作の特異性はもうひとつある。
原案小説を長月氏ひとりではなく、アニメ『リゼロ』にて脚本を手掛けた梅原英司氏と共同で作られていることだ。普段それぞれ独立して活動しているクリエイターがコンビを組んで小説を作り上げるのは異次元の行為に見える。
『Vivy 』はなぜこのような特殊な制作方法で作られたのか。原案小説を共作し、それを元にシナリオを書き上げることのメリット・デメリットは何なのか。小説、シナリオ、完成した映像へと作品を練り上げていく過程で、さまざまな形でコミュニケーションが行われ、どのように作品が変化していったのか。
アニメ『リゼロ』の原作者・脚本家として出会ったふたりの才能と才能が掛け合わさり、「おもしろさ」に至る軌跡を、ぜひたどってみてほしい。
オリジナルアニメ制作にあたり小説を書くところから始める
──この作品は、原作のないオリジナルのアニメ企画ですが、最初にシナリオを書いていく通常の作りかたではなかったそうですね。まずおふたりが原案小説を書き下ろし、その内容を元に、あらためてアニメのシナリオを作り上げた。
長月:
そうです。オリジナルアニメを制作するうえで、まず原案として小説を書き、それをアニメ化する。企画を聞いたときは、珍しくておもしろい試みだと思いました。
ただ、やる前から薄々感じていたし、実際にそうでしたけど、とにかく時間がかかる。アニメの脚本の作業に入る前、小説を書くだけで1年半ぐらいかかったんです。
──1年半……作品によっては同じ時間で、脚本がほぼ完成するところまで行けますね。
長月:
そこからシナリオの作業に入って、作品が完成するまでで、大体5年くらいかかりました。それだけ時間がかかるのは、はっきりとこのやりかたのデメリットです。
梅原:
逆に言えば、デメリットは時間がかかることだけ。あとはメリットしかないです。オリジナルアニメではありますが、原作ものを手掛けるときと同じ、安心感がある。
長月:
原案小説を先に書く手間はかかるんですが、原作ものの脚本会議を始めるときとほぼ同じ材料が、オリジナルアニメでも揃う。
しかも、脚本を書く人間の原作の理解度は、最初から100%。そういう意味でいうと、スタートを深いところから始められはしますね。……最初に小説を書く労力に、メリットが見合っているかはわからないですけど(苦笑)。
梅原:
(苦笑)。しかもその間、その小説は関係者にしか読まれない。
長月:
そう、そこも厳しい。結局、原案小説は単行本で4巻分になったんですけど、それだけの文章量を世の中に発表することなく書き続けるのは、なかなかに孤独な作業です。
俺は梅原さんといい形で共同作業ができたからまだよかったけど、ひとりで書いていたら、精神的にしんどかったと思いますよ。発狂ものです。
──コンビで活動される小説家の方もときどきいますし、シナリオであれば、もともと多くの方のアイデアを集約して作り上げるわけですから共作もわからなくないのですが、普段はそれぞれご活躍されているクリエイターが小説を共作するというのは、かなり異次元の行為に思えます。
長月:
おっしゃる通り、普通はやらないことです。今回、梅原さんといっしょにひとつの作品を作っていくにあたっては、いつも以上に詳細なプロットを書くよう心掛けました。
ひとりで書く場合は「自分でわかっているから頭の中をすべて書かない」ことが多いんですが、共作の場合はそういうわけにもいかない。各エピソードの起承転結、その展開ごとの起承転結に至るまで16分割くらいには細かく構成を考えましたね。
実際に作ってみて身に染みて感じたのですが、俺は梅原さんがいっしょじゃなかったら、今回のように作品を作れなかったと思います。俺と梅原さんの相性がすごくよかったからできた。
──それは『Vivy』という作品作りにおいて、共作だからこそ化学反応が起きた、ひとりでは描けなかった展開やシーン、セリフが生まれたということでしょうか。
長月:
どちらかというと、アイデアの早出しができた印象です。俺と梅原さんは、好きなものだったり、作品の方向性が似通っていて、意見の相違からくるぶつかり合いがほぼないんです。
──「好みが似ている」というのは、たとえば好きな映画や小説、マンガが被っているんでしょうか? それとも、「こんな展開が好き」みたいなツボが被っている?
長月:
観ている映画だとかはあんまり被ってないんですよ。ただ、勧めてもらったものを見たら普通におもしろいと感じる。だから後者でしょうね。物語の勘どころの好みが近い。
「こういうことがしたい」と伝えると、「それをやるためには、こうするともっといいですよね」みたいな返事が来て、建設的に話し合いが進む。
もちろん、なかには大きく内容を変えるような提案をするときもあるんですけど、そういうときにも1を説明したら10わかってくれる。だから、書いたものを往復させる時間じたいはかかるものの、やりとりはスムーズでひとつの作業を50対50で分担して進められた感覚でした。
梅原:
基本的に、僕も長月さんも後ろから考えるタイプなんです。物語のオチ(結末)が決まっていて、そこに向かうなかで最適な構成、美しい構成を目指して考えていく。
その展開が結末にとっていいのか悪いのか、物語にとって最適なのかおもしろいのか、そこの判断の感覚が似ている部分があって、すべてを言語化しなくても、わかり合える、通じ合えるんだと思います。
長月:
あと、ひとりで考えていると、思いついたアイデアが本当におもしろいかどうか、わからないときがある。
たとえば、アニメ2話でヴィヴィのファンである霧島モモカという少女が飛行機事故に巻き込まれて亡くなってしまうシーンは、物語にとって、ヴィヴィにとって重要な意味を持つし、展開として絶対やるべきだと思いつつ、「もしかしたらそう思うのは俺だけなんじゃないか?」と不安になる気持ちもあったんですよ。
梅原:
わかります。そういう瞬間は、書いていると常にありますよね。
長月:
加えて、「俺がやりたいだけで、見てる側は全然望んでないのでは?」という考えが頭によぎるときもあって。そういうときに、「めっちゃいいです、絶対に残しましょう!」と言ってくれる人がいるのは、大きい。
だから今回は、自分がおもしろいと思うものを自信を持って、躊躇なく出しきれたと思っているんです。原案小説でも、アニメのシナリオでも。
作品に表れた長月さんの個性、梅原さんの個性
──物語の勘どころの好みが近く、物語の作りかたの考えかたも同じ。そんな長月さん梅原さんですが、逆に「それぞれの個性(カラー)が作品に出ていると感じた部分があればお聞きしてみたいです。
梅原:
それでいうなら、すべての話数のAパートの最後と、次回への引きですかね。いわゆるクリフハンガーと呼ばれる要素。そこの展開は、ほぼ長月さんの色というか、決断によって盛り込まれたものです。
長月:
そうですね。クリフハンガーは得意……というのもなんですけど、物語を作るうえで絶対にやらないといけないなと思っている要素なんです。
『Vivy』ではそこを重視したいと意識していましたし、実際にうまく機能してくれたと考えていたので、梅原さんにそう言っていただけるとうれしいですね。
梅原:
もう、経験が違いますよ。「小説家になろう」での連載は、今、どれくらい続いているんですか?
長月:
何話だろう……正確な数字はパッとわからないですけど、600万文字くらいは書いてます。
梅原:
600万文字……もう、僕からすると想像もつかない文章量ですよ。
長月:
そこまで続けていくためには、クリフハンガーで読者の興味を引き続けないといけない。たしかに、ウェブ小説の経験が、シナリオのその部分にはすごく生きています。それが自分の作品が多くの読者にウケた要因だとも分析していました。
──では逆に、長月さんから見て梅原さんのカラーがよく出ているところは?
長月:
1話あたりの映像の尺(時間の長さ)が限られているなかで、ドラマを最大限に見せるためのセリフの使いかたですね。
たとえば、アニメ4話の締めのところでヴィヴィがいう「……悔しいな」のひと言。完成したシナリオを読めば、そのひと言にどういう意図があって、何を見せたいのか、全部わかる。わかるんですけど、俺は書けない。
梅原:
書いたのは僕なんですが、ホン読み(脚本を読むこと)の場で「これは悔しいなでいきましょう」と背中を押してくれたのは長月さんなんですよ。
長月:
いや、俺に梅原さんの出す最適解は出せないので、「悔しいな」に対して、俺が悔しいなぁ……です(笑)。
俺はだらだら書きたくなっちゃうタイプなんですよ。それはさっきの話とは逆に、制限なく好きに書いていいウェブ小説をずっと書いてきたことの弊害なんですが。『リゼロ』(『Re:ゼロから始める異世界生活』)の現場でもめちゃくちゃ多かったんです、こういうこと。
宇宙を舞台にした「股旅もの」から時を超える「股旅もの」に
──公式サイトに掲載されている座談会では、長月さんにお声がかかった段階ではすでに「AI」と「歌もの」というテーマがあったとお話されていましたが、このテーマじたいはどなたから出てきたものなのでしょう?
長月:
それは梅原さんです。梅原さんが俺のところに話を持って来るにあたって考えてくれたアイデアです。
たしか、その時点でヴィヴィというAIの女の子はもういたはず。あ、でも、考えてみれば、そのアイデアがどこから出てきたのかって、ちゃんと聞いたことがなかったですね。
梅原:
長月さんに言われるまで、すっかりその流れを忘れていました(笑)。
長月さんにこの仕事の話を持って行くにあたって、簡単なものであっても、何かしらの成果物がないとさすがに失礼というか、話のしようがないと思ったんですよね。
そこで「AI」と「歌もの」というテーマが出てきて、当時はさらに「宇宙」の要素もあったんです。ヴィヴィというキャラクターが生まれたのは「宇宙」の要素からでした。
──宇宙の要素が美少女型のAIに繋がった……?
梅原:
ボイジャーのゴールデンレコードってありますよね?
──アメリカが進めていたボイジャー計画の宇宙船に積み込まれた、地球外知的生命体に向けたメッセージや知識を収録したアイテムですよね。
梅原:
そうそう。地球の文化や各国の大統領の挨拶を収録したあれが、人型になって宇宙を旅しているイメージを思いついて、それを「AI」と「歌」というお題に乗せたんです。
「ゴールデンレコードのような存在である人型AIが、いろんな惑星を回って、歌の文化を伝えている話はどうか?」と。企画の初期は、そんなふうに概要を説明していたはずです。
結局、そこから紆余曲折あったので、最終的にはボイジャー(Voyager)の頭文字からとって「ヴィヴィ(Vivy)」という、名前の要素くらいしか、企画に痕跡は残っていませんけど。
──今うかがった設定だと、もっとロード・ムービー的な内容にするおつもりだったのでは? たとえば『銀河鉄道999』みたいな。
長月:
そうです。『銀河鉄道999』や『キノの旅』みたいな、ロード・ムービーというか、いわゆる「股旅もの【※】」っぽい印象の企画でした。
※小説・演劇・映画などで、各地を流れ歩く博徒などを主人公にして義理人情の世界を描いたもの。
「Voyager」のアルファベットの数だけ、ヴィヴィにシスターズと呼ばれる姉妹機がいて、先に星に送り込まれている彼女たちをヴィヴィが回収する話にしたらどうですか? みたいな話を、そのときにしたのを覚えてます。
──わ、おもしろそうです。
長月:
で、宇宙各地をまわるとき、ヴィヴィ単体だときっと難しい。パートナーが必要だろう。宇宙規模のものすごい距離を冒険することになると、何千年、何万年というものすごい時間経過があるだろうから、そう考えるとやっぱりパートナーも人間ではなくAIだ。
宇宙船のコアユニットが、星についたら一緒に移動してついてくることにして、そのための端末……コアユニットの小型版のような、ふわふわとヴィヴィのそばに浮かぶ非人間型の相棒がいることにしたらどうか。そんな思考過程を経て、マツモトの原型にあたるキャラクターができた。
その段階で、マツモトの名前は開発者である博士に由来していて、博士とヴィヴィは毎エピソードの頭とおしりで惑星間通信を行う。通信で送っているのは日記的な文章で、その内容を通じて、ヴィヴィの成長というか、ちょっとした変化の積み重ねを描いていきましょうか……みたいなところまで、話が進んだんですよね。
そのときのイメージは、完成した『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』に比べて、もっとしっとりとした内容の物語でした。
──そこから企画が大きく変わったのは、どのような経緯で?
長月:
いろいろな惑星を旅するとなると、惑星ごとの美術の設定を作る必要性があり、「すごく大変ですよね」となり。それで宇宙の股旅ものは無理だと判断しました。
ただ、その段階でそれぞれのシスターズのエピソードの話の土台までは出来上がっていて、そのアイデアを捨てるのは惜しいし、AIの姉妹という設定も活かしたい。マツモトの存在もいい感じだし、どうしようかな……となって、じゃあ、惑星間を旅するのではなく各時代を旅する、時の股旅ものにすることに。
これなら場所は地球で変わらない。時代が変わったら、それはもう、お話の上では場所を移動するのと似たようものなので、お話を構成する要素はそのまま残せると思ったんです。
──とはいえ、ほぼ企画がひっくり返った形で、そこからご苦労があったのでは。
梅原:
まあ、オリジナル作品の企画会議では、話がひっくり返らないことはまずないので……(苦笑)。
長月:
今になって考えたら、地球を舞台にした時間もののほうが俺のこれまで書いてきた得意分野に寄せられるし、しっとりした雰囲気もなくなって、観る人がより楽しみやすい話にもなる。結果的にはいい判断でしたね。
「冴木がいりませんね」ふたりの判断が合致
──さきほどオリジナルアニメながら原作ものを手掛ける際と同じ感覚で作れたというお話が出ましたが、未発表の小説を原案とする『Vivy』ならではのユニークさ、他の現場との違いについて、これまで数々の現場で仕事をされてきた梅原さんの目からはどのように見えたのでしょう。
梅原:
原作が手元にある状態としては同じではあるんですが、その原作にあたるものが、まだ世に出ていない状態じゃないですか。だから、アニメのシナリオにするときの自由度も高い。
原作もののアニメを作る際に、原作のストーリーラインを大きく逸脱させるなんてことは基本的にやってはいけないことなんですが、『Vivy』に関してはそれができる。シナリオを書くのも原作者なわけですし。
長月:
世に発表されていない原作だから、変えても見る人にはわからないですからね。「原作と違うじゃないか!」みたいなことを言いようがない(笑)。
たしかにそう考えると、ちょっとおもしろいですね。原作がある状態でアニメの脚本が書けるけど、脚本会議の内容を受けて原作が変わってもいい。
梅原:
そうなんですよ。物語の結末が決まっているが、そこに至るまでの道筋を自由に変えていいというのは、原作ものとは明確に違います。そういう意味も込みで「原案小説」という呼びかたを選んだわけですしね。
──それこそ、梅原さんのご担当された原案小説の2巻は、内容がかなりアニメと違いますよね。
梅原:
70%ぐらい違うはずです、
──それはどういう判断だったんですか?
梅原:
2巻の冴木のエピローグを、アニメで描く尺(映像の長さ)がなかったんです。でも冴木が生き残ってしまうと、今後の展開に障りがある。それでどうするかを話し合ったら、長月さんがアイデアを出してくれました。
長月:
7、8、9話でヴィヴィの人格が一旦引っ込んで、別人格のディーヴァが出てこないといけないこともあって、何かしらの大きな転換をそこで迎えないといけない。それも理由になって、ふたりの判断が合致したんです。
梅原:
「冴木がいりませんね」。
長月:
「じゃあ、冴木、ヴィヴィの前で殺します?」みたいな。
──……長月先生、ひどい……(笑)。
長月:
いやー、言い出したのは俺ですけど、多分、俺が言わなくても梅原さんが言い出していたでしょう!
どっちが先に言ったかでしかないと、こういう話をするとき、俺はいつも思っています。モモカの飛行機も、俺が言わなくても、梅原さんがきっと落としてました。
梅原:
そこはちょっと異を唱えたいなぁ(笑)。あの展開は長月さんじゃないと出てこなかったと思います!
──マツモト役の福山潤さんも『Vivy』のラジオでおっしゃっていましたけど、あのシーンは冴木が死ぬだけではなく、ヴィヴィのポジティブな気持ちをあらわしたはずのセリフが最後のひと押しをするような流れになっているのも強烈で……やっぱりひどいですよ!(笑)
梅原:
福山さんは台本を読んだ時点でヘヴィだと感じたとおっしゃってくださってましたけど、でもアフレコ終了時には、まだあれほどヘヴィな印象でもなかった気がするんですよ。完成したものを見て、「こんなヘヴィになる?」って全員が思ったんじゃないかな。
長月:
人間とAIの血でそれぞれ手が汚れている描写は書いたけど、あそこまでじゃないですよねえ。
梅原:
右手と左手の色がはっきりと分かれた、あれだけショッキングな絵になったのは、あの回の絵コンテを担当してくれた助監督の久保雄介さんと、エザキシンペイ監督の力です。シナリオのト書きを、大きく膨らませてくれた。言いかたを変えれば、監督・助監督の仕業です(笑)。
長月:
そうそう。「冴木を殺す」というアイデアも、監督に言われたような気がしてきたなぁ……。
梅原:
白々しい!
長月:
この作品における俺は、ぶっちゃけ名義貸しですから(笑)。
──またまた、ご冗談を(笑)。
ヴィヴィの成長物語をわかりやすく描けたのはエザキ監督のおかげ
──しかし今の話は絵コンテ段階でのアイデアの追加でしたが、ホン読みの段階でも、おふたり以外の方のアイデアがシナリオに取り入れられていますよね。それで大きく変わったところはありますか?
長月:
ホン読みには基本的に、監督のエザキさん、それから助監の久保さん、WIT STUDIOの和田さんや大谷さん、そしてアニプレックスの高橋祐馬さんがいて、そこにWIT STUDIOのスタッフの方が何人かさらに加わる形だったんです。だいたい参加者は10人くらいかな。そのなかでも大きかったのは、エザキさんと高橋さんですね。
おふたりとも、とても謙虚な姿勢で視聴者の目線を考えている姿が印象に残りました。この作品はジャンルとしてはSFで、設定には難しいところもある。それをどこまで噛み砕いたらいいかは、俺や梅原さんにはなかなかわからない。
そんなとき、おふたりが「わかりにくいです」と言ったら、多分、視聴者にもわかりにくい。視聴者目線の指針になってくれたんです。監督のエザキさんはもちろん、高橋さんも数多くのアニメをご覧になっている方だから、本当はもっとわかっているはずなんですけどね。ありがたかったです。
梅原:
具体的に大きな変更点だと、展開が先に進むにつれて、ヴィヴィの表情が増えていくのは、エザキ監督のアイデアだったはずです。ヴィヴィが最初は敬語で話すのもそうか。ヴィヴィの成長物語としての側面をわかりやすくできたのは、エザキ監督のおかげです。
長月:
そうですね。エザキ監督は『Vivy』のストーリーの縦軸を強く意識してくださっていました。ただのオムニバス作品ではなく、どういうお話がやりたくて、観た人がそのお話を追う中で、ヴィヴィというキャラクターの何を見て、どこを楽しんで、何を喜べばいいのかを、細かく押さえてくださった。
この作品のヴィヴィの変化を楽しむ、成長物語としての部分には、エザキさんの意見がすごく入ってます。原案小説からアニメにするうえでのエピソードの取捨選択の方針も、ヴィヴィに影響を与える要素を残すことを優先にしたのは、監督のそうした思いがあったからです。
梅原:
あと、そうだ。タイトルを考えたのもエザキ監督ですね。「Vivy」という単語は、最初にお話したとおり、先に決まっていたんですけど、後ろに何かサブタイトルをつけたいですねとなったときに、「Fluorite Eye’s Song」というフレーズを出してくれたのは監督なんです。
長月:
カメラのレンズには蛍石が使われている、ヴィヴィが100年の旅で見て来たものの歌を作る作品なのだから、Fluorite Eye’s Songだ……という、理論武装もばっちりで、あれは驚きましたよ。「こんなちゃんとしたタイトルの決め方、ある?」と思いました。
──ヴィヴィの成長といえば、マツモトとの「バディもの」としての要素は、どなたの持ち味なんですか?
梅原:
そこは長月さんです。
長月:
そうですね。マツモトのキャラ付けについて、最初は俺だと思います。
──やっぱり。マツモトは長月先生のキャラ感があります。
長月:
それ、言われるんですよね。俺自身には全然そういう感覚ないんですけど、「キャラが『リゼロ』っぽい」とか。
梅原:
わかんないな。どういうことだろ。
──マツモトの多弁なところや、ちょっと捻った返しをするところは、『リゼロ』のスバルっぽいと感じました。
長月:
なかなか自分のカラーは分からないものですねえ。マツモトは要するに、企画が股旅ものだったころ、「股旅ものには主人公と違う見方をする相方がいなくてはいけない」と考えたから、ああいうキャラになったんです。
『銀河鉄道999』ならメーテルと鉄郎、『キノの旅』ならキノとエルメス。そう考えるとわかりやすいのではないかと。
あと、海外ドラマが好きでよく見るんですけど、最初は仲の悪いバディが、最後本物のバディになるのは、王道の展開じゃないですか。それもこの作品に盛り込みたかったんです。
──なるほど。
長月:
割とガチで、この作品は自分の好きなものを詰め込んでいるんですよ。お話もだし、キャラクターにしても嫌いなキャラはいなくて、なかでもマツモト、エリザベス、アントニオ、垣谷はお気に入りです。
各話のクリフハンガー的な要素も、自分が長い間ウェブで小説を書いてきて培ってきた技術を存分に発揮できて、ロジックの詰めかたとエモーショナルな要素のバランスもよかったんじゃないかと手応えも感じています。
もし、見てくださったみなさんの琴線に触れたのであれば、声を上げてくだされば、近いテイストの作品が今後も増えていくんじゃないかと。俺としては、また梅原さんと組んで、こういう作品を作りたいなと思っているので、ぜひ、応援してもらえたらうれしいです。
梅原:
画作りに関しても、いろんなスタッフが苦心してくれて、とにかくすごいものになりました。最終話まで見たあと、あらためて見返して、すごさをさらに感じてもらいたいです。
あと音楽。とくに歌ですね。神前 暁(MONACA)さんの素敵な曲に、只野菜摘さんが作品の内容と結びついた素晴らしいクオリティの歌詞をつけてくださった。歌詞を噛みしめながらもう1回見ていただけると、また見えかたが違ってくると思います。
長月:
『Vivy』はいつも以上にロジックを積んだ作品になっています。最後に人間とAIが戦争になり、その戦争をヴィヴィが歌で止める。そのオチに必然性をもたせるために、何をするか。作品の中で起きた出来事に、無駄はまったくないです。
▼『Vivy -Fluorite Eye’s Song- 』1話▼
▼『Vivy -Fluorite Eye’s Song- 』特別総集編▼
Blu-ray&DVD『Vivy -Fluorite Eye’s Song- 1』
●『Vivy -Fluorite Eye’s Song- 1』Blu-ray購入ページ
●『Vivy -Fluorite Eye’s Song- 1』DVD購入ページ
収録話
1話「My Code -歌でみんなを幸せにするために-」
2話「Quarter Note -百年の旅の始まり-」完全生産限定版特典
■三方背スリーブケース
■キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしデジジャケット
■特典CD
・オリジナルドラマ「Present for You」
(ヴィヴィとモモカの出会いを描いた書き下ろしストーリー)
・オリジナルキャラクターソング「Present for You」 ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
■脚本集(1話・2話・オリジナルドラマCD)
■特製ブックレット
■音声特典
・1話 スタッフオーディオコメンタリー
(シリーズ構成・脚本:長月達平×梅原英司)
・2話 キャストオーディオコメンタリー
(ヴィヴィ役:種﨑敦美×マツモト役:福山 潤)
公式サイト:https://vivy-portal.com/
公式Twitter:@vivy_portal
劇中歌収録アルバム「Vivy -Fluorite Eye’s Song- Vocal Collection ~Sing for Your Smile~」
●「Vivy -Fluorite Eye’s Song- Vocal Collection ~Sing for Your Smile~」購入ページ
■収録楽曲
01. Sing My Pleasure / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
02. Happy Together / 汎用型歌姫AI(Vo.コツキミヤ)
03. My Code / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
04. A Tender Moon Tempo / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
05. Ensemble for Polaris / エステラ(Vo.六花)・エリザベス(Vo.乃藍)
06. Sing My Pleasure(Grace Ver.) / グレイス(Vo.小玉ひかり)
07. Galaxy Anthem / ディーヴァ(Vo.八木海莉)
08. Elegy Dedicated With Love / オフィーリア(Vo.acane_madder)
09. Harmony of One’s Heart / ディーヴァ(Vo.八木海莉)
10. Fluorite Eye’s Song / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
オリジナルサウンドトラック「Vivy -Fluorite Eye’s Song- Original Soundtrack」
●オリジナルサウンドトラック「Vivy -Fluorite Eye’s Song- Original Soundtrack」購入ページ
神前 暁(MONACA)作曲・プロデュースによる、作品を彩る劇伴44曲収録。
キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしデジジャケット、三方背スリーブケース仕様。特製ブックレット封入。■収録内容
劇伴44曲収録
■商品仕様
・キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしジャケット
・三方背スリーブケース仕様
・特製ブックレット
©Vivy Score / アニプレックス・WIT STUDIO
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