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奥山和由氏、約30年ぶりに劇映画の監督に挑戦「奇麗な、悪」主演の瀧内公美が一人芝居に初挑戦

日刊スポーツ / 2024年10月29日 18時0分

奥山和由氏が約30年ぶりに劇映画の監督に挑む「奇麗な、悪」(C)2024チームオクヤマ

映画プロデューサーの奥山和由氏(69)が、約30年ぶりに劇映画の監督に挑む「奇麗な、悪」が、25年2月21日から東京・テアトル新宿ほか全国で順次公開することが29日、決定した。

芥川賞作家・中村文則氏のデビュー作「銃」(河出文庫)に収録された「火」を実写化し、主演の瀧内公美(35)が一人芝居に初挑戦する。

奥山氏は、製作・脚本を手がけた1994年(平6)の映画「RANPO」製作にあたり、NHKで放送中の大河ドラマ「光る君へ」でも演出を務める黛りんたろう監督(71)と演出をめぐり対立。自ら撮り直し、同6月25日に別々の劇場で公開した、同作の「奥山バージョン」で監督を務めて以来の監督業となる。

奥山氏は、今回の監督再挑戦にあたりコメントを発表。「20世紀を代表する映画監督、イングマール・ベルイマンは晩年『A SPIRITUAL MATTER』という女優の一人語りの脚本を仕上げ、映画化を熱望した。にもかかわらず、あまりにもとっぴなコンセプトゆえに出資者が見つからず実現出来なかった」と、スウェーデンの世界的巨匠が映画化を実現できなかった、女優の一人語りの企画が、今回の構想の根底にあると明かした。その上で「自分の才能はかの巨匠の足元にもはるかに及ばないが、最後にそのような映画を作りたいと思ったベルイマンの想いは相似形のものとして痛いほど理解できる」と続けた。

瀧内は「ひとりの女性が延々としゃべり続けている。果たしてこれは映画として成立するのか? とっぴな企画過ぎるけど、ひとり芝居の経験がない私は挑戦してみたいと思いました」と、出演を決めた経緯を明かした。「そしてこの女性はこれだけしゃべり続けているけれど、この人が“言わないこと”、“言えないこと”ってなんだろう? を探し続けることとなりました。奥山監督をはじめ、スタッフの皆さんと大勝負に出たこの作品をどう受け取ってくださるのか楽しみにしています」と今後に期待を寄せた。

製作陣にも、豪華な陣容がそろった。撮影監督は、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などを手がけた戸田義久氏、美術は部谷京子氏、録音は「ミッドナイトスワン」などで知られる伊藤裕規氏、音響効果は「PERFECT DAYS」などの大塚智子氏ら、日本映画を代表するスタッフが集結。衣装はミハイル ギニス アオヤマ氏(ギリシャ)編集は陳詩〓(女ヘンに亭)氏(台湾)、ヘアメークは董氷(中国)と国際色豊かなチームとなった。

また、劇中で描かれる精神科医と主人公の関係の、象徴のごとき大きな絵画が冒頭から最後まで印象的に映り込む。描く画家が絵に収まってしまい、それを逆に見つめる裸婦という逆転の構図で描かれた作品は「真実」という標題の後藤又兵衛の原画だ。後藤は日本では不遇の画家だったが、海外では圧倒的に高い評価を得ており、彼の絵の熱心なコレクターとしてハリー・ベラフォンテ、エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラなど歴史に名を残すアーティストたちも名前を連ねている。そして、全編を彩るピエロの口笛のメロディーは芸術文化功労賞受賞者であり国際口笛大会(IWC)での優勝歴を持つ加藤万里奈氏が担当した。

奥山監督は「幸運なことに自分は中村文則の魅惑的言葉と瀧内公美の演技力に恵まれ、実現出来た。さらに撮影監督の戸田義久さん、口笛奏者の加藤麻里奈さん始め才能豊かなスタッフ方々が集まってくれた。本当に幸せな映画だと思う。そしてわが映画人生の最後にこのような我儘を許してくれた全ての方々に心底感謝している」と映画化実現を喜んだ。

原作者の中村氏もコメントを発表した。

中村文則氏 映画は、小説よりもどこか「前」を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、「火」の主人公を救ったのかもしれない。あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、うれしい。

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