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「覚悟」と「ドキドキ」荘田由紀が挑む7年ぶり舞台 結婚、子育て経験して復帰 朝倉摂演じる

日刊スポーツ / 2024年10月3日 7時51分

新しい舞台への希望を胸に稽古に励む文学座の荘田由紀(撮影・足立雅史)

<情報最前線:エンタメ 舞台>

荘田由紀(41)が10月28日初日の文学座公演「摂」(東京・紀伊国屋ホール)で7年ぶりに舞台出演する。宝塚歌劇団出身の女優鳳蘭(78)の次女で、座員になった27歳の時に文学座の代表作「女の一生」に主演したが、その後、結婚・子育てで舞台から遠ざかっていた。「摂」は舞台美術家として1600本以上の舞台美術を手がけた朝倉摂さんの半生を描いた作品。摂役で主演する荘田に久々の舞台に挑む意欲を聞いた。【林尚之】

    ◇    ◇    ◇

9月下旬、けいこ初日に取材した。

「ドキドキしています。今は小さな子供たちの下僕みたいな生活だったから、稽古場で何をどうしていいのか分からないんです」

荘田は「女の一生」に布引けい役で主演した。文学座を引っ張った大女優杉村春子さんの代表作で、荘田の挑戦が話題を呼んだ。その後も名作映画の舞台版「ローマの休日」にも主演したが、12年に結婚し、子供も生まれたため、17年からは舞台から遠ざかった。

「いろいろやらせていただいているうちに、最初に抱いていた芝居に対する気持ちと、やっていることにズレが出てきて、疲れが出てきました。リセットしたいという気持ちと、子供がほしいという気持ちが同じタイミングで起こりました。私は不器用で仕事と子育ての両方はできないし、中途半端になってはダメだと思って、子育てに専念することにしました」

小学3年と幼稚園年長組の男の子の子育て中だが、「摂」出演の依頼があった。

「お話を頂いた時、いろいろ迷いました。やりたい気持ちもあったけれど、ブランクが長かったので怖さもありました。でも、この瞬間を逃がしたら、次はないかもしれない。自分の中の足かせが多すぎるし、清水の舞台から飛び降りるような覚悟でやろうと思いました。主人に相談したら『やってみれば』と言ってくれたし、義父母も全面協力してくれます」

「摂」の主人公朝倉摂さんは日本を代表する舞台美術家で、「日本のロダン」と呼ばれた彫刻家朝倉文夫の長女として生まれた。17歳で日本画家となり頭角を現した。戦後、旧態依然とした日本画に危機意識を抱き、ピカソに触発されて女性裸体を描くなど、新しい日本画家の道を突き進むが、50年代に激動する日本社会との壮絶な闘いに身を投じる。今回の舞台では少女時代から日本画家時代までの朝倉さんの半生を描いている。

「摂さんは若い頃からいろいろなことと闘ってきた。自分の芯がしっかりしていて、まったくブレがない。自分がやりたいことに向かって突き進み、何があってもへこたれない。なかなかできないことだと思うし、自分にない部分が多いかな。強いあこがれがあります」

48歳の時に舞台美術を学ぶために渡米。「過去を振り返るのが大嫌いだった」朝倉さんは日本画を封印し、舞台美術家として専念。商業演劇から新劇、歌舞伎、オペラと独創性に満ちた舞台美術を作り続け、蜷川幸雄演出「近松心中物語」、市川猿之助演出「ヤマトタケル」などを手がけた。荘田は朝倉さんと何度か対面したことがある。

「私の中では優しいというか、気さくですごくいい方。でも、お話を聞いているだけで、何となく背筋が伸びてしまう。オーラがダダ漏れしている感じでした。ただ、優しさの中にも厳しさのある方だと思いました」

役作りのために朝倉さんに関する本を読みあさる中、心に響いたエピソードがある。

「ディカプリオが主演した映画『ロミオ+ジュリエット』を見た直後、ある方に電話して『ロミオがアロハシャツを着ているのにはびっくりした。私ももっとやるわよ』と言ったそうです。その時、もう70代。常に前向きなすごい人だと思いました」

朝倉さんの長女富沢亜古は文学座の先輩女優。今回の舞台では摂の母耶麻子役で出演するほか、父朝倉文夫に原康義、叔母しうに新橋耐子が出演する、演出は西川信廣が担当する。

「演劇好きな方なら誰もが知っている摂さんを演じることにためらいもあったけれど、亜古さんがいることがとても心強いです。先輩たちにも助けていただこうと思っています」

子育て中も、文学座の子どもフェスティバルや歌のコンサートなどには参加してきた。今回久しぶりに舞台に出演するにあたって、「摂」の台本を書いた俳優で劇作家の瀬戸口郁の言葉に背中を押されたという。

「たまに舞台を見に行くと、『すごいな』ってあこがれみたいな気持ちが起こりました。私は止まっているのに、みんなは着実に階段を上がっている。焦る気持ちもありました。でも、そんな私に瀬戸口さんは『子育てで成長した部分がある。ゼロじゃなく。その経験が舞台でも生かされる』と言っていただいて、やってみようと思いました」

子育て中は「自分の辞書になかったはずの汚い言葉を吐いたりした」と苦笑いするが、今回の舞台の冒頭、荘田扮(ふん)する少女時代の摂のおてんばぶり全開のせりふがある。これは舞台を見てのお楽しみに。

◆朝倉摂(あさくら・せつ)1922年(大11)に彫刻家の朝倉文夫の長女として生まれる。美人画で名高い伊東深水に師事し、日本画を学ぶ。20歳で新文展に入選し、戦後の50年に第1回朝倉摂作品展を開催。48歳の時にロックフェラー財団の招聘(しょうへい)で渡米し、舞台美術を学ぶ。日本を代表する舞台美術家となり、朝日賞、紀伊国屋演劇賞などを受賞し、87年に紫綬褒章、06年には文化功労者。14年に92歳で亡くなる。死後、アトリエの裏の物置に無造作に置かれていた多数の日本画が発見され、22年には埋もれていた日本画に光を当てた「生誕100年朝倉摂展」が開催され、大きな反響を呼んだ。

◆荘田由紀(しょうだ・ゆき)1983年(昭58)4月2日生まれ、東京都出身。成城大在学中の2005年に文学座付属演劇研究所に入所。10年に文学座座員となり、文学座公演「女の一生」で主演する。ミュージカル「嵐が丘」「美しきものの伝説」「三人姉妹」「ローマの休日」「小林一茶」などに出演し、17年「吾輩はウツである」地方公演後、舞台から遠ざかっていた。

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