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「パラサイト」を抜いたサスペンス・スリラー 「破墓 パミョ」のチャン・ジェヒョン監督に聞く

日刊スポーツ / 2024年10月21日 7時0分

(C) 2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.

韓国で7週連続興行1位を記録し、「パラサイト 半地下の家族」を超えて1200万人を動員した映画「破墓 パミョ」が18日、公開された。「改葬」という独特の風習を題材にしたサスペンス・スリラーに一線のキャストがそろい、見応えがある。公開に合わせて来日したチャン・ジェヒョン監督(43)に聞いた。

-何が大ヒットの原因となったのでしょう。

「正直、実感がないのです。コロナ禍があって劇場もたいへんな状態でした。だから劇場へ行って見たくなる作品、体験的でダイナミックな作品を、という思いはありました」

-映画は、跡継ぎが代々原因不明の病気に罹る富豪一家が、その因縁を断ち切るために先祖の墓を掘り返す「改葬」を行うことをきっかけに始まります。日本にはないこの儀式に加え、風水師(チェ・ミンスク)おはらい師の巫堂=ムーダン(キム・ゴウン、イ・ドヒョン)葬儀師(ユ・へジン)というゴーストバスターズのような集団も興味深かったです。

「韓国では改葬が日常的に行われています。国内で日に50回くらい。狭い国土で80%が土葬ですから、引っ越しを余儀なくされるケースもあるんです。私が初めて目の当たりにしたのは9歳の時です。墓の中からは生前に使っていた生活品も出てきてタイムマシンで時代をさかのぼったような気になりました。最後に出てきた朽ちかけた棺を見た時は中が見たいという思いと、怖いという気持ちが交錯した感じでした。あの経験が今回の作品の出発点になりました。改葬に関わる人たちも実態に則して描きました」

-キム・ゴウンさんの迫力でおはらいシーンは圧巻でした。特撮に頼らない「本物」に見応えがありました。

「あそこは後半の盛り上げにつなげる通過儀礼のように撮ったシーンなのですが。彼女(ゴウン)があそこまでやってくれるのなら、もう少し広げても良かったかもしれない(笑い)」

-これからご覧になる方がいるので、詳細にはふれませんが、後半、墓の奥から二つ目の棺が出てきて、そこに埋められた「日本の武将」は驚くほどの巨体でした。

「この作品のコアになる部分は『過去の怨念』です。韓国にとっての歴史的な傷痕です。一つ目は100年前の植民地支配。もう一つが500年前の朝鮮出兵です。日本の戦国時代を生きてきた歴戦の武将が、戦いと無縁の韓国の村に現れたら、村の人々にとってどれほど恐ろしい存在として映ったのだろうか、と。大きさはその象徴なんですよ。過去の多くの絵画でも大きく表現されています」

-日本特有の妖怪もずいぶんと研究されたと聞いています。

「実は日本に来るのは50回目くらいになります。地方の方が多いですね。東京はソウルと同じ部分が多いですけど、日本の田舎はホントに美しい。で、霊的世界の話ですが、韓国と日本はともに仏教をベースにしているので、自然に親しむような要素があり、似通う部分が少なくありません。一方で、韓国の幽霊が呪うのは必ず因縁のある人です。限定的なのです。『恨(はん)』ですね。対して、日本は自然災害で多くの人が理由もなく亡くなることがあるからでしょうか、深い理由もなく、例えばビデオを見ただけで呪われたり、幽霊からの無差別的な攻撃を受ける傾向があると思います」

-最近は、若い観客を中心に鑑賞後に「怖さ」を引きずる作品には抵抗があるようです。この映画もすっきりと完結していて、眠れなくなるような後味はありません。そこは意識されているのでしょうか。

「最後にしっかりと物語が閉じる。誰が見ても分かりやすい結末は心掛けましたね。呪いを除去する話ですから、それが済めば回復に向かうという、ある意味ハッピーエンディングですね」

-「プリースト 悪魔を葬る者」(15年)「サバハ」(19年)など、監督は一貫してホラー的要素の強い作品を撮ってきました。

「現代社会は科学や合理主義や数字的なものにすべて支配されています。一方で、人間には目に見えないもの、宗教だったり、魂といってもいいかもしれませんが、そういったものが必要だと思います。現代社会はそれをあまりにもおろそかにしている。僕はまだ見る機会がありませんが、幽霊は存在して欲しい。魂を持つことは美しいことだと思っていますから」

【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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