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ファッション界の至宝はなぜ転落したのか…「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」

日刊スポーツ / 2024年9月16日 7時0分

(C)2023 KGB Films JG Ltd

決してファッション通というわけではないが、ファッションを題材にした作品はどれも興味深く見ている。「プラダを着た悪魔」のカリスマ編集長、「最強のカリスマ」に映し出されたヴィヴィアン・ウエストウッドの素顔…。フィクション、ドキュメンタリーを問わず、この世界のプロ意識と個性はどれも突き抜けている。

「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」(20日公開)は、本人のインタビューを軸に典型的とも言えるこの世界のカリスマに迫ったドキュメンタリーだ。

85年のロンドンコレクション・デビューを皮切りに10年後にはジバンシィのデザイナーに抜てき。翌年にはハイブランドの中でも頂点と言われるディオールのデザイナーに上り詰める。

が、2011年にパリのカフェで隣り合わせたカップルに反ユダヤ主義的暴言を吐き、ヘイトクライムで有罪。ディオールを解雇され、勲章も剥奪される。

文字通りの天国から地獄。その地獄から13年の年月を経て、自身が暴言の背景を明かしているところがこの作品のミソだ。

栄光の軌跡と転落を映した記録フィルムも折り込まれ、NYタイムズやワシントン・ポストのファッション担当記者らに加え、「プラダ-」のモデルとなったヴォーグ誌のアナ・ウインター編集長も登場する。

ガリアーノ自身が「ぶっ飛んだよ」と明かすお気に入りの映画、アベル・ガンス監督の「ナポレオン」(1927年)の映像が随所に挿入され、ジェットコースターのような人生が英雄ナポレオンのそれに重ねられる。

「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を取り、フィクション作品でも評価の高いケヴィン・マクドナルド監督らしく、多様な要素を滑らかに織り上げている。頂点に止まるための過酷な日々にさいなまれ、壊れていく様子が、見事な編集で浮かび上がる。

ガリアーノが作り上げるファッションは、素人目にも衝撃的で、どれも美しい。多忙の中を「取材旅行」に出掛け、各地で得たひらめきを鮮やかに反映させていく。彼ならではのこの「転写作業」こそ天才たるゆえんのように感じた。一方で、関係者の1人が明かしたように「美」の背景には興味を持たず、「表面しか見ない」のも事実で、それがあの暴言騒動の一因のように思えた。美意識の一端なのだろう、ジムで体を鍛え、ナルシシストぶりを隠さない。

ちょっと前の作品になるが、ラクロワがフィーチャーされた「クレールの刺しゅう」(05年)では、ファッション界におけるお針子さんの存在の大きさが印象的だった。今回の記録フィルムの端々には、ガリアーノが彼女たちから慕われている様子がうかがえ、意外に「いい人」の一面も垣間見える。

そんな彼がなぜ? あのヘイト発言の理由は、最後に彼自身の口から明かされる。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

※「クレールの刺しゅう」の「しゅう」は糸ヘンに粛の旧字体

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