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東京タワー、令和流おもてなし ベーブ・ルースも訪れた「紅葉館」モチーフにした新ツアー人気

日刊スポーツ / 2024年11月2日 8時7分

東京タワー全景(株)TOKYO TOWER提供

<情報最前線:ニュースの街から>

今年開業から66周年の東京タワーで、新たな「おもてなし」が始まった。昨今のインバウンド客急増を意識した、1日最大70人限定のプレミアム展望ツアー。10月5日の開始から海外観光客を中心に人気となっている。ツアーの象徴は、日本の秋を象徴する、もみじ。タワー建設前、同地に存在した純和風の社交場「紅葉(こうよう)館」がモチーフだ。かつて海外の賓客をもてなした場での、時代を超えたおもてなしが念頭にある。【中山知子】

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★1日70人限定7000円

1958年12月の開業から、昭和、平成、令和と東京の街を見守り続ける東京タワーで、新たな展望ツアーが始まった。10月5日にスタートした「TOKYO DIAMOND TOUR」と題したツアーは、同タワー初の高価格帯、高付加価値のプレミアムツアーだ。これまでは「トップデッキツアー」でメインデッキ(地上150メートル)と、トップデッキ(250メートル)の2つの展望コンテンツを体験できたが、「第3の展望コンテンツ」となる新ツアーは1回10人で1日7回、1日最大で70人限定だ。

専用入り口から入り、今回のツアーのために新設された飲食自由の「メープル・ラウンジ」でくつろいだ後、ツアーアテンドの誘導を受けて優先的にエレベーターに乗り、タワー上部へ。待ち時間なく2つの展望台を体験できる。専用ラウンジではパフォーマーのパフォーマンスも堪能でき、トップデッキに向かうエレベーターホール「紅葉館」では、ワインやソフトドリンクを飲みながら、外の風景を楽しめる。当日に限って専用ラウンジを自由に使え、メインデッキにも自由に出入りできるという。

専用ラウンジやエレベーターホールの名前に採用されているのが、もみじ。採用の背景には、東京タワーの立地との深い縁がある。

タワーが建つ前、明治時代から、この地域には明治政府が開いた「紅葉館」という迎賓施設が存在していた。もみじの装飾が精巧に施された内装の和風建築で、福沢諭吉の還暦祝いが開かれたり、渋沢栄一が欧米の政治家などを招いた接待に数十回使うなど、新旧1万円札の「顔」にも愛された。ドジャース大谷翔平投手と比較される米大リーグ往年の名バッター、ベーブ・ルースが訪れたという記録もあるといい、宿泊もできたそうだ。国内外の要人に愛された施設だが、1945年3月の東京大空襲で焼失した。

江戸幕府2代将軍徳川秀忠が、江戸城から接ぎ木をして持ってきたのがもみじの木で、近隣に「もみじ谷」もあり、周辺は元々、もみじにゆかりのある場所だ。運営会社の前田伸社長は「その時代からの流れを引き継いで、今の東京タワーがある。どちらかといえば埋もれていた歴史を、もう1度世に出し、国内外の方をおもてなししていきたい」と話す。紅葉館の歴史を継いで、展望という形でのおもてなしを続けてきた自負もあり、「歴史を保存する義務も負っていると感じている」とも話す。

日本で有名な歴史上の迎賓施設といえば「鹿鳴館」だが、迎賓施設としての利用期間が7年ほどだった。一方、紅葉館は64年存在。「和の施設ということで、当時の外交官は鹿鳴館よりもはるかに紅葉館に興味を持たれたようです」(前田氏)。現在、タワー入場者の4割強が海外からの客だといい、かつてこの地域にあったおもてなしの場で、時代を超えたおもてなしを提供したい思いも、今回、もみじを象徴としたツアー立ち上げに込められた。

紅葉館の名前を冠したエレベーターホールが、当時の社交場をイメージした場所で、壁と天井に碁盤状の格子を配置し「ネオ和風」のムードが漂う。日や時間帯、方角によって「一期一会」の景色を眺められるのも、タワーならではの体験だ。

「TOKYO DIAMOND TOUR」は、大人1人当たり7000円(税込み)。料金設定は、都内の展望台の料金としては高額だが、スタート前から予約が入り、そのうち6割超が海外からの予約だったという。スタートからの1カ月で多くの人が利用した。開業以来、多くの観光客に親しまれてきた東京タワーが初めて導入する高価格帯の限定ツアー。「展望というよりエンターテインメント」という新たな価値観を提供したいという試みでもあるが、ニューヨークやドバイなど海外にあるタワーでは、日本円で入場料が1万円を超えるケースも珍しくないそうだ。

前田氏は「年間を通じて日本の和を感じていただきたい」とした上で「東京の観光の新しい提案をどう受け止めていただけるか、私たちのチャレンジでもある。ぜひお見えいただきたい」と話した。

◆東京タワー 関東地方のテレビ・ラジオの総合電波塔として、1958年12月23日に開業。鉄筋鉄骨コンクリート造りで、高さ333メートル、重量4000トン。当時の総工費は30億円。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」にも、建設途中の様子が登場する。2012年、タワー先端部に取り付けられたアンテナ支柱の中から軟式野球ボールが発見され、大きな話題になった。2013年以降、テレビ電波の送信は東京スカイツリーに切り替わっている。今年9月、来場者総数が1億9000万人を突破。半世紀以上にわたり、東京を代表するランドマークとなっている。

◆紅葉館 港区立郷土歴史館のホームページによると、1881年(明14)、純和風の社交場として開設された会員制の高級料亭。外国の賓客の接待や政財界、海軍関係者の懇親の場などで使われたほか、文化人の交流の場としても知られたという。1945年(昭20)3月の東京大空襲で焼失した。跡地を東京タワーの前身、日本電波塔株式会社が取得し、その後、東京タワーが完成した。

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