【軍師に聞く】国民・榛葉賀津也幹事長「政策で山が動いた」激動の年を振り返る/1
日刊スポーツ / 2024年12月23日 5時0分
自民党が少数与党に陥るきっかけとなった衆院選をへて、今の政界で大きな存在感をみせるのが国民民主党だ。「年収103万円の壁」引き上げで「手取りを増やす」と訴え、国民の支持を集めた。党を率いる玉木雄一郎代表(55)は不倫報道で3カ月の役職停止中だが、党への期待値は衰えない。日刊スポーツは、今年の主役を支えた「軍師」に注目。玉木氏を陰に日向に支える榛葉賀津也幹事長(57)にインタビューし、激動の1年を振り返ってもらった。【中山知子】
◇ ◇ ◇
-激動の1年だったと思いますが、今年1年を振り返っていかがでしたか
榛葉氏 激動でしたね。国民民主党を立ち上げて4年、さあこれからだという時に、当時の代表代行が仲間を引き連れて離党するという、大変な出来事がありました。うちのナンバー2で代表選挙までやって、党の将来を、という話もされていた方。比例で勝った新人を連れて出ていくことには非常にじくじたる思いがあったし大変残念でした。それでも踏ん張って、なんとか国民民主党を支えようと。そういう中での衆議院選挙でした。それまで国会議員は衆院に7人しかいなかったのですが、衆院選挙後は4倍の28人になりました。実は当選者は31人だったのですけど、(比例代表の)候補者が足りなくなってしまいました。投票してくださった皆さまには本当に申し訳なく、責任を感じています。ただ、それほどの想像を超えた大躍進でした。
そして、選挙の結果は国会における与党の過半数割れ。これからのは少数与党でどのように国会で税制や予算を成立させるかという議論になっていきます。まさに政治が動いた、そして動いている。この1年、本当に激動でした。
-訴えてきたことは、結党から変わっていません。衆院選でここまで支持を集めたことの受け止めは
榛葉氏 4年前から訴えてきたことは全く変わっていません。今までのような、週刊誌を片手に大臣のクビを取るとか、相手の党を誹謗(ひぼう)中傷して、足を引っ張って下げれば自分が上がる、という政治ではなく、やっぱり政策議論です。「つくろう、新しい答え」「対決より解決」で、しっかり政策を訴えていこうと。政策の立ち位置も理念もこの4年、全く変わっていませんが、国民のみなさんに国民民主党を見つけていただいたことで、山が動いたと思っています。今回の選挙は、多くの有権者のみなさんが今までの「こんな政治家許せない」という怒りの1票から、「この人たちなら国を変えてくれるかもしれない」という希望の1票に変わったと思います。自分たちの1票で本当に政治が変わると思っていただけたのが大きいと思います。
今までは、郵便局を民営化すればバラ色の日本になるとか、自民党の金権政治がだめだから政権交代しようだとか、「悪夢の民主党政権」に戻すな、とか。結局、極端にエッジを効かせたり相手を批判したりして政局のヤマが動いたことはありました。でも、今回は「103万の壁」ですから…。それも大企業や大きな組織とか、著名人が主張した政策ではなく、1人の大学生の1本のメールが始まりでした。「助けてほしい」「奨学金という借金を背負って頑張って勉強したいけど、このままでは学べない、暮らせない」と。これはなんとかしなきゃと、みんなで真剣に訴えました。他の政党は政治とカネの話がメインでしたが、わが党は「103万円の壁」を愚直に訴えました。そうしたらパートさんやアルバイトさんだけではなく、働いてもらっている店長さんや中小企業の社長さんが「そうなんだ」「それをやってほしいんだ」と呼応してくれました。人手が足りない、でも働いてもらえない。おかしいじゃないかと。みんな手取りを増やして、消費を上向かせて景気を良くしたいと思っているのに、制度がそれを邪魔する。やっぱり、おかしいと。さらに、178万円まで上げるとみんな減税になるとの声も上がりだしました。所得が上がれば年金も上がる。こんな好循環の政策があるんだと。しかも税金を取られ過ぎてはいないかと。小さな1本のメールが、どんどんどんどん大きなうずになって、日本の政治が動いた、というのが実感ですね。
-今までの「山」とは全然違う
榛葉氏 全然違いますね。政策で山が動いた。それも派手なパフォーマンスではなく、学生さんやパートさんや普通のサラリーマンの所得を上げようという声で。私の住んでいる地方の居酒屋でも、「103万の壁が」とか「(最低賃金が)1・73倍」とか、おじさんたちが言っていますからね。この話題が朝のニュース、夜のニュース、昼のワイドショーでもやるというのは、今までにないすごいことだと思います。
-与党との交渉では、国民が求めていることのギャップを感じているのではないですか
榛葉氏 自民党の中にはまだ、自分たちが絶対過半数を持っている与党だという風に、勘違いをしている議員がいるということだと思います。もう1つは、集めた税金を使う側の論理で政治をやっているということです。我々は、集めた税金を使う側の論理ではなく、働いて税金を払っている側の論理で政治をやりませんか?と。だって、30年間、ずっとデフレで給料も上がらず、消費も増えなかった。税金を取る側には「8兆円の税収減」でも、税金を払っている側からみれば「8兆円の減税」、国民の懐に「8兆円が戻ってくる」ことですから。今は国の懐でなく国民の懐を増やさないとだめでしょ、というのが我々の主張です。
-「減る」という側面ばかりが強調されている
榛葉氏 そうなんですよ。しかも去年1年で7兆円の税金の使い残しがありました。一昨年は11兆円ですよ。そして税金は過去最高、4年連続で最高税収を徴収している。大手を含めて、国民はベアと合わせて5%くらい給料(平均賃上げ率)が上がりました。マクロ経済スライドなので、現役世代の給料が上がれば年金も上がりますが、その上昇額は2%ちょっと。でも国の税収は26%増えています。国がもうけてどうするんだと。税金は国民のものです。財務省は国民のために奉仕をしないといけないのに、国民が財務省のために働いているって、だれがどう見てもおかしい。当たり前のことを言っているだけです。
-財務省には批判のメールが増えているといいます
榛葉氏 誹謗(ひぼう)中傷はよくないと思います。ただ、財務省のみなさんも与党のみなさんも、国民の悲鳴だということを気付いてほしい。「103万円の壁」で、今、政治が動いたのです。これが民意です。自民党や立憲民主党よりもはるかに(規模が)小さな国民民主党が「給料を上げよう」と、「対決より解決」だと。「103万円の壁を上げよう」と訴えた。普通なら見向きもされないような地味な政策でしたが、多くの有権者が「これだ」と思ってくれたのです。しかも地味だけど庶民の減税になるし、消費の活性化、経済対策にもなる。それがいずれ、高齢者の年金アップにもつながるんだと。こんなことはなかったと思います。
(「2 玉木代表への思い」に続く)
◆榛葉賀津也(しんば・かづや)1967年(昭42)4月25日、静岡県生まれ。米オタバイン大政治学部卒。菊川町議を経て、01年参院選で初当選。民主党政権で防衛副大臣、外務副大臣を歴任。20年9月から現職。地元の自宅で飼うヤギの世話をする様子の動画が話題に。参院静岡県選挙区。当選4回。
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