「侍タイムスリッパー」1館公開から1カ月で全国100館超拡大「みんな、泣くんです」俳優陣驚き
日刊スポーツ / 2024年9月14日 20時32分
8月17日に全国1館で公開後、口コミで話題を呼び前日13日から全国100館以上で上映が始まった映画「侍タイムスリッパー」(安田淳一監督)全国拡大公開記念舞台あいさつが14日、東京・新宿ピカデリーで行われた。
「侍タイムスリッパー」は、会津藩士の武士・高坂新左衛門が、落雷によって現代の時代劇撮影所にタイムスリップし「斬られ役」として生きていく姿を描いたコメディー映画。京都で米作り農家を営みながら映画製作を続ける、安田淳一監督(57)が脚本、原作、撮影、照明、編集、VFX(視覚効果)整音、タイトルデザイン、タイトルCG製作、現代衣装、車両、製作など1人11役以上を務め、わずか10人足らずのスタッフとともに製作した。「自主製作で時代劇を撮る」という無謀な試みに「脚本が面白い!」と、日本の時代劇製作の中心地・東映京都撮影所が特別協力した。
8月17日に“インディーズ映画の聖地”と呼ばれる東京・池袋シネマ・ロサ1館のみで封切られて以降、評判が評判を呼んだ。その反響を受けて、ギャガが配給に乗り出し、13日から東京・新宿ピカデリー、TOHOシネマズ日比谷など100館以上の全国拡大公開が始まった。
高坂新左衛門を演じた主演の山口馬木也(51)と、助監督の山本優子を演じた沙倉ゆうの(44)の目は、登壇時から潤んでいた。沙倉が「ここから見る景色が…感無量です」と声を大にして感謝し、言葉を詰まらせると、山口は「ゆうのさん、よく泣くんで…みんな、泣くんです。この映画、愛してくれているんだと思うと…涙腺が緩むんですよ」と声を震わせた。「(全国拡大上映が)あまりにも速い速度なので…一同、困惑。全国でも大丈夫だよ、信じていると話して、ここまで来ました。この作品がどのように成長するか分からないけれど…見守って欲しい」と客席に呼びかけた。
風見恭一郎を演じた冨家ノリマサ(62)も「1館から上映された1カ月で、ここまで来て…夢の中にいるよう。役者として、こんなにうれしいことは、ありません」と現実に大ブレイクしていることが、信じられない様子だった。「ここまで来ると、みんな思っていない。この作品が世に出るかも分からなかった。上映が決まって、日の目が当たるよね、と言ったら…」と上映すら、危うかったと明かした。撮影所所長・井上を演じた井上肇(63)も「どんどん広がっていることを、ひしひしと感じております。まだまだ歩いて…走り続けられるように」と感激した。
安田監督は「京都で映画とお米を作っています」と笑顔であいさつした。そして「俺(映画製作を)1人でやっていたなと。4月に追加撮影も行った。完成したの、6月です」と感慨深げに振り返った。
製作スタッフが少ない中、助監督役を演じた沙倉は、撮影現場でリアルに助監督の役目を務めたという。「(撮影現場に)スタッフとして入るのは初めて。助監督ができていたか分からないですけど、小道具…刀の管理で、いつも現場にいてコミュニケーションを取っていた。全員、仲良く映画を作れたことが、うれしかった」と撮影を振り返った。冨家は「ものすごい小人数だから、チームワークが良かった」と笑みを浮かべた。
この日は、山形彦九郎役の庄野崎謙(36)と斬られ役俳優・安藤役の安藤彰則(55)も登壇した。
◆「侍タイムスリッパー」時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた瞬間、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知りがくぜんとなる新左衛門。1度は死を覚悟したものの、やがて「わが身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくために撮影所の門をたたく。
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