「唐さんは電信柱の影から見守る女子高生のような人。繊細で観察眼がものすごい」代表作泥人魚公演
日刊スポーツ / 2024年5月5日 19時38分
劇作家唐十郎(から・じゅうろう)さん(本名大鶴義英=おおつる・よしひで)が4日午後9時1分、急性硬膜下血腫のため、都内病院で亡くなった。84歳。1日に自宅で転倒し、救急搬送されたという。
この日、唐さんの代表作の1つ「泥人魚」東京公演の初日公演が新宿・花園神社で行われ、劇団のファンらが数多く来場。唐さんの訃報を受けて来場した舞台関係者も多く、一般客と合わせて計350人以上の観客が来場した。
同劇団の元団員という50代の男性は、弔いの意味も込めて急きょ千葉から訪れた。唐さんの訃報には、昨今の状態から「知ってる人間は心づもりはしていた。関係していた人間からしたら、この劇団がどうなっていくのか気がかり」と話した。当日券を求める列を眺め「これだけ盛況なのを見たら喜ばしい。この戯曲と劇団が残っていくんだと感じた」と見守った。唐さんの人柄について「よく天才と言われていた。ネットを見ると武勇伝とか書かれているけど、ものすごく繊細な人。旧知の人から聞いた話で、『巨人の星』という漫画で星飛雄馬のお姉さんが電信柱の影から見守っている描写があったけど、唐さんは電信柱の影から見守る女子高生のような人。繊細で観察眼がものすごい。人を愛せる人だから人の物語が書ける。やりたい放題やる人なら、あの物語は書けない。人を愛する人だったのは事実」と故人をしのんだ。
唐さんはアングラ演劇の旗手と呼ばれ、状況劇場(88年解散)、劇団唐組を主宰し、屋外に設けた紅テントで、数々の芝居を上演した。「泥人魚」「少女仮面」「唐版・風の又三郎」など代表作多数。多くの演劇人が影響を受けている。
12年に自宅で転倒し、脳挫傷と外傷性脳内血腫で半年間入院。その後は舞台出演もなく公の場に姿を見せることも少なくなっていた。
◆唐十郎(から・じゅうろう)1940年(昭15)2月11日、東京生まれ。63年に状況劇場を旗揚げしたが、1作で解散。66年に状況劇場を復活させ、67年に看板女優だった李礼仙(麗仙)さんと結婚。88年に離婚して状況劇場も解散。89年に劇団唐組を旗揚げ。同年、再婚。69年「少女仮面」で岸田国士戯曲賞、82年「佐川君からの手紙」で芥川賞を受賞。12年に明大文学部客員教授に就任。長男は俳優大鶴義丹、次男は大鶴佐助。
◆アングラ演劇 60~70年代に席巻した小劇場運動で「アンダーグラウンド」の略。多くの演劇人に影響を与えた。寺山修司さんの天井桟敷、唐十郎さんの紅テント、佐藤信の黒テント、串田和美の自由劇場があり、代表的アングラ女優に李麗仙さん、新高恵子、吉田日出子、白石加代子がいる。
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