能登半島地震から半年 依然、手つかずの地区も「焼け野原を見るたび、戦争があったみたいって」
日刊スポーツ / 2024年7月1日 7時0分
元日に石川県の能登半島を襲った地震から今日1日で半年。輪島市や珠洲市の火災跡にあった焦げた臭いはなくなり、地面には草が生い茂る。被災した建物の解体や道路の復旧が進む一方、いまだ手付かずのがれきが残る地区も多い。地震直後の大火で大部分が消失した「輪島朝市」にほど近い輪島市鳳至町下町で民宿「寅さん」を営む寅松征子さん(76)に平山連記者が話を聞いた。
◇ ◇ ◇
「焼け野原を見るたびに思うのよ。まるで戦争があったみたいって…」
寅松さんが、対岸を見つめボソリつぶやいた。視線の先には日本三大朝市の1つ「輪島朝市」。かつての面影はそこにはない。元日に発生した能登半島地震から半年。幼い頃から慣れ親しんできた故郷はどうなるのか。心配が尽きない。
市内では最大震度7の揺れが襲い、寅松さんも約2カ月間にわたって市外へ避難した。民宿へと戻ると、焦土と化した街の姿に言葉を失った。特に悲惨だったのが、地震直後の大火で大部分が焼失した輪島朝市だ。約240棟が焼け、焼失面積は約4万9000平方メートル(消防庁まとめ)。がれきの山々が雨風にさらされ、赤茶色に次第にさびれていく。そんな光景に「戦後生まれの私は戦争経験はないけど、テレビで見とる戦地の雰囲気と重なった」。やりきれなさが募った。
生まれも、育ちも輪島だ。ともに歩んできた自負がある。19歳で結婚して魚屋を営む夫の実家に嫁いだ。観光客向けに市場で取れた新鮮な魚料理として振る舞うと評判になり「ブリや小アジとか普段私たちが食べている魚を刺し身や焼いて出すと、すごく気に入ってくれて」と地域の魅力を再発見した気がしてうれしくなった。もっと多くの人に輪島を知ってもらいたいー。観光客のニーズにさらに応えようと、30年ほど前に民宿の営業を始めた。
新型コロナ禍で営業自粛の窮地を味わった。なんとか切り抜けた直後に、今度は未曽有の自然災害に見舞われた。建物の損壊が激しく市内の宿泊業者の多くがいまだ営業を見合わせる中で、4月から民宿の営業を再開。主に復旧作業で来た県外者を受け入れてきた。「辞めることも一度は考えたけど、泊まれるところがないと復旧で来てくれた人たちに申し訳ないじゃない」。震災直後から多くの人に励まされた。今度は自分が応援する番。できることをやろうと決意を新たにした。【平山連】
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