クラシック音楽界の「オオタニさん」 バイオリニスト大谷康子デビュー50周年コンサート開催
日刊スポーツ / 2024年10月9日 7時0分
「オオタニさん」はMLBの世界だけではありません。
世界的バイオリニストの大谷康子がデビュー50周年記念特別コンサートを来年1月10日、東京・赤坂「サントリーホール」で開催する。テーマは「民族・言語・思想の壁を超える未来に向かう音楽会」。「音楽家としてのライフワークが、そのまま演奏会という形になる」と言う。
演奏会は5曲で構成。「ツィガーヌ」(モーリス・ラベル)、「弦楽四重奏第8番ハ短調Op.110」(ショスタコーヴィチ)、「メタモルフォーゼン(変容)~23の独奏弦楽器のための習作」(R・シュトラウス)、「ヒムニス(讃歌)」(クレンゲル)、世界初演「ヴァイオリン協奏曲『未来への讃歌』」(萩森英明)となる。
たった1本のバイオリンから、最後は地球規模の音楽へと広がる。大谷のソロ演奏「ツィガーヌ」から始まり、大谷が第1バイオリンを務める「クァトロ・ピアチェーリ」の4人、「メタモルフォーゼン」は23人、「ヒムニス」は24人と奏者が増えていく。最後の「未来への賛歌」では、南米のバンドネオン、アフリカのンゴマなど、世界の4つの民族楽器まで合わせた管弦楽団で、世界の平和を奏でる。
楽団のバイオリニストたちは現在も教授を務める東京音大、元客員教授だった東京芸大時代の教え子。ほかの楽器も、大谷の趣旨に賛同した日本を代表する奏者で結成されている。
3歳でバイオリンを習い始め、8歳の時に米国へ演奏旅行をし、国連で演奏した。「見知らぬ国で見知らぬ人が、言葉のわからないのに感動して拍手を送ってくれた」。当時から「音楽の力」を感じてきた。
地球上では昔も今もテロや紛争、天変地異が絶え間なく起きている。2001年9月の米同時多発テロの時は、東京交響楽団のツアー中でトルコ・イスタンブールに滞在していた。「こんな時だからこそ、やりましょう」と演奏会を行った。11年3月に起きた東日本大震災から約半年後には、手を差し伸べてくれた30カ国の人を招いて都内で演奏会も行った。15年にはキエフ国立フィル(現ウクライナ国立フィル)とも共演。現地の定期演奏会に招かれるようになったが、戦争が起こった。「ただ、聴いてもらうだけではなく、平和についての思いを考えたり、共有したりして、社会に問いかけたい。意義のある演奏会にしたいのです」。
クラシック音楽というと、どうしても敷居が高くなりがち。大谷は「もっと身近なものにしよう」と普及活動を行い、ジャズ、演歌、民族音楽などとのコラボも重ねてきた。音楽は、仲良くなるためのコミュニケーション・ツールと考えているからだ。
そのために、作家井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」という言葉を実践している。今回は、そんな思いも乗せる。
MLBドジャース大谷翔平は54本塁打、59盗塁でレギュラーシーズンを終えた。「オオタニさんの活躍で、私も名前が覚えられるようになりました」。こちらは50周年といっても通過点。音楽活動を通して平和を願い、歩み続ける。
コンサートの詳細は、「ジャバン・アーツ」のHPで。
◆大谷康子(おおたに・やすこ) 2025年にデビュー50周年を迎える。華のあるステージ、深く温かい演奏は「歌うヴァイオリン」と評される。東京芸術大学、同大学院博士課程修了。在学中よりソロ活動を始め、これまでリサイタルはもちろん、NHK交響楽団、モスクワ・フィルなど、国内外の著名オーケストラとの共演多数。東京シティ・フィル首席コンサートマスター、東京交響楽団ソロコンサートマスターも務めた。CD多数。BSテレ東「おんがく交差点」(土曜午前8時)では落語家の春風亭小朝と司会を務め、演奏も行う。文化庁「芸術祭大賞」受賞。東京音楽大学教授。元東京芸術大学客員教授。東京芸大ジュニア・アカデミー特別教授。練馬区文化振興協会理事長。川崎市市民文化大使。高知県観光特使。日本交響楽振興財団理事。日本演奏連盟理事。
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