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「おしん」の心を持ったウズベキスタンの英雄 五輪連覇のジャロロフ選手に半生映画化を聞く

日刊スポーツ / 2024年11月11日 7時0分

バホディル・ジャロロフ(左)とアククロム・イサコフ監督

東京、パリで五輪2連覇を果たしたボクシング・スーパーヘビー級のウズベキスタン代表、バホディル・ジャロロフ選手(30)の半生を描く「草原の英雄ジャロロフ~東京への道~」が8日、公開された。メダルまでの苦難の道のりなどを来日したジャロロフとアククロム・イサコフ監督(44)に聞いた。

-ジャロロフ選手を題材にした理由は

イサコフ監督 こんな英雄がいるんだということを広く知ってほしかったんです。日本でも映画を通じて世界に知られるようになった英雄は多いと思います。

-確かに五輪連覇の偉業だけでなく、世界大会での数多くの優勝など、左ストレート1本で勝ち続ける強さには目を見張るものがありますね

ジャロロフ ウズベキスタンのボクシングにも注目してもらえればうれしいです。ハングリーで競争が激しいから強い。そもそも第2次大戦の頃、アメリカ人が開いたジムが始まりですが、それが今ではアメリカも凌駕(りょうが)している。パリ五輪で獲得した8個のメダルのうち5個がボクシングですから。日本にも井上尚弥さんという素晴らしいボクサーがいますよね。パンチが段違いです。

監督 ウズベキスタンは(格闘技の)クラッシュが国技ですし、レスリングも盛んです。ジャロロフのお父さんもレスリングをしていましたから。

ジャロロフ 演じてくださったダダホン・オビドフさんはウズベキスタンのスター俳優です。ボクシングシーンもとってもリアルで驚きました。

-映画では農村に生まれ、メダルまでの困難な道のりが描かれています

シャロロフ 父の勧めがあってボクシングを始めました。日本でいえば中学校を出た後にオリンピック専門の学校に入ったのですが、すぐに鼻の骨を折ってしまい、母にやめろと言われたり…。そもそも自宅からは通える距離ではなかったんですね。国費奨学生ではなかったので寮には入れず、ジムで寝泊まりしてました。両親に経済的負担をかけたくないので、「携帯電話売り」とかいろんなバイトをしながら、カツカツの生活でしたね。母がときどき食料を運んでくれたのですが、バスで15時間くらいの距離ですから、文字通りの1日がかりでした。「おしん」(NHKテレビ小説=83年)はウズベキスタンでも人気でしたが、共鳴する部分が少なくありませんでした。まさに私の歩みに重なる気がします。

-映画からは国を背負った責任の重さやお父さまの励ましが大きかったことが伝わってきました

ジャロロフ だからこそ東京での初の五輪金メダルは特別でした。忘れられない街になりました。コロナが開けて今回初めて夜の街も見られてその美しさに思いを新たにしました。そして、文字通り支えになってくれていた父を亡くしたことが、人生で一番悲しかったことですね。

-ウズベキスタンはかつてのシルクロードの中心地で、世界遺産の宝庫とも言われます

シャロロフ (プロボクサーとしての)拠点は実はカリフォルニアなんです。アメリカンドリームを感じることはありますが、そこで一生暮らしたいとは思いません。ウズベキスタンよりいいところはありませんよ。人は温かいし、世界遺産の美しい街々は言葉では言い表せません。

監督 映画産業はまだこれからですが、今回の合作映画で出演していただいた加藤雅也さんらたくさんの人の協力もあって学ぶところが少なくなかったです。地理的にボリウッド(インド映画)を参考にすることが多いのですが、これからも日本とジョイントできればと思います。黒澤明や北野武の国ですもの。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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