綱啓永 4つの転機…目標の存在は高橋克典「元気で健康な明るいおじさん」理想の未来へ
日刊スポーツ / 2024年10月27日 8時0分
ドラマに映画、今引っ張りだこの俳優綱啓永(つな・けいと=25)が、NHK夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」(月~木曜午後10時45分)で人生を切り開く主人公を好演している。今作でNHK初出演にして主演。役者人生のキャリアを泥くさく、ひた向きに積んでいる。人気若手俳優のこれまでとこれからを聞いた。【望月千草】
★爽やかブッかまされた
洗練されたビジュアルと物腰に面食らった。別媒体の取材後に1時間ほど時間をもらったが、綱は「全然元気ですよ! よろしくお願いします」と爽やかな笑み。対話の中では「この作品知ってくださってるんですか? ありがとうございます」と、コミュニケーションをいとわないフランクな人柄。共演の高橋克典(59)が「空気清浄機みたいな人」と表現したのも、うなずける。
19年テレビ朝日系「騎士竜戦隊リュウソウジャー」で若手の登竜門を経験。以後、地上波の連続ドラマに立て続けに出演し、今年4月期のフジテレビ系「366日」で月9デビュー。お茶の間の景色に自然になじんできた。
「未来の私にブッかまされる!?」では、堅実で安定志向の主人公・五十嵐頼人を演じる。ある日、30年後の自分だと主張するオジサン(高橋)と出会うことで、それまでフタをしてきた夢や仕事、恋愛など人生の宿題が一気に“ブッかまされる”物語。頼人は過去の“失敗”を取り返していくが、綱は「失敗があるから今があると思うので、基本的に失敗はないと思っています」とポジティブマインドの持ち主。ただ「選択を迫られた時に悩んだり、『ミスっちゃうかも』って考えるのは誰しもが思うこと」と共感を寄せる。「頼れる人と書いて『頼人』なので、どこか頼れる部分を大事にして演じたいです。何事にも一生懸命な役ですし、僕自身も撮影を一生懸命乗り越えて、それが『頼人』にうまく重なったら良いなと思います」と気概が頼もしい。
主演オファーには「とてつもないプレッシャーでした」と回想する。それもそのはず、NHKドラマ初出演にして主演。さらに“相棒”となるのは大先輩の高橋。すらっとした長身、長い足、涼しげな顔立ちが重なる。「おこがましいんですけど、克典さんのお父さんの若かりし頃が僕に似てるんですって。写真も見せてもらったんですけど、かっこよすぎて…」と恐縮しつつ頬はゆるむ。同じ人物を演じるため、立ち姿や座り姿勢の癖などささいなしぐさを高橋に寄せ、工夫を重ねている。「仲良くなったら冗談を言うところは似ている」とすれば正反対なところも。「克典さんはピーナツとプロテインばかり食べてます。体形維持のためにそういう食生活をしているらしくて『カッコ良!』って思いました。僕は好きなものばかり食べてます(笑い)」。
★ターニングポイント
今作では人生のターニングポイントが描かれる。綱にとっての転機は、「大きく分けると4つ」。まずは、芸能界入りのきっかけとなった17年の「第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」。テレビドラマ好きの家庭で育ったこともあり、ぼんやりと芸能界への興味を抱いた。だが「宇宙飛行士になるくらい難しいこと」と雲の上の存在。普通の学生生活を過ごしていたが、大学1年時に母親の友人の提案で同コンテストに応募。「盛れてると思った」自撮りで書類選考を通過し、1万7293人の中からグランプリに。芸能事務所20社が争奪した逸材として注目を集めた。
3つの作品との出会いは、俳優人生のアクセントとなった。多数の有名俳優を輩出した「ジュノンボーイ」の看板を背負い臨んだ「騎士竜戦隊リュウソウジャー」では、役者としての基盤を作った。「歴代グランプリの方ほぼ全員が特撮をやっていて、この歴史を崩すわけにはいかないなって、責任感がありました。カメラの前で1年半同じ役をお芝居するあの場数と経験は、今でもすごく大きな時間です」。演者として求められるものをとことん追求した駆け出し時代の経験は、他の何にも代えがたい。
22年TBS系「君の花になる」では、ボーイズグループ「8LOOM」の一員としてアーティスト活動も行い、知名度もぐっと飛躍。今でも「仲間」と思える同年代の若手俳優らと密な時間を共にし、ファンと戦友に恵まれた。初の単独主演作「恋愛のすゝめ」(23年)では、役者としての心構えが変化。「主演はうらやましいポジションって思っていたんですけど、自分がなってみたら物語の軸になる楽しさもありつつ、想像してなかったくらいのプレッシャーがありました。『座長は自分』って思うだけでおなかが痛くなったり」。夜眠れなくなったことも1度や2度ではない。「主演の人が歩きやすい道を作ったり、支えようって思いが芽生えました」。
人は必要な時に必要な縁と結ばれる。大切な作品と巡り合ったと同時に、目標と思える存在とも出会ってきた。「克典さんや『恋愛のすゝめ』で共演した橋本じゅんさん、竹中直人さんを尊敬しています」と敬意を込める。「お芝居もすてきだし、作品をより良くしようと、こんな若手の僕にも意見を言ってくれるんです。放っておくことはできるはずなのに。それってすごいすてきだなって」。
日ごろから綱には、アドバイスや心動いた言葉をスマートフォンのメモ機能に打ち込んでストックする習慣があるという。「僕が疲れを見せてしまった時、克典さんが『啓永、大丈夫か? それ主役の宿命だ』って言葉をかけてくれて。お芝居でも、お芝居じゃない時も克典さんに支えられています」。
30年後、自身は55歳。現在の高橋と同年代だ。理想の役者像は、大先輩たちのように「自分だけじゃなくて周りのために動くことができる人」だ。「そういうことができる人って少ないと思いますし、できる人が生き残っていくのかなって。そういう役者になっていきたいです」。では、どんな“オジさん”になりたいか。「元気で健康な、明るいオジさんになっていたいですね。あと、僕はがん家系で体が心配なので…何よりも健康でいてくれたらうれしいです」。
▼NHK村山峻平制作統括
主演をお願いしようと思った決め手は、舞台で観劇した時に感じた綱さんから湧き出る“独特のすがすがしさ”です。五十嵐頼人はさまざまな状況に追い込まれるのですが、それが悲観的になりすぎず、見ている人が親近感を覚える平凡さを魅力的に表現してくれると思ったからです。実際に綱さんはとても気持ちの良いチャーミングな方で現場を心地よくしてくれています。そこに甘えて常に濃いキャスティングをさせていただきました!
◆綱啓永(つな・けいと)
1998年(平10)12月24日、千葉県生まれ。18年TBS系ドラマ「文学処女」で俳優デビュー。主な出演作に19年テレビ朝日系「騎士竜戦隊リュウソウジャー」22年TBS系「君の花になる」24年フジテレビ系「366日」など。待機作に映画「女神降臨 Before」(25年3月20日公開予定)「女神降臨 After」(同5月1日公開予定)。身長175センチ。血液型O。
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