本木雅弘「日本のエキゾチシズム感じて」 主演「海の沈黙」がロッテルダム映画祭に出品
日刊スポーツ / 2024年12月23日 10時17分
本木雅弘(58)が主演し、脚本家の倉本聰氏(89)が35年ぶりに映画の脚本を手がけた「海の沈黙」(若松節朗監督)が、25年1月30日からオランダで開催される、第54回ロッテルダム映画祭の「Limelight」部門に出品されることが23日までに決定した。
本木がコメントを発表。「ロッテルダム国際映画祭への出品を大変うれしく思います。画家役というだけでおこがましいですが、それぞれに劇的で、光を操り、美を追求したオランダの3大画家、フェルメール、レンブラント、ゴッホを生んだ、彼の地で上映される機会を想像するだけで心が震えます」と感激。「若松監督の挑戦、倉本さん特有の語り口と日本のエキゾチシズムに新鮮な奥行きを感じていただけたらと期待しております」とした。
「海の沈黙」は原作・脚本の倉本氏にとって、88年「海へ~See you~」以来の映画の脚本で、約60年の構想の末、作り上げた。
<1>1960年(昭35)に起きた、永仁時代のつぼではなく加藤唐九郎という人が作った現代のつぼだったことが分かり、重要文化財から降ろされた「永仁の壺事件」
<2>洋画家の中川一政さんが師の岡本一平さんの絵を塗りつぶした上に絵を描いた1件
という、自身の印象に深く残った2つの実話をベースに「美とは何なのか?」という問いかけを織り込んだ、ミステリー作品。本木は、画壇から追放され世界的な贋作(がんさく)事件の犯人と疑われる天才画家の津山竜次を演じた。撮影は23年6月に北海道小樽市などで行われた。
ロッテルダム映画祭は、1972年(昭47)に始まり、カンヌ映画祭(フランス)ベルリン映画祭(ドイツ)ベネチア映画祭(イタリア)の世界3大映画祭と並ぶ重要な国際映画祭とされる映画祭。「海の沈黙」が出品される「Limelight」部門は今年、各国で注目を集めた作品で構成される部門。邦画では近年、16年「海よりもまだ深く」(是枝裕和監督)、21年「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)、23年「Blue Giant」(立川譲監督)が出品された。
今作では、本木と“花の82年組”の同期、小泉今日子(59)との、俳優として31年ぶりの共演が実現。小泉は竜次を追って北海道を訪れる、かつての恋人でローソク作家の田村杏奈を演じた。2人の共演は、小泉がヒロインを務めた92年1月期のフジテレビ系月9ドラマ「あなただけ見えない」以来だった。
竜次の後見人で贋作(がんさく)のシンジケートを操るスイケンを中井貴一(63)、杏奈の夫で高名な画家の田村修三を石坂浩二(83)清家を仲村トオル(58)、竜次のもう1つの顔・彫師のモデルのアザミを菅野恵(30)桐谷大臣を佐野史郎(69)が、それぞれ演じた。
倉本氏と若松監督もコメントを発表した。
倉本聰氏 60余年前日本の美術界をゆるがす大事件があった。鎌倉時代の名作といはれ国の重要文化財に指定されていた古い壺が、実は現代の作家のものと分かり、文化財指定をとり消されたのである。権威づけが消えると美の価値も変るのか。これは一生を賭してその理不尽に挑んだ一人の贋作(がんさく)者の斗いの物語である。
若松節朗監督 人類共通の価値基準は、(真.善.美)です。この3つの概念の中で美だけは絶対的なものだと倉本聰さんは映画のテーマにしました。ルーブル美術館で観たミロのビーナスやモナリザは確かに美しかった。そして感動した。この感覚は誰しもが持つもので世界中の人々を引きつけて止まないだろうと思う。美しいものは誰に対しても美しく揺るぎないものだと考える。美と言うものの永遠性.絶対性を縦糸に人間の愛情を絡ませて紡いだ織物の様な映画ができたと思います。この美しい映画を世界中の人達に観て頂けたらとても幸せです。最後に、ロッテルダム国際映画祭にご招待下さりありがとうございました。
◆「海の沈黙」世界的な画家、田村修三(石坂浩二)が、自身の展覧会で展示作品の1つが贋作(がんさく)だと指摘し、連日、報道が過熱した。その中、北海道で全身に入れ墨の入った女の死体が発見される。2つの事件の間に浮かび上がった男こそ、かつて新進気鋭の天才画家と呼ばれるも、ある事件を機に人々の前から姿を消した津山竜次(本木雅弘)だった。かつて竜次の恋人でだった田村の妻安奈(小泉今日子)は北海道へ向かう。もう会うことはないと思っていた竜次と安奈は小樽で再会を果たすが、病は竜次の身体をむしばんでいた。残り少ない時間の中で、彼は何を描き、何を思うのか…秘めていた思いとは…。
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