【映画大賞】山口馬木也が主演男優賞「侍タイムスリッパー」喜びより驚き「俳優は一生手探り」
日刊スポーツ / 2024年12月28日 10時11分
<第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>
今年の日本を席巻した「侍タイムスリッパー」が、第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)で14年「永遠の0」以来の作品賞、監督賞、主演男優賞の3冠に輝いた。都内1館での上映から火が付き355館に拡大し、興行収入は25日時点で8億1700万円を記録。俳優人生25年で映画初主演の山口馬木也(51)は「導いてくださったとしか言いようがない」と感謝。私財をなげうち、自主映画として製作した安田淳一監督(57)は「商業映画の質を目指してきた」と語った。
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「分不相応」。そうそうたる受賞者の名を目の当たりにして、山口は絞り出した。「こういう俳優になりたくて、いまだにやっている。そこに自分の名前が入るのがよく分からない」。喜びより驚き、戸惑った。
作品は、安田監督が17年の前作「ごはん」に起用した“5万回斬られた男”と呼ばれた斬られ役の名優福本清三さんと、役所広司(68)が現代にタイムスリップした侍を演じた同年の宝くじCMに着想を受けた。出演して欲しいと脚本を渡した福本さんが21年元日に亡くなるも、所属の東映京都撮影所の目に留まり、22年5月に始動。全面協力を受けつつ、同監督が愛車まで売り払い2600万円もの製作費を捻出した。
主演として白羽の矢を立てられた山口は、映画好きで全くの素人から芝居の世界に飛び込み、98年の映画「葵花却」でデビュー。00年に蜷川幸雄さんの「三人姉妹」で初舞台も27歳と遅く、「何をどうしていいか分からない」中、「学べばできる」と頼みにしたのが、00年の映画「雨あがる」で習った時代劇の所作だった。
レギュラーに抜てきされた03年のフジテレビ系ドラマ「剣客商売」では、「何年か先に気付くことがあるかも知れない」と、主演の藤田まことさんの一挙手一投足を見つめた。時代劇の本場・京都で「そういうことをするんじゃないよ」と最初に声をかけてくれた福本さんの背中からも学んだ。
「チャンスはいただいてきた…。でも多分、僕はずっとマズいことをやっているんだなぁと。正しいと思ってやっていることは? と自問自答しながら」時代劇に取り組んできた。その中「侍タイムスリッパー」と巡り合った。演じたのは、落雷で幕末から140年後にタイムスリップし、斬られ役として生きていく福本さんを地でいくような侍。8月17日に全国1館で公開したシネマ・ロサのある池袋は、師と仰ぐ藤田さんの出身地だった。
そうした縁は「奇跡」だと言う。「説明が自分の中で付かない。そういう人たちも見守っていてくれていたんだと手を合わせる」と感謝。「俳優は一生、分からない…。手探りで進んでいかないといけない。少しでも輪郭がはっきりし、向かっていける意味でありがたい」。受賞は道半ばの俳優人生の大きな道標になる。【村上幸将】
昨年「エゴイスト」「劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~」で主演男優賞の鈴木亮平(41)
山口馬木也様 このたびは主演男優賞おめでとうございます。「侍タイムスリッパー」を拝見し、生意気ながら改めて俳優の力とは「どう生きてきたか」と「磨き上げた技術」の掛け算なのだと学ばせていただきました。私も、その両方で観客を感動させることのできる山口さんのような俳優になりたいと、気持ちを新たにしました。今作が僕たち映画ファンへ与えた衝撃や、そこに込められた深い映画愛にも大いなる敬意を込めて。心よりお祝い申し上げます。
▼主演男優賞・選考経過 「山口さんの露骨なあの感じはなかなか出せない」(笠井信輔氏)「会津出身かと思うほど会津弁もしっくりきた。あの時代の人らしさがあった」(神田紅氏)と評され、役所広司、仲野太賀との三つどもえを制した。
▼作品賞・選考経過 「冒頭から引きつけられ、見終わった後に拍手した」(神田紅氏)「娯楽映画として楽しませる力がある」(寺脇研氏)「監督が借金を背負い、リスクを取ったことにおとこ気を感じる」(駒井尚文氏)と評され、第1回投票最多の13票を獲得。
◆山口馬木也(やまぐち・まきや、本名・槙矢秀紀=まきや・ひでのり)1973年(昭48)2月14日生まれ、岡山県出身。高校時代にレオス・カラックス監督の「汚れた血」を見て俳優を志し、京都精華大美術学部卒業後に上京。居酒屋でバイトしていた中、関係者を通じて俳優の道に進み、00年の映画「雨あがる」に出演。03年のTBS系「水戸黄門」で鳴神の夜叉王丸、「剣客商売」で秋山大治郎に抜てきされた。NHK大河ドラマは01年「北条時宗」、13年「八重の桜」、20年「麒麟がくる」、22年「鎌倉殿の13人」に出演。
◆侍タイムスリッパー 会津藩士・高坂新左衛門(山口)は幕末、長州藩士とやいばを交えた瞬間、落雷で気を失う。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。江戸幕府の滅亡を知り、気を落とすが、剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として撮影所の門をたたく。
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