武田真一キャスターと振り返る24年重大ニュース/震災復興の課題共有を/すごいしか言葉ない大谷
日刊スポーツ / 2024年12月31日 7時45分
元日の能登半島地震、翌日の羽田航空機衝突事故で幕開けた激動の2024年。物価高、政治不信による閉塞(へいそく)感が常態化する一方、ドジャース大谷翔平選手の「50-50」達成、パリオリンピック(五輪)での日本勢メダルラッシュなどスポーツ界は明るい話題に沸きました。日刊スポーツでは、今年の重大ニュースについてネット投票を実施。日本テレビ系情報番組「DayDay.」の武田真一キャスター(57)に、激動の1年を振り返ってもらいました。【取材・構成=梅田恵子】
◇ ◇ ◇
■元日から胸えぐられる思い
今年いちばん胸に迫ったニュースは、やはり能登半島地震です。東日本大震災(11年)以来の大津波警報が出て、元日から胸がえぐられるような思いでした。今年は5回ほど現地に行かせていただいたのですが、特に被害の大きい珠洲や輪島は、この年末も倒壊した家やがれきの風景がそのままで、何も変わっていない。「あっという間の1年」とよく言いますが、その言葉を使っていいのか考えてしまう。被災地の皆さんにとっては、すごく長い1年ではなかったかと。
がれきの撤去が進まない背景として、地域の力が脆弱(ぜいじゃく)化していることも感じます。能登はもともと人口減少が激しいところで、復興の担い手となる若い働き手も少ない。そういう地域は各地にあるので、全国で共有していく必要があると思います。
ショックだったのは、東日本大震災や熊本地震、各地の豪雨災害などの教訓を経てきたのに、災害に対する備えがアップデートされていないこと。避難所も、相変わらず体育館の冷たい床の上に布団を敷いて長期間の寝泊まりを強いられていたり。教訓を実際の備えに移していく難しさを感じます。自分も含め、メディアも復旧復興の課題を丁寧に掘り下げて伝えていくことは、もっともっとできたのではないかと。「もっといろんなことを伝えてほしい」という声もたくさん聞き、十分ではなかったのかなと反省しています。
■報道、政治、社会の礎揺らぐ
いわゆるオールドメディアに30年以上勤めてきた人間としては、今年は「オールドメディアの敗北」というキーワードも胸に刺さりました。兵庫県知事選はSNSを中心にした選挙戦展開が話題になり、斎藤元彦知事が再選した根底には、既存メディアへの不信感があると言われています。
しっかり取材し、裏取りをして、客観的に物事を伝えるというオールドメディアが大事にしてきた基本を僕ら自身がおろそかにして「名前」「ブランド」「信頼」を自ら毀損(きそん)してきたツケなのかなと思います。私がいたNHKもさまざまな不祥事がありましたし。メディアは情報源を守らなきゃいけないケースもあり、必ずしも科学者のように根拠や証拠を示すことができない時もある。それでも「このメディア、この人が言うなら正しいだろう」と思ってもらえるのが信頼であり、もう1度基本に立ち戻ってとり戻さないといけないと思います。
オールドメディアだけでなく、今まで人々が信頼してきた社会の礎がどんどん信頼を失っていると感じる1年でもありました。特に気になるのは物価高。物価が上がっているのに実質賃金が伸びない状況に人々の不満がものすごく高まっていて、税の使われ方に対する信頼、社会保障制度に対する信頼、政府に対する信頼がどんどん失われていっていると感じます。大きな社会の基盤となるものが、どんどん揺らいでいるようで心配です。
■常識を打ち破ってくれた大谷
そんな中、今年も明るい話題を提供してくれたのは大谷翔平選手でした。ホームランと盗塁の「50-50」を達成し、ドジャースをワールドシリーズ優勝に導いた。「すごい」という言葉しか出てこないですよね(笑い)。移籍、水原一平通訳の解雇、ご結婚とさまざまな環境の変化があった中で、しっかり集中して結果を出したことがすごい。
野球が「打つ」「守る」「走る」となんとなく分業化されている中で、今年はピッチングができないから盗塁で、という感覚がすごい(笑い)。人間って、勝手に自分の中に作った限界や常識に縛られる生き物だと思うのですが、大谷選手は「人類には不可能」みたいな常識を打ち破ってくれた。僕はいま57歳ですが、自分の可能性を決めつけずにチャレンジしていこうと勇気をいただきました。
パリ五輪もメダルラッシュでした。印象に残っているのは、やり投げ金メダルの北口榛花さん。去年の世界選手権で優勝された時に「DayDay.」に来てくださったのですが、笑顔が本当にチャーミングで。「金メダルとります」って、そこに向かって自分を高めていくことが楽しそうで、刺激をいただきました。
今年神戸で行われた「世界パラ陸上」のスペシャルサポーターをやらせていただいたので、パラリンピックも印象深いです。車いすテニスの小田凱人選手も番組に来てくださったんですよ。まだ18歳ですが、絶対的な自信と言葉を持っていてかっこいい。「やばい、かっこよすぎる俺」とか、常に発信していますよね。彼の場合、かっこよくあるというのは、障がいのある人たちを勇気づけたいという気持ちでもあるので、その姿を尊敬します。
僕自身の1年を振り返ると、2年目の「DayDay.」を中心に、福山雅治さんのコンサートでギターを弾かせていただいたり、ドラマ「放課後カルテ」(日本テレビ系)で校長先生役をやらせていただいたり、養命酒さんのCMに出させていただいたり、初挑戦がたくさんあった1年でした。毎日わくわくすることがあって、プレッシャーもあって、老化している場合じゃないです(笑い)。
来年は参議院選挙もありますし、米大統領にトランプさんが就任して「トランプ2.0」も始まります。先が見通せない「ブーカ(VUCA)の時代」。情報番組もどんどん変わっていかなければいけないと思っています。「こうだ」と言い切る人たちの言葉が強くなりがちですが、どの道を行くのがいいのか、みんなで悩みながら議論していくのが正しい作法だと思うんですよね。来年も、そういうおしゃべりの空間をしっかり作っていきたいです。
◆武田真一(たけた・しんいち) 1967年(昭42)9月15日、熊本県生まれ。90年NHK入局。「ニュース7」「クローズアップ現代+」など看板番組のキャスターを務め、報道の顔として活躍。16年の紅白歌合戦では総合司会も務めた。23年2月末に退局し、フリーに。同4月から、日本テレビ系情報番組「DayDay.」で山里亮太とともにMC。高校時代はバンド活動も。趣味はギター。
◆情報番組「DayDay.」 日本テレビ系で23年4月にスタート。月~金曜午前9時。出演は武田真一キャスター、山里亮太(南海キャンディーズ)の両MCと、同局黒田みゆアナほか。
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