「孤高」伊藤匠叡王、藤井聡太7冠は「自分を引き揚げてくれた存在」 信念を持って高みへ
日刊スポーツ / 2024年6月21日 18時48分
将棋の第9期叡王戦を制した伊藤匠叡王(21)が激闘から一夜明けた21日、甲府市内で記者会見に臨んだ。
今シリーズは4連覇とタイトル連続獲得23期を目指した藤井聡太8冠(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)に挑戦。最終第5局(20日、同市「常磐ホテル」)までもつれ込む熱戦の末、3勝2敗で初タイトルをもぎ取った。会見ではあらためて喜びを語るとともに、「孤高」と揮毫(きごう)した。
◇ ◇ ◇
伊藤の元には多くの祝福メールや連絡が届いていた。「少しずつ喜びが込み上げてきたかと思います」。実感をかみしめた。将棋界で誰もがなし得なかった「藤井からの初めてタイトルを奪った男」は、淡々とした様子で会見に応じた。
16年10月にプロになった同学年の藤井から、4年遅れてプロになった。その時すでに藤井は王位、棋聖の2冠。当時を振り返り「少しでも早く追いつきたいとの気持ちで頑張りました。同学年で2冠を取られている方なので、自分もそういった舞台で指したい」と語った。将棋に集中するため、通っていた高校は1年の1学期で退学した。
5歳のころに覚えた将棋。抜群の記憶力が盤上でも生きた。小3の1月、全国小学生大会準決勝で藤井に勝った。藤井少年が悔しさのあまり大泣きしたエピソードは有名だ。棋士として活躍し、露出が増えるにつれ「藤井を泣かせた男」と呼ばれ始めた。
プロデビュー後の公式戦では泣かされ通しだった。昨年10~11月の竜王戦、藤井と初めて迎えた頂上対決は4連敗。今年2~3月の棋王戦も3連敗。棋王戦の敗退直後に叡王戦の挑戦権を得た。今シリーズでは「熱戦をお見せしたい」と全局角換わりを採用した。「戦型に対する理解が深まっていったと感じています」。それが対藤井戦の初白星どころか、叡王獲得につながった。
伊藤にとって、藤井は「自分を引き揚げてくれた存在と思っています」という。8冠の牙城を崩して、ほんのちょっぴり恩返しができた。
叡王獲得記念に「孤高」と揮毫(きごう)した。プロになってからよく書いている。「しっかりと信念を持って、高みを目指していくと考えています」。タイトル保持者になっても、思いは変わらない。【赤塚辰浩】
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