村上春樹氏「映画にするには短編の方が面白い」唯一、映画化希望の長編は「アンダーグラウンド」
日刊スポーツ / 2024年6月15日 19時53分
作家の村上春樹氏(75)が15日、母校の早大大隈記念講堂で、自身の短編小説を原作にしたフランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作の長編アニメーション映画「めくらやなぎと眠る女」(7月26日公開)のピエール・フォルデス監督と対談した。村上氏は、自身の作品を初めてアニメ化した同作について「正直に…2回、見ましたけど2回とも楽しめた」と高く評価した。
同作は短編小説を映画化したもので、村上氏は自身の作品を映画化することについて、短編を映画化する方が「面白い」とした上で、長編小説の映画化に「二の足を踏む」と本音を口にした。その上で唯一、映画化して欲しい長編として、1995年(平7)3月に発生したオウム真理教による地下鉄サリン事件の関係者62人にインタビューし、書き上げた97年のノンフィクション作「アンダーグラウンド」を挙げ「フィクションにする手もある」と語った。
「めくらやなぎと眠る女」は、音楽家でアニメーション作家のフォルデス監督が、村上氏の81年「かいつぶり」、86年「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、95年「めくらやなぎと、眠る女」、99年「かえるくん、東京を救う」「UFOが釧路に降りる」、02年「バースデイ・ガール」の、6つの短編を翻案した作品。フォルデス監督にとって初の長編アニメーション作品。
村上氏は、18年の韓国映画「バーニング」(イ・チャンドン監督)、濱口竜介監督(45)が実写映画化し、米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した22年「ドライブ・マイ・カー」を引き合いに「短編を映画にしてもらうのは、嫌じゃない。短編小説は、映画を1本作るには、監督自身のものを足していかなくてはいけない。そうすると、面白いものができる傾向がある」と語った。一方で「長編は、どうしても映画に収めるように引く。短編から意欲的なものが生まれる気がする」と、短編小説の映画化の方を望んでいると口にした。
その上で「僕の書いたものを、そのまま映画にするんじゃなく、何かを付け加えて新しいものにして欲しい、ということです」と強調。その上で「めくらやなぎと眠る女」を引き合いに「この映画を見て思ったのは、だんだん、僕がどういうものを求めているのかというのを、映画関係の人もも理解しだしているんじゃないかな? 割にピッタリ、やりたいことと、やって欲しいことが合っている。それは、すごく、すばらしいことだと思うんですよね」と笑みを浮かべた。
さらに「こういう流れというか、傾向が強まっていくと、いいなというふうに僕は思います。長編映画の映画化は結構、二の足を踏むというか」と続けた。その上で「長編で僕が唯一、映画にして欲しいのは『アンダーグラウンド』。最初の1作。あれは、映画にしてくれると、すごくうれしいな…難しいけど」と明言。映画化の話はあるか? と問われると「話は、ないです。いろいろな人のボイスが詰まっているから、面白い映画になる気がする」とリクエストした。
村上氏は「めくらやなぎと眠る女」については「アニメの映画見ないんです。どういうわけか興味が持てず…面白かったですね。ずっと昔に書いた短編集なので、覚えていない。次、どうなるか分からない」と絶賛。「映画のためにオリジナルに書いたのか、僕が書いたのか分からない。もちろん、分かるところはある。1番、最後に猫が出てくるシーンとか、書いていないところは分かる。面白かった」と評した。
今回は、早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)で開催される「初夏の文芸フェスティバル」で特別上映が行われ、そのポストトークとしてフォルデス監督と原作者である村上氏の対談が行われた。
◆「めくらやなぎと眠る女」 2011年の東京。東日本大震災から5日後、刻々と被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、置き手紙を残して小村の元から姿を消した。妻の突然の失踪にぼうぜんとする小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるために北海道へ向かうことになる。同じ頃のある晩、小村の同僚の片桐が家に帰ると、そこには2メートルもの巨大な「かえるくん」が待ち受けていた。かえるくんは迫りくる次の地震から東京を救うため、控えめで臆病な片桐に助けを求めるのだった。めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下…大地震の余波は遠い記憶や夢へと姿を変えて、小村とキョウコ、そして片桐の心に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは本当の自分を取り戻すことができるのだろうか。
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