今村ねずみ ラストコンボイに込めた思い「今まで応援してくれたファンにささげたい」
日刊スポーツ / 2024年7月18日 7時23分
<情報最前線:エンタメ 舞台>
今村ねずみ(66)が1986年から主宰し、ビートたけしに「死ぬまでに1度は見るべき」と言わしめた「ザ・コンボイ・ショウ」が、26日開幕の「ONE DAY~Last Run! Run!! Run!!!~」(東京・恵比寿ザ・ガーデンホールなど)で38年の歴史に幕を引く。「走り出したら止まらない」を合言葉に駆け抜けてきた道のりと、ラストコンボイに込めた思いを聞いた。【梅田恵子】
◇ ◇ ◇
陽性でパワフルな語り口は、ラスト公演を控えても変わらない。「卒業というとアイドルグループみたいで嫌なんですけど(笑い)」と照れながら「最後の公演は、今まで応援してくれたファンにささげたい。僕たちが決めたゴールと、走り切った姿を見届けてもらいたい」と熱く語る。
ゴールのイメージについては、数年前からオリジナルメンバーの瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、徳永邦治と話し合ってきたという。「どこかでちゃんとゴールを決めて最後の公演ぶちまけた方が、自分たちの美学としていいんじゃないかと。なんとなく続けて、振り向いたら誰もいなくて自然消滅、みたいなことでは、お客さんに感謝を伝えられない」。昨年の公演が終わったタイミングで「次を最後に」と決めた。
出演者のリアルを盛り込んだ1本のストーリーの中に、芝居、歌、ダンス、タップ、笑いなどさまざまなエンタメを詰め込んだ唯一無二の演劇が「コンボイ・ショウ」の神髄だ。ラストを飾る新作は、若者たちのオーディションに現れた「5人のおっさん」たちの物語。彼らはなぜオーディション会場に行ったのか。フィクションとノンフィクションが交錯する中、彼らだから表現できるアツい物語が展開していく。
38年間、作、構成、演出、出演でグループを率いてきた。「最後は自分の好きなように作らせてくれ」というステージは、「夢だった」というミュージカル。英ウエストエンドや米ブロードウェーで山ほど作品を見てきた。長いキャリアの中でため込んできたオリジナル楽曲をすべて織り込み、作品にした。
「コンボイ・ショウの最初で最後のミュージカル。既製品じゃなく、18曲くらい、全部自分の言葉とメロディーです。ずうずうしいでしょ(笑い)。総勢15人くらいになりますが、出演者たちの生きざまが見えるコンボイ・ショウのスタイルを、最後の最後までやり倒したい」。
38年の道のりを振り返り、「40年近くも続けるなんて思ってなかった」と笑う。テレビのホームドラマが好きで、高卒後に俳優を目指して上京。野田秀樹氏の「夢の遊眠社」の研究生となるが、2年ほどで限界を感じて退団。赤坂のショーパブに勤務しながらタップダンスなどを学び、現在の基礎を築いた。
86年の初演について「劇場借りて、自分でチラシ作って、チケット手売りして。勉強もなしに始めて、今思うと怖いもの知らずというか、無知の力です(笑い)」。「コンボイという名前も、映画のCMを見て適当につけたので、最初は愛着すらなかった。でも、頑張って作ったらお客さんが『次いつやるの?』って言ってくれて、やっていいんだと逆に驚いて。今みたいなSNSの反応じゃなく、生で見たお客さんの反応。そういうありがたい応援に支えられて、ここまで来られた」。
38年、1人でも多くの人に見てもらいたいと続けてきた。「最後だから、『この公演で新しいお客さんを増やしましょう』というのはもうなくて(笑い)」。「僕たちの芝居ありき、僕たちのドラマありきのエンターテインメントで、今まで応援してくれたお客さんへの感謝と、『これが最後にお届けしたい作品です』というものをお見せしたい。悔いのない、最後のセッションをしたいと思っています」。
■エンタメ志向の原点は「シャボン玉」クレイジー
38年にわたり「ザ・コンボイ・ショウ」を率いた今村のエンタメ志向の原点は、60~70年代に放送された「シャボン玉ホリデー」など、テレビ黄金期を彩った番組の数々だ。
「『シャボン玉ホリデー』のクレイジーキャッツが本当におしゃれで。あれだけギャグで笑わせているのに、彼らはジャズバンドだから、ジャズ演奏するとすごくかっちょよくて、音楽と笑いがある世界がとにかくすてきだった。ドリフターズもそうですよね」。各局の看板である歌番組も華やかで、大きな影響を受けたという。
ホームドラマも全盛期。「木下恵介アワー」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などの大ヒットドラマや、倉本聰、山田太一作品など、夢中で見た番組の数々が俳優業を志すきっかけになった。中高の時代は、小さい映画館でビートルズ映画特集、ミュージカル映画特集、チャップリン特集などをよく見たという。「テレビの中や、スクリーンの中の人たちは別世界の人という感じでしたが、東京に行けばなんとかなると思って上京したのがすべての始まりです」。
■コンスタントにトレーニング
エネルギッシュな活動を支える体力づくりには余念がない。「寒い時期はホットヨガをやっていましたし、春以降はピラティスをやっています。最近は初動負荷トレーニングも始めました。特に今年になってからは、元日から1日も欠かさず毎朝40分歩いています。若いころはスキマで運動という感じでしたが、やはり老いを感じるようになったここ数年は、コンスタントにトレーニングをするようになりました」。
◆ザ・コンボイ・ショウVol.43「ONE DAY~Last Run! Run!! Run!!!~」 威勢よくオーディション会場に現れた5人のおっさんたち。「俺たち、魂BOYSだけど、俺たちのDNA受け取ってくれる?」。若者たちがあぜんとする中、最後のセッションの火ぶたが切って落とされる。作・構成・演出・音楽今村ねずみ。東京公演は26日~8月4日まで、恵比寿ザ・ガーデンホールで。大阪、名古屋でも公演。
◆今村ねずみ(いまむら・ねずみ)1958年(昭33)6月11日、札幌市生まれ。85年、フジテレビ系「笑っていいとも!」の2代目「いいとも青年隊」に。86年、自ら作、構成、演出、出演で「THE CONVOY」を立ち上げ主宰。北野武監督作「菊次郎の夏」(99年)に出演して話題を集めたほか、19年にはSTU48船上公演に参加するなど幅広く活動。09年、第35回菊田一夫演劇賞受賞。
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