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江口のり子、芝居と歩む現在…好きなことがやれているのが何よりの幸せ 欠くべからざる存在に

日刊スポーツ / 2024年9月1日 8時0分

通常、インタビュー記事の撮影時には、ポーズや表情などをいろいろリクエストするのが普通ですが、江口のりこさんと対峙(たいじ)した瞬間、ありのままのたたずまいに勝るものはないと感じました(撮影・野上伸悟)

2024年は、江口のりこ(44)の1年と言っても過言ではないだろう。映画は主演3本、出演を加えれば5本が公開。その3本目の主演映画「愛に乱暴」(森ガキ侑大監督)が8月30日、全国で公開された。夫の無関心さに耐える中、不倫まで発覚するなどして追い詰められ、壊れていく主婦を危うくも美しく演じた。映像、舞台の世界において、欠くべからざる存在となった江口の今に迫った。【村上幸将】

★「名もなき毒」で共演

「愛に乱暴」で演じた桃子は、夫に顧みられず、不倫相手に妊娠までさせたと告白される妻だ。夫の真守を演じた小泉孝太郎(46)とは、13年の小泉の主演ドラマ「名もなき毒」で共演。前回も今回も、小泉演じる男性を追う役どころだ。

「だんなから求められないって、はっきり分かっているはずなんですよ。でも、そういう自分の思いも何もかも日常になっているから、はい、やめたってできない。自分の居場所がない…それは、きついですよ」

「桃子が楽しそうにすればするほど俺はつまんないんだよ」。そんな妻にとって絶望的な言葉を浴びせられるシーンもあったが…。

「試写を見て、ちょっと笑っちゃったし何人か笑っていたんですよ。小泉さんの持つ空気だと思うんです。ちょっとした、こっけいさがあったりする。そこが魅力だと思いますね」

吉田修一氏の原作を愛するからこそ、映画化に重圧を感じていた。

「すごく面白かったという強烈な思いが、本当に大きなプレッシャーだった。原作は、桃子がいろいろな女性と出会う中で自分の気持ちを確認するというのが面白さとしてあったけども、脚本はそぎ落としてシンプルになっていた」

一方、物語の流れに沿って撮影する順録りがほぼなされたこと、真守の実家やはなれが実際の家だったことは大きな助けとなった。

「心情は追いやすくなった。実際壊されていくもの(家)を撮影の中で見られたのも良かった。本当のことを見ている私の感情は本当だと思えるのは強い」

その裏に芝居はウソをつくものという自覚がある。

「役をやるんだけど私じゃない、私の肉体から出ている言葉じゃない…でも、そのようにやるのが難しい。自分の力だけじゃどうしようもなく、演出家や監督がやっぱり助けてくれるものなんだと思っています」

★柄本明の絶対的影響

芝居を志したのは、5人きょうだいでお小遣い制もなく中学卒業後にアルバイトを重ねる中で通った、神戸の映画館だった。

「中学3年の1学期に部活が終わった途端、本当に自分にとって楽しいことがなくなった。受験しないって決めていたから、勉強もしないし。それで映画を見るようになって。映画の中の人物…役者は、いろいろなことをして、すごく楽しそうって思った。私の日常はこんなに退屈だけど、この中にいる人って、いろいろ楽しいことができる。憧れたんでしょうね」

上京し、19歳の誕生日に柄本明(75)が座長を務める劇団東京乾電池に入所し研究生になった。新聞奨学生になり奨学金を前借りして入所金を払い、風呂なし、トイレ共同のアパートに4年住んだが幸せだった。

「お風呂がなかったら、しょうがない…ないもんは、ないですからね。地元で、うどん屋などバイトしては辞め…の生活が本当にしんどかった。東京に出て好きなことをやれているのが何よりも幸せでした」

座長の柄本は、初対面から、とにかく怖かった。

「そこ(劇団)が初めて芝居した場所で、芝居を教えてくれたのが柄本さん。初めて稽古場に来た時、メチャクチャ怖かったですもん。こんな怖い人間、見たことないくらい。今もその劇団にいて柄本さんから習うことはあるし。絶対的に影響は受けていますよね」

そこで「やっぱり好き。辞めようとも思わない」芝居の魅力に取りつかれた。

「映画がやりたいというきっかけで劇団に入ったんですけれど、学ぶことって舞台。あれ? 1つの公演に向けて稽古をやっていくのってメチャクチャ面白いって思った。何か答えのない哲学がある。すごい緊張するし、舞台に立つと普通に歩けて『こんにちは』と言っているのが途端にできなくなったり。そんな自分もすごく面白かった」

「やりたかったことを忘れていた」映画と接点ができたのは約2年後だった。

「『オーディション、行って』と言われたのが、三池崇史監督の映画(02年『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』)で受かった時に『そういえば私、映画やりたかったんだ』って久しぶりに気付いた。映画は映画で、初めてやったらメチャクチャ面白いと思ったし」

★一歩一歩ひたむきに

4月公開の「あまろっく」(中村和宏監督)でリストラされ実家暮らしする39歳の独身女性、7月公開の「お母さんが一緒」(橋口亮輔監督)では、美人の妹2人にコンプレックスを感じる長女を演じた。

「結婚もせず、親から早く孫の顔、見せてよ? と言われるような、まさしく自分の、今の年齢の役が来るのも自然なことだと思っています。(仕事は)パッと来たものは今、それやりなさいと言われていると思ってやりますもん。目に見えないものに流されている感じは、すごくあります」

9月8日には東京・PARCO劇場で舞台「ワタシタチはモノガタリ」も開幕と、舞台、映像ともに求められる立場になったからこそ、思うところもある。

「難しいことは言わないようにしているんです。表に出る仕事をしている立場だからって何でもかんでも答えるわけじゃないというのを知っていて欲しい」

そんな今の自分を、どう見つめているのだろうか。

「家があって、仕事があって、仲間もいて…これ以上ないぞというくらい幸せですよ。基準って、自分が決めるんでしょうね。あれがない、これがないと言ったら、ないものもたくさんある。でも、これもある、あれもあると言えば、いっぱいある。でも今、すごく幸せだと思っています」

今後も芝居に軸足を置く人生を続けるのだろうか?

「19歳で研究生になって今、44歳ですけども19歳から変わっていない。信じられない。いつの間に、こんなに月日が流れた? という感じ。もう60歳になっている、うそぉ…みたいに気が付いたら60代になっているような気がします。他に何か興味のあることがあったら、そんな風には思わないのかな。別にないんですよ、他にやりたいことが」

静かに、穏やかに1つ、1つ、紡ぐように言葉を口にする。それは目の前のこと、1つ1つに真剣に向き合い、一歩、一歩、ひたむきに歩いてきた、江口のりこの生き方の表れだろう。

▼小泉孝太郎(46)

「名もなき毒」で精神的にも、本当に追い詰められたんですね。また今回も追い詰められて。江口さんが「やっぱり、ご縁がある。10年に1度のサイクルで私は孝太郎さんを追い詰めている」と。それが僕はすごく、うれしくて。芸能界って、会うこともありそうで奇跡的なこと…それが夫婦役で、しかも、また僕は追い詰められる。本当に何か巡り合わせというか…自分自身、また10年後が楽しみですよ。

◆江口のりこ(本名・江口徳子=えぐち・とくこ)1980年(昭55)4月28日、兵庫県明石市生まれ。02年「金融破滅ニッポン 桃源郷の人々」で映画デビュー。04年「月とチェリー」(タナダユキ監督)で映画初主演。20年のTBS系ドラマ「半沢直樹」の国土交通大臣・白井亜希子役が話題に。21年のテレビ東京系「ソロ活女子のススメ」で民放連続ドラマ初主演。同年「事故物件 恐い間取り」(中田秀夫監督)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞。170センチ、血液型O。

◆「愛に乱暴」

初瀬桃子は夫真守(小泉孝太郎)の実家のはなれで暮らす。しゅうとめの照子(風吹ジュン)に重圧を感じ、真守からは関心を寄せられず、子どもを望むもベッドで背を向けられる。不倫相手を妊娠させたことまで告白される。

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